キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東大会準決勝・第2試合。東邦学園VS城星学園の一戦が、ついにキックオフの時を迎えた。
【東邦学園・スターティングメンバー】
GK:若島津
DF:古田、川辺、松山、今井
MF:小池、松木、岬、沢田
FW:反町、新田
スタンドの一角で戦況を見守る武蔵中学のメンバーから、即座に分析の声が上がる。
「日向の欠場はわかるとして、松山が完全に最終ラインに入っているな」
本間の呟きに、監督の兵藤が静かに頷いた。
「これまでの若島津の個人能力頼みから脱却し、核となるプレイヤーを置いて組織的な守備を整備してきているぞ」
兵藤は視線を東邦ベンチへと移した。そこには、いつものスーツ姿から一変し、ズボンにクラブシャツを着用して戦況を見つめる臨時コーチ・大沢の姿があった。
(なるほど、東邦の守備は大沢さん仕込みか……)
兵藤が心の中で納得すると同時に、井川が苦笑いを浮かべる。
「まずは守備を固めてからか……こりゃ明日も厄介だな」
「まだ、相手は東邦とは決まってないぞ!城星だって古川がまだ出ていないとはいえ、個々の個人能力は高いぞ!」
一ノ瀬が戒めるように言うと、翼が深く頷いた。
「そうだね。城星も東邦の左右の筋肉バランスをつついてくるだろうね」
武蔵の面々が冷静な分析を張り巡らせる中、ピッチ上では城星ボールで試合がスタートした。
城星は持ち前の正確なパスワークを駆使し、東邦にプレスをかけさせない立ち回りを見せる。しかし、東邦も引いて守るだけではなかった。ツートップの一角に入った新田が、ボールホルダーに対して執拗なチェイシングを仕掛ける。
新田の運動量によってボールの受け手とパスコースが限定された瞬間、東邦MFの小池が狙いすましたインターセプト。すかさず前線の沢田へボールが渡る。
沢田がドリブルで持ち上がると、城星の風見が素早く立ちふさがる。沢田は無理な1対1を避け、岬とのワンツーを選択して風見を鮮やかにかわす。だが、城星ディフェンス陣も素早くスライドし、ツートップの新田と反町を徹底マークしてパスコースを消した。
ベンチから古川が声を張り上げる。
「そうだ、やつにシュートはない!」
パスコースを消され、一瞬息を詰める沢田。
「クッ……!」
その時、後方から力強い声が響いた。
「タケシ!」
「岬さん!」
沢田からのラストパスが岬へと通る。岬は躊躇なくドリブルを選択し、そのまま城星陣内深くへと侵入していった。
ベンチの古川から再び即座の指示が飛ぶ。
「ディフェンス、チェックだ!最近の岬は打ってくるぞ!」
慌てて寄せにかかる城星ディフェンス。しかし、対応が一歩遅れた。岬は迷うことなく右足を振り抜く。放たれたシュートはきれいな弧を描き、城星ゴールの右サイドネットへ突き刺さった。
前半6分、東邦学園先制!
ピッチ上で岬を中心に喜びを分かち合う東邦イレブン。その光景をスタンドから見つめていた武蔵のメンバーから、驚きと感嘆の声が上がる。
「今のプレイ、岬のやつ全く躊躇なかったぞ!都大会の決勝の時はFWのアシストに徹していた感じだったが……」
本間の驚きに、兵藤が目を細めた。
「日向が不在の中で得点力をカバーするために、自らゴールを奪う姿勢に目覚めたか」
「それだけじゃなく、東邦の選手の動きを見る限り、左右の筋肉バランスのアンバランスがだいぶ改善されているわね」
フィジカルコーチの浅田の言葉に、ナトゥレーザが楽しそうに笑う。
「岬、うまくなってるね!なあ翼!」
「……岬君……」
翼は静かにピッチ上の岬を見つめていた。
一方、先制を許した城星の風見がチームを鼓舞する。
「まだだ、諦めるには早いぞ!」
城星は再び丁寧なパスワークで東邦ディフェンスの攻略を図る。しかし、新田の絶え間ないチェイシングによってパスコースを限定され、そこからの素早いカウンターを受ける展開となり、城星は防戦一方へと追い込まれていく。
前線でボールを受けたのは新田。
必死に寄せにかかる城星ディフェンス陣が叫ぶ。
「やつの左側につけ!」
都大会で晒された左側の弱点をつこうと群がるディフェンスを前に、新田は不敵な笑みを浮かべた。
「俺がいつまでも弱点を放っておくと思ったか!」
左側から寄せられるプレッシャーをおかまいなしに跳ね返し、ディフェンスを引き連れたまま力強く踏み込む。
「くらえ、俺の新生隼シュートだ!」
新田の左足から繰り出された強烈なシュートが、一直線に城星ゴールを揺らした。
前半14分、2−0。東邦学園がリードを広げる。
「新田のやつも左右のバランスのいびつさを克服してやがるぜ!」
真田が目を見張り、本間も重々しく頷く。
「都大会決勝とは全く別のチームということか……」
その後も東邦の勢いは止まらない。果敢に攻撃を畳み掛け、城星ゴールを脅かし続ける。
城星もなんとか新田のチェイシングをかわし、意地で見せるパスワークで東邦ゴールへと迫る場面を作るが、最終ラインに固く鎮座する松山がそれをことごとく潰し、沈黙させた。逆に松山の鋭い上がりが起点となり、最後は岬がこの日2得点目となるシュートを叩き込んでリードを広げた。
惨敗の危機に瀕するチーム状況を見かねた古川が、意を決して監督の前野へ出場を直訴する。しかし、前野は首を横に振った。怪我を抱えた古川の将来を第一に優先する前野の決断により、直訴は却下された。
そして——試合終了を告げる長い笛の音が響き渡る。
4−0。東邦学園、圧倒的な内容で決勝進出決定。
エース日向を欠きながらも見せた東邦の快勝劇に、スタンドの観客たちは興奮を隠せない。
「東邦強ぇー!」
「日向抜きで、古川不在とはいえあの城星に完勝だぞ!」
「これで日向が戻れば鬼に金棒だな!」
「決勝は都大会決勝と同じカードだ!明日が楽しみだぜ!」
歓声が渦巻くスタンドから、東邦イレブンを見下ろす武蔵中学サッカー部。
「都大会の再戦か……」
本間が呟くと、真田が拳を握りしめた。
「上等じゃねえか!返り討ちにしてやるぜ!」
「信次の言う通りだぜ!」
火野も不敵に笑い、口々に闘志をあらわにする。
その熱量を受け止め、翼が全員に向き直った。
「明日の決勝に勝って、関東チャンピオンとして全国に乗り込むぞ、みんな!」
「「「おう!!」」」
兵藤がパンと手を叩き、全員に号令をかける。
「よし、まずは合宿所に戻って明日の試合の確認だ!」
武蔵中学サッカー部は、静かに、そして確かな闘志を胸にスタンドをあとにした。
いよいよ明日、関東覇者の座を決める運命の決勝戦が、ここ駒沢競技場のピッチで行われようとしていた。
やはりというべきか武蔵と東邦が決勝進出しました。明日は日向も戻る東邦に対して武蔵はどう戦うのでしょうか!?