キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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新生南葛の試合が始まった。相手は立花兄弟のいる花輪中学!新加入のアメリカ人留学生ミハエルの鮮やかな個人技で幸先よく先制した南葛中学!しかし、花輪も立花兄弟を中心に反撃開始!そして立花兄弟の空中サッカーが炸裂したかに見えたその瞬間、石崎がゴールポストを蹴り、立花兄弟の空中サッカーを封じたかに見えたその瞬間、主審が石崎に駆け寄り、危険なプレイとして石崎にイエローカードを提示するのであった!


第109話 封印された必殺技

全国大会1回戦、南葛中学VS花輪中学の一戦は、南葛の留学生ミハエルの鮮やかな個人技による先制ゴールで幕を開けた。

一方、反撃に出た花輪の立花兄弟も、十八番のコンビプレイから名物の空中サッカーへと繋げようと試みる。しかしその瞬間、ゴールポストを蹴り飛ばしてゴールポスト全体を狂わせた南葛キャプテン・石崎の奇策(?)によって和夫が体制を崩して激突。空中サッカーは封じられたものの、石崎のこの行為は「相手を危険に晒す重大なマナー違反」としてイエローカードが提示されるという、混沌とした幕開けとなっていた。

だが、カードを貰って頭を抱える石崎以上に深刻な状況に陥っていたのは、当の花輪中学の方だった。

チームの絶対的な生命線である「空中サッカー」を審判の監視下で実質封じられたことにより、彼らの攻撃は完全に手詰まりとなってしまったのだ。

「落ち着いて回していこう!」

司令塔の井沢がピッチ中央でドッシリと構え、正確なパス回しで花輪のウィークポイントを的確に突き始める。前線の来生、滝、そしてミハエルが絶妙な動き出しで次々と花輪ゴールへと襲いかかった。

そして前半20分――。

相手の攻撃をカットした南葛の素早いカウンターが発動する。中央でボールを受けた井沢が、花輪ディフェンスの隙間を縫う鮮烈なスルーパスを供給!

それに反応したのは、背番号11のミハエルだ!

「行きますよーっ!」

爆発的な初速で抜け出したミハエルは、飛び出してきた花輪GKに対し、まるで華麗なステップを踏むかのような高速の足さばき――得意のドリブル『ローズダンサー』を披露!

鮮やかにGKを置き去りにすると、無人のゴールへ軽々とボールを流し込んだ!

ゴールネットが揺れ、主審の笛が鳴り響く。

2-0! 南葛中学が貴重な追加点を奪い取った!

スタンドのボルテージは一気に爆発する。

「キャーッ!ミハエルーッ!かっこいいーっ!」

黄色い歓声が飛ぶと、ミハエルはスタンドへ向けてとびきりの笑顔でウインクを返した。

「こらぁっ!ミハエル、試合中だぞ!早く自陣に戻れっ!」

「オーK、OK!了解でーすよ、サル崎!」

「誰がサル崎だ!俺は石崎だっ!!」

怒気を含んだ石崎の突っ込みとミハエルのお調子者な返し。

スタンドで見守る岬は、思わず苦笑いを浮かべた。

「城山監督……南葛の雰囲気、僕たちの頃とだいぶ変わりましたね……?」

「ま、まあな……。だが、あの2人の掛け合いは今じゃすっかり南葛の名物なんだよ……」

城山監督も苦笑いするしかなかったが、その表情にはどこか頼もしそうな温かさが滲んでいた。

一方、2点目を奪われ、完全に意気消沈しかけている花輪イレブン。

「どうするんだよ、兄ちゃん……」

「……和夫、“あれ”を使うぞ!」

「えっ!?だけど“あれ”だって、下手をしたら危険なプレイの対象になるんじゃ……」

「要は相手プレイヤーを巻き込まなきゃ大丈夫なんだ!順番は逆になるが……まずは“低空”から試す!」

「……分かったよ、兄ちゃん!」

花輪ボールで試合が再開される。

追い詰められた立花兄弟は、息の合ったパスワークで南葛陣内へ怒濤の侵入を開始。右サイドの味方・玉井へボールを一度預ける。

玉井がサイド深くから放ったのは、地を這うような鋭いグラウンダーのクロスボール!

南葛のDF陣も、花輪のFW陣も、誰もこのスピードに乗ったクロスには届かない――誰もがそう確信したその瞬間だった!

「「今だっ!!」」

ゴール前に猛スピードで走り込んできた立花兄弟!

