キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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過熱する報道と喧噪を避け富士山山麓の保養所で神奈川の江ノ島中学サッカー部と合同合宿を行う武蔵中学サッカー部。中央テレビディレクター土井は武蔵中学サッカー部とコンタクトがとれず苛立つ。しかし土井は同僚の小川を使ってネガティブキャンペーンを行う。南葛中学サッカー部主将のインタビューから切り貼りをして悪意ある内容に改ざんしてテレビで放送するのであった!
どうなる武蔵中学サッカー部!?


第101話 毒をもって毒を制す

静岡に練習拠点を移してから数日。外界の喧騒から隔離された保養所のグラウンドでは、武蔵中学と江ノ島中学の部員たちが汗を流していた。

しかし、その静寂は、ある夕方のニュース番組によって一瞬で打ち砕かれた。

練習を終え、汗を拭いながらロビーのテレビを眺めていた選手たちの表情が凍りつく。画面に映し出されていたのは、東海地区限定で放送されたサッカー特集番組だった。

そこでは、あたかも『大空翼が南葛の仲間を見捨ててブラジルへ渡り、あまつさえ自分たちを負かした敵である武蔵中学へ寝返った』かのように編集され、さらに『全国の舞台でその裏切り者に雪辱を誓う南葛中学』という歪んだストーリーが仕立て上げられていた。

「翼君……これ……」

本間が息をのむ。一ノ瀬も眉をひそめてテレビ画面を注視した。

「だが、インタビューに答えているのはあの石崎だぞ! ご丁寧にテロップまでついてる……間違いない」

真田が腕を組み、不機嫌そうに吐き捨てる。

「チッ、あの坊主頭は3年前とちっとも変わっちゃいねえな。しかし……あいつら、翼のことをそんな風に思ってやがるのか?」

「それは違うぞ」

低い、しかし確信に満ちた声が響いた。ロベルト本郷だった。

「俺はあいつらを直接指導したから分かる。石崎は絶対にそんなことを言う奴じゃない」

その言葉に、真っ先に反応したのは江ノ島中学の面々だった。

「俺もロベルトさんの意見に賛成だ!」主将の江口大翔が強く頷く。「翼が仲間から恨みを買うはずがない。あのインタビューは絶対におかしい!」

妹の翔子も身を乗り出して叫ぶ。

「当たり前だよお兄ちゃん! 翼さんに限ってそんなことあるわけないじゃない!」

口々に翼を擁護し、テレビの悪質な演出に憤りを覚える子どもたち。

その様子を複雑な表情で見つめていたコーチの浅田が、隣の兵藤に声をかけた。

「兵藤監督、これは……」

「くそっ、商魂たくましいマスコミどもめ! 取材拒否された腹いせにネガキャンを張ってきやがったか!」

兵藤は苦々しく吐き捨てると、すぐに指示を出した。「お前たち、動揺するな。一度自室に戻って待機していろ!」

兵藤はすぐさま片桐へ連絡を取るため、保養所の会議室へと向かった。

会議室には、武蔵と江ノ島の指導陣が集まっていた。片桐との電話を終えた兵藤が戻ってくる。

「片桐に確認が取れたが、あの悪質な放送は東海地区限定のローカル枠だったようだ」

浅田が不安そうに胸に手を当てる。

「でも……これで私たちが全国大会のピッチに立った時、どこに行ってもアウェイの逆風の中で戦うことになってしまうわ……」

江ノ島の瀧本監督が顎に手を当てて呟いた。

「そこまでしますか……JBS(ジャパン・ビジネス・サテライト)のプロデューサーである冨谷さんは、もう少し善悪をわきまえた方でしたが……」

その言葉に、兵藤の目が光った。

「瀧本さん。その冨谷さんとは、まだ連絡が取れるか?」

「ええ。江ノ島が全国制覇を果たすまで追いかけたいと仰ってくれていました」

「すまないが、瀧本さん。冨谷さんに『今年のチームの様子を密着取材しないか』と声をかけてくれないか? ここに来てもらって構わない。もちろん、子どもたちのプライバシーには十分配慮してもらう条件でな」

浅田が目を見張る。

「監督……どういうおつもりですか?」

兵藤は不敵な笑みを浮かべた。

「浅田ちゃん、『毒をもって毒を制す』だよ。ネガキャンを張られた以上、こちらも一社だけに限定して取材の独占許可を出す。そして、全国大会が始まるまでにその真実の姿を全国ネットで放送してもらうんだ」

