キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
驚異的な粘りとナトゥレーザの一撃で試合を再び4-4の振り出しに戻した武蔵中学。
試合再開の笛が鳴り、江ノ島中学ボールでピッチ中央からゲームが動き出す。
その瞬間、大空翼の武蔵イレブンへの指示が西が丘のピッチに響き渡った。
大空翼
「みんな、ここでゾーンプレスをかけるんだ!!」
火野竜馬
「任せろ、翼ぁッ!!」
火野が野生の猛獣のごときプレッシャーで、ボールホルダーの1年FW加藤へ猛然と襲いかかる。
山村颯
「マー坊!!」
山村が咄嗟にフォローに入ろうと足を踏み出す。しかし、試合を通して武蔵の規格外の留学生ナトゥレーザに密着マークを継続し、限界まで足を使い果たしていた山村の肉体は、思うように動いてくれなかった。
江ノ島ベンチで瀧本監督が痛恨の表情を浮かべる。
(しまった……! 雅人や颯がいくらスタミナ自慢とはいえ、まだ1年生。しかもあの14番(ナトゥレーザ)の異次元の動きを抑え続けていたんだ。体力を消耗しないはずがない……!)
一方、武蔵ベンチの兵藤監督は不敵な笑みを深くした。
兵藤監督
「翼め……戦術眼も確かだな。相手の1年生FWの体力消耗を見極め、この土壇場で一気に畳みかけるゾーンプレスを指示するとは」
浅田ユリ
「そして……この試合終盤でも全員が連動してゾーンプレスを仕掛けられるよう、私がみっちり鍛え上げてきましたから。大丈夫ですよ!」
武蔵の完璧に組織化された連動プレッシングに阻まれ、加藤は逃げ場を失う。その一瞬の隙を逃さず、翼が電光石火の出足でボールを奪い取った!
奪うやいなや、翼は一気に中央を押しあがる高速ドリブルを開始する。
立ちはだかるのは、江ノ島の誇る二大看板——キャプテン江口とエース藤原!
翼はそのまま2人の真正面へと突っ込んでいく。ぶつかる直前、右から火野、左からナトゥレーザが同時にスプリントし、藤原と江口の動線を左右から身体で削るようにブロックした!
藤原彰
「こ、これは……!?」
江口大翔
「彰がさっき見せたプレイ……!」
2人が作った僅かな死角の間を、翼は吸い込まれるようにすり抜けていく。スタンドのロベルト本郷が感嘆の声を上げた。
ロベルト本郷
「相手の見せた技を一瞬で自分のモノにして仕返す……これぞ翼の真骨頂だ!」
藤原と江口を置き去りにし、一気に江ノ島ゴール前へ迫る翼。最後の砦、DF石川が決死のタックルで立ちはだかるが、翼は流れるようなマルセイユターンで石川を鮮やかにかわし去る。
残るは守護神・赤城純のみ!
必死の形相で飛び出してきた赤城。だが——飛び出した赤城の目の前で、翼の足元にはボールがなかった。
翼は飛び込んでくる赤城の頭上を越えさせるため、踏み込みの瞬間に自身の背後からヒールリフトでボールを空中に浮かせていたのだ!
頭上をふわりと越えていったボールが、そのまま無人の江ノ島ゴールへと静かに吸い込まれていく。
ゴォォォール!!
後半27分——5 - 4!
武蔵中学、死闘の果てについに土壇場で勝ち越し!!
武蔵ベンチが大歓声に包まれる。弥生が、興奮冷めやらぬ1年マネージャーふたりへ微笑みかけた。
青葉弥生
「陽子ちゃん、由美ちゃん。言ったでしょ? 翼君なら大丈夫だって!」
北野&小田
「はいッ……!!」
残り時間わずか。勝ち越された江ノ島中学、最後の攻撃。
武蔵の激しいゾーンプレスを気力でいなし、アンカーの江口から絶好のラストパスがエース藤原へ渡る。
藤原は武蔵のボランチコンビ(本間&向井)を鮮やかなステップで抜き去り、即座にシュート体勢に入った。
その振り抜く足のフォームと軌道を見た瞬間、翼がゴール前へ向かって叫ぶ!
