キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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武蔵中学の試合が終わり、第2試合南葛中学VS東邦学園の試合が始まろうとしていた。地元南葛の観客の大声援を受け、南葛中学の戦いが今始まる!?


第115話 影のキャプテン

南葛VS東邦の序盤戦。東邦の鋭い立ち上がりによるピンチを、浦辺の機転の利いた守備で未然に防いだ南葛が、自陣からのリスタートで反撃に移る。

南葛ボールのフリーキック。10番の井沢が静かに呼吸を整え、大きく右サイドへボールを蹴り出した。

ターゲットは滝。タッチライン際で正確にボールを収め、自慢の俊足を生かしたドリブル突破を図る。だが、王者東邦のディフェンス陣も冷静だった。複数で挟み込むようにコースを消し、滝をラインの外へと押し出そうとプレッシャーをかける。

その時、後方から一進一退の攻防を打ち破る声が響いた。

「こっちだ!」

オーバーラップしてきたのはサイドバックの岸田だった。滝が相手を引きつけて空けたスペースへ果敢に侵入すると、滝からのパスをダイレクトで前線へと送り込む。精度高く上がったクロスボールの落ち際へ飛び込んだのは来生だ。

来生には東邦のキャプテン・松山がぴったりとマークについていた。だが来生は、空中戦で直接ヘディングシュートを放つと見せかけ、頭でわずかに軌道を変えて横へ流す。

そこへ殺到してきたのは、後方から走り込んできた井沢だった。ノーマークの状態で空中に躍り出ると、渾身の力を込めてヘディングシュートを叩きつける!

バシッ!

「なっ……!」

完璧な崩しから放たれた決定的な一撃。しかし、東邦の守護神・若島津健の反応は鋭かった。驚異的なジャンプ力と動体視力でボールの軌道を見切り、その両手でがっちりとキャッチしてみせたのだ。

ピンチを凌いだ若島津は、着地と同時にすばやく前線へとロングフィードを放つ。ボールが向かったのは沢田タケシの足元だった。

東邦はここで日向と沢田の「明和ライン」を選択。一瞬の隙を突いて南葛ゴールへと襲いかかる。

素早く戻った南葛の守備陣へ、浦辺の鋭い指示が飛び交った。

「こいつは俺が止める!石崎、お前は岬をマークだ!」

「おう!」

沢田に対して浦辺が果敢に間合いを詰め、懸命のディフェンスで侵入を防ごうとする。沢田も巧みなステップで交わそうとするが、浦辺もしぶとく足を出して決定的な一歩を許さない。

緊迫した攻防の中、沢田が一瞬の隙を見逃さず、前線のスペースへスルーパスを通した。

裏へ抜け出したのは日向小次郎! 絶妙なタイミングでボールが渡った――そう見えた瞬間、副審の旗が高々と上がった。

ピーッ!

「オフサイド!」

沢田がパスを出す直前のわずかな時間、浦辺が沢田に対応して時間を稼いでいる間に、南葛のディフェンスライン全体が一斉に押し上がっていたのだ。

スタンドで試合を見守っていた武蔵中学のメンバーが、南葛の統率された守備に目を見張る。

「今のオフサイドトラップもうまいな」

一ノ瀬の呟きに、隣の川村が大きく頷いた。

「はい。浦辺さんがラインを整えるように時間を稼ぎ、できあがったところでタケシに日向さんへパスを通させる……見事な統率です」

普段は厳しい目を持つ火野も、感心したように鼻を鳴らした。

「あれも8番(浦辺)だな。あいつ、よくピッチ全体の動きが見えてやがるぜ」

判定を受け、南葛ボールでのリスタート。GK森崎が放ったロングキックに対し、東邦のディフェンス陣と競り合ったのは井沢だった。高い打点で東邦DFに競り勝ち、頭で確実にボールを叩く。

「あの10番(井沢)も、3年前(小学生時代)にうちとやった時、信次(真田)と空中戦で互角に渡り合っていたからな……空中戦への絶対的な自信があるということか」

一ノ瀬が昔の対戦を思い返すように呟く。

井沢が競り勝ったボールは、左サイドで待つミハエルの足元へ綺麗に収まった。

その瞬間、スタンドの一角から爆発的な声援が上がった。

「キャーッ、ミハエルーっ!」

期待に応えるように、ミハエルが圧倒的なスピードでドリブルを開始する。東邦の岬がすぐさまチェイスに入り、コースを消しにかかった。だが、ミハエルは一瞬のステップで岬の脇を突き抜けていく。

「……!? 見た目よりもっと速い……!?」

岬の表情に驚きが走る。

ミハエルはそのまま一気にペナルティエリア外まで持ち込み、右足を大きく振りかぶってシュート体制に入った。

しかし、その瞬間に浦辺の大声がピッチを切り裂く。

「ミハエル!その距離からじゃ止められるぞ!」

そのコーチングを聞いたミハエルは、振りかぶった足を瞬時に軸足の裏へと切り替え、シュートをストップ。そのままさらに中央のエリアへと鋭く切れ込んでいく。

ペナルティエリア内へと侵入し、GK若島津との距離が一気に縮まった。間合いを見極めたミハエルが、今度こそ右足を一閃させる!

「ローズバスター!」

放たれたシュートは凄まじいスピードと威力を伴って若島津を襲った。若島津も驚異的な反応で手に当てたものの、強烈な威力を殺しきれず、弾かれたボールはそのままネットを揺らした。

ゴォール!

前半11分、南葛中学が王者東邦から貴重な先制点を奪い取った! 1ー0!

地元・南葛のスタンドが大歓声に包まれる。そして先制点を決めたのがミハエルということもあり、女性客たちのボルテージは最高潮に達していた。

武蔵の観戦席では、火野がミハエルのプレーを冷静に分析していた。

「ほう、あの留学生もなかなか冷静な判断ができるな。最初の位置から打っていれば、若島津なら確実に止められていたはずだ」

「いや、11番(ミハエル)のシュート自体もすごい威力だけど、中に入るように指示を出したのも浦辺君だ」

翼が指さした先では、仲間たちと喜び合う南葛イレブンの姿があった。

「そうだな。あいつ(浦辺)、黒子に徹しながらも要所要所で最高に気の利いたプレーをしている」

一ノ瀬の言葉を受け、兵藤が静かに結論付ける。

「そうだ。浦辺が『影のキャプテン』として完璧に機能している。やつこそが今の南葛の真のキーマンだ」

兵藤の視線の先には、ゴール後にまたしても何やら言い合いを始めた石崎とミハエルの間に入り、慌てて二人を宥め正している浦辺の姿があった。

「……だが、王者東邦がこのまま黙っているわけがない。本当の勝負はここからだぞ」

一ノ瀬が鋭い眼差しでピッチを見下ろす。

圧倒的な地の利と、浦辺の陰の統率力を遺憾なく発揮した南葛が先制に成功した。だが、絶対王者である東邦学園がこのまま引き下がるはずもない。

死闘の熱を帯び始めた試合の行方は、まだ誰も知る由がなかった。

 




明日も3話投稿します。お付き合いいただけるとうれしいです。
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