カラーストーン採掘場に着いた勇者アッシュ一向は近くに居た採掘員にキーファの特徴をした金髪の青年が来ていないかと尋ねていた。
しかし、問題のキーファはまだ来ていないらしく入り口前で彼の到着を待って居ようかと思っていた矢先の事だった。
「ねぇ、アッシュ。もしかしてあの人じゃない?」
「あぁ、確かに……。ベロニカが言う様に族長さんが言っていた探し人の特徴にバッチリ合うしからな、
「それに、かなり険しい顔で忙しなく船を漕いでいるから間違い無さそうじゃのう……」
ベロニカが指差す方角を見るとそこにはかなり怖い表情で必死に船を漕ぎこの島へ向かう金髪の青年が居たのだった。
前もってユバール族に貰った特徴から見ても間違いなく彼がキーファであり、船を漕ぎ終えて島に到着した彼にアッシュ一向は話しかけた。
「貴方がユバール族のキーファさんですか?」
「あぁ、そうだが? すまないがこっちは急いでいるんだ」
「ユバールの族長様から聞いているわ」
「奥方の病を治す為に緑のカラーストーンを探すのだろう?」
「族長ちゃんが1人じゃ心配だからアタシ達に貴方の手助けを頼んだのよ〜」
「私達も微力ながらお手伝い致しますわ」
「族長が? 全く、少しは俺の事を信じて待って居て欲しいぜ……。だけど、助かる。どうか、俺の妻ライラの病を治す為に協力してくれ」
金髪の青年キーファは照れ臭そうにして笑いながらも瞬時に意識を切り替えてアッシュ達へ頭を下げたのだった。
そして、キーファ達はカラーストーン採掘場へ足を運んだのだが以前来た時よりも何か様子が違っていた。
以前来た時はカラーストーンが爆弾岩系のモンスターに化かされている異変であったが、キーファや採掘員が言うには異常に数が増加していた。
カラーストーンは鉱物の一種なんだから減る事はあっても生き物やモンスターの様に増える事は無い筈なのになんか増えていた。
まるでキーファ達の行く手を阻む為にこの異常を引き起こした何者かが邪魔をしている様な印象を受けたのだった。
アッシュ達は道中キーファの説明を受けて同色のカラーストーンが衝突すると砕ける仕組みを聞きながら、希少価値が高い緑のカラーストーンを探して奥へ進む。
採掘場は元からモンスターの巣窟になっていたがこの異常事態で更に強化されていた。
アッシュ達勇者一向は戦闘は覚悟の上で武器を持たないキーファを護衛するつもりで居たが、その目論見は当のキーファによって崩れたのだった。
数多のモンスターがキーファの邪魔をする様に行く手を阻むが、武器を持たないキーファはモンスターが持つ武装や素材を戦闘中に盗み取りそれを使い倒して行った。
片手剣や両手剣、格闘や斧、槍や鞭、果てにはブーメランなど様々な武器をとても高い水準で器用に使い分けて戦っていた。
しかも、ただ使い分けるだけでは無く闘気を様々な属性に変化させて、盗み取った得物を最大限に活かした技にまで昇華していたのだった。
その戦い振りはこれまで多くの困難に立ち向かって来た勇者一向から見ても思わず感心する程の超一流の技量だった。
騎士であるグレイグやシルビアだけではなく武術の心得を持っているロウやマルティナ達は、彼がまるで踊っている様にも見えて思わず魅了されていたのだ。
ベロニカとセーニャ姉妹は、この依頼を頼む時にユバール族一同が自慢気に言っていた一族が誇る最強の守り手と言う話は比喩では無かった事に驚いていると突如キーファから魔力が立ち込めているのを感じていた。
「これで終いだっ! メラゾストーム!!」
キーファから放たれる高速のメラミ4連射が放たれてモンスターが消滅した。
賢者セニカの生まれ変わりであり正しく双賢として覚醒した姉妹から見れば、メラゾストームは自分達にも出来なくは無いと思える良い技だった。
しかし、それを今まで戦士だと思っていたキーファが魔法も高い水準で出来ると知った事で、ベロニカの呪文使いとしての琴線に触れて思わずツッコンだのだった。
「貴方、呪文も行けるのっ!? 多彩にも程があるわよ!?」
「す、凄いですわっ! ベロニカお姉様!!」
「ん? まぁ、アイツ等と別れたこの5年で
「っ!? 貴方、分かるの……?」
「あぁ、なんとなくだけどな。その見た目もなんかの事情で小さくなっているのだろ?
俺の師匠は凡ゆる時代や国の賢者や大賢者を総べる賢王と呼ばれたとても凄い方でさ……。
時の砂って道具を使って見た目の年齢を自在に操っていたから、君もそう言う技を持っているかその類の呪いか何かだと思っていたんだ」
「見た目の年齢を自在に操るっ……!? そんな事が出来るなんてっ……!?」
「それに、昔から一緒に修行した俺の幼馴染は魔法の天才だったからさ……。君達の雰囲気がマリベルに似ていたんだ」
「マリベルさん、と言う方が……。あっ、頬に傷が……」
「ん? あぁ、どっかで掠ったのかな? ホイミ」
頬に傷が付いて血を流すキーファを癒そうとしていたセーニャだったが、それよりも先にキーファが自身を回復したのだった。
これまで連戦に次ぐ連戦を重ねても息一つ乱れる事なく疲労感を見せない。特別魔法が苦手と言う印象すら無い彼の様子を見て少し離れた場所にいたカミュ達は目を丸くしていたのだった。
「おいおい、マジか……!? 武技や攻撃呪文だけじゃ無くて回復も行けるのかよっ……!? まるで
「いやいや……。流石に僕もここまでは……。でも、剣の技量はそれなりの自負はあったけど、彼を見て自分もまだまだ未熟だと思い知らされたよ」
「そうね……。でも、本当に不思議ちゃんよね……。まるで彼、何処となく
「そうかのう……? どちらかと言えば
「確かに……。そう言われてみると彼の容姿や性格からローシュ様の面影がある気がしますわ……」
「それにあの技量だけでは無く、姫様やロウ様の様な尊い方々独自の空気感もあっての事でしょうな……」
アッシュ達はキーファと言う人物と関わりを深める毎にミステリアスな彼の謎が増えて行ったが、それは後回しにして緑のカラーストーン探しをしたのだった。
奥地に辿り着くとやはりと言うべきかこれまでの比にならない程のカラーストーンが増殖していた。
希少価値が高い緑のカラーストーンを探すのには苦労したが、アッシュ達と協力して何とか見つけ出す事に成功した。
「これで後は帰る事だけだが……」
「まぁ、これだけ邪魔ばかりした奴が素直にユバール族の休息地に返してくれる訳がねぇよな……」
カラーストーン採掘場の入り口付近で何やら大騒ぎがあったらしく、イレブン達が外に出るとそこには巨大な動く石像が暴れていた。
通常サイズの2〜3倍の大きさはある動く石像に採掘場へ来ていた商会の護衛達は腰を抜かして恐怖していた。
彼等はそれなりに名前が通った傭兵団ではあったが、巨大な動く石像を前に本能的に勝てないと悟った。
しかし、彼等にもこれまで戦って来た自負がある。恐怖で腰を抜かしても逃げる事は出来ない。その葛藤の中で情けなくとも睨み付ける事しか出来なかったのだった。