キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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翼が人知れず、ブラジルに渡って数ヶ月。
他のメンバーも進路の選択が迫る!


第15話 ネクストステージ

翼がチームのみんなの前からひっそりと姿を消してから、4ヶ月の月日が流れていた。

1月上旬――冬の風物詩である全国高校サッカー選手権大会・決勝戦。

超満員の観客で熱気に包まれる国立競技場のメインスタンドには、東邦学園サッカー部関係者が用意した特別席に腰掛ける3人の少年の姿があった。

「紹介しよう。ふらのの松山君、南葛の岬君だ。おっと、3人とも顔馴染みだったかな? 4月から彼らも我が東邦学園中等部に入学する」

案内役の大沢部長の後ろから、腕を組んだ日向小次郎が悠然と歩み寄ってくる。

「松山……全小準決勝の借りを返すのは、かなり先になりそうだな」

不敵に笑う日向に、松山光はニヤリと不敵な笑みを返した。

「ふっ、お前が俺に借りを返すなんて、永遠に無理だ」

「何だと……!?」

一瞬でピリついた空気を察し、岬太郎が慌てて二人の間に割って入る。

「小次郎に松山、二人とも落ち着いてよ! ……でも、この3人が同じチームでプレイできるなんて、なんだかすごくワクワクするな。よろしくね、二人とも!」

爽やかな笑顔で手を差し出す岬。日向はチッと舌打ちをして視線を外した。

「……岬、お前に免じて今日のところは引き下がってやる。だがな、俺はこいつ(松山)を仲間と認めたわけじゃないからな」

「ふふ、大丈夫だよ岬。4月になったら、嫌でも俺の実力を認めさせてやるさ」

火花を散らす日向と松山、そしてそれを優しく取り持つ岬。

その様子を後ろで見つめていた大沢部長は、思わずニヤリと口元をほころばせていた。

(闘争心の塊である日向に、熱いリーダーシップでチームを引っ張る松山、そして二人を繋ぐ天才ゲームメーカーの岬……ふふふ、これは本当に、東邦の黄金時代がやってくるかもしれんな)

だが――大沢や日向たちの視線が届かない、少し離れたメインスタンドの一角。

日本サッカー協会の片桐宗正は、東邦関係者席に並ぶその3人の姿を注視し、トレンチコートの襟を立てながら深く息を吐き出した。

(ふらのの松山に、南葛の岬まで……。東邦学園による圧倒的な『有力選手の囲い込み』か。この手法が、今後の日本サッカー界にどんな影響をもたらすことになるのか……)

片桐の瞳には、特定の強豪校へ戦力が集中することへの懸念と、これから巻き起こるであろう過酷な戦いへの予感が宿っていた。

――同じ頃。明和町にある大手学習塾の教室。

正月休みも返上し、黙々とペンを走らせる受験生たちの中に、ひと際体格の大きな少年の姿があった。若島津健である。

東邦学園中等部・合格を目指す冬季講習の真っ最中。

黒板に向かいながら、若島津はふと窓の外、遠く東京の空を見上げた。

(……キャプテン。待っていてくれ、俺も必ず……!)

ペンを握る手にぐっと力を込める若島津。

日向小次郎、松山光、岬太郎、そして若島津健――。

後に日本サッカー界を激震させ、絶対王者として君臨する**『東邦四天王』**と呼ばれる4人が一堂に会するのは、もう少し先のことである。

高校サッカー決勝の翌日――静岡県南葛市営グラウンド。

寒風が吹き抜けるグラウンドに、旧南葛SCの面々が集められていた。

「あれ? 岬はどうしたんだ?」

来生が周囲を見回しながら首をかしげる。

「岬なら東邦学園の入学準備で東京に行ってるよ。おまけに昨日の高校サッカー決勝も、関係者の特等席で観戦だぜ? 俺なんか家でテレビ観戦だっていうのに……全くうらやましいよ! 俺だって東京の学校に行きてえよ!」

おちゃらけて愚痴をこぼす石崎に、大友小の浦辺反次が冷ややかな視線を送る。

「……まったく、お前のその能天気な考え方の方が、俺にはうらやましいよ」

その言葉に、石崎の表情が一変した。

「何だと……! 俺だって考えてるよ! 先のことくらいな!! 翼も、岬も、若林もいなくなった南葛がこれからどうなるか位、俺だって嫌というほど考えてるんだよ!!」

「石崎……お前……」

石崎の真剣な叫びに、浦辺も来生たちも絶句する。

そこに、ダッフルコートを着込んだ城山正が現れた。

「……揃っているな、お前たち」

「監督! こんなところに呼び出して、一体どうしたんですか?」

井沢が尋ねると、城山は静かにうなずいた。

「翼はブラジル、若林は西ドイツ、岬は東邦……チームの『三本柱』がそれぞれ次のステージへ旅立った。だからこそ、残されたお前たちの進路が気になってな」

石崎が真っ直ぐな目で答える。

「俺は地元の南葛中です。あそこはサッカー部も強いですし」

井沢も続ける。

「俺、来生、滝、高杉も南葛中です。修哲中に行くことも考えたんですが……キャプテン(若林)もいない今、自分たちだけでどこまでできるか試したくて、公立の南葛中を選びました」

