ステッキを拾った。魔法少女になった(30代男性)。   作:稲荷竜

30 / 30
第30話 新しい学生さん

『やっぱり知ってたんじゃないですか』と、(ひじり)くれあの目が言っている。

 

『本当に知らなかったんだよ』と、俺は目で言い返した。

 

 俺の家には新しい学生さんが上がり込んでいる。

 

「あっ、あたしはあの、えっと……」

「とりあえず、落ち着いて、お茶でも飲んでください」

「あ、あ、あ、ありがとうございます。持ち帰って家宝にします」

「飲んでください」

 

 消費期限があるので。

 

 ……というか、なんだろう。

 

 俺は彼女に真横に立たれた。それが、ついさっき。一時間前ぐらいか?

 ……もう十八時近いのか……女子中学生……帰ってください……外は明るいとはいえ……

 

 (みぎわ)さんと(ひじり)さんのこの『ご両親がどう言うのかを気にしなさすぎるムーブ』も今度問い詰める必要性を発見してしまったな。

 

 ともかく、一時間前ぐらいに、彼女には真横に並ばれた。

 その時にはこんな扱いじゃなかった。

 

 でも、今、まるで、俺が『神』そのものであるかのような扱いだ。

 

 この一時間でどういう変化があった?

 

 俺を神、つまりなんだ、魔法少女ウィッチが神でいいのか? 魔法少女ウィッチだと特定しているとして、その方法は……見た目的には、左手首に巻き付いて離れない、この魔法のステッキだろう。

 なぜかほかの魔法少女はこの、おじさんの左手首に巻かれてるにはギリギリ不自然な黒い腕時計っぽいもの(最初は形状だけだったのに、いつの間にか普通に時計の機能がついている)に対して何も言及していない。

 ということは、これを見ただけで魔法の変身アイテムだとはわかっていない、ということだ。……どこかに『いる』らしい、彼女らの妖精も含めて。

 

 視線……

 

 スカウトさんの視線も、俺の左手首には向いてないな。

 

 そもそも、左手首に奇妙な腕時計っぽいもの巻いた、っていう条件でスクリーニングして住所特定したにしては、特定が早すぎる。

 マジでわからん。この一時間で彼女の中で何があったんだろう。

 

「えーっと、こちらから質問させていただいてよろしいでしょうか」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 ディメンション・スカウトとして活動していた時の彼女は、かなり狂犬って感じだった。笑い方が『ひゃははははは』だったし……

 でも今はなんだろう、借りてきた猫……とはちょっと違うか……『自分より"上"の相手を前にしたパワハラ上司』って感じの萎縮っぷりだ。そう考えると途端に嫌な感じだな。

 

 ともあれ……

 

「まず、お名前を教えてくれるかな?」

「アッ、す、すみません、これは、至らず。あの、あた、わたくし、(はざま)シフと申します。あの、隣の学区で学生をしています」

「年齢は?」

「十三歳です」

 

 部屋の平均年齢が下がってしまった。

 

 なんだろう、十四歳との付き合い方もわかんないけど、一歳年下になるだけでさらにわかんないな、付き合い方。

 

 いや付き合っていく必要も本来はないんだけど……

 

「えーっと、では間さんは、どうしてここに『神』がいると?」

「あの、わたくし、目的の物を探す魔法が使えまして、その、それなりに時間はかかるんですけど、でも『目的の物』そのものか、それの持ち主かがそばにいると、えっと、ゲージ? ゲージが溜まるの早まって、それで、さっきいきなり、ゲージがマックスになった感じで、ここに、『神』がおられると」

 

 ……うわ、厄介だ……

 

 魔法で見つかったってこと? それもうどうしようもないな?