2人は同時に跳躍すると、空中でお互いの足裏をピタリと合わせる!

1人が強烈な「発射台」となり、もう1人がその反動を利用して砲弾のように飛び出した!

低空を切り裂く超絶なダイビングヘッド!

放たれた一撃は、GK森崎の手を弾き飛ばし、見事に南葛のゴールネットを揺らした!!

「見たかーっ!これが俺たちの新必殺技……『スカイラブ・ハリケーン』だぁぁぁっ!!」

誇らしげに胸を張り、大声をあげる立花兄弟!

しかし――

ピピッ!ピピーーッ!!

鳴り響いたのは、得点を認める笛ではなかった。

主審が副審のもとへ駆け寄り、短く言葉を交わした後、毅然とした足取りで戻ってくる。そして――掲げられたのは『ノーゴール』のジェスチャー、続いてポケットから出されたイエローカードが、立花政夫と和夫の2人に突きつけられた!

「「な……なんだってぇぇぇっ!?」」

驚愕に顔を歪める立花兄弟。

「そんなのアリかよ審判!今のプレイは相手チームと接触するスペースすらなかったはずだぞ!完全にフリーだっただろ!?」

「確かに君たちと南葛の選手に直接の接触はなかった!」

主審は厳しい眼差しで解説する。

「だが!人を踏み台にしてあの猛スピードで低空を飛んできたんだぞ!至近距離にいた相手選手がどういう行動をとるか、考えなかったのか!?」

「え……?」

「避けようとしてバランスを崩して転倒するに決まっているだろう!それが彼だ!もし頭でも打っていたら大惨事だぞ!」

主審が指さした先では、南葛のDF西尾がピッチ上に倒れ込み、足を痛そうに押さえていた。

「西尾っ!」

駆け寄る浦辺たち南葛イレブン。西尾は政夫が突進してきた際、巻き込まれまいと慌てて身を引いた結果、足をもつれさせて転んでしまったのだ。

「それに!さっきも『次同じことをしたらカードを出す』と言ったはずだ!この後も同じような曲芸的な危険行為を続けるなら、迷わず2枚目のカード(退場)を出す!いいな!?」

完全に退路を断たれた立花兄弟は、ぐうの音も出ず立ち尽くすしかなかった。

自慢の空中サッカーを完全に審判に封印された花輪中学に、この圧倒的な劣勢を覆すだけの武器はもう残されていなかった。

その後、南葛は何度か決定機を外す場面があったものの、試合の主導権を終始握り続け、最終スコア「4-0」で花輪を完全封殺。堂々の圧勝で2回戦進出を決めた。

そして明日――南葛中学は、王者・東邦学園と相まみえることとなる。

なお、今大会で最大の武器であった空中サッカーを完全にルールによって封印された立花兄弟は、この挫折をきっかけに、パスワークと豊富な運動量を武器とするプレイスタイルへ大きな転換を図ることとなる。

しかし、「小兵でハードワーク」というスタイルは、日本のサッカー界において最も層が厚く競争が激しい領域であった。同じ特徴を持つ優秀なライバルたちが次々と台頭する中で、彼らは徐々に年代別代表の選考レースから脱落していくこととなる。

それでも――彼らは諦めなかった。所属先やカテゴリーを落としながらも、持ち前のタフさとサッカーへの情熱を武器に、息の長いプロ現役生活を静かに、そして誇り高く送っていくのである。

試合終了の笛が鳴り響いた直後のピッチ上。

「ふぅー!勝った勝った!これで明日は東邦だぜ!」

汗を拭う石崎の隣で、ミハエルが肩をすくめる。

「オー、サル崎。明日のトウホウ戦もミーの美技で楽勝でーすよ」

「誰がサル崎だ!!明日もキャプテンの俺がビシッとチームをまとめるんだよ!」

「はいはい、サル崎キャプテン〜」

「だーかーらー!石崎だって言ってるだろーがっ!!」

結局、試合が終わった後も、南葛名物の「石崎とミハエルの掛け合い漫才」がいつまでもピッチの上に響き渡っていたのは言うまでもない。

 




当時は立花兄弟の空中サッカーは夢がありましたが、現代基準に当てはめたらやっぱり危ないですよね。空中サッカーを封じられた立花兄弟の前途はやっぱり厳しいのかなと思い、立花兄弟のその後を描きました。

今日も3話投稿です。次は、12時頃投稿予定です。
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