顧問の中田が手を打った。「なるほど! JBSによるイメージアップ作戦ですね!」

「ああ」兵藤は頷く。「あのテレビ局(中央テレビ)の企みも見えた。東海地区では翼を『仲間を捨てた悪役』として仕立て上げ、関東や全国ネットでは『亡き三杉淳の無念を晴らす仲間たち』というお涙頂戴路線でお茶の間に売り出すつもりだったんだろう。ふざけたマッチポンプだ。だからこそ、こちらから仕掛ける」

武蔵と江ノ島による、静かな反撃が始まろうとしていた。

その頃――。

中央テレビの土井と小川は、電話で連絡を取り合っていた。

『いや~、楽勝だったよ今回の取材!』

小川の下品な笑い声が聞こえる。

『石田だか石頭だか知らねえが、あの坊主頭のキャプテンがさ、こちらが望む以上のことをペラペラとカメラの前で喋ってくれたんだよ! おかげで編集作業がはかどって助かったぜ! ……だけど土井さん、これ東海限定で良かったのか?』

土井はタバコをふかしながら鼻で笑った。

「ああ。全国ネットはあくまで『亡き三杉淳の思いを背負って戦うお涙頂戴ストーリー』で行く。すでに三杉家の取材は済ませてあるからな、寝かせておく手はない。それより、奴らの潜伏場所が特定できたぞ。明日は俺も静岡に向かう。現地で合流だ!」

『了解、現地でな!』

翌朝――。

武蔵と江ノ島が合宿を行う保養所の正門前に、中央テレビの取材車が到着した。

だが、重厚な鉄門の前で、厳重な検問を行う警備員に阻まれる。

「だから何で入れないんだよ! 俺たちはテレビ局だぞ!」ADが声を荒げる。

警備員は表情一つ変えずに答えた。

「ここは企業グループの私有地です。事前に許可された方以外はお通しできません」

小川が車から降りてきて凄む。

「クソッ、お前みたいなパンピー警備員じゃ話にならねえ! 責任者を呼べ!」

押し問答が続く中、テレビクルーの横をスーッと一台のロケ車が通過していった。警備員は丁寧に一礼し、自動門を開けてその車をスムーズに敷地内へ通す。

土井が目を見開いた。

「あ、あれは……JBSのロケ車じゃねえか! 何であいつらが顔パスなんだよ! おかしいだろ!」

怒号を上げる土井のポケットで、携帯電話(※当時としては最新の車載電話・移動電話)がけたたましく鳴り響いた。

電話に出たスタッフが青ざめた顔で土井に受話器を突きつける。

「ど、土井さん……電話です。本社からです!」

「ちっ、忙しい時に……はい、土井ですが」

乱暴に受話器を耳に当てた土井だったが、次の瞬間、その顔から一気に血の気が引いた。

『……ふ、福田編成局長……っ!?』

受話器の奥から、親会社をも揺るがすような怒号が鼓膜を刺した。

『馬鹿野郎ーーッ!! てめえら一体現場で何をやらかしたんだ!! 今、片桐コンツェルンと兵藤グループの広報から、うちの営業本部長宛に一本の連絡が入ったぞ!!』

「え……? か、片桐……? 兵藤……!?」

『「青少年教育の現場に対する過熱取材および悪質な偏向報道を続ける番組に対し、我がグループ全社は番組提供(スポンサー枠)を維持できない」だそうだ!! お前ら、我が社のトップスポンサーを怒らせてどうするんだ!!』

土井の額からダラダラと冷や汗が吹き出す。

『今すぐ全機材を撤収させて撤退しろ!! 全提供枠を飛ばす気か!! もしスポンサーが撤退して巨額の損害が出たら、てめえらの首飛ぶどころの騒ぎじゃ済まねえぞ!! 叩き潰されたいのか!!』

「は、はいっ! すぐ撤収します! 今すぐ撤収します!!」

電話が切れると、土井は膝から崩れ落ちそうになった。

さっきまで警備員の前で強気だったテレビマンたちが、一瞬にして顔を蒼白にし、平身低頭で蜘蛛の子を散らすように去っていく。

数日後――。

全国大会の開幕を目前に控え、JBS(ジャパン・ビジネス・サテライト)の全国ネットで一本のドキュメンタリー番組が放送された。

画面に映し出されたのは、江ノ島中学を中心としながらも、熾烈な戦いを経て深まった武蔵中学との熱い友情、そして互いを高め合う爽やかな合宿風景だった。

偏見のない真実の球児たちの姿は視聴者の心を打ち、全国のサッカーファンから絶大な支持と温かい応援の声が寄せられた。

歪められた悪意を撥ね退け、真の友情と絆を証明した子どもたち。

いよいよ、全国中学校サッカー大会の幕が上がろうとしていた――!

 




視聴者の抗議よりもスポンサーからのクレームが怖いテレビ局でした…。

※次回の投稿は18時頃です。
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