キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
都大会準決勝進出を決めた翌日。武蔵中学校サッカー部は激戦の疲労を考慮し、この日を完全な休息日兼、次戦・城星学園のミーティングに当てていた。
ミーティングルームのスクリーンに、城星学園の試合映像が映し出される。マネージャーの青葉弥生が前に立ち、手元の資料をめくりながら報告を始めた。
「城星学園は、とにかく細かいショートパスを連続して繋いでくるポゼッション型のチームです。その中心となるのが、10番の古川洸太郎選手と、11番の風見信之介選手。この二人による狭い局面でのテクニックとコンビプレーは圧倒的で、城星の攻撃の起点はすべて彼らから始まっています」
画面の中では、古川と風見が吸い付くようなトラップとクイックパスで、相手のディフェンス陣を翻弄していた。
「なるほど……確かにこの二人のパスワークと距離感は見事だな」
翼が感心したように頷くと、本間も身を乗り出す。
「2年前の翼君と、東邦の岬君のコンビを彷彿とさせるな……」
「それだけじゃないぞ。二人以外の選手も、1対1のテクニックが相当高い」
一ノ瀬が画面を注視しながら分析を加えた。
すると真田が自信ありげに胸を叩く。
「だが問題ないだろ。俺たちが普段やっているあの『ゾーンプレス戦術』で前線から追い詰めれば、パスコースなんて消せるはずだ」
部員たちが頷きかけたその時、後方で腕を組んでいた兵藤監督が静かに口を開いた。
「——そうとは限らんぞ」
部員たちの視線が一斉に兵藤へと集まる。兵藤はゆっくりと前に歩み出ると、翼に向き直った。
「翼、試合中にお前を複数人の敵が囲んでプレッシャーをかけてきたら、どうする?」
「え……? 自分を多人数で囲もうとしてくるってことは、ピッチのどこかに必ずフリーのスペースが生まれるってことです。僕なら、そこに迷わずサイドチェンジやパスを送ります」
「そうだな。ナトゥレーザ、お前ならどうする?」
「俺か? 俺なら全員抜き去るだけだ!」
ナトゥレーザがニコリと笑う。兵藤は苦笑しつつ、次に本間へ振った。
「本間、お前ならどうだ?」
「俺には翼君やナトゥレーザのような圧倒的な『個の力』はありません。だから、囲まれる前に素早いショートパスを繋いで、相手の焦点を絞らせないように外します」
本間のその言葉に、翼がハッと目を見開いた。
「……そうか! つまり城星のように『個々の技術が高く、素早いパスワークで回避できるチーム』に対して、前線から無謀に突っ込むゾーンプレスは、一番最悪の相性になるってことか!」
「そういうことだ」
兵藤は深く頷いた。
「前線から闇雲にプレスをかければ、古川と風見のワンツーやダイレクトパスで簡単に裏を取られ、広大なスペースを使われる。……だから今回は、前線からのハイプレスは封印する。自陣でしっかりブロックを組み、誘い込んで潰す**『スイーパーシステム』**を採用する」
兵藤はホワイトボードにマグネットを配置していく。
「本間、真田。お前たち二人で前線のパスコースを限定し、中央に侵入してきたところを徹底的に潰すんだ。こぼれ球はスイーパーの井川がすべて拾う。ラインコントロールとDFラインの押し引きは、井川、お前の役割だ」
「任せてください、監督」
井川が力強く頷き、真田もニッと笑う。
「任せとけって! 俺と本間で城星の攻撃を全部跳ね返してやるぜ!」
「相川との声の連携も忘れるなよ。……そして攻撃陣は、一瞬の隙を見逃さずに確実に点を奪い、守備陣を楽にさせてやれ」
「はい!」
翼が立ち上がり、部員たちを見渡して声を張り上げた。
「よし、役割も決まった! これに勝てば『関東大会進出』が決定する! 絶対勝つぞ!」
「「「おう!!!!」」」
時を同じくして、城星学園の部室。
モニターに映し出されているのは、圧倒的な火力で相手を粉砕する武蔵中の試合映像だった。
「攻撃陣は南葛から入った大空翼に、ブラジルからの留学生ナトゥレーザ、そしてFWの火野か……強烈すぎるな」
10番を背負う古川洸太郎が息をのむ。しかし、隣に立つ11番の風見信之介の瞳には不敵な光が宿っていた。
「だが、俺たちがあいつらにボールが渡る前に中盤で奪っちまえば関係ない。武蔵が得意としているゾーンプレス……あんなもの、俺たちのパスワークで完璧に破ってみせるさ」
「ああ。武蔵のハイプレスをいなして裏を突く。勝って、俺たちが関東大会に行くぞ!」
「「「おう!!」」」
相手の強みを消し、己の戦術を研ぎ澄ます両校。
関東大会への切符をかけた運命の決戦まで、あとわずか——。
翼が舞台を静岡から東京に移したことで実現する原作で登場した古川洸太郎と風見信之介のフットサルコンビとの対戦!どういう試合展開となるのか!