前世は大・爆・殺・神ダイナマイトが大好きすぎる少女。
“個性”もヒーローも敵も存在しない世界で少女だけ“個性”持ち。
黙さんが好きな安曇くんを応援したい。


※なんでも許せる方向けです
※独自解釈で書いてる


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 宿題のプリントを見ながら前世に思いを馳せる。

 将来の夢で強く浮かぶのは、今世も[デクみたいな優しいヒーローになりたい]だ。

 

 雄英高校に行きたかった。

 心の中でずっと輝いていた願いを、私は進路希望のプリントと共にビリビリに破いた。

 

 違うところに行きたくなって、

 暗いところに行きたくなって、

 その時にきっと、私は自分の命を手放した。

 

 地獄に落ちることなく転生して、

 “個性”が存在しない・ヒーローも(ヴィラン)もいない世界だと気付いて、

 絶望と安堵で一生分泣いた。

 

 ふわりと思い出すのは兄だ。

 頭を撫でてくれた手は世界で一番優しかった。

 抱きしめてくれた時の温かいのが今もずっと残ってる。

 

「炭治郎は校庭行かないの?」

 

 クラスメイトの声で追憶がパッと消える。

 女子なのに……とモヤッとしたあだ名はいつまでも馴染まない。

 

「うん。宿題(コレ)書いたら行っていいよ、って先生言ってた」

 

 形成外科だ。大人になったら竈門炭治郎みたいな痣を治療してみせる。

 

「それ昨日の宿題?」

「忘れるの珍しーな。ワタミッちガンバレよ」

 

 クラスメイトは中休みの貴重な時間を無駄にしない。颯爽と飛び出していき、小学生すごいなぁっていつも思う。

 教室内で溢れていた活気が無くなる。呼吸しやすい空間になる。

 ハーフ成人式のプリント……『書けませんでした』で昼休みも費やそっかな、とまぶたを閉じた。

 

「あかりちゃん!」

 

 明るい髪色と情熱的な瞳の色に、連想するのは前世の最推しのヒーローだ。

 一番最初に飛び出していったのに戻ってきた。

 

「……あっくん」

 

 名前をちゃんと呼んでくれる友人に今日も『ありがとう』が浮かぶ。

 

「宿題やらねェと休み時間無し!!ってホントか!?」

「ほんと。今頑張ってる」

「そっかァ〜」

 

 消しゴムの隣にお気に入りのキーホルダーを置いてくる。スイッチをカチッとしたら光るやつだ。

 ニコ!と明るく笑いかけてくれる。

 

「コレな、元気になるラッキーアイテムな」

「すごい良いものを……ありがとう、借りるね」

「昼休みも無し!ってなったら俺手伝うから」

「おおお……優しい。ありがとう」

 

 机の上が明るくなった後、優しい少年は元気いっぱいに飛び出していった。

『ドッジボールしよう』の約束を守る為に。

 

「……書こ」

 

 ラッキーアイテムを2秒だけ光らせた後、鉛筆を動かした。

 

 自分の年表、感謝の手紙、将来の夢をプリント数枚に描く。

 んで、それを授業参観の時に発表する。

 

 感謝の手紙は母に。

 将来の夢は[お母さんと同じお仕事したい]

 

「……嘘ついたらダメなのに」

 

 授業参観が憂鬱だ。みんなの前で発表したくない。

 風邪ひいて休みたいなぁ〜〜〜〜と思いながら完成させ、3時間目が始まる前にラッキーアイテムを返した。

 

「あっくんありがとう」

「おう!」

「将来の夢、なに書いた?」

「俺ぁ『海のあるとこで暮らしたい』だ!」

 

 安曇くんは出席番号1番、授業参観ではトップバッターで発表する。

 

「絶対叶うね」

「あかりちゃんは?」

「『お母さんと同じお仕事したい』かな。……私のも絶対叶うよ」

 

 本当の夢は誰にも言えない。

 笑顔で嘘をついた。

 

