キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
初戦の三鷹台戦を7—0で圧勝した武蔵中学校の快進撃は、その後も止まらなかった。
新体制となった武蔵の『ゾーンプレス』と圧倒的な攻撃力は予選の他校を寄せ付けず、連戦連勝で都大会本戦出場(ベスト16)をかけたブロック予選準決勝へと駒を進めていた。
対戦相手は、地域でも屈指の堅守を誇る東小平中学校。しかし、試合は立ち上がりから完全に武蔵のペースで進んでいた。
バックネット裏の観客席。腕を組み、静かにピッチを見つめる日本サッカー協会の片桐宗正。その背後から、重厚な足音が近づいてきた。
「お前が手塩にかけて戦力を整備した武蔵のできが気になるか、片桐」
振り返ると、そこには私立東邦学園サッカー部のスカウト部長・大沢が立っていた。片桐は少しだけ目元を緩め、フッと息を吐いた。
「大沢さん……。確かに、日本サッカー全体のレベルアップに向けたモデルケースとして武蔵を推進したのは事実です。ですが、挫折を経験した者や新入生といった個性の強い人材を、ここまで見事なチームとして機能させたのは、すべて兵藤監督の手腕ですよ」
「兵藤か……。あいつも長年、指導者として世界中を放浪していると聞いていたが……あの時の情熱そのままに帰ってきたようだな」
「……」
「ふっ、まあいいさ。おかげで俺も、自分のスカウティングを見直す良いヒントをもらったよ」
片桐宗正は少し意外そうに眉をひそめた。
「と言いますと?」
「とぼけるな! 『留学生の受け入れ』と『他競技からの転向組』だよ!」
大沢はピッチ上で圧倒的な存在感を放つ14番のナトゥレーザと、抜群の反応速度でゴールを守る1年生GK・相川大和を顎でしゃくった。
「留学生に関しては、翼にくっついて日本にやってきた少年がたまたま規格外の実力者だっただけです。他競技からの転向も、その留学生と個人的な繋がりがあっただけで、私自身は一切関与していませんよ」
「ハハハ、そう言っておくことにしてやろう。……だがな片桐、これからはうち(東邦)もスカウトの網を全国に、そして他競技にまで広げるぞ。中学年代で化けた威勢のいい奴らは、高校で全員うちが引き取らせてもらう」
「相変わらず、貪欲ですね」
「それが俺の仕事だからな。打倒・東邦の壁が厚ければ厚いほど、選手は育つんだ」
大沢は不敵な笑みを浮かべると、背を向けた。
「じゃあな片桐、都大会の本戦で会おう。今年の東邦は……例年以上に強力だぞ」
去っていく大沢の背中を見送り、片桐宗正は再びピッチへと視線を戻した。
ちょうどその時、試合終了を告げる審判の長いホイッスルが響き渡った。
ピッ、ピッ、ピーーーッ!!
5—0。
武蔵中学校が東小平中を寄せ付けず完封勝利を収め、ブロック予選決勝進出、実質的な「都大会本戦(ベスト16)」への出場権を見事に掴み取った瞬間だった。
(都大会本戦進出か……。このまま勝ち進めば、どこかで必ずあの東邦学園と激突することになる……!)
片桐宗正の胸に、静かな高鳴りが宿る。
その後行われたブロック予選決勝でも、武蔵は東久留米第二中学校に4—0で快勝。終始相手を圧倒し続け、堂々の地区1位通過で都大会本戦へと駒を進めたのだった。
兵藤監督の戦術、翼のキャプテンシー、そしてナトゥレーザや火野ら圧倒的な個の力が完璧に噛み合った武蔵中学校。
絶対王者・東邦学園の待つ本戦という大舞台へ向け、彼らの新しき戦いが、いよいよ開幕しようとしていた。
都大会ブロック予選を突破し、本戦に駒を進めた武蔵中学。東邦と対戦するのはどのタイミングか?
※武蔵中学と対戦した学校は全て架空の学校に設定しています。もし似ている名前の学校があっても全く関係のない学校ですのでご容赦ください。