キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
東京都都大会決勝戦、後半12分。
東邦学園のエースストライカー・日向小次郎が一発退場となり、残り時間を1人少ない10人で戦うことになった絶対王者・東邦。1点ビハインドで絶体絶命の危機に瀕する中、ベンチの北詰誠監督から主将の松山光へ素早い指示が飛んだ。
松山は即座にメンバーを集め、力強い眼光で陣形を伝える。
「ディフェンスは変わらず4バックだ! その前にアンカーとして俺が入る。1トップには新田、お前のスピードにかけるぞ!」
「はいっ!」
松山は続けて、中盤の核である岬太郎に向き直った。
「新田のスピードを生かすも殺すも岬、お前にかかっている。お前がアシストに徹していたらダメだ! お前には俺や翼に負けない得点力があるんだぞ。それを見せろ、岬!」
その言葉に、岬の瞳に静かで力強い決意の炎が宿る。
「……松山」
「いいかみんな、まだ時間は十分にある! 絶対に諦めるな!」
「「「おうっ!!!!」」」
一方、武蔵中学も負傷退場した一ノ瀬明に代わり向井広を投入。大空翼の指示のもと、柔軟に布陣を再構築していた。
「ディフェンスは変わらずだ。向井は本間君とボランチの位置に入ってくれ! 大介は俺の位置に、そして俺は竜馬の下に入る!」
「了解!」
翼は全員を見渡し、気を引き締め直す。
「みんな、数では俺たちが有利になったが、守りを完全に固めた東邦からゴールを奪うのは難しいぞ。一発で決めようとせず、焦らず連携して敵を徹底的に崩すんだ」
ナトゥレーザがニコリと笑う。「任せろ、翼!」
「行くぞ、みんな!」
「「「おうっ!!!!」」」
武蔵ボールで試合が再開される。
1人多い武蔵は、おもしろいように流れるようなパスワークでピッチを広く使い、東邦を揺さぶる。ペナルティエリア手前でボールを受けた火野竜馬が強烈なミドルシュートを放つが、東邦の守護神・若島津健が鋭い反応でガッチリとキャッチ。
若島津はすかさず前線へフィードするが、数的不利の東邦はセカンドボールを拾えず、再び武蔵の高速パスワークに翻弄された。川村からの鋭いクロスにナトゥレーザが飛び込むが、松山が必死のカバーで難を逃れる。
試合の主導権は完全に武蔵が握ったまま、時間が刻一刻と経過していく。
ナトゥレーザがサイドから敵陣を切り裂き、火野のポストプレーから、攻撃に参加したDF井川岳人が豪快なオーバーラップからミドルシュートを放つ! だが、ここも若島津が驚異的な身体能力で抑え込んだ。
その瞬間——ボールを抱えた若島津の視線の先で、松山が鋭く叫んだ。
「若島津、来いっ!!」
松山は、オーバーラップした井川がまだ自陣へ戻り切っていない一瞬の隙を見逃さなかった。若島津は素早いアンダースローで松山へボールを供給。
ボールを受けた松山が猛然と怒濤のロングドリブルを開始する! 武蔵のボランチを一気に抜き去ると、前線へスルーパスを供給!
「頼んだぞ、岬っ!」
ボールを引き取った岬太郎が、一気に武蔵陣内へと侵入する。チェックに入った武蔵のDF真田正己を鮮やかなクライフターンで置き去りにすると、カバーに入った兄の真田信次をも華麗なフェイントで完全に無力化!
さらに、飛び出してきた武蔵GK相川の動きを完璧に見極め、絶妙なステップでかわしてみせる!
無人のゴールへ、岬の足から静かに放たれたボールが転がり込んだ。
グサッ……!
後半25分——東邦学園、1人少ない絶望的な状況から岬太郎の奇跡的な一撃で同点!!【武蔵 2 — 2 東邦】
静まり返っていた西が丘スタジアムが、爆発的な大歓声に包まれた!
「見たか今のプレイ!? 一昨日の準決勝でナトゥレーザが見せた『キーパーまでかわす連続フェイント』と全く同じだぞ!」
「『俺にもできます』ってか!? 寸分違わず完璧に再現してみせるなんて、恐ろしいテクニックだぜ……!」
歓喜の輪の中心へ駆け寄る東邦イレブン。松山が岬の肩を力強く叩く。
「さっきシュートを打たなかった時は『この野郎』と思ったが……今のプレイの方が向こうには断然効くな! よし、これで振り出しだ。しっかり守って逆転するぞ!」
「「「おうっ!!!!」」」
武蔵ベンチでは、浅田ユリが息を呑んでいた。
「選手交代で流れを変えないと……!」
しかし、兵藤剛監督は静かに首を振ると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「いや……どうやらさっきの岬のプレーが、うちの『サッカー小僧』のハートに完全にお火をつけたみたいだぜ」
兵藤の視線の先には、悔しさに沈む武蔵ナインの中で、ただ一人瞳をギラギラと輝かせる大空翼の姿があった。
意気消沈しかけた仲間の元へ、翼が歩み寄る。
「さすがは王者・東邦だね。簡単には勝たせてくれないや。……でも、みんな思い出してよ! 俺たちはこの日のために、どれだけ苦しい練習を重ねてきたか! まだまだ体は動くはずだ。俺たちの『武蔵のサッカー』を徹底すれば、絶対に勝てる!」
副主将の本間実が顔を上げる。「……そうだ。ここからだ! ここからが俺たち武蔵のサッカーの時間だぞ!」
真田信次も拳を握りしめる。「まだまだ、体は動くぜ!」
翼が最高の笑顔を弾けさせた。「よし……行くぞ、みんな!」
「「「おうっ!!!!」」」
武蔵ボールで試合再開。
ギアを最高速まで上げた武蔵イレブンは、相手に全く的を絞らせない極限の高速パスワークで東邦陣内を翻弄する。
ペナルティエリア付近でナトゥレーザにボールが渡る。すかさず岬が立ちはだかった。
「させないよ、ナトゥレーザ!」
だが、ナトゥレーザは構わずドリブルを仕掛ける。必死に追走する岬。しかし——ナトゥレーザの足元にボールはない! 後方から猛然と駆け上がってきた真田正己がキープし、中央の翼へ完璧なラストパス!
