キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
7月上旬、真夏を思わせる強い日差しが照りつける城星学園グラウンド。
いよいよ全国への第一関門である『東京都大会本戦・1回戦』、武蔵中学校対桜田中学校の一戦がキックオフを迎えようとしていた。
桜田中のタフなフィジカル勝負を警戒した兵藤監督は、今日のボランチに1年の川村に代えて、3年の向井(8番)をスタメンに抜擢。本間と向井の3年生コンビで中盤の強度を固める策に出た。
「行こうぜ! 泥臭く当たって、武蔵の綺麗なサッカーを粉砕してやるんだ!」
審判のホイッスルとともに、桜田イレブンは噂に違わぬ激しいボディコンタクトで襲いかかってきた。しかし——
ドカッ! ガシッ!
「な……なにィ!?」
身体をぶつけた桜田の選手たちが、次々と跳ね返されて尻餅をつく。
半年間、浅田コーチの地獄の体幹トレーニングを耐え抜いてきた武蔵イレブンにとって、この程度のフィジカルアタックはすでに想定内だったのだ。
「甘いぜ! 武蔵のフィジカルを舐めるなよ!」
武蔵は動じるどころか相手をパワーではじき返すと、一転してワンタッチの素早いパス回しを展開。桜田中を完膚なきまでに翻弄し始めた。
前半15分。右サイドバックの広瀬(2番)が鋭いアーリークロスを供給。ゴール前に走り込んだ9番・火野竜馬が、相手DFの密着マークを強靭なフィジカルでなぎ倒しながらジャンプ!
ドガァッ!!
重厚なヘディングシュートがゴールネットを突き破る! 武蔵が先制!
勢いに乗る武蔵は、本間と向井の3年ボランチコンビが相手の反撃を完璧に封殺。ボールを奪うと、火野の圧倒的なキープ力を活かしたポストプレーから、飛び出した一ノ瀬が流し込んで2点目!
さらに前半終了間際、再びポストプレーと見せかけた火野が、反転から力任せのミドルシュートを叩き込み3点目!
3—0。武蔵が圧倒的な強さを見せつけて前半を折り返した。
バックネット裏の観客席では、中学サッカー界の絶対王者・東邦学園の主力陣が、その戦いぶりを静かに見つめていた。
「この試合、あまり翼は目立っていないな……。それなのにこの点差だ。武蔵はチームとしての完成度が格段に上がっているぞ」
松山光が腕を組み、険しい表情で呟く。隣の岬太郎も頷いた。
「そうだね。ナトゥレーザ君もまだ力をセーブしているように見えるよ。……それより今日は、9番の火野君の存在感が圧倒的だ」
松山が手元の資料に目を落とす。
「ああ。大沢さんの情報によると、奴は南米ウルグアイのモンテビデオJrチームに所属していたストライカーらしい」
その言葉を聞き、腕を組んでいたGK若島津健の鋭い瞳が光った。
(火野竜馬……あの重厚なシュートと身体の強さ、ストライカーとして本物だ。日向さんと比べても決して見劣りせん……!)
その横で、エースの日向小次郎が不敵な笑みを浮かべた。
「火野竜馬か……おもしれぇ」
東邦四天王の警戒をよそに、後半も武蔵ペースで試合が進む。
後半20分、ナトゥレーザのピンポイントのスルーパスに抜け出した火野が、今度は左足を一閃! 強烈なシュートがネットに刺さり、火野は見事にハットトリックを達成した!
勝負が決したと見た兵藤監督は、すぐさま翼とナトゥレーザを下げる余裕を見せ、そのまま試合終了。
4—0。
武蔵中学校が桜田中を完封し、圧倒的な強さでベスト8(準々決勝)進出を決めた。
武蔵の圧勝を見届けた東邦イレブン。松山が静かに立ち上がり、グラウンドを見下ろした。
「……やはり、俺たちの前に立ちはだかるか、翼」
松山は振り返り、日向、若島津、岬、そしてチームメイトたちを見渡した。
「いいだろう、俺たちの『絶対王者』たる力を見せてやる。行くぞ、みんな!」
「「「オーッ!!」」」
武蔵の勝利という強烈な『火花』を受け、王座を守る東邦学園中等部の第1回戦が、今まさに始まろうとしていた。
翼が目立たなくてもチーム力があがった武蔵中学、これを受けて絶対王者東邦学園の戦いぶりはどうなるのか?