大空翼
「大和! ライン際ギリギリまで下がれ! ボールが落ちてくる前にはたけ!!」
藤原彰
(なに……!?)
藤原が驚愕に目を剥く中、放たれたシュートが武蔵ゴールへと飛ぶ。
一見するとクロスバーの上へと大きく外れるかに見えた弾道だったが、ゴール直前で急激にドライブ(急降下)を始めた!
しかし——1年GK相川大和は翼の指示通り、あらかじめラインギリギリまで下がり、完璧な溜めを作っていた。
相川大和
「うおおおおッ!!」
勢いよく跳躍した相川は、ドライブがかかって落ちてくる前のボールに対し、バレーボールのアタックの要領で分厚い掌を強く叩きつけた!
バシィィィン!!
弾き飛ばされたこぼれ球を、カバーに入っていた真田信次が渾身のクリア!
ボールがタッチラインの外へと大きく蹴り出された瞬間——
ピーッ! ピピッ、ピーーーッ!!
西が丘サッカー場に、試合終了を告げる長笛が響き渡った!
試合終了——5 - 4!
激しい点の取り合いとなった名勝負を制したのは、武蔵中学!
この瞬間、武蔵中学のベスト4進出が決定し、同時に全国中学校サッカー大会(全中)への出場権(上位6校枠)を掴み取った!
ピッチ上で息を整える選手たち。
藤原彰がゆっくりと歩み寄り、大空翼へ声をかけた。
藤原彰
「……最後のシュート、なぜドライブシュートだと分かったんですか?」
大空翼
「シュートモーションさ。君なら……俺やナトゥレーザの打ったドライブシュートを見て、打ってくると思ったから。……もっとも、立場が逆なら俺だって同じことをしたと思うよ」
翼の素直な言葉に、藤原は悔しさを忘れたようにふっと微笑み、納得したように深く頷いた。
藤原彰
「……今日は、俺の完敗です。……また、試合してもらえますか?」
大空翼
「もちろんさ!」
がっちりと握手を交わす二人のエース。
一方、ピッチの上に悔し涙を流して座り込む1年生コンビ(加藤&山村)の元へ、キャプテンの江口が静かに手を差し伸べた。
加藤&山村
「大翔さん……すみません……俺たちにもっと体力があれば……っ!」
江口大翔
「お前たちはよくやったさ。……それに、まだ終わっちゃいねえぞ! 順位決定戦(5・6位決定戦)を勝ち抜いて、絶対に全国へ行くぞ!」
泣きじゃくっていた二人が、江口の手を握り返して力強く叫んだ。
加藤&山村
「大翔さん……はいッ!!」
江ノ島ベンチ前では、瀧本監督が戦い抜いたイレブンを温かく出迎えていた。
瀧本監督
「お前たち、よくやったぞ! 胸を張れ!」
武蔵ベンチもまた、全国行きを決めた安堵と歓喜の表情に満ちあふれていた。
青葉弥生
「おめでとう、翼君!」
整列を終え、最高の笑顔を浮かべて応援席やベンチの弥生たちの元へ駆け寄ってくる翼、ナトゥレーザ、火野、そして武蔵のイレブンたち。
持てる力をすべて出し切り、最高の死闘を繰り広げた両チームに対し、西が丘のスタンドからは万雷の拍手と惜しみない歓声が降り注ぐのであった。
江ノ島中学戦終了しました。全国行きをかけた相手として頑張ってくれました。最後の藤原のプレイは、藤原ならではのプレイですが、もし翼が見破らなくとも威力は、翼やナトゥレーザよりは下になります。あくまで即興で打って来ているので…
次は18時頃投稿予定です。