キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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都大会決勝を前に死角はないと思われた“絶対王者”東邦に致命的な弱点を発見した武蔵中学サッカー部!そこから東邦学園を攻略できるのか!?


第46話 試合前

7月最終週の週末。強い日差しが照りつける西が丘サッカー競技場は、朝から超満員の熱気に包まれていた。

この日は、関東大会への出場権を懸けた東京都大会の3位決定戦と、頂点を決める決勝戦の2試合が行われる。

今年の関東大会は東京開催のため、開催地枠を含めた上位3校が出場権を得ることができる。すでに決勝進出を決めた武蔵中学と東邦学園が2つの枠を手中にしており、残り『1』の切符を巡って、3位決定戦で城星学園と習実中学が激突した。

準決勝で武蔵をあと一歩まで追い詰めた城星学園は、この日も伝統の華麗なパスワークを遺憾なく発揮。司令塔の古川とエース風見がそれぞれ鮮やかなゴールを奪うと、習実の反撃を1点に抑え込み、2—1で勝利。見事に最後の1枠である関東大会進出を決めてみせた。

そして——いよいよ運命の決勝戦の時間が近づく。

「東京王者」を決める一戦とあって、保護者や学校関係者だけでなく、噂を聞きつけた多くのサッカーファンやメディアが詰めかけ、スタジアムの熱気は最高潮に達していた。

「なあ、どっちが勝つと思う?」

観客席のあちこちで議論が交わされている。

「そりゃ、やっぱり東邦だろ! 全国2連覇は伊達じゃないぜ」

「東邦四天王が3年になった今年が、歴代最強チームって呼び声も高いからな」

「いや待てよ、武蔵も相当だぞ。三杉淳の悲劇があってここ数年は低迷していたが、大空翼が加入してあっという間にこの決勝まで駆け上がってきた」

「大空翼って、あの小学生の時に全国大会で騒がれたやつだろ? でもあいつ、確か静岡の南葛にいたんじゃないのか? なんで武蔵にいるんだ?」

「さあな、親の転勤とかじゃないのか? 何にせよ今年の武蔵は一味違うぜ」

「確かに。だが武蔵は翼だけじゃないぞ。ブラジルからの留学生のナトゥレーザってやつも規格外だ。一昨日の準決勝見たか? まさに『三杉淳の再来』かと思ったぜ。それにストライカーの火野竜馬、あいつのパワーもヤバい。個人のタレントだけなら東邦四天王に引けを取らん」

そんなギャラリーの喧騒の中に、腕を組んで佇む一人の男の姿があった。東邦の元監督・吉良耕三である。日向小次郎の成長と動きを確かめるべく、静かに見守っていた。

そして、関係者席からは日本サッカー協会の片桐宗正が、吉良の怪しい動きを鋭い視線で見逃さずに捉えていた。

一方、武蔵中学の保護者応援席の一角では、翼の母・奈津子、そしてロベルト・本郷とカリオが並んでピッチを見つめていた。

「奈津子さん……やっぱり翼はすごいやつですよ。チームに加わって短期間でここまでの集団を作り上げ、都大会の決勝までやってきた。並の選手じゃ絶対にできないことです」

ロベルトが感慨深そうに呟くと、奈津子はおだやかに微笑んだ。

「そうね……でも、翼ひとりだけの力じゃないわ。ナトゥレーザ君が、いつも翼の隣に寄り添ってくれたからよ。ありがとう、カリオさん」

感謝を伝える奈津子に、カリオは温かく首を振った。

「お母さん、こちらこそありがとうございます。翼と出会わなければ、ナトゥレーザは今だにアマゾンの奥地から出ることなく、外の世界を知ることはなかったでしょう。ナトゥレーザが世界を知るきっかけになったのは、翼という『太陽』のおかげですよ」

その時——

「「「うおおおおおおっ!!!!」」」

スタジアムを割れんばかりの大声援が包み込んだ。

大きな拍手と歓声の中、ついに両チームの選手たちがウォーミングアップのためにピッチへ姿を現したのだ。

「来たぞ! 王者・東邦学園だ!」

「大空翼が武蔵を率いて、ついに表舞台へ帰ってきたぞ!」

決戦の興奮が渦巻く中、念入りなアップが終わり、両チームは運命のキックオフ直前、最後のロッカールームミーティングを迎えていた。

【東邦学園ロッカールーム】

監督の北詰誠が、鋭い眼光で選手たちを見渡す。

「……敵は強力だ。だが、勝つのは我々東邦だ!」

「「はいっ!!」」

日向、松山、岬、若島津をはじめとする東邦ナインの返事が、室内に重々しく響き渡った。

【武蔵中学ロッカールーム】

兵藤剛監督は、穏やかだが揺るぎない自信をたたえた目で全員を見つめた。

「お前たちなら、東邦に勝てる。……思いきり楽しんでこい!」

「「はいっ!!」」

翼を中心に、弾けるような笑顔と熱気で武蔵イレブンが応えた。

両チームがピッチ中央へ入場し、試合前の整列を行う。

並んだ両雄の間で、視線が激しく交錯した。日向小次郎が、隣の列に立つ火野竜馬を睨みつける。

「火野……お前に『ナンバーワン・ストライカー』が誰か、今日たっぷりと教えてやる」

火野はフッと不敵な笑みを浮かべ、肩をすくめた。

「フッ……弱い犬ほどよく吠えるぜ。勝負の結末なんて、目に見えてるのにな」

「なにぃ!?」

日向の青筋が浮かび上がった瞬間、隣の岬太郎がそっと肩を叩いた。

「よせ、小次郎。試合の中でわからせたらいい」

「……チッ」

日向は吐き捨てるように視線を外した。

そして、主審の元で両チームの主将によるコイントスが行われる。

東邦のキャプテンマークを巻いた松山光が、翼をまっすぐに見つめた。

「翼……やはりここまで来たな。だが、今日勝つのは俺たち東邦だ」

翼は少しの迷いもなく、澄み切った瞳で答えた。

「違うよ、松山君。今日で東邦の無敗記録は終わる。俺たち武蔵が、それを証明する!」

コインが青空へ高く舞い上がり、落ちる。

東京都大会決勝戦——【武蔵中学 VS 東邦学園】。

宿命の決戦の火蓋が、ついに落とされようとしていた!

 




三杉の意志を受け継ぎ、“絶対王者”東邦学園の前に立った翼、今、東京ナンバー1をかけて熱い戦いが始まろうとしています。

※次回は12時頃更新予定です。お付き合いいただけるとうれしいです。
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