キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
全国大会1回戦、武蔵中学対ふらの中学。
前半4分にナトゥレーザの超絶な個人技で先制した武蔵中学は、リードを奪っただけでなく、スタンドの批判的な観客を一撃で沈黙させてみせた。
いきなり先制を許したふらの中学だったが、その表情に諦めの色は一切ない。
「1点ぐらいなんだ!全員で取り返すぞ!!」
主将の小田が力強い声でチームを鼓舞する。
ふらのボールでリスタート。ふらのも武蔵に負けず劣らずの素早いショートパスをテンポよく繋ぎ、武蔵ゴールへと迫る。小田が意表を突いて放ったミドルシュートは惜しくも枠を捉えきれなかったが、小田はすぐに自陣へと戻りながら手を叩いた。
「大丈夫だ、やれるぞ!」
GK相川のロングパントキックに対し、前線で火野が圧倒的なフィジカルで競り勝つ。セカンドボールを素早く収めたのは川村。川村の正確な左足から放たれた鋭いパスは、左サイドから中央へと鋭く走り込んだナトゥレーザへと通る。
ナトゥレーザは寄せてくるディフェンスをぎりぎりまで引きつけると、見向きもせずに右足のヒールでバックパス!そこへ走り込んできたのは一ノ瀬だった。
一ノ瀬が迷わず振り抜いた強烈なミドルシュートは、ふらのGK加藤の決死のファインセーブに阻まれ、こぼれ球はディフェンス陣によって必死にクリアされた。
間近で繰り広げられるナトゥレーザの華麗なプレイに、観客席からは再び大きな歓声が上がる。
「また14番だ!後ろにまで目がついているんじゃないか、あのプレイ……!」
一見すると互角の攻防に見えるピッチ上だったが、プレイの正確性、そしてアイデアの豊富さにおいて、両チームの差は徐々に開いていっていた。
武蔵のスローインから再開。ボールは再びナトゥレーザの足元へ。
ナトゥレーザがボールをキープした瞬間、スタンドの観客たちがゴクリと生唾を飲み込む。
ナトゥレーザは滑らかなステップでドリブルを開始。軽やかなタッチでふらの陣内を切り裂いていく。ふらのディフェンスはたまらず体を投げ出し、ファウル覚悟でナトゥレーザを止めるしかなかった。
倒された場所は、ふらのゴール前右側。
ボールの近くに、大空翼、ナトゥレーザ、川村が集まる。
「翼、俺に蹴らせてくれよ」
「あはは、もちろん!このエリアならナトゥレーザだ」
翼は弾けるような笑顔で譲った。
主審の笛が鳴る。ナトゥレーザの直接フリーキック!
ナトゥレーザの右足から放たれたボールは、猛烈なカーブを描きながらふらのの壁の上を鮮やかに越えると、そのままゴール右隅のサイドネットへと突き刺さった!
前半13分、ナトゥレーザの直接フリーキックが決まり、追加点!2-0!
スタンドの観客が目を丸くしてどよめいた。
「おい、今のシュート……さっきの試合で東一中の7番が終了間際に打ったシュートとそっくりだぞ!?」
「まさか……一度見ただけで、あの軌道を完璧に打てたっていうのか!?」
「それができたら、あいつ……三杉以上の天才かもしれないぞ!」
スタンドで観客たちの驚嘆の声を聞き、ナトゥレーザの兄・カリオは誇らしげに微笑んだ。
(そう……ナトゥレーザは興味を持った技なら、一度見ただけで真似をして、しかも本物以上の精度で放つことができるんだ!)
