キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
開会式が終わり、草薙メインスタジアムではいよいよ開幕試合の火蓋が落とされようとしていた。
三連覇を目指す絶対王者・東邦学園の登場ということもあり、スタンドには超満員の観客が詰めかけ、熱気は最高潮に達している。
東邦学園の対戦相手は、激戦区・大阪を接戦の末に勝ち抜いてきた東一中。
決戦を前にした東邦ベンチでは、北詰監督の鋭く重厚な声が響いていた。
「いよいよ全国の初戦だ。だが考えてみろ!これまで日本で一番厳しい練習に取り組んできたチームはどこだ?……うちだ!日々の練習は嘘をつかない!それを証明してくるんだ!」
「はい!」
威勢よく答えるイレブン一人ひとりの顔を、北詰はじっと見つめた。
「よし、今日は試合に『テーマ』を出す。自分たちで考えて結果を出すんだ!」
「テーマですか?」
松山が問いかける。
「そうだ。今日の相手、東一中は守備が堅いチームだ。これまでのデータを見る限り、全ての試合において接戦をものにして勝ち上がってきている」
「つまり……接戦に持ち込ませず、早めに戦意をくじくということか。しかし、接戦に持ち込んできたということは持久力や粘り強さもあるということですね。そこを早めに折るには……」
松山が思考を巡らせると、傍らの山本コーチがボードを示しながら補足した。
「向こうのチームの中心は7番の早田誠だ。対戦相手のエースを徹底的に抑え込み、機を見てオーバーラップして点を挙げて接戦をものにしてきている」
「しかし、うちにはエースがたくさんいますよ!一体誰を抑える気なんですか?」
新田が首をかしげると、山本は指を三本立てた。
「パターンとして3つ考えられる。やはり最後のフィニッシャーを抑える……となると日向だ。もう一つは日向に決定的な仕事をさせないようにする、つまりゲームメイカーの岬。3つ目は両方同時は無理だからマンマークを捨てて、リベロとして全ての攻撃に対応する。しかし正直、どのパターンで来るか予測がつかん」
その分析を聞いた松山は、不敵な笑みを浮かべた。
「山本コーチ、大丈夫です。そこまで絞ってくれれば、こちらで対応できます。やつらがマンマークにしようがしまいが、全員で点を取りさえすれば対応を絞ることなんてできませんから!」
松山はぐるりとチームメイトたちを見渡した。
「いいかみんな、相手の出方が分かれば、そちらを抑え込んでいると思わせて『別のパターン』で点を取るぞ!」
「おう!!」
腹の底からの咆哮とともに、勢いよくピッチへと飛び出していく東邦イレブン。
主審の笛とともに、東邦ボールでキックオフ。
東邦は初戦の硬さを取り払うべく、全員がボールに触れられるようテンポよくパスを回す。バックパスを受けたゴールキーパーの若島津が、ボールをキャッチすると豪快なパントキックで前線へ大きく蹴り出した。
落下地点には、猛虎・日向小次郎。
そこへ東一中のカミソリファイター・早田誠が左側から激しく競り合いに入る。日向を潰しにかかる早田だったが、日向は圧倒的な体幹で競り勝ち、頭で正確に沢田タケシの足元へ落とした。
「岬さん!」
沢田からすかさずパスを受けた岬太郎が、流れるようなドリブルを開始する。東一中のディフェンス陣が囲い込もうと寄せてくるが、岬はしなやかなステップで次々とそれをかわしていく。
(小次郎には7番がついている……!ということは小次郎狙いか!ならば――)
岬はチラリと周囲の配置を確認すると、ドリブルでそのまま東一中陣内へ侵入。パスと見せかけて、自ら右足を振り抜いた!
強烈なミドルシュート!
しかし、コースがやや甘く、東一中の守護神・辻が必死にパンチングで逃れる。
だが――弾かれたボールの落下地点へ、圧倒的な出足で飛び込んできた影があった。
「いただいた!」
新田瞬!
弾球に素早く反応した新田が、ダイレクトでゴールへ押し込む。東一中ディフェンスはカバーに入ることすらできず、ボールは無情にもネットを揺らした。
前半4分、1-0。
絶対王者・東邦学園が、鮮やかな連携から先制ゴールを奪う!
スタンドからその攻防を見つめていた武蔵中学サッカー部。
「岬は……完全に点を取るゲームメイカーとして覚醒したなあ」
兵藤監督が感心したように呟くと、隣の大空翼が深く頷いた。
「ええ。今のプレイ、日向君にはマークがついていた。そこで新田君へのパスを選択していれば、最初からそこにもディフェンスがついていたはずです。でも、岬君が自ら打つことでディフェンスの意識が一瞬だけ岬君に集中した。その一瞬さえあれば、新田君のスピードなら十分反応できます!」
「そこまで見越してのプレイとはな……。しかし、早くも接戦に持ち込むプランが崩れた東一中はどう出る?」
本間が息をのんで見守る中、試合は東一中のリスタートで再開された。
だが、東邦は手を緩めない。前線から強烈なゾーンプレスを仕掛け、東一中に息をつく暇を与えない。プレッシャーに対抗しきれない東一中からボールを奪うと、球は再び岬のもとへ。
岬は今度、左サイドでフリーとなっていた新田へ素早くパスを出す。
新田がそのまま左サイドを疾走。東一中は、かつての新田の弱点であった「左側からのアプローチ」で守備を試みるが、新田は全く意に介さずそのまま押し切る。
ベンチで見つめるフィジカルコーチの浅田が目を輝かせた。
「関東大会決勝でもその兆しはありましたけど……さらに左右の筋力バランスが改善されていますわ!」
「フッ、弱点をいつまでも放置している我々ではない!」
北詰監督が誇らしげに腕を組む。
新田は寄せてくるディフェンスを速さとしなやかさで蹴散らすと、迷わず左足を一閃!
――隼シュート!!
放たれたボールは鋭い軌道を描き、東一中ゴール左隅へと突き刺さった。
前半8分、2-0。
東邦学園、早くも追加点!
対策が完全に裏目に出た東一中。
『接戦に持ち込む』というゲームプランが序盤で完全に崩壊した彼らに、果たして起死回生の打つ手はあるのだろうか――!?
原作の東一中は南葛中に対してエースの翼を早田が徹底マークして接戦に持ち込んだゲームプランでしたが、複数エースのいる東邦に対してどう対応するかを考えて描きました。
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