キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東大会準決勝・第一試合、武蔵中学対東総学院。
前半3分に大空翼の鮮やかなボレー、11分には火野竜馬の豪快な追加点。武蔵は東総自慢の強力ツートップを完璧に完封しつつ、逆に自分たちの持ち味をフルに発揮して2点のリードを奪っていた。
2点差をつけられた東総ベンチでは、立花監督が険しい表情で控えの星野慎吾を見つめていた。
「慎吾、お前を後半頭から使うと決めていたが……このままだとお前を使う前に試合が終わってしまう。無理は承知だが、ハーフタイムを利用しての前半20分から投入して、後半最後までいけるか?」
言葉をかけられた星野は、微塵の躊躇もなく力強い目を返した。
「立花監督、大丈夫です。むしろ今すぐ出たいくらいです!」
「よし、お前の気持ちはわかった。アップを急いで、出られる準備をしておいてくれ」
「はい!」
星野がベンチ裏へ向かってダッシュでアップを開始するのを横目に、立花監督はピッチへと視線を戻す。
(この試合、3点リードされたらその時点で事実上の試合終了だ……! 何とか1点差、いや最悪でも2点差のまま前半を終えられれば……)
一方、ピッチ内では2点を先行され、重苦しい雰囲気に包まれる東総イレブンの姿があった。
「すまん……向こうは翼さえも囮に使ってきて、マークを絞りきれなかった」
頭を抱える“千葉の頭脳”里見に、主将の村田が声をかける。
「仕方ないさ。俺たちが抑えられたらこうなってしまう」
村田はチラリと視線をピッチ外へ向けた。そこには必死に体をほぐす星野の姿がある。
(慎吾……おやっさん、慎吾を使うのはまだ早いぜ……)
村田はぐっと奥歯を噛み締めると、隣の里見に向き直った。
「隼人、できれば決勝までとっておきたかったが……贅沢は言っていられねえようだ。あれを使うぞ」
里見が目を見張る。
「猛……あれを使うのか!?」
「隼人、お前もわかっているはずだ! 3点差になれば、いくら慎吾が出てきても巻き返すのは難しくなる! だったらここで1点を奪いに行くんだ。慎吾の投入は後半からだ、ここじゃない!」
村田はそう叫ぶと、最後に巨漢FWへ視線を飛ばした。
「カマラ、やるぞ!」
その瞬間、それまで飄々としていたカマラの表情から温さが消え、野獣のような鋭い光が瞳に宿った。
「村田さーん……やりますよー」
東総イレブンがそれぞれのポジションにつく。
主審の笛が響き、東総ボールで試合が再開された。
キックオフのボールを受けた村田から、すぐさま中央のカマラへ。ボールを収めたカマラは、躊躇なく自ら縦への超高速ドリブルを開始した!
「なっ……!?」
虚を突かれた武蔵の攻撃陣は、一瞬対応が遅れる。カマラは長い脚のスライドから爆発的な一歩を踏み出し、前線のプレスを一気に抜き去っていく!
その規格外の推進力に、翼が目を見張った。
「速い……!」
後方からそれを見たCBの井川岳人が、すかさず大声で指示を飛ばす。
「本間、奴は俺が抑える! 代わりに信次と最終ラインを頼む!」
「おうっ!」
カマラの前方に立ちはだかる井川岳人。しかし、カマラは井川の顔を見ると、ニヤリと不敵に口元を歪めた。
次の瞬間、カマラから鋭いパスが斜め前線へ送られる。受け手はもちろん、並走していた村田!
だが村田はボールを叩き込まず、即座にダイレクトでリターン!
完璧なワンツーで、井川岳人の脇をいとも簡単に通り抜けていく!
「なにっ!?」
勢いを殺さないカマラは、カバーに入ろうとしたボランチの向井までも素早いワンツーで交わしてみせる。
「コンビプレイだと!?」
「しかも……速すぎる!」
CBの真田信次と本間が目を見張る間もなく、村田とカマラの超高速ダイレクトプレイによって、武蔵の中央守備陣はあっという間に置き去りにされてしまった。
ペナルティエリア手前、早くも右足を振りかぶるカマラ。武蔵のGK相川が身構える!
そこへ、破格のバック走で戻った井川岳人が決死の飛び込みを見せ、カマラの正面へと滑り込んだ。
(シュートブロックに……間に合った!)
井川が胸を張った、まさにその瞬間——!
ドガァンッ!!
「な……!?」
井川の目の前で、カマラは右足ではなく、逆足である「左足」をコンパクトかつ一瞬の閃光のように振り抜いていたのだ。
井川の思考を置き去りにする、尋常ではない振り足の速さ!
弾丸と化したボールは、相川の伸ばした手を弾き飛ばし、武蔵ゴールの右隅上叩き込まれた!
前半18分:武蔵 2 — 1 東総!
ギアを上げたカマラの一撃が、ついに武蔵のゴールネットを揺らした!
ゴール裏へ転がったボールを自ら抱え上げると、主将の村田がセンターサークルに向かって全力で走る。
「試合はまだ終わってねえぞ!!」
息を呑む駒沢メインスタジアム。
失点に唇を噛む武蔵の守備陣の中で、井川岳人が拳を握りしめた。
「すまん……対応が完全に遅れちまった」
だが、トップの火野竜馬がニヤリと笑い、井川の背中を叩いた。
「やられたもんは仕方ねえ! やられたら俺たちが取り返す……そうだな、翼!」
「そうだ!」
翼が強く頷き、その瞳にメラメラと青い闘志の炎を宿らせる。
「向こうより先に点を取り返して、前半を終えよう!」
ついにその圧倒的な牙を剥いた東総の強力ツートップ。
一追即発の緊張感が漂う中、武蔵中学はこの覚醒した『黒豹』にどう立ち向かうのか——!?
今日の投稿は終わりてす。明日も3話投稿します。お付き合いいただけるとうれしいです。