キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
東大会第4日目。全国大会への出場権を手にした学校が出揃い、大会最終日を迎えた駒沢競技場は、朝から独特の熱気に包まれていた。
今日のメインイベントは、関東王者の称号をかけた頂上決戦——“絶対王者”東邦学園対“最高の挑戦者”武蔵中学の一戦である。くしくも東京都都大会決勝と同カードとなったが、都大会では武蔵中学が勝利を収めている。そのため今回は、王者である東邦が挑戦者として武蔵に挑むという、これまでとは逆の構図となっていた。
最終日ということもあり、会場には学校関係者や保護者、教職員だけでなく、一般生徒の応援も解禁されていた。さらに多くのサッカーファンも押し寄せ、スタンドは試合前から満員の盛況ぶりを見せていた。
「今日で関東王者が決まるぞ!」
「下馬評通り、やっぱり武蔵と東邦が残ったな!」
「都大会は武蔵が勝ったが、今回はどうなるかな?」
「武蔵だろ?昨日の試合を見たか?翼抜きで東総からゴールを奪っているんだぞ。もう翼のワンマンチームとは言えないくらいチーム力が上がっている!」
「それを言うなら東邦もだろ!日向抜きで決勝まで勝ち上がってきたんだ。日向の代わりに岬が積極的にゴールを狙うようになってやがる。翼にひけをとらない存在感だぜ!」
スタンドが大きな歓声と議論で盛り上がる中、ピッチでは決勝戦に先立ち、3位決定戦が行われようとしていた。
武蔵中学は学校のグラウンドで軽く身体を動かしてから会場入りする日程となっていたが、数名だけが先行して前乗りし、3位決定戦を観戦することになっていた。その先遣隊メンバーは、翼、川村、マネージャーの青葉弥生と北野陽子、そして引率を務めるフィジカルコーチの浅田の5名であった。
一方、昨日の順位決定戦を制し、今日は完全に試合観戦に当てていた江ノ島中学の面々もスタンドに姿を見せていた。
そんな中、江ノ島中学のマネージャー・江口翔子と、1年の山村颯は買い出しに出ていた。
「翔子、なんで俺だけ制服なんだよ!」
「うるせえ、チアリーダーがいたら応援団は学ランだろ!」
「応援団って……武蔵の応援をするのかよ!大体お前だって制服じゃねえか!」
「当たり前だ。てめえだってナトゥレーザとやりたいんだろ!それにアタシはあとで着替えるんだよ!」
「まあ、それはそうだけどよ……。俺はお前と違って、それほどあいつにこだわっているわけじゃないぜ」
ぶつぶつと文句を言う颯だったが、通路の先で武蔵の先遣隊とばったり出くわした。
「君は、江ノ島の江口翔子さん。今日は試合観戦かい?」
翼が無邪気で爽やかな笑顔を向ける。予期せぬ再会に、翔子は動揺を隠せない。
「ま、まあな……!」
「翼君、江ノ島中学の子と知り合いに?」
弥生が不思議そうに尋ねると、翼は嬉しそうに頷いた。
「そうなんだ。昨日、江ノ島の試合前に偶然出会ったんだ。マネージャーをして頑張っているんだよ」
「そうなんだ。私は青葉弥生。同じマネージャー同士、頑張りましょう。この子は北野陽子さん。たぶんあなたと同じ学年だと思うわ」
「北野です。よろしくお願いします」
北野が丁寧に会釈をすると、翔子よりも先に颯が身を乗り出した。
「僕が再来年のキャプテン(自称)、山村颯です!北野さんは、好きな男性のタイプとかあるんですか!?」
「えっ……強くて優しい人、かな」
北野が悪気なく答えると、颯は胸を張って露骨にアピールを始めた。
「強くて優しい……!僕、こう見えて江ノ中の1年のボスなんですよ!でも弱い者いじめはせず、困っているやつがいたら真っ先に助けるんです。僕たち、気が合いそうですね!ハハハハハ!」
「颯、お前なんで柄にもねえ話し方してんだ?」
「い、いやだな翔子さん、僕は元々こんな喋り方じゃないか!」
必死に取り繕う颯に対し、弥生が優しく声をかけて会話を区切った。
「翼君、そろそろ3位決定戦が始まるよ」
「そうだね。じゃあ俺たちも行こうか。翔子さん、颯君、また会おう!」
「失礼します」
北野も会釈をして翼たちと共にスタンドへ向かって歩き出した。
残された翔子と颯は呆然と見送っていたが、すぐに我に返った。
「翔子!俺も気合入れて武蔵を応援するぜ!」
「アタシもそろそろ着替えるか」
二人は気合を入れ直し、江ノ島中学の応援席へと戻っていった。
そんなスタンドでの微笑ましいやり取りとは裏腹に、ピッチ上では3位決定戦『東総学院対城星学園』のキックオフの笛が鳴り響こうとしていた。
東総学院は、村田、カマラ、里見がスタートから出場し、星野はベンチスタート。対する城星学園も、エースの古川は昨日に続きベンチで戦況を見つめていた。
試合は終始、東総ペースで展開した。古川を欠いた城星の守備陣では、規格外の体躯と推進力を誇るカマラを止める術がない。前半はカマラの連続ゴールにより、東総が2−0とリードして折り返した。
ハーフタイムの間、学校での調整を終えた武蔵中学サッカー部の残りのメンバーが会場に到着し、翼たちと合流を果たした。
後半開始と同時に、城星は満を持して古川をピッチへ投入。古川の復帰により本来の精密なパスサッカーを取り戻した城星は、中盤を支配し始める。村田やカマラへのパスコースを遮断すると、怒濤の反撃を開始。古川と風見のゴールにより、あっという間に2−2の同点に追いついてみせた。
この展開を見た東総の立花監督は、即座に星野を投入。星野が中盤に入ることで東総は再びパス回しの主導権を奪い返し、ゲームのペースを再コントロールする。そして後半終盤、星野の極めて精度の高いラストパスから村田が勝ち越しゴールを叩き込んだ。
このゴールが決め手となり、3−2で東総学院が城星学園を下し、3位で今大会を終えることとなった。
激闘となった3位決定戦が終わり、場内アナウンスが決勝戦の開始を告げる。
「さあ、行くぞみんな!」
翼が力強く声を張り上げると、松山も不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
「俺たちの出番だ」
観客席から割れんばかりの拍手と歓声が湧き起こる中、武蔵中学と東邦学園。関東王者の座をかけた頂上決戦が、ついに幕を開ける。
決勝戦に向けて江ノ島中学とのほのぼのとした交流を取り入れてみました。
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