キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東大会準々決勝、武蔵中学対江ノ島中学の激戦。前半7分に江ノ島のエース藤原彰の鮮やかなボレーで先制されるも、前半10分には武蔵のキャプテン大空翼の技ありのパスから火野竜馬が豪快に蹴り込み、試合は早くも1-1の振り出しに戻った。
凄まじいペースで進む打ち合いの様相に、西が丘のスタンドも大歓声に包まれる。
江ノ島中のキャプテン江口大翔がパンと手を叩き、周囲へ声を張り上げた。
江口大翔
「やられたもんはしょうがねえ、またやり返せばいい!」
「彰、攻撃は任せたぞ」
藤原彰
「わかりました。……颯に雅人、俺たちもコンビプレイを使って崩していくぞ」
山村颯
「はい。わかったな、マー坊」
加藤雅人
「くそっ、あの14番(ナトゥレーザ)にやられっぱなしはシャクだが……負けたらシャレになんねえからな!」
江ノ島中のボールでリスタート。先ほどまでの猛攻から一転し、江ノ島はショートパスを丁寧につないでじっくりとビルドアップを開始する。武蔵ディフェンス陣も冷静に陣形を保ちながら対応する。
ボールは一度、アンカーの位置にいる江口へ。江口は中盤の底からスルスルとボールを運び、そのまま力強い推進力で自らドリブルを開始する。
武蔵の川村が素早く寄せに入るが、江口はその手前で味方との素早いワンツーを駆使し、川村を鮮やかに置き去りにした。フリーになった江口は、すかさず前線の藤原へ鋭い縦パスを供給。
パスを受けた藤原が、一瞬の加速で前線へ切り込む。向井と本間が挟み込むようにブロックに入ろうとするが、藤原はその差し出された足を嘲笑うかのように、わずかなコースを狙い澄ましてミドルシュートを放った。
枠を捉えた鋭い一撃——だが、武蔵の1年生GK相川が素晴らしいレスポンスで横飛びし、間一髪でこれを弾き返す。
こぼれ球に反応した武蔵の広瀬が大きくクリアしようとした瞬間、江ノ島の1年FW加藤が野性的な出足で飛び込み、泥臭くボールを奪い取った。加藤はすぐさまゴール前へクロスを上げる。
飛び込んできたのは相棒の山村! 山村のダイレクトシュートは、カバーに入ったCB井川の体を張ったブロックに阻まれる。しかし、そのこぼれ球が再びエリア前の藤原の元へと転がった。
すかさずマークに付いたのは、後方から戻っていた大空翼だ。
至近距離で見つめ合う10番同士。藤原は不敵な笑みを浮かべ、翼へ語りかけた。
藤原彰
「こうなったら……俺にマークがつくのは予想できました。だから俺の選択は——パスだ」
藤原はシュートの体勢から、横へトンと優しいラストパスを送る。そこへ後方から猛烈なスプリントで走り込んできたのは、キャプテンの江口!
江口大翔
「ナイスパス、彰!!」
フリーでボールを迎えた江口が、抑えの効いたインサイドシュートでゴール隅を打ち抜いた。
前半15分——2 - 1。江ノ島中学が再び勝ち越しに成功する!
頼れるキャプテンの一撃に、江ノ島ベンチとスタンドが大爆発する。マネージャーの翔子が身を乗り出して叫んだ。
江口翔子
「さすが兄貴! 気合の入ったいいシュートだぜ!」
瀧本監督
「大翔のシュートも見事だが……それを引き出した彰のパスだな。……彰は天才肌というか、気分屋でイマイチ試合に集中しきれないところがあるんだが、今日は完全にゾーンに入っている。向こうの10番(翼)との勝負に、全身全霊で集中しているのか……」
一方、再びリードを許した武蔵中のベンチ。
一ノ瀬
「くそっ、せっかく追いついたと思ったのに……!」
悔しがるベンチメンバーを余所に、兵藤監督の表情に焦りの色はない。
兵藤監督
「あの10番(藤原)も……翼と同じタイプということか。相手が強ければ強いほど燃え上がり、その潜在能力を極限まで発揮する……」
ピッチ上では、失点にも全く顔色を変えない翼が、静かにイレブンへ声をかけていた。
大空翼
「大丈夫。次は俺が決めるから!」
武蔵中のリスタート。武蔵は浮き足立つことなく、兵藤の授けたテンポの早いパスワークで江ノ島陣内へ攻め込む。川村のラストパスから火野が豪快なミドルを放つが、これは江ノ島の守護神・赤城が正面でがっちりとキャッチ。
赤城純
「甘いわ!!」
キャッチした赤城は即座に前線へロングフィードを放つ。ターゲットは前線に張る藤原。
しかし——この展開を完全に読んでいた翼があらかじめ位置を下げており、見事なハイジャンプでインターセプト。そのまま前向きで高速ドリブルを開始する。
前立ちは江ノ島キャプテンの江口。江口がバック走する藤原へ叫ぶ。
江口大翔
「彰、戻るな! こいつは俺が止める!」
江口翔子
「いけー、兄貴!」
だが、完全にギアの入った大空翼を単体で止めることは不可能だった。翼は滑らかなマルセイユターンを一瞬で繰り出し、江口を綺麗に抜き去る。
そのプレイを目の当たりにし、戻りかけた藤原の目が驚愕に見開かれた。
翼は勢いそのままに江ノ島ディフェンス陣を次々とドリブルで切り裂いていく。
石川亘
「これ以上、好きにさせるか!!」
DFの石川が必死のタックルで間合いを詰めた瞬間、翼は右サイドから斜めに切り込んできたナトゥレーザと鮮やかな交差(スイッチ)を行う。ボールはナトゥレーザの足元へ!
ペナルティエリア右角でボールを受けたナトゥレーザは、ワントラップから間髪入れずに右足を振り抜いた。
放たれたシュートは鋭い弧を描き、左サイドの遠いサイドネットへ一直線に向かっていく。江ノ島GK赤城も驚異的な反応で横飛びするが、あまりにも絶妙なコースとカーブ。
このまま同点ゴールかと思われた瞬間——
ガンッ!!
激しい金属音を立てて、ボールは左ポストを強く叩いた。
弾き飛ばされたボール。しかし、その落下地点へ誰よりも早く走り込んでいたのは……大空翼だった!
ナトゥレーザが放ったシュートの軌道、そしてポストに跳ね返る位置までもあらかじめ完璧に予測していたかのように、翼はダイレクトで右足を振り抜く。ボールは無人の江ノ島ゴールへ突き刺さった!
ゴォォォール!!
前半23分——2 - 2。
翼が自身の宣言通り、見事な同点ゴールを叩き込んでみせた!
今度は武蔵ベンチと応援席が歓喜の渦に包まれる。
だが、武蔵の兵藤監督は少し異なる視線でピッチを見つめていた。
「そうだった……。相手が強ければ強いほど燃える男が、うちにはもう1人いたな」
兵藤の視線の先にいたのは、先ほどポスト直撃の鋭いシュートを放ち、翼のゴールに不敵な笑みを浮かべていた背番号14——ナトゥレーザの姿だった。
2-2。前半も終盤に入ろうかという時間帯、両校の天才たちが火花を散らし、試合は依然としてどちらにも主導権を譲らない凄まじい展開が続いていた。
本日も3話投稿です。次は12時に投稿予定です。