キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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武蔵中の快進撃は止まらず、ブロック予選を制して都大会本戦に進むこととなった。


第36話 都大会本戦開幕

激戦のブロック予選を圧倒的な強さで突破し、堂々の地区1位で都大会本戦(ベスト16)への進出を決めた武蔵中学校。

抽選会が終わり、本戦のトーナメント表が確定した翌日。ミーティングルームの作戦ボードの前に立つ兵藤監督から、注目の初戦の相手が発表された。

「都大会1回戦の相手が決まった。——桜田中学校だ」

その名を聞いた副主将の本間が、腕を組んで思案するように頷いた。

「桜田か……。とにかく全員がタフで、泥臭く全面に出してガンガン当たってくるタイプのチームですね」

FWの一ノ瀬も真剣な面持ちで続く。

「完全なフィジカル勝負だな。球際の攻防で後手に回らないことがカギになりそうだ」

すると、中央で身体を揺らして真田信次が豪快に笑い飛ばした。

「ガハハハ! フィジカル勝負なら、今のうちが負けるわけねぇだろ! なんたって俺たちはこの半年以上、あの鬼ババに地獄のメニューで徹底的に鍛え上げられてるんだからな!」

その瞬間、ミーティングルームの空気が凍りついた。部員たちの顔から一斉に血の気が引き、サーッと青ざめていく。真田だけがそれに気づかず、調子に乗って言葉を重ねた。

「なあ正己、お前だってそう思うだろ?」

「誰が鬼ババですって……?」

背後から低く、地獄の底から響くような声が届いた。

真田はギクシャクとした動きで首だけをゆっくりと後ろへ振り返った。そこには、拳を固く握りしめ、顔をひきつらせた浅田ユリが仁王立ちしていた。

「ひっ……! い、いや! それは! 正己が『浅田コーチってどんな人?』って質問してきたからで……な、な? 正己!?」

真田が必死の形相で弟に助けを求めるが、真田正己は冷たく目をそらした。

「俺は知らん。兄貴が自分の口で言ったんだろ」

「お前ぇぇぇっ!?」

「す、すみませんでしたぁっ! 勘弁してください浅田コーチ!!」

床に頭を擦り付けんばかりに平謝りする真田の姿に、部員たちからドッと緊張のほぐれた笑いが漏れた。浅田は呆れたように小さく溜息をつき、バインダーを叩いた。

「ったく、失礼ね! ……でも、2・3年生は半年以上みっちりフィジカルトレーニングを重ねてきたから、当たり負けは絶対にしないわ。1年生もまだ3ヶ月だけど、着実に成果が出ているわよ」

浅田のお墨付きに部員たちが力強く頷く中、キャプテンの大空翼がまっすぐな瞳でボードを見つめた。

「相手がフィジカルを前面に押し出してくるなら、俺たちは早いパス回しと判断の早さで翻弄すればいい。相手に捕まらないサッカーをやろう」

「確かに。だが、激しく当たってくる相手だからこそ、遅れたアフターチャージで怪我をもらうのだけは警戒したいな」

井川岳人の冷静な指摘に、兵藤監督が深く深く頷いた。

「井川の言う通りだ。こちらのやるべき戦術は変わらんが、ここから先は相手のレベルも格段に上がり、試合間隔もタイトになってくる。絶対に集中力を切らすなよ。……相手ももう、『翼さえ抑えれば勝てる』なんて甘い考えは持っていないはずだ」

兵藤の言葉に、部員たちの瞳に再びキリッとした勝負師の光が宿る。

翼が前に進み出ると、全員に向かって力強く言葉を投げかけた。

「よし! 都大会本戦、まずは初戦を絶対に勝とう!」

「「「オーッ!!」」」

全体練習が終わり、夕暮れ時のトレーニングルーム。

1年生たちは残って入念な筋トレをこなしていた。汗を拭い、器具を片付けて帰ろうとグラウンドへ向かった彼らの目に、薄暗くなったピッチで未だに泥だらけになってボールを追うサブメンバーたちの姿が飛び込んできた。

「桜田はもっと強く体をぶつけてくるぞ! もっと寄せるんだ!」

向井が声を張り上げ、激しく競り合う。

「よし、明日はいつもより半歩早く体を寄せてみせる!」

小島も荒い息を吐きながらボールに喰らいつく。

「俺たちサブ組だって、いつでも出られるように準備しておくんだ。戦ってるのはレギュラーだけじゃないぞ!」

ゴール前でシュートセービングを繰り返す田沢が、熱い眼差しで周囲を鼓舞していた。

その光景をじっと見つめていた川村が、ぽつりと呟いた。

「……正己。俺、武蔵に来て本当によかったよ」

真田正己も誇らしげに口元をゆるめた。

「そうだな。……よし、じゃあ俺たちもここから走って帰るか!」

「そうだな! 先輩たちに負けてられないもんな!」

相川も目を輝かせて頷いた。

「行くぞーっ!」「おおっ!」

夜の帳が下り始める武蔵野の街へ、1年トリオが元気よく駆け出していく。

控えもレギュラーも関係ない。チーム全員が同じ情熱とプライドを胸に抱き、武蔵中学校サッカー部は万全の態勢で初戦・桜田中学戦へと向かうのだった。

 




虎視眈々と出場の機会を伺いながらチームを支える向井たちとそんな先輩の姿を見て決意を新たにする1年生たち。武蔵中学は、翼たちだけでなく他の部員たちも戦っている様子を描きました。次回から都大会本戦が始まります。お付き合いいただけたら幸いです。
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