キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東中学校サッカー大会2日目。
西が丘サッカー場には、昨日を遥かに凌ぐ熱気と緊張感が満ちていた。
今日行われる準々決勝の4試合は、勝てばその時点で無条件に全国大会(全中)への出場権を獲得できる運命の大一番。スタンドを埋め尽くした保護者や校友たちの応援にも、自ずと熱がこもる。
第1試合、武蔵中学校vs江ノ島中学校。
ウォーミングアップを終えた武蔵中ベンチでは、兵藤監督とロベルト本郷を中心に昨夜のミーティング内容の最終確認が行われていた。
一方、江ノ島中のベンチでは、主将の江口大翔が声を張り上げた。
江口大翔
「全員、集合!」
ベンチ前に集まった選手たちを前に、顧問の瀧本が静かだが熱の籠もった声で語りかける。
瀧本
「マークする相手は、昨日話した通りだ。一瞬たりとも自分のマークを怠るなよ」
江口大翔
「大丈夫だな、みんな」
山村颯
「楽勝でしょ。なあ、マー坊」
加藤雅人
「おう、俺たちに敵うやつなんかいねえよ」
軽口を叩き合う1年ツートップに対し、守護神の赤城が鋭い眼光を向けた。
赤城純
「お前たち、相手を侮るなといつも言っているだろうが」
瀧本
「純、まあいいじゃないか。颯と雅人の、相手が誰だろうと物怖じしないところは2人の良い部分だ。それをカバーするのが先輩の務めだろう? お前だって、1年の頃は失点のたびに号泣して龍也にフォローしてもらっていたじゃないか」
瀧本の思いがけない暴露に、ピンと張り詰めていた江ノ島ベンチの空気が一瞬で和らいだ。山村がニヤリと口元を緩める。
山村颯
「へー、赤城さんにそんな過去があったんすか」
赤城純
「せ、先生! 昔の話じゃないですか……!」
顔を真っ赤にする赤城を見て、江口が感慨深そうに笑う。
江口大翔
「そうだったな……。でも俺だって、江ノ中で先生に出会ってなきゃ、今頃毎日喧嘩に明け暮れてたかもしれん。お前たちとこうしてサッカーするのが、楽しくてたまんないんだよ」
石川亘
「何言ってるんすか、大翔さん。まだまだこのメンバーでサッカーを続けますよ」
藤原彰
「今日勝って、全国行きを決めましょう」
瀧本
「そうだぞ。去年の龍也たちのチームも強かったが、今年のチームはそれ以上だと思っている。悔いを残さないよう、精一杯楽しんでこい!」
そこへ、1年生マネージャーであり江口の妹でもある翔子が腕を組んで割り込んできた。
江口翔子
「そうだぜ! うちの兄貴より気合入った奴なんか、東京の代表にいるわけないんだからさ! ビシッと決めてこい!」
江口大翔
「ったく、翔子……お前の言葉遣い、もう少し女の子らしくできねえのかよ。……よし! 翔子の言う通り、ビシッとこの試合決めるぞ!」
一同
「おう!!」
主審の長笛が西が丘の空に響き渡り、武蔵中ボールでキックオフ。
試合開始直後から、武蔵は兵藤監督の指示通り、ボールを保持しすぎない展開を選択する。ワンタッチ、ツータッチの素早いパスワークでテンポよくボールを動かし、江ノ島の激しいマンマークに標的を絞らせない。
ボランチの本間がスムーズに右サイドの開いたスペースへ抜け出し、得意のドリブルで推進力を生み出す。すかさず江ノ島のディフェンスが寄せてきた瞬間、本間は淀みない動作で中央の大空翼へバックパス。
ボールを受けた翼は、一切の躊躇なく右足を振り抜いた。
ドカッ!
ドライブシュート——。
美しい軌道を描いて舞い上がったボールは、急激なトップスピンを帯びて江ノ島ゴールの枠内へ吸い込まれるように急降下を開始する。
だが、江ノ島の大型GK赤城純は動じなかった。
シュートが放たれた瞬間にゴールラインギリギリまで深く下がると、落ちてくるボールの軌道とタイミングを完全に予測。トップスピンがかかって手元で急変する直前、185cmの長躯を伸ばして上空で待ち構えた。
バシィッ!!
高所からボールを力強く叩き落とす、バレーボールのスパイクのようなブロック。
相川
「あれは……バレーのスパイクだ!」
武蔵のベンチで1年生GKの相川が息を呑む。
落下したボールを自ら抑え込んだ赤城は、西が丘のスタジアムに響き渡る声で吠えた。
赤城純
「どんなシュートだろうと、俺が止める!!」
すぐさま赤城が投げ渡したボールから、江ノ島が電光石火のカウンターを繰り出す。短いパスを素早くつなぎ、ボランチの位置に上がっていたキャプテン江口へ。
江口は前線へダイナミックなロングフィードを供給。ターゲットは1年ツートップの山村と加藤だ。
左サイドでボールを受けた山村が、突っ込んできた武蔵の左SB真田正己を軽やかなステップで簡単にかわし、ノーマークの中央スペースへ鋭い横パスを出す。
山村颯
「行け、マー坊!」
いつの間にか走り込んでいた加藤が、ダイレクトで足を振る。ゴールへ吸い込まれかけたシュートだったが、間一髪のところでCB井川が身を投げ出してブロックし、難を逃れた。
開始早々、緻密なパスワークから脅威のミドルを放った武蔵と、たった1本の縦パスから一気にゴールへ迫った江ノ島。
お互いに手の内を探り合う立ち上がりは、まさに互角。
ゲームの主導権を最初に握るのは、どちらか——。
神奈川代表校ということで、単なるかませ犬の学校ではないように考えました!この後の試合展開をお楽しみにください!