 

「それで、君の言う『神』は、この部屋のどのへんにいそうですか?」

「あの、頭の中に、マップ? 浮かぶんですけど、そのマップの、『探し物』の色がですね、あの、そこ……なので、あの」

 

 めちゃくちゃ俺を指さしとる。

 

 情報を整理しよう。

 

 彼女は物探しの魔法が使える。

 探してる対象(おそらく俺)のそばに来たため、物探し完遂に必要なゲージが急激にたまった。

 これが、変身した時、真横に俺がいたにもかかわらず無反応だった理由──当時はゲージが溜まってなかった理由になる。

 

 そんで、場所を特定して、俺の家に来た。

 来た時には『神はおられますか』と、神=俺じゃない感じの扱いだったのは、あの時はまだレーダーマップの縮尺? 方向? がおおざっぱで、『この部屋にいる』ぐらいしかわからなかったんだろう。

 レーダーマップが、俺が魔法少女になると頭に浮かぶアレと同じだとしたら、という仮定だけど。

 

 で、改めて、『神』と俺の座標が重なっていることに気付いた。

 

 ここにごまかす余地があるか。

 ごまかしたいな、特に、聖さんと渚さんが、俺の左右で『下手な動きしたら即捕まえるぞ』みたいに俺を観察している今この時は……

 

 ただ、さらに整理するなら、彼女らはまだ『神=ウィッチ』っていう図式を知らないはずではあるんだよな。

 

 今は『このおじさん、やっぱり魔法少女の情報握って隠してやがった』の警戒だろう。

 

 なのでアピールすべきは、こうだ。

 

 一つ、俺は完全に間さんのことを知らなかった、と二人に納得させる。

 二つ、俺は女子中学生に自分のことを神呼ばわりさせてるヤバイおじさんではない。

 

「……ええと間さん、あなたは、私が『神』に見えますか?」

「あたしの魔法は確かです」

「姿は違うんですね?」

「えと、それは、その……信仰対象は女神なので……男性ではないと思います」

「私のことを以前から知っていた、ということもありませんね?」

「はい。初対面です」

 

 厳密には初対面じゃないんだが、初対面の時──つまり、変身してクラゲモンスターを退治した時彼女の中で、俺の存在は意識もしていなかったんだろう。

 

 ただ『あたしの魔法は確かです』がちょっとムッとした声だったのがとても厄介。

 姿も違う、そもそも性別からして違う。でも、この子は俺と同一座標に『神』がいると確信してる。

 ……まあ真実だけ宣言するか。

 

「まず、私はおそらく、あなたの言う『神』ではないと思います」

「いえ、そこにいらっしゃいます」

「……そもそも、あなたの言う『神』というのはなんなのでしょうか」

「母の故郷の創造神です」

「……母の故郷?」

「異世界です」

「…………」

「『すべてを泥から創り出す』という権能を持った神で、母をこっちの世界に逃がしてくださった存在だと聞いています。……あたしは、異世界人と、こっちの世界の人のあいだに生まれたんです」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生したし病弱系ヒロインになりてぇ!! なった!!!(作者:燕目)(オリジナルファンタジー/コメディ)

その男は病弱系ヒロインというものを愛していた。▼今際の際までそんな存在になりたいとさえ思っていた。▼そんな男がTS転生したら?なるしかないだろ病弱系ヒロイン(健康体)に……!


総合評価:2535/評価:8.55/短編:8話/更新日時:2026年09月07日(月) 22:35 小説情報

TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ(作者:SIS)(オリジナル現代/ホラー)

SAN値直葬系マスコットとそれを心から愛する転生者(正気)の日常。▼※序盤とタイトルを書き直しました。▼気分転換に書いた作品を投稿欲を満たすために投稿してみます。▼続き書いたら増えます。


総合評価:3338/評価:8.51/完結:57話/更新日時:2026年08月29日(土) 17:38 小説情報

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1926/評価:8.17/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない(作者:なはた)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼フィジカルよわよわなTS銀髪魔法少女がクール系敵幹部を必死に装いながら魔法少女達と戦うお話。


総合評価:3573/評価:8.54/連載:14話/更新日時:2026年07月24日(金) 12:38 小説情報

TS上位存在(作者:甘朔八夏)(オリジナル現代/ノンジャンル)

「全部あなたのせいだ」▼「お前ら苦しみたいのか?俺みたいに」▼「消えろ!!あんたの事なんか認めない!!天使は悪じゃないといけないんだ!!!」▼「あなたに守られたからあなたを傷つけてしまったから、ぼくの人生はめちゃくちゃだ」▼「そんなにやさしく、『近づくな』って言わないでほしいな」▼「……私は1人じゃないといけないから(人間さんエッッッッロ…………)」


総合評価:3550/評価:8.75/短編:9話/更新日時:2026年07月03日(金) 14:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>