鮮烈な追加点に湧き立つ武蔵イレブン。
対照的に、ふらの中学のイレブンには重い意気消沈の空気が漂い始めていた。
「そんな……同じプレイでも、武蔵の方が一歩上をいくプレイをしてくるなんて……」
「もし三杉淳が健在で、全小の決勝に出てきていたら……3年前も同じ結果になっていたっていうのか……?」
「やっぱり、松山キャプテンがいなけりゃ俺たちは……」
下を向く部員たちに、小田の怒声が飛んだ。
「馬鹿野郎!!何を弱気になっているんだ!!」
小田は額に汗を撒き散らしながら、部員たちの胸ぐらを掴む勢いで叫んだ。
「相手が強いことなんて、最初からわかっていたことだろうが!思い出せ……俺たちが、松山キャプテンが東邦に行ってからの日々を!」
「……!」
ふらのイレブンの脳裏に、この3年間の光景が過る。
松山が東邦へ渡り、絶対王者の中心選手として華々しく活躍する裏で、自分たちは思うような結果が出せず、周囲からは「松山がいないふらのなんて……」と心ない陰口を叩かれ、悔しさを押し殺して過ごしてきた日々。
それでも残された自分たちは、松山が残してくれた『全員攻撃・全員守備』のスローガンのもと、来る日も来る日も泥だらけになってパスワークとチームワークを磨き続けてきたのだ。
「……キャプテン……」
「俺たちが血のにじむ思いで築き上げたチームワークが、そう簡単に折れてたまるかぁっ!!」
小田の執念が、途切れかけたふらのイレブンの魂に再び火をつけた。
ふらのボールで試合再開。
ふらの中学は諦めることなく、洗練された緻密なパスワークで武蔵ゴールへと迫る。
だが――武蔵の守備陣も揺らがない。
前線から一ノ瀬が激しいプレッシャーをかけてパスコースを限定させると、狙いすました本間が鮮やかにパスカット。本間はそのままサイドライン際を鋭いドリブルで駆け上がっていく。
ベンチ前で戦況を見つめるフィジカルコーチの浅田が言った。
「うちの出足が素晴らしいですね。相手の動きを完璧に限定できています」
「……ああ。ふらのの狙い自体は悪くはないんだがな。いかんせん、プレイスピードの次元が違いすぎる」
兵藤監督が静かに応じる。
「……場数と経験値の差が出ている、ということでしょうか?」
「そうだ。北海道の激戦を勝ち抜いてきた経験と、関東の過酷な激戦区を勝ち抜いてきた経験とでは、対戦相手から得られる『経験値の密度』が違いすぎる。地方と都市部との経験値の格差……これは今後の日本サッカー界全体にとっても、避けては通れない大きな課題だな」
兵藤監督が日本の未来を見据えた考察を深める傍ら、ピッチ上では本間がサイドを深く抉って精度の高いクロスを供給。
ナトゥレーザのマークに引きつけられたふらのディフェンスの隙を突いて、バックウエーブから飛び込んできた大空翼が、鮮やかなダイレクトボレーを突き刺した!
前半20分、3-0!
それでもふらのは必死に食らいつき続けたが、前半終了間際、翼の絶妙なスルーパスに反応したナトゥレーザがGK加藤を鮮やかみかわしてゴールへ流し込む。
4-0。ナトゥレーザ、前半だけで圧巻のハットトリック達成!
後半に入っても、試合の大勢が変わることはなかった。
後半15分、兵藤監督は体力を温存させるべく川村を下げて交代カードを切ったが、武蔵の怒涛の攻勢は一向に衰えない。
そして、試合終了を告げるホイッスル。
最終スコアは6-0。
東邦学園と全く同じ圧巻のスコアで、武蔵中学がふらの中学を叩きのめした。
この試合、自らハットトリックを達成しただけでなく、2アシストを演出して大暴れしたナトゥレーザが満場一致でMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出。衝撃的な全国デビューを飾ってみせた。
3年前の敗北と悲劇のトラウマを完全に払拭し、完璧な勝利で初戦を突破した武蔵中学。
栄光への階段を駆け上がる彼らの前に立ち塞がる、次なる相手とは――!?
東邦とも同じ大勝でスタートした武蔵中学。東邦もそうですが、この世界線では強力メンバーが在籍し、そのメンバーたちが激しくしのぎを削る中で、強力留学生もいないチームでは武蔵や東邦相手に意地だけでは接戦に持ち込むのは難しいと思い、この結果になりました。
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