キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

46 / 56
武蔵VS城星学園の一戦は、古川&風見の鮮やかなコンビプレイにより城星が先制した!追いかける武蔵に打つ手はあるのか!?


第43話  武蔵の亡霊

都大会準決勝 武蔵中学VS城星学園の一戦は、試合序盤は互角の展開であったが、城星学園の古川と風見を中心としたショートパスを中心とした攻撃に武蔵中学は翻弄され始める。そして前半25分、怒涛のパスワークで武蔵のブロックを打ち破り、城星学園が待望の先制点を奪い取った!

先制した城星はさらに波に乗り、ボールポゼッションで武蔵を圧倒。ボールを持たせてもらえない翼たちの焦燥感が、じわじわとピッチ全体を包み込んでいく。

ベンチの弥生は、心配そうに翼の後ろ姿を見つめていた。

(翼君……)

弥生は胸の前で「三杉ノート」をギューッと強く握りしめた。意を決してノートを開き、ページをめくっていく。数ページ進んだところで、弥生の手がピタリと止まった。

「これは……!」

ピッチ上では前半終了間際、城星の鋭いスルーパスに対し、またしてもGK相川大和がポジショニングの判断を誤って前へ飛び出してしまう。城星の追加点かと思われた瞬間、スイーパーの井川岳人が間一髪で滑り込み、難を逃れた。

ここで前半終了のホイッスル。

城星学園が1—0とリードし、ゲームを完全に支配したままハーフタイムを迎えた。

スタンドで観戦していた東邦学園の松山が、腕を組んで眉をひそめた。

「前線からのゾーンプレスを捨てて、スイーパーシステムに変更したのが裏目に出たのか……」

だが、北詰監督は静かに首を横に振った。

「いや、違う。ゾーンプレスは嵌まれば強力だが、1人目がかわされるとあとは脆い。逆に城星のようなチームには広大なスペースを利用されてしまう。だから自陣にブロックを作って守備を固める戦術自体は間違っていない」

「なるほど……あくまで城星の持ち味が見事に出た結果ということか」

松山が納得すると、隣の岬が画面の相川に視線の先を向けた。

「それにゴールキーパーの相川君もまだ1年生で、本格的なサッカー歴は短いからね。ポジショニングの甘さを城星につつかれた形だ。……それにしても、城星のパスワークはかつて三杉君がいた頃の武蔵にすごく似ているね」

「ああ、城星は地力のある良いチームだ。全国大会に出ても上位に残るだろうな」

北詰監督がそう評価した直後、エースの日向小次郎が不敵に鼻で笑った。

「だが……これで終わるような大空翼じゃねぇぞ」

その言葉に、翼の凄まじさを知る東邦イレブン全員が力強く頷いた。

一方、1点リードされて戻ってきた武蔵のベンチには、重苦しい空気が漂っていた。

相川が悔しそうに頭を下げ、肩を震わせる。

「すみません……俺のせいです。俺がしっかりポジショニングできていれば……!」

すると、ナトゥレーザが相川の肩をぽんと叩いて無邪気に笑い飛ばした。

「何言ってるんだよ大和! お前の良さはポジショニングとかじゃないだろ! ポジショニングが悪くても、そんなの関係なくシュートを防げるのが大和だろ!」

ベンチの田沢も立ち上がり、力強い声をかける。

「そうだ! 相川の持ち味は信じられないほどの身体能力から来るセービングだ! ポジショニングに関しては俺がピッチの外から声をかける。それができればお前は大丈夫だ!」

「田沢先輩……!」

スイーパーの井川も優しく微笑んだ。

「ピッチ内でのカバーなら俺に任せろ、相川」

周囲の温かいサポートに相川の瞳に再び光が戻る。しかし、本間が腕を組んで思案した。

「あとは……あの城星の完璧なパスワークをどう崩すかだな」

その時、弥生がノートを抱えて皆の中央へ駆け寄ってきた。

「みんな、これを見て!」

弥生が開いて見せた「三杉ノート」には、三杉淳が書き遺した武蔵中学校サッカー部の真の理念が刻まれていた。

『みんなでパスを繋ぎ、ボールも人も動かしてゴールを奪う。それが武蔵のサッカーだ』

それを見た真田信次が息をのむ。

「三杉キャプテン……」

一ノ瀬もハッと目を見開いた。

「どうりでやりにくさを感じていたわけだ……。目の前で戦っていた城星のサッカーは、俺たち自身(かつての武蔵)だったんだ」

自分たちの原点を思い出した武蔵イレブンの顔から、焦りが消え去っていく。本間が翼の肩を叩いた。

「翼君、後半は自陣まで戻ってこなくていい。攻撃に集中してくれ。チャンスは俺たちが必ず作る!」

「わかったよ、本間君。三杉君の……いや、君たちのサッカーを信じるよ!」

兵藤監督が満足そうに頷き、ボードを叩いた。

「よし! それじゃあ後半は打ち合いだ! 向井、川村と交代だ。……お前たちの『武蔵のサッカー』を見せてこい!」

「はいっ!」

FWの火野竜馬が力強く拳を突き出し、歯を見せて笑う。

「打ち合いなら任せろ! 後方はしっかり頼んだぜ!」

「よし、後半必ず逆転するぞ! 俺たち武蔵のサッカーを見せてやるんだ!」

「「「オーッ!!!!」」」

己の中に眠っていた「亡霊」を払いのけ、真の姿を取り戻した武蔵中学校。

関東大会への切符をかけた運命の後半戦が、いま始まろうとしていた。

 




始めて先制され追いかける展開となった武蔵中学イレブンに届いた三杉からの“武蔵サッカーの原点”、イレブンは何を感じどう打開する!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。