「そうか。……浦辺、岸田、中山、西尾、お前たちはどうなんだ?」

城山に振られた浦辺は、気まずそうに目をそらした。

「俺たちは……大友中かな。小学校の校区が南葛中じゃないしな」

その言葉を聞いた瞬間、石崎は意を決したように拳を強く握りしめた。

「浦辺……お前たち、南葛中に来てくれないか!?」

「え……!?」

「翼や若林、岬がいなくなった中学サッカーを考えたら……俺たちがバラバラになるより、ひとつにまとまった方が全国に出るための近道になるんじゃないかって思ったんだ! だから……頼む! この通りだ!!」

石崎は躊躇なく極寒の地面に膝をつき、深く頭を下げた。泥くさい土下座だった。

「おい石崎! やめろよ!」

「頭を上げろ、石崎!」

驚く一同の中、浦辺は固まったまま石崎を見下ろしていたが、やがてハッと息を吐き、静かに言った。

「頭を上げろよ、石崎……。そんなこと、俺だって考えてたよ。……だけどな、校区が違う俺たちが、どうあがいたって南葛中に行くのは制度的に無理なんだよ!」

悔しそうに歯を食いしばる浦辺。

その時、二人の上から温かい声が降ってきた。

「――そうとは限らないぞ」

「え……? どういうことですか、監督!?」

城山はポケットから束になった書類を取り出し、ニヤリと笑った。

「南葛市は今年度から、南葛中学校を『サッカー強化指定校』に制定した。市内全域からの越境通学を認める特例制度だ。申請の締め切りは1月末……まだ間に合う」

「じゃあ……! 浦辺たちが南葛中に来れるってことか!?」

石崎が跳び起きる。

「浦辺! 書類はどこだ!? 監督、申請書類持ってますか!?」

慌てふためく石崎の姿に、浦辺や岸田たちは顔を見合わせ、吹き出した。

「ハハッ! 全く……格好つかねえな、石崎!」

浦辺は胸を張り、力強く笑った。

「よし……乗ったぜ! 俺たち大友のメンバーも、南葛中で暴れてやる!」

こうして4月――旧南葛SCの主要メンバーは、全員揃って南葛中学校サッカー部へと進学することが決まった。

ある者は海外へ、ある者は他県の強豪へ、そしてある者は地元でひとつに集結して。

それぞれの胸に抱く決断には、数知れないドラマがあった。

しかし、彼らの目指すゴールはただひとつ――「日本一」という目標のために!

彼らの「ネクストステージ」が、今まさに始まろうとしていた!

【エピローグ】

地球の裏側――ブラジル・アマゾン奥地

渡航から4ヶ月。

ロベルト・本郷に伴われ、大空翼はどこまでも広がる緑の密林の中にいた。

心療内科の治療とブラジルの温暖な気候により、翼はようやく外を歩き回れるまでに回復していた。

今日の目的は、ロベルトが耳にした「アマゾンの奥地に、とんでもない才能を秘めた少年がいる」という噂を確かめることだった。

青々と茂る木々の中を歩いていた翼は、不意に全身の皮膚が粟立つような、不思議な「気配」を感じて立ち止まった。

「へえ……君が、カリオ兄ちゃんの言っていた『壊れた太陽』かい?」

木々の上から、すんっと軽やかに舞い降りてきたのは、翼よりも少し年下の、素足の少年だった。

少年は眩しい笑顔を浮かべ、翼を覗き込む。

「でもね、カリオ兄ちゃんはこうも言っていたよ。

――壊れた太陽は、別の太陽に飲み込まれて、新しく再生するんだってね!」

翼は息をのんだ。

「き……君は……?」

褐色の髪を風になびかせ、少年は親指を立てて胸を張る。

「僕はナトゥレーザ! そういうお兄ちゃんは?」

「壊れた太陽」と呼ばれ、ずっと凍りついていた翼の瞳の奥。

その底に、明確で力強い「光」が、灯火のように取り戻されていく。

「つ……翼……。大空、翼だ!」

大空翼と、ナトゥレーザ。

後にサッカー界の歴史を塗り替えることとなる「生涯のライバル」二人の、これが運命の出会いであった。

【第一章 完】

 




いかがでしたでしょうか。キャプテン翼ifの物語。原作を読んで物語の分岐点となるのは全小準決勝だったのではないかと思って始めた物語でした。あと、原作では翼は南葛中に入り全国三連覇を達成しますが、3年時はともかく、弱小チームが超天才が1人加わっただけで1年生でいきなり全国優勝は流石に無理があるのかなと思いました。中1と中3のフィジカル差も入学して数ヶ月で差がないものになるのかと思ったので、元々南葛中は、地力のある学校で翼が加わったことで1年生から全国優勝できたと考えました。
小学生編は、これで終了となります。
中学生編もお楽しみください。

※中学生編は日曜日から再開予定です。
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