皆さんとヒグマさんのおかげで日間ランキング2位です!!
ゴッドバレーで起きた戦いから、数日後。世界中に、一つの大きな情報が流れ始めていた。
──ロックス海賊団、壊滅。
世界政府はそう発表した。ロックス・D・ジーベック。世界を震撼させた最凶の海賊と、その一味が英雄ガープによってゴッドバレーにて敗北。そして、その戦いの中で多くの海賊が命を落とした。新聞は連日、その事件を大々的に報じた。
だが──。
その記事の中に、一人の男の名前はなかった。ヒグマ。ロックス海賊団と共にゴッドバレーにいた男。金獅子のシキと戦い、サターン聖を斬り伏せ、神の騎士団を覇気だけで吹き飛ばした男。それほどの力を持ちながら。世界政府は、彼の存在を正式にはしなかった。
そして、軍艦の医療室。静かな室内に、朝の光が差し込んでいた。
「…………」
ベッドの上で、ガープの瞼が僅かに動く。
「…………ん。」
ゆっくりと目を開く。薬品の匂いが鼻に漂う。ガープは眉を寄せた。
「……ここは……?」
「ガ…、ガ、ガープ中将が目を覚ましたぞぉぉぉおお!!」
見張り番をしていた海兵がガープを目を覚ましたことに気付き、慌てながら船室のドアを開けて、報告をしに行く。そしてガープが身体を起こそうとした瞬間。
「無理すんな。」
「──ッ!?」
突如として聞こえた声。ガープが勢いよく顔を向ける。そこにいたのは、椅子に座り、酒瓶を片手に持った男。黒髪。額に刻まれた十字傷。そして、黒刀。ガープの目が見開かれる。
「……お前。」
ヒグマは酒を一口飲む。
「よう。目ぇ覚めたか。」
「…………。」
ガープはしばらくヒグマを見つめる。
「……なんで、お前がここにいる。」
「…。」
「答えろ!!」
ガープの怒鳴り声が病室に響く。
「お前はロックスの仲間だろうが!!」
「違ぇよ。」
即答だった。
「……は?」
「おれはロックスの部下になった覚えはねぇ。」
ヒグマは酒瓶を傾ける。
「海賊になった覚えもねぇ。」
「………。」
ガープが絶句する。
「じゃあ、なんでゴッドバレーにいたんだ!!」
「ロックスに誘われたから。」
「それで!?」
「行った。」
「…………」
ガープの眉間に青筋が浮かぶ。
「お前なァ……!!」
ヒグマは面倒くさそうに頭を掻いた。
「それに、おれは略奪にも参加してねぇ。海賊らしいことなんざ、何一つしてねぇよ。」
ガープは黙った。確かに、ヒグマが戦っていたのは見た。だが、他の海賊のように海賊として略奪していたわけではない。ロックスの命令に従っていたわけでもない。ただ、自分の意思で戦っていた。
「……じゃあ、お前は何なんだ。」
ガープが、改めてヒグマを見つめる。ヒグマはしばらく黙っていた。そして、酒瓶を口元へ運ぶ。
「ヒグマだ。」
「名前を聞いてんじゃねぇ!!」
「じゃあ知らねぇよ。」
「………。」
ガープの眉間に青筋が浮かぶ。しばらく睨み合った後、ガープは大きく息を吐いた。そして──。
「……なら、お前───海軍に入れ。」
「…………。」
その言葉を聞いた瞬間。ヒグマの表情が、ほんの僅かに変わった。
(……やっぱり、そう言うと思ったよ。)
ヒグマは心の中で呟く。転生する前から知っている。この男がどういう人間なのか。そして、この世界でこれから何が起こるのか。ロックス海賊団が消えた今、自分が海軍に入るという選択肢を、ガープが提示してくることも──ある程度予想していた。
「……海軍、ねぇ。」
「そうだ。」
ガープは真剣な顔をしていた。
「お前が何者なのか、俺はまだ知らん。」
「…………」
「だがな。」
ガープは拳を握る。
「ゴッドバレーで、お前の力は見た。あの規格外の覇気をな。お前みてぇな奴を、海賊にするわけにはいかねぇ。」
ヒグマは小さく笑った。
「……随分と買ってくれるじゃねぇか。」
「買ってるんじゃねぇ。」
ガープは即答する。
「信用してみたいだけだ。」
「…………」
その言葉に、ヒグマは一瞬だけ目を細めた。
ガープは続ける。
「お前はあいつを神の騎士団から助けた…。」
「……意識あったんだな。」
ガープが苦笑する。
「あぁ。身体は全く動かせなかったけどな。正直、あんな覇気を見たのは初めてだ。」
「……そうかよ。」
「だからこそだ。」
ガープが手を差し出す。
「海軍に来い。」
ヒグマはその手を見る。
そして──。
「……考えとく。」
「おう。」
ガープは笑った。
「それでいい。」
ヒグマは船室のドアへ向かって歩き出す。その背中に、ガープが声を掛ける。
「ヒグマ!」
「ん?」
「海軍に来たら──」
ガープはニヤリと笑った。
「俺が鍛えてやる!!」
「………。」
ヒグマは振り返らずに、片手だけを上げる。
「……そいつは勘弁してくれ。」
「ガハハハハハ!!」
病室に、ガープの笑い声が響いた。そしてヒグマは廊下へ出る。扉が閉まる直前、ヒグマの表情から笑みが消える。
(これからだな……。)
一瞬だけ、遠い未来を思い浮かべる。ヒグマは再び歩き出した。
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───海軍本部。
「という事で、コングさん。連れてきた。」
「誰をだ!!」
コングは、目の前に立つ男を見た。黒髪、額に刻まれた十字傷、腰には一本の刀。そして片手には酒瓶、明らかに海兵を志望するものの姿ではない。
「……こいつが?」
「あぁ。」
「……ゴッドバレーの?」
「そうだ。」
「これからよろしく頼むぜ。」
ヒグマは酒瓶を片手に、軽く頭を下げた。
「…………。」
コングの顔が引きつる。
「…………。」
ヒグマも黙っている。
そして──。
「〜〜〜〜ッ!!」
コングの額に青筋が浮かんだ。
「ガァァァァアプッ!!!」
「ガハハハハハ!!!」
「笑ってる場合かァァァ!!」
海軍本部中に、コングの怒号が響き渡った。ヒグマは酒を一口飲みながら、ぼそりと呟く。
「……やっぱ帰っていいか?」
「ダメだ。」
ガープは即答した。
ロックス海賊団編終了!次から海軍編、長いよぉ!!
高評価、感想待ってるぜい!