アランスミシー探偵事務所の事件簿   作:山門門山

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case51 解体工事

爆音が響いた。

 

 ――ズドォォォン!!

 

 鉄門を吹き飛ばした直後。

 

 所長は対物ライフルを肩に担いだまま、楽しそうに周囲を見回していた。

 

「……」

 

 目に入ったのは、監視塔。

 

 そして、その奥に並ぶ建物。

 

「……」

 

 所長は対物ライフルを持ち上げる。

 

 遠くで昔馴染みが叫んだ。

 

「おい!」

 

「なんだ?」

 

「もういいだろ!」

 

「何が?」

 

「門は壊した!」

 

「そうだな」

 

「だから終わりだ!」

 

「まだだろ」

 

「何が!?」

 

 所長は監視塔へ銃口を向けた。

 

「上に人がいる」

 

「だから何だ!」

 

「邪魔だ」

 

「待て!」

 

 ――ズドォォォン!!

 

 監視塔が揺れた。

 

 巨大な弾丸が塔の一部を吹き飛ばす。

 

 鉄骨が曲がり、窓が粉々に砕ける。

 

 塔が大きく傾いた。

 

「おお……」

 

 所長が目を輝かせる。

 

「すげえな」

 

「すげえじゃねえ!」

 

 昔馴染みが頭を抱える。

 

「司令官に何て言われたか忘れたのか!」

 

「……」

 

 所長が止まる。

 

「何だっけ?」

 

「壊すな!」

 

「……」

 

「言われただろ!」

 

「ああ」

 

 所長は頷く。

 

「言われたな」

 

「ならやめろ!」

 

「分かった」

 

 所長は対物ライフルを構える。

 

「もう少しだけな」

 

「全然分かってねえ!」

 

 ――ズドォォォン!!

 

 今度は建物の壁が吹き飛んだ。

 

「お前ぇぇぇ!」

 

 昔馴染みの絶叫が響く。

 

 所長は楽しそうに笑った。

 

「ははは!」

 

 ――ズドォォォン!!

 

 さらに一発。

 

 倉庫の屋根が吹き飛ぶ。

 

 ――ズドォォン!!

 

 別の建物の壁が崩れる。

 

「最高だな!」

 

「だから固定して使う武器なんだよ!」

 

 カルテルの構成員たちも完全に混乱していた。

 

「何なんだ、あの化け物は!」

 

「対物ライフルを振り回してるぞ!」

 

「しかも撃ちながら笑ってる!」

 

 所長はもう聞いていない。

 

 対物ライフルを肩から下ろすと、満足そうに眺める。

 

「いい武器だ」

 

 その時だった。

 

「オーガ共は嫌なんだよ!」

 

 怒号が響く。

 

 所長が振り返る。

 

 監視塔の陰から、複数の兵士が飛び出してきた。

 

「固定して使う物を振り回しやがって!」

 

「何だと?」

 

「オーガはみんなそうだ!」

 

「俺だけだろ」

 

「仲間の仇だ!」

 

 兵士たちが一斉に銃を構える。

 

 ――ダダダダダッ!

 

 銃声が響く。

 

 所長は身体を捻る。

 

 何発かが外套を掠め、地面へ突き刺さる。

 

「……」

 

 所長の表情から笑みが消えた。

 

「俺に恨みがあるのか?」

 

「当たり前だ!」

 

「そうか」

 

 所長は対物ライフルを下ろす。

 

「なら仕方ねえな」

 

 大型ライフルへ持ち替える。

 

 ――ダンッ!

 

 一発。

 

 敵の銃器を弾き飛ばす。

 

 ――ダンッ!

 

 二発目。

 

 別の男が物陰へ転がり込む。

 

 所長は走る。

 

「来るぞ!」

 

 カルテル側も応戦する。

 

 しかし。

 

 普通の銃では所長の巨体を止めるのは難しい。

 

「駄目だ!」

 

「効いてねえ!」

 

「対オーガ用を持ってこい!」

 

 その声を聞いて、所長の眉が動く。

 

「対オーガ用?」

 

 嫌な予感がした。

 

 建物の奥から、数人の男が姿を現す。

 

 彼らが持っていたのは。

 

 通常の歩兵銃より遥かに大型の銃器。

 

 巨大な銃身。

 

 分厚い銃床。

 

 無理やり人間が扱えるようにした対大型種族用の兵器だった。

 

「撃て!」

 

 ――ズドン!

 

 所長が横へ飛ぶ。

 

 着弾地点の地面が弾けた。

 

「……!」

 

 続けて。

 

 ――ズドン!

 

 ――ズドン!

 

 大口径弾が次々と飛んでくる。

 

「おいおい……」

 

 所長は建物の陰へ飛び込む。

 

「本気で俺を殺す気かよ」

 

「当たり前だ!」

 

 敵の一人が叫ぶ。

 

「お前に恨みがある奴は、この街にいくらでもいる!」

 

「そうかよ」

 

 所長は大型ライフルを握り直す。

 

「だったら――」

 

 銃口を物陰から出す。

 

 ――ダァン!

 

 一発。

 

 敵の大型銃が弾き飛ばされる。

 

「――こっちも遠慮しねえぞ!」

 

 所長が飛び出す。

 

 大型ライフルを連射する。

 

 敵が散開する。

 

 銃声が交錯する。

 

 砂埃が舞う。

 

 建物の壁が削れる。

 

 まるで小規模な戦場だった。

 

 だが。

 

 その時。

 

 ――ゴォン。

 

 低い音が響いた。

 

「……?」

 

 所長が止まる。

 

 地面が震えている。

 

 もう一度。

 

 ――ゴォン。

 

 今度ははっきりと分かった。

 

 何かが歩いている。

 

「……」

 

 カルテルの構成員たちが道を開ける。

 

「来たぞ!」

 

「魔導鎧だ!」

 

 所長の目が細くなる。

 

 建物の陰から。

 

 一機。

 

 二機。

 

 三機。

 

 巨大な鉄の鎧が姿を現した。

 

 魔石機関が唸りを上げる。

 

 装甲が陽光を反射する。

 

 それぞれが大型火器を装備している。

 

 魔導鎧三機。

 

 カルテルの戦力として。

 

 堂々と戦場へ降り立った。

 

「……」

 

 所長は大型ライフルを肩に担ぐ。

 

「なるほど」

 

 口元が笑う。

 

「昨日の三機とは別か」

 

 魔導鎧の一機が銃口を向ける。

 

「オーガを殺せ!」

 

 機体が踏み出す。

 

 ――ズン。

 

 地面が揺れる。

 

 もう一機も続く。

 

 ――ズン。

 

 三機目が大型銃を構える。

 

 ――ガチャリ。

 

 所長はその光景を見上げた。

 

「……」

 

 そして。

 

 ゆっくりと大型ライフルを構える。

 

「面白くなってきたな」

 

 周囲では、カルテルの構成員たちが歓声を上げている。

 

 対して。

 

 所長は。

 

 笑っていた。

 

 まるで。

 

 巨大な玩具を目の前にした子供のように。

 

「さて」

 

 所長は煙草を口に咥える。

 

 だが、ライターがない。

 

「……」

 

 少し考える。

 

「まあいい」

 

 そして魔導鎧三機を見上げた。

 

「ぶっ壊すか」

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