キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
東京都内某所――夜の斎場。
降りしきる雨の中、三杉淳の通夜がしめやかに営まれていた。
十二歳という、あまりにも早すぎる死。斎場を訪れる誰もが黒い服に身を包み、深い悲嘆に暮れていた。
その中には、先ほどまで全国大会の決勝戦を戦っていた武蔵FCのイレブンの姿もあった。
三杉との「全国制覇」という約束を果たせなかった悔しさにボロボロと涙をこぼす者、冷たくなった三杉の遺影の前で崩れ落ちる者、ただ茫然と立ち尽くす者……その反応は様々だったが、誰もが絶望の淵にいた。
そこへ、黒の喪服に身を包んだ城山監督、大空翼、そして翼の母・奈津子とロベルト本郷が到着した。
型通りの焼香を済ませ、棺の中で静かに眠る三杉に合掌する。
通夜を終え、重苦しい静寂を後に宿舎へ戻ろうとしたその時――翼の視界に、ぽつんと座り込む旧知の少女、青葉弥生の姿が映った。
翼は痛む胸を抑えながら、彼女に慰めの言葉をかけようとゆっくり歩み寄った。
「弥生ちゃん……」
だが、そこにいたのは、翼の知っている心優しい弥生ではなかった。
目を真っ赤に腫らし、膝を抱えて震えていた弥生は、翼の姿を認識した瞬間、その瞳に見たこともない絶望と憎悪の光を宿した。
「……せいよ」
「え……?」
「……あなたのせいよ。あなたのせいで……キャプテンは亡くなったのよ!!」
静まり返っていた斎場に、刺さるような少女の叫びが響き渡った。
翼は足がすくみ、その場に凍りつく。
「何で……何であんなことをしたのよ! キャプテンが病気だってこと……知ってたでしょ!?」
「や、弥生ちゃん……俺……」
「翼君……! 翼君がキャプテンを殺したのよーーーッ!!」
突如として静寂を切り裂いた悲痛な怒号に、その場にいた参列者、武蔵のメンバー、そして大人たちが一斉に息を呑み、釘付けとなった。
「申し訳ありません! 申し訳ありません!!」
慌てて駆けつけた弥生の保護者が、涙ながらに奈津子と城山へ何度も深々と頭を下げ、パニックを起こして泣き叫ぶ弥生を半ば強引に別の部屋へと連れ出していった。
あとに残されたのは、冷たい空気と、呆然と立ち尽くす翼だった。
翼の頭の中で――**「パリィン」**と、何かが粉々に砕け散る音が聞こえた。
準決勝の最後の接触プレイ。三杉と競り合った瞬間に右肘へ伝わった、あの重く不気味な「ボコッ」という感触。
そして今しがた放たれた、弥生の「あなたが殺したのよ」という言葉。
歪んでいた二つのピースが、脳内で完璧に、そして残酷に結びついた。
(……やっぱり、俺だ。……俺が……俺が、三杉君を殺したんだ)
「翼……」
「翼、しっかりしなさい……!」
奈津子とロベルトが駆け寄り、震える翼の肩を抱きしめる。
城山もまた、言葉を失ったまま立ち尽くしていた。
斎場を後にした四人。雨の降る駐車場で、城山は翼のうつろな瞳を見て、即座に悟った。この状態の翼を、石崎たちが待つ宿舎へ連れて帰ることは絶対に不可能だと。
「お母さん……申し訳ありませんが、翼君のそばにいてあげてください。今の翼君をチームに戻すわけにはいきません」
「はい……城山監督、ありがとうございます……」
奈津子は力なく頷き、翼の小さな体を強く抱きしめた。
こうして、南葛SCのキャプテン・大空翼のチーム離脱が決定した。
ロベルトは翼の着替えや荷物を引き取るため、城山と共に静かに宿舎への道を急いだ。
――フィールドの貴公子・三杉淳の死。
そこから投じられた一滴の不吉な波紋は、大きな負の連鎖となり、サッカーを愛していた者たちに次々と残酷な悲劇をもたらしていく。
心が完全に死んでしまった少年・大空翼と、大黒柱を失った南葛SC。
この先、彼らに一体どのような運命が待ち受けているのだろうか。
完全に原作から外れた今回の話となりました。翼は、この悲しみから立ち直れるのか?