大戦後――。

人間、エルフ、ドワーフ、オーガ、そして魔族が暮らす異世界では、魔法と科学が混ざり合った新しい時代が始まっていた。

石炭を燃やす蒸気機関。
石油で走る自動車。
ガス灯に照らされた煉瓦造りの街並み。
そして、魔石を動力とする魔導機械。

戦争を終えた世界は、平和を謳歌しているように見えた。
人間と魔王は大戦で互いに甚大な被害を受け、決着のつかないまま停戦。
今では、人間は食料や工業製品を輸出し、魔族は貴重な魔石を輸出する
―昨日まで殺し合っていた者同士が、今日では商売相手となっていた。

そんな時代。


人間の街の片隅に、一軒の小さな探偵事務所がある。
所長は身長二メートルを優に超える、二百四十キロ近い巨漢のオーガ。
粗野で粗暴、金儲けと暴力が大好きなろくでなしで、仕事中でも酒と
タバコが手放せないダメ男

そして元軍人。

かつて大戦の前線で重火器を振り回し、部隊の危機を何度も救った一方で、捕虜を利用した攻撃を行うという常軌を逸した判断を下し、戦後に軍法会議で有罪判決を受けた男だった。

さらに戦時中には、敵である魔族との非合法な取引にも手を染めていた。
金儲けと、将来役に立つコネを作るために。

不名誉除隊となった彼は人間社会から姿を消し、魔界へ逃亡。

そこで一人の魔族の女と出会う。

名は、リリス。

長身でスレンダーな身体に眼鏡をかけた、無表情で毒舌な有能秘書。
主人に拾われた恩義から彼を支えながらも、破天荒で乱暴な所長に呆れながらも付き添っている。

二人は偽造された身分証を手に、再び人間の世界へ戻った。
そして、戦時中に手に入れた金を元手に探偵事務所を開業する。

理由は単純。

探偵なら、民間人でも銃を持つことができるから。
浮気調査、借金の取り立て、行方不明者の捜索、護衛、脅迫、裏社会の揉め事――。

警察や同業が嫌がるような「荒事専門」の依頼を、オーガの所長は今日も金次第で引き受ける。
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