 風邪引きますように!!と念じていたら、発表しなくてもよくなった。

 授業参観の2日前に引っ越し────転校だ。

 最長1年8ヶ月、最短3ヶ月、幼い頃からずっと各地を転々としてる。

 

「次はどこに住みたい?」

 

 母は感情が希薄だ。

 淡々とした声に「どこでもいいよ。お母さんの行きたいところに」と笑顔で答える。

 嘘を重ねてばかりだ。

『お兄ちゃんのところがいい』も『転校したくない』も心の中でまた握り潰した。

 

 お別れの会は無し。 

 あっくんにだけ伝えた。

 いつも遊んでいた、すべり台とブランコだけある公園で。

 たくさん謝りたくなるほど別れを惜しんでくれた。

 

「来月の校外学習さァ! バスで『しりとりしよ』ってなってンの!」

 

 顔にでっかく“いっしょに行きたかった”だ。グワッと泣きたくなった。

 言いたいことが喉元で詰まって何も言えない。

 頑張って振り絞り、なんとか声を出す。

 

「ごめんねえぇ……ッ」

 

 それだけ言えた。

 あっくんの辛そうな顔がもっともっと苦しそうに歪む。連絡帳を開き、走り書きし、ビリッと破って私の眼前に。

 

「これ俺ン家の住所! 文通しよ! な!」

 

 郵便番号と住所と電話番号が書いてる。

 さらにお気に入りのキーホルダーまで私の手の中に。

 

「これもプレゼント! な!」

「ダメだよ! あっくん大事にしてるのに……!!」

「ソレあかりちゃんの!! あかりちゃんのになったから!!」

 

 受け取り拒否だ。落とさないようにしっかり握った。

 おかえしをしないと。光る特別なものを私も。

 

「……私、すごいのある。あっくんにあげる。数時間で消えちゃうけど」

 

 ポケットに手を入れ、手中にフワッと現れたカードを表に出す。

 白いカードをあっくんに渡した。

 

「《32,026ポイント》……?」

「秘密ね。誰にも言わないで」

「キレーだな!! 数字すっげェな!!」

 

 レアカードが当たったみたいな顔で。

 前世で一度も言われなかった、誰かに言ってもらいたかった言葉を。

 ブワッッッッと溢れてしまった。

 

「あッごめん!! シツレーなこと言った!?」

「いってないぃい……!!」

 

 わんわん泣いた。

 あっくんはフンフン左右に動きながら多くのネタを繰り広げて懸命に笑わそうとして、私の感情をあっという間に変えてしまう。

 別れの言葉を笑顔で言うことができた。 

 

「あっくん!! 手紙書くから!! 文通しよう!! 約束!!」

 

 同じところには住まない。

 引っ越してばかりだから、私物はリュックに入る分だけ。

 1年で7回の最多記録を更新した時はさすがに笑えなかった。

 郵便局留めにするよう、手紙の文末にいつも書いた。

 

「お母さん、お願い」

 

 母がいつも投函しに行く。

 あっくんの手紙は常に「届いてなかったよ」だ。

 私のを母は送ってない、あっくんのを処分してる、どっちだろう。

 前世の両親は私を大切にしてくれた。深い感謝が湧き上がった。

 

 新天地の学校で、別れが寂しくなるから、友達にならないように振る舞った。

 嘘をつきたくないから、約束はしなかった。

 

 いろんなことがあった。

 

 紆余曲折の末、高校に行けることになり、無感情の「次はどこに住みたい?」に、あっくんの『海のあるとこで暮らしたい』を思い出して、反抗期が爆発した私は────

 

「ここ!! 花火がすごいココがいい!! ダメだってンなら一人暮らしするからッ!!」

 

 ────生まれて初めて怒鳴り、住む家を自分で決めた。

 

 唯一の宝物は電池切れだ。

 それでも、私にはピカッと光って見える。

 あっくんとの思い出で輝いてる。

 

 そして、入学式。

綿実(わたざね)あかりです』と自己紹介する前に教室が騒然とした。

 

