キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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全国小学生サッカー大会準決勝第1試合 ふらの小VS明和FC ふらの小キャプテン松山は、この試合に賭けていた。大会前の食堂で日向に受けた屈辱を晴らすため松山は明和の戦いぶりを徹底的に研究していた。編み出した答えは、日向をファウルトラブルから締め出すこと!試合は松山の狙いが的中!前半終了間際に松山に対する日向のチャージが危険なプレイととられ、一発退場。その判定に抗議した吉良までもが退席処分となる。絶対絶体絶命の明和!試合の行方は!


第2話 落胆

日向小次郎のスパイクの裏を見せた無謀なタックルは、主審により「著しく悪質な危険行為」と見なされ、一発退場。さらにその正当な判定に対し、怒りに任せて審判へ詰め寄り暴言を浴びせた監督の吉良までもが退席処分となった。

前半にしてエースと監督の双方を失うという、明和FCにとってこれ以上ない最悪の事態。

試合は、日向のファウルによって与えられた絶好のエリアからのフリーキックを、ふらののキャプテン・松山光が冷静に叩き込み、1対1の同点で前半を折り返した。

そして迎えた後半――ピッチの上にあったのは、あまりにも残酷な格差だった。

数的不利に加え、精神的支柱である日向も、ベンチで舵を取る吉良もいない。パニックに陥った明和イレブンは完全に攻守のバランスを失い、試合は完全にふらのペースで進んでいく。極寒の地で鍛え上げられたふらのの組織サッカーの前に、明和はなす術もなく散り、たちまち逆転ゴール、そして追加点を奪われていった。

誰もがふらのの勝利を確信した4点目が奪われた直後――会場の入り口から、息を切らせて駆け込んでくる一人の少年の姿があった。

怪我の治療のためチームを離れていた明和の守護神、若島津健だった。

「遅くなってすみません! 俺を出してください!」

傷の癒えた若島津は、長髪をなびかせながら即座にユニフォームを纏う。ベンチに監督がいない緊急事態の中、選手交代が認められた。

「選手交代! 背番号17番、若島津くん入ります!」

怪我から復帰し、ぶっつけ本番でFWとしてピッチに躍り出た若島津。

空手仕込みの鋭い身体能力と圧倒的な執念でふらの陣内へ襲いかかり、意地の一点を叩き返してみせる。しかし、あまりにも遅すぎた復帰。反撃もそこまでだった。

『ピーーー! ピーーー! ピーーー!』

無情な試合終了のホイッスル。

【試合結果】ふらの小4 - 2 明和FC】

優勝候補筆頭と目されていた明和FC、準決勝敗退。

誰もが予想だにしなかったこの衝撃的な結末は、待機していた南葛SC、武蔵FCの両チームに凄まじい衝撃となって駆け巡った。

「そんな……明和が……日向くんが負けた……?」

控え室で報告を聞いた大空翼は、自分の耳を疑った。

南葛SCにとって、今大会の最大の原動力は間違いなく「明和FCへのリベンジ」だった。予選リーグ初戦で泥を塗られたあの日から、翼も、石崎も、南葛の全員が「決勝の舞台で日向小次郎を倒し、日本一になる」ということだけを胸に血の滲むような戦いを勝ち抜いてきたのだ。

それが、戦うことすら叶わずに消えた。

自分たちが目指してきた標的(ゴール)を突然失った翼の心に、底知れない徒労感と「落胆」が広がっていく。膝から崩れ落ちそうになるほどの喪失感。

だが、運命は翼に立ち止まる時間すら与えなかった。

「翼くん……!」

南葛の控え室の外、影になった通路で声をかけてきたのは、武蔵FCのマネージャーであり、かつて東京で一緒にサッカーをした幼馴染・青葉弥生だった。

「弥生ちゃん……? どうしたの、こんなところで」

心ここにあらずといった様子の翼に対し、弥生は涙を溜めた瞳で、すがりつくように翼の腕を掴んだ。

「頼むよ翼くん! お願い……今日の試合、武蔵に……三杉くんに勝たせてあげて!!」

「え……? 何を言ってるんだよ、弥生ちゃん。勝たせてあげるって……」

困惑する翼に、弥生は声を出して泣きながら、自チームのキャプテン・三杉淳が抱える残酷な秘密をぶちまけた。

「キャプテンはね……重い心臓病なの! 医者からもサッカーを止められてるのに、命を削ってこの大会に出て満足なプレイができるのは、もう今日が最後かもしれないの……! だから……だからお願い、手を抜いて……キャプテンに勝ちを譲ってあげて……!!」

ドクン、と翼の心臓が大きく跳ね上がった。

心臓病――命を削る――最後のサッカー――。

あまりにも衝撃的な言葉の濁流が、翼の脳内を激しく駆け巡る。

憧れ、目標としていた天才・三杉淳。完璧に見えたあの男が、死と隣り合わせの体でピッチに立っているという現実。

「……弥生ちゃん」

翼は拳を強く握りしめ、青ざめた顔で静かに言った。

「そんなこと……できるわけないよ。僕が手を抜いたら、命がけでサッカーをやっている三杉くんに……すごく失礼じゃないか!」

「翼くん……っ!」

「……悪いけど、行ってくれ!」

翼は感情を押し殺し、弥生を振り切るようにして背を向けた。

だが、言葉とは裏腹に、翼の足はガタガタと震えていた。

明和の敗退によって「目標」を失い、ぽっかりと胸に穴が開いた精神状態。そこへ突如として叩きつけられた、対戦相手のエースが「重い心臓病」であるというあまりにも重すぎる事実。

(三杉くんが……病気……? 僕は……僕はどんな気持ちで、三杉くんと戦えばいいんだ……!?)

激しい動揺と、どうしようもない迷い。

ピッチに立つ理由すら見失いかけた翼の頭上に、不吉な暗雲が立ち込め始める。

ぽつり、と。

翼の頬に、冷たい雨粒がひとつ、こぼれ落ちた。

運命の準決勝第2試合――『南葛SC vs 武蔵FC』のキックオフが、刻一刻と迫っていた。




第1試合の試合が予想外の結果に終わり、打倒明和に燃えていた南葛イレブンの突然の目標消失。そこに翼には三杉が心臓病と告げられる。最悪の心理状態で臨む第2試合の行方は!
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