キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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本編に戻ります。
ついに翼にも動きがあります。


第14話 岬太郎

 

9月1日 南葛小学校 6年生の教室

夏休みが明け、静けさを取り戻すはずだった教室に、石崎の馬鹿でかい声が響き渡る。

「えーっ!? 東邦学園!!? 岬、お前、東邦学園に行くのかよ!」

周りのクラスメイトたちが一斉に視線を向ける中、岬は少し申し訳なさそうに眉を下げて答えた。

「そうなんだ。東邦学園からスカウトを受けて……。4月から父さんがパリに行くんだ。そのタイミングで、寮のある東邦学園に行くことになったよ」

眼鏡の位置を直しながら、大川学が納得したように深くうなずく。

「寮生活なら、より一層サッカーに打ち込めますよね。今の岬君には、すごくピッタリな選択かもしれません」

「くそーっ! 何で東邦学園のスカウトは、俺のこのガッツあふれるプレイを評価してくれねえんだよ!」

悔しそうに頭を抱える石崎に、学が容赦のない正論を投げかける。

「石崎君の場合は、ガッツあふれるというよりは『無謀』なプレイに近いですからね」

「何だと~っ! 学、お前言わせておけば!」

「わっ、冗談ですよ石崎君!」

逃げ惑う学と、それを大声で追いかけ回す石崎。

いつもの賑やかで微笑ましい南葛小の日常。岬はその光景を見て穏やかに微笑む。

しかし、その視線はふと、教室の窓際にある**「ひとつの空席」**へと向けられた。

本来なら、誰よりも元気にこの場にいて、誰よりも笑顔でサッカーの話をしているはずの机の主――大空翼。

全国小学生サッカー大会でのあの日から、翼は深い心の傷を抱えたまま、一度も立ち直ることができずにいた。

(翼君……)

ぽつりと呟いた岬の瞳に、深い陰りが落ちた。

その日の放課後、岬は大空家を訪れていた。

だが、玄関を開けた母・奈津子の表情は暗く、疲弊しきっていた。

「ごめんね、岬君。せっかく訪ねてきてくれたのに……あの子、まだ学校に行けるような状態じゃなくて……」

「そうですか……。実は僕、4月から東京の東邦学園への入学が決まって、南葛にいられるのは卒業までなんです。それを、翼君に直接伝えたくて……」

「東邦学園に……」

奈津子は少し意外そうに目を見張った後、視線を落とし、何かを決意したように静かに口を開いた。

「そうだったのね……。ねぇ、岬君。実はね……あの子、近いうちにブラジルへ行くことになったの」

「え……ブラジル……!?」

「うん。ロベルトさんと一緒に……ここ(日本)とは違う環境で暮らせば、あの子の気持ちも少しは変わるんじゃないかって。石崎君たちに話すと、みんな優しいから心配して大騒ぎになっちゃうでしょう? だからずっと黙っていたの。でも……岬君には、伝えておくわね」

そう言って奈津子は、翼が日本を旅立つ「本当の日時」を、そっと岬に教えたのだった。

南葛市・最寄り駅のホーム

残暑の差し込むホームに、大きめのキャリーケースを引いた翼と、その傍らに立つロベルトの姿があった。

これから成田へ向かい、そのままブラジルへと旅立つ。

しかし、翼の瞳には光がなく、ただ虚ろに足元を見つめているだけだった。

「翼君!」

ホームの階段を駆け上がってきたのは、息を荒らげた岬太郎だった。

「……っ、岬……君……?」

翼の小さく擦れた声に、岬はまっすぐ歩み寄る。

「お母さんから聞いたんだ。今日、翼君が旅立つって」

翼は何も答えず、ただ申し訳なさそうに視線を泳がせる。そんな翼の小さな両手を、岬はギュッと強く握りしめた。

「僕、4月から東邦学園に行くよ。ふらのの松山君と一緒に、あそこでサッカーをするんだ」

「サ……サッカー……?」

「サッカー」という言葉に、一瞬だけビクッと肩を震わせ、顔を背けようとする翼。

だが、岬は握った手を絶対に離さず、翼の目をまっすぐに見つめて、叫んだ。

「翼君! 僕は君とまた会える日を、ずっと待ち続けるよ!」

「……サッカーなんか、どうでもいい!!」

「……え……?」

翼が思いがけない言葉に息をのむ。

「だって僕は……僕は君の親友、岬太郎だからだ!!」

「親友の君に、また会えれば……僕はそれだけでいいんだ!!」

言葉が、翼の凍りついた胸の奥に直接叩きつけられる。

「サッカーができるから」ではなく、「ただの大空翼」という人間そのものを全肯定し、どこまでも自分を「親友」と呼んでくれる存在。

ガタゴトと音を立てて、ホームに電車が滑り込んできた。

「見送りありがとう、岬。……さあ、行こう翼」

ロベルトに肩を抱かれ、促されるまま電車へと乗り込む翼。

プシューッと重いドアが閉まり、ゆっくりと車体が動き出す。

ガラス越しに見送る岬。その姿が遠ざかっていく中で――

翼の瞳の奥、深く沈んでいた暗闇の底に。

本人すら気づかないほど小さな、小さな**「炎」**が、かすかに宿った。

大空翼と、岬太郎。

二人の天才少年が、次に再会を果たす時――それは一体、どんな未来になっているのだろうか。

それを知る者は、まだ誰もいない。

 

 




原作とは逆の岬が南葛から去る翼を見送る形となりました。2人の再会はどんな形で訪れるのだろうか!
次話で小学生編は完結です。
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