キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
三杉淳の通夜から宿舎へと戻った城山監督は、重苦しい表情のまま南葛SCのメンバーを集めた。
そして、通夜の場で起きた痛ましい出来事と、精神的な限界を迎えたキャプテン・大空翼のチーム離脱、ならびに翌朝一番で静岡へ帰転する旨を静かに告げた。
一同が息を飲む中、石崎が頭を掻きながらぽつりと漏らした。
「それにしてもさぁ……弥生ちゃんも、あんな可愛い顔してひどいこと言うよな。まったく、女ってのは恐い恐い……」
相変わらずの、どこまでも空気が読めない石崎の軽口。
だが次の瞬間、浦辺が鬼のような形相で石崎の胸倉を掴み上げた。
「お前は……お前は本当に、どこまで馬鹿なんだよ!!」
「うおっ!? な、なんだよ浦辺!」
「三杉が亡くなったんだぞ!? 式場に来ていた奴らは全員、三杉のことが大好きだったんだ!……そんな時に三杉を失って、誰が冷静でいられるかよ!!」
浦辺の悲痛な怒号と、部屋にいる仲間たちからの冷ややかな視線を全身に浴びて、石崎もようやく事の重大さと自分の愚かさに気づいた。
「あ……悪かったよ……。……だけどさ、これじゃあ翼があまりにもかわいそうじゃねえか……」
「翼君……」
岬太郎は言葉を失い、ただ静かに拳を握りしめていた。
重く気まずい空気が部屋を支配する中、メンバーは誰とも言葉を交わすことなく、それぞれの布団へと入った。
翌朝。
宿舎では、静岡へ戻る南葛SCの面々が静かに帰りの支度を進めていた。
そこへ、ふらの小の主将・松山光が姿を現した。松山は荷物をまとめる岬に声をかけた。
「岬、ちょっといいか」
二人は宿舎の裏手、静かな朝の光が差し込む場所に移動して言葉を交わした。
「松山、優勝おめでとう。見事なゲームメイクだったよ」
岬の温かい言葉に、松山は少し寂しげな表情を浮かべながら頷いた。
「ありがとうよ。目標だった全国制覇を達成できた。……だが、俺としては相手が万全な状態で戦いたかったぜ」
「……そうだね。松山は中学でもふらのでサッカーを?」
すると、松山は少し表情を引き締め、言った。
「……昨日の夜、東邦学園のスカウトが俺のところに来たんだ。特待生として、東邦でサッカーをしてくれってな」
「すごいじゃないか! そういえば、小次郎にもスカウトの話が来てたよ。準決勝で負けちゃったから駄目になっちゃったけど……。あ、でもその前に、翼君のところにも東邦のスカウトが来てたんだ」
岬は少し顔を綻ばせながら続けた。
「もし翼君もそのスカウトを受けたら、東邦はすごいチームになりそうだね」
「……なに? 翼と日向にもスカウトの話が……?」
松山は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐにあらゆる状況を察し、納得したように深く頷いた。そして、まっすぐな目で岬を見つめた。
「……岬。俺は東邦学園に行くよ。そこで、今回の日本一がフロック(まぐれ)じゃないってことを証明してみせる」
「松山……」
「岬、お前は中学も南葛か?」
「僕は……また父さんの仕事の都合で転校なんだ。でも、きっと日本のどこかでサッカーは続けるよ」
「それなら、俺と一緒に東邦でサッカーをしないか?」
思いがけない松山の誘いに、岬は目を見開いた。
「東邦なら全寮制だ。寮に入れば、お前の親父さんにとってもお前の居場所がはっきりするから安心できるはずだ」
「……誘ってくれて、ありがとう。でも、僕にはスカウトの話は来ていないし……こんな大切なこと、僕一人じゃ決められないよ。父さんに相談してみないとね」
「そうだな。俺も昨日話が来たばかりで、親父やお袋とちゃんと話をしたわけじゃない。……だけど、俺は東邦に行くつもりだ」
「松山らしい選択だね。僕はどうなるか分からないけど……サッカーを続けて、いつか松山のいる東邦の前に現れてみせるよ」
「ああ、待ってるぜ」
その時、遠くから石崎の大声が響いた。
「おーい、岬! そろそろ出発するぞー!」
「じゃあ松山、これで」
「ああ。またな、岬」
二人は力強く握手を交わした。
全国小学生サッカー大会は、悲劇と栄光を抱えたまま静かに幕を閉じた。
しかし、少年たちの次の戦いは、すでに始まっていた。
それぞれの想いを胸に、彼らがどこで、どのような道を選んで戦っていくのかは――まだ誰も知らない。
原作の石崎のキャラクターであればこのように振る舞うかなと思いました。また、地元愛の強い松山ですが、東邦学園のスカウト戦略=自分は翼や日向たちの保険 のからくりを見抜けば自身を証明(優勝はライバルが勝手にこけたからまぐれ)するために東邦学園に入るかなと予想しました。そして岬、父親についていくという選択から抜け出せなかった岬に寮に入るという選択肢ができました。ここからどのような選択になるのか!