翼がドリブルで突進する。新田が驚異的なスピードで追走するが、翼は鮮やかなヒールリフトでその頭上を抜き去る! 落ちてくるボールの落下点へ、主将の松山が魂のタックルで詰める!
だが翼は、空中から落ちてくるボールをさらに『ダブルヒール』で浮かせ、松山の頭上をも軽々と置き去りにした!
(なっ……!?)
抜かれれば即失点……! 絶体絶命の松山は思わず手を伸ばし、翼のユニフォームを力任せに掴んで倒し込んだ!
ピッーーーッ!!
主審の笛が激しく響き、松山へイエローカードが提示される。イエロー覚悟で失点を防いだ松山の執念のプレーだった。
後半28分——武蔵中学、ペナルティエリア直前での絶好のフリーキックを獲得!
ボールの前には、前半戦と同じく翼、ナトゥレーザ、そして左足のスペシャリスト・川村の3人が並び立つ。
翼がナトゥレーザに静かに囁いた。
「ナトゥレーザ、これでこの試合を決めるよ。相手は初見……完全に無警戒だ」
ナトゥレーザがニッと笑う。「わかったよ翼! この試合は翼が決めてよ!」
松山を中心に、東邦が必死の壁を構築する。今度は川村の左足も強く警戒していた。
主審の笛。ナトゥレーザが大きな助走からフェイク!
そして中央から、大空翼が右足を豪快にしならせてボールを振り抜いた!
ドグォッ……!!
放たれたボールは、壁を越えてはるかゴールバーの上へと大きく外れる軌道を描いた。東邦の守護神・若島津は、その弾道を見て一瞬安堵の息を漏らす。
(外れた……!?)
ところが——次の瞬間、球体に巻きつく凄まじい回転力が摩擦を生み、ボールは物理法則を無視するかのように空間で鋭く急降下を始めた!
「なっ……何ぃっ!?」
あまりの急降下に、若島津は慌てて跳び上がり手を伸ばすも、ボールは彼の指先をあざ笑うかのようにすり抜け、ゴールネットの天井を激しく突きさした!
衝撃の軌道を描いた急降下ショット——ドライブシュート!!
ついに解禁された大空翼の必殺の放物線が、東邦のゴールを完全に打ち砕いた!
後半28分——武蔵中学、大空翼の凄絶な新必殺シュートで勝ち越し!!【武蔵 3 — 2 東邦】
「「「やったあああああああぁぁぁっ!!!!」」」
歓喜に沸き返る武蔵ナイン。しかし翼は喜びもそこそこに、「みんな、すぐ戻るぞ! 最後まで守り切るんだ!」と指示を出し、全員で自陣へと素早く戻る。
東邦も松山を中心に、一人少ないハンデを跳ね返すべく怒濤の執念で武蔵ゴールへ襲いかかった。しかし、勝ち越しで完全に集中力を研ぎ澄ませた武蔵の鉄壁の守備陣を最後まで崩すことはできなかった。
そして——
ピッ、ピッ、ピーーーッ!!!!
西が丘サッカー競技場の空に、試合終了を告げる長笛が響き渡った!
絶対王者・東邦学園の公式戦連勝記録が、ついにここで潰えた。
その偉業を成し遂げたのは——緻密なる戦略と熱き絆、そして大空翼率いる武蔵中学!
「「「勝ったあああああぁぁぁっ!!!!」」」
夏の青空の下、歓喜の叫びと嬉し涙が西が丘のピッチにどこまでもこだましていた。
東京都都大会決勝戦——優勝、武蔵中学!!
遂に翼のドライブシュートが決まり熱戦に終止符が打たれました。
翼のドライブシュートの設定ですが、原作ではこの時期はまだ未完成です。しかしこの世界線での翼は経緯はともかく、小6から一貫してロベルトの指導を受けています。原作ではロベルトが残したノートから試行錯誤の末完成させたドライブシュートですが、ここではロベルトから実演も受けての直接指導を受けられる可能性が高いのでこの時期にはドライブシュートは打てる設定にしました!そして公式戦初披露なので若島津でも対応できない設定にしました!
※本日も2話投稿です。次は18時頃投稿予定です。お付き合いいただけるとうれしいです。