キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

68 / 72
全国行きをかけた関東大会2回戦、武蔵中学VS江ノ島中学の戦いはお互い一歩もひかず熱戦が繰り広げられる!?


第65話 燃える瞳

関東大会準々決勝、武蔵中学対江ノ島中学の一戦は、江ノ島が勝ち越せば武蔵がすかさず同点に追いつくという、互いの意地と技術が激突する凄まじい点の取り合いとなっていた。

前半も残り時間が5分を切ろうとした頃、中盤で再び武蔵のキャプテン大空翼の元へボールが渡る。

すかさずプレッシャーをかけに江ノ島キャプテンの江口が動こうとしたが、それを横手で制したのはエースの藤原彰だった。

藤原彰

「大翔さん、ここは俺にやらせてください」

江口大翔

「……頼んだぞ、彰!」

藤原が目の前に立ちはだかり、翼に真っ向から挑みかかる。

翼の繰り出す細かなステップと揺さぶりのフェイントに対し、藤原は驚異的な集中力と反応速度で喰らいついていく。

だがその時、左サイドからナトゥレーザがボールを呼び込む声を上げた。

ナトゥレーザ

「翼!」

翼がスッと顔を上げ、ナトゥレーザの方向へ視線を送る。そのわずかな挙動につられ、藤原の視線も一瞬だけナトゥレーザの方向へ動いた。

——その、わずかコンマ数秒の隙!

翼は視線とは裏腹に、驚異的な軸足の押し出しでドリブルを急加速。一気に藤原の横を突き抜けて抜き去った!

兵藤監督

「うまい……!」

絶対的エースの藤原があっさりと抜き去られたことで、江ノ島ディフェンス陣に一瞬の動揺が走る。翼はその刹那の隙を見逃さなかった。

相手の寄せがわずかに甘くなった瞬間、翼は右足を深く後ろへ引き、思い切り振り抜く。

放たれたのは、綺麗なトップスピンを描く必殺のドライブシュート!

寄せが甘く、完璧な姿勢とインパクトで放たれたボールは、放物線を描いて江ノ島ゴールの真上から急降下していく。立ちはだかるのは江ノ島の大型守護神・赤城純。

赤城はあらかじめラインギリギリまで位置を下げ、完璧なタイミングで跳び上がった。

赤城純

「やらせは……せんッ!!」

赤城は空中で片手を差し伸ばし、ドライブシュートの威力を削ぎ落とそうと試みる。しかし、今回のシュートは抑えを効かせていない威力十分の一撃。ボールは赤城の分厚い手を力任せにはじき飛ばし、そのまま豪快にネットを揺らした!

ゴォォォール!!

前半28分——3 - 2!

武蔵中学がこの試合初めての勝ち越しに成功する!

その後、江ノ島中の反撃を武蔵ディフェンス陣が総力で凌ぎ切り、前半は武蔵の1点リード(3-2)でタイムアップの笛が鳴った。

ロッカールームへと引き上げていく両チーム。

ハーフタイム、両校ともに徹底した水分補給と疲労回復に努めながら、後半に向けた熱い指示が飛ぶ。

武蔵中学のベンチ。

兵藤監督

「前半、よくリードして終わってくれた。……だが翼、ドライブシュートの使い所はよく考えろ。向こうのキーパーなら、次は間違いなく完璧な対策を立ててくる。無駄打ちだけは避けるんだ」

大空翼

「はい!」

兵藤監督

「DF陣とボランチは連携してブロックを組み直せ。相手のタフさを見る限り、後半になって体力が落ちることは期待できない。お前たちがルーズボールを奪えたら、うちの攻撃チャンスは一気に広がるからな」

火野竜馬

「頼んだぜ、みんな。点の取り合いなら俺たちは負けねえからな!」

井川

「わかってるよ、竜馬」

本間

「こっちも相手より先に動いて、フリーになっている味方には敵の位置を声を掛け合って教えていこう」

大空翼

「この試合に勝てば全国だ! ……だけど、そんな先のことを考えてたら足元を掬われるぞ! 今は目の前の敵を倒すことだけに全力を尽くしてくれ!」

一同

「おう!!」

兵藤監督

「……それと翼。後半、お前のマークには向こうの10番(藤原)がついてくるはずだ。やつはお前との試合を通じて、恐ろしい速度で成長している。気を引き締めろ」

大空翼

「わかっています。……だけど、サッカーは俺一人じゃありません。俺の後ろには仲間がいる。みんながいる限り、俺たちは絶対に負けません!」

本間

「翼くん……!」

真田信次

「翼の言う通りだぜ! 俺たち全員で、この試合勝つぞ!」

一同

「おう!!」

チームの強い絆と連帯感で、武蔵イレブンの士気は最高潮に達していた。

一方の江ノ島中学。

イレブンの健闘を労いつつも、リードを許した展開に瀧本監督の表情は硬い。

瀧本監督

「前半、よく頑張ったぞ、お前たち!」

赤城純

「くそっ……やつめ(翼)、最初のドライブシュートは威力を抑えてやがったのか……!」

加藤&山村

「あの14番(ナトゥレーザ)もだ! 俺たちを舐めやがって……!」

江口翔子

「颯にマー坊! てめえら、舐められっぱなしでいいのかよ!?」

すかさず二人が言い返そうとする前に、キャプテンの江口が言葉を挟んだ。

江口大翔

「舐められっぱなしでいいわけないよな。……お前ら、後半あの14番はお前たちに任せて大丈夫か?」

加藤&山村

「任せてください! どんなことがあっても喰らいついてみせますよ!」

石川亘

「大翔さん、翼はどうしますか? 正直、俺も火野を抑えるので精一杯です……」

江口が答えを出そうとしたその時、藤原が毅然とした声で割り込んだ。

藤原彰

「大翔さん……翼さんは俺に任せてくれませんか?」

マネージャーの翔子が身を乗り出して怒鳴る。

江口翔子

「彰! てめえ、兄貴じゃ役不足だって言いたいのか!?」

藤原彰

「勝つためだ!」

藤原の強い眼差しに翔子が一瞬言葉を詰まらせる。藤原はきっぱりと言い放った。

藤原彰

「颯と雅人が向こうの14番を抑えるのに専念したら、うちの得点力は半減する。俺が点を取る。だから大翔さんがゲームを組み立てて、俺にパスを送ってください」

江口大翔

「……わかったよ。去年の形にするわけだな。俺がゲームを組み立てて、龍也さんとお前が点を取っていた頃にな」

藤原彰

「大丈夫。翼さんは俺がどんなことがあっても抑えますから!」

石川亘

「彰、俺たちもお前をサポートするぜ」

赤城純

「当たり前だ! これ以上好きにはさせん!」

熱を帯びていくイレブンのやり取りを聞きながら、瀧本監督は心の中で深く頷いていた。

(彰が変わり始めている……。チームの中でもずば抜けた実力を持つ彰だが、これまではどこか力をセーブしている部分があった。だが……大空翼という規格外の選手と対戦したことで、彰の眠っていた本物の才能が引き出されつつある)

瀧本監督

「彰、いいだろう。後半はお前が翼のマークにつけ。舐められるなよ!」

藤原彰

「わかっています!」

江口大翔

「よし! 後半は同点、そして逆転だ!!」

一同

「おう!!」

ハーフタイムが終わり、再び緑のピッチへと足を踏み入れた両チームのイレブン。

その瞳には、誰一人として翳りなどなかった。

全国大会出場をかけた決戦の後半戦が、今まさに始まろうとしていた。




次の投稿は18時頃となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。