「あかりちゃんッ!!!?」

 

 明るい髪と情熱的な瞳。

 前世が色褪せた分、鮮明に見えた。

 

「……あっくん!!!?」

 

 視界がブワッッッッと熱くぼやけた。

 

「てがみ!! とどいてたぁ!? 『ぶんつうしよう』のやくそくまもらなくてごめん!!」

 

 高校生にもなって、クラスメイトと先生に多大なご迷惑をおかけした。

 マイナス38ポイントだ……と白目を剥きたくなった。

 

 休み時間、転校初日あるあるの「おでこの炭治郎みたいだな」「タンジローって鬼滅の刃の?」「ワタちゃんって呼んでいい?」に当たり障りなく返事しつつ、私の視線はあっくんに釘付けだ。顔にでっかく“話してェ”だ。

 ここで話したくはないなぁ……の気持ちでジッと見つめていたら、注目する皆さんが左右に分かれた。

 

「こんにちはー!」

 

 満面の笑顔の子が元気いっぱいに出てきた。

 声は明るく晴れやか、おっきな目はまんまる、大きなお口の白い歯はとってもキュートな女の子。

 かわいい!!!!と心がズキュンとなった。

 

「黙さん!!」

「しじまさん……?」

「あなたが安曇くんのペンフレンドさんだね!」

 

 その日、私は約束したくなる女の子と友達になった。

 プリティーでキューティな彼女は人気者で、あっくんも当然好きだ。

 LikeではなくLoveだとすぐ気付いた。

 

「(恋のキューピットになりたい!!)」

 

 湾岸都市の海はキラキラしていた。

 再会祝いのガーベラ、快晴の空はたまらなく美しかった。

 あっくんの秘密を教えてもらい、私も小さな声で打ち明けた。

 

「……善行ポイントカード?」

「そう。善い行いをした時、相手が『ありがとう』って思ったら1ポイント増える。悪いことしたらマイナス1ポイント。4歳から今に至るまでの『ありがとう』の回数が表示される……ただそれだけの特殊能力」

「《32,026ポイント》だったよな」

「覚えてるのすごいね」

「忘れねェよ。それ全部『ありがとう』か。超スッゲーな!」

「なんの役にも立たないハズレ“個性”だよ」

「世界でいっちゃんスゲーって。ハズレだって思ってンのあかりちゃんだけだ」

「……そう思ってるのはあっくんだけだよ」

「みんな言うって。すっげェって」

「…………(前世(あっち)にあっくんがいたら良かったのに)」

「ポイントカードならよォ、ポイント交換できンの?」

「…………え」

「“このしろポイント”っちゅうのがあンだよ。他んとこで使えない、ここ限定のポイント。俺ぁそれ使って昨日ミンティアを交換した」

 

 今日、あっくんが私の“個性”を輝かせてくれた。

 善行ポイントカードは累計だ。前世と今世で貯まったポイントは……

 

「……3万9001円分使えるのかな?」

「ありがとう1回で1円はあり得ねーわ。イチありがとうで1万円ぐらいだろ」

「……億になるよ……怖……」

 

 自分の欲しいものを得る為にポイントを使ったら、きっとポイント稼ぎしたくなる。それは善行じゃない。

 “誰かが喜ぶもの”か“救けることができるもの”でポイントを使う。それを、自分と善行ポイントカードに約束した。

 

 春、手渡しであっくんと文通した。

 あっくんと『黙さんのここがかわいい!!』を言い合った。

 

 夏、ポイント交換で花火を出した。

 前世に思いを馳せて涙をこぼしたら黙さんが頭を撫でてくれた。もっと好きになった。

 

 いろんなことがあった。

 重畳、山あり谷ありな日々をあっくん達と。

 

 そして高二の夏・開港祭────

 

「ポイント交換!! 100ポイント使用!! 点灯お願いします!! あっくんの行く先を照らす明かりを!!」

 

 ────私は超頑張るあっくんに特別なものを贈った。


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