キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東大会最終日。第1試合の3位決定戦が終わり、いよいよ残すは運命の決勝戦のみとなった。
ピッチへ向けて武蔵中学と東邦学園の両チームが姿を現すと、スタンドの興奮は最高潮へと達した。
「来たぞ!武蔵だ!都大会同様、東邦を返り討ちだ!」
「東邦、都大会の雪辱を果たせ!頼むぞ松山!」
「おい、今日は日向もいるぞ!東邦もベストメンバーだぜ!」
ピッチ上でウォーミングアップを始める選手たちの姿を、ライバル校の面々もスタンドから鋭い視線で見つめていた。
明和東中学の沢木が、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「東邦は日向が出てきたか……。関東大会では対戦の機会がなかったが、全国では絶対に対戦して赤っ恥をかかせてやるぜ」
その明和東関係者のすぐ近くに、腕を組んで佇む吉良耕三の姿があった。それを目ざとく関係者席から発見したのは、日本サッカー協会の片桐であった。
(あれは吉良耕三……!やはり明和東の指導に何らかの影響を及ぼしているのは間違いない)
片桐は視線を明和東から外し、スタンドの別の区画に陣取る気になる4人組へと目を向けた。
(あれは、昨日圧倒的な力で九州大会を制した比良戸中学の次藤洋に佐野満、そしてオランダ人留学生のパトリック・ファン・デン・ベルクにマルク・ブロンデ・ファルクの“比良戸カルテット”……!既に全国の戦いは始まっているということか……)
一方、昨日全国大会への出場を決めた江ノ島中学のスタンドでは、少々異なる空気が流れていた。
主将の江口が、涙目になりながら頭を抱えて懇願している。
「おい、やめろ翔子!恥ずかしいだろ!」
そこには、鮮やかなチアリーダー姿に身を包み、ハチマキに“翼LOVE”の文字を躍らせた江口翔子の姿があった。
「うるせえな!兄貴だって東邦より武蔵に勝ってほしいだろうが!」
「それはそうだが……」
そこへ、クラブTシャツではなく学ランをビシッと着込み、ハチマキに“陽子命”と書いた1年の山村颯が胸を張って歩み寄ってきた。
「そうですよ大翔さん。やっぱ俺たちに勝った武蔵が勝たないと、俺たちまでなめられますよ!」
「それはわかるが、颯、お前までなんだその格好は?それに“陽子命”って何だ?」
すさかさず翔子がニヤニヤしながら口を挟む。
「颯のやつ、さっき武蔵のマネージャーに会ってさ。どうやらその子に惚れたみたいなんだよ!『再来年のキャプテン』とか柄にもなく『僕』なんて言ってやがったぜ!」
「べ、別にいいだろ!再来年のキャプテンは俺なんだし!あー、もう一度陽子ちゃんに会いたいぜ!」
その会話を聞き咎めた加藤が、猛然と反応した。
「おい翔子!その陽子ちゃんってのはどんな感じの子なんだ!?」
「ああ?髪は黒くてポニーテールだったな。どこかいいところのお嬢さんって感じだったぜ」
それを聞いた瞬間、加藤の顔色が変わり激昂した。
「おい颯!てめえ抜け駆けしやがって!陽子ちゃんは俺が先に目をつけていたんだ!それに『再来年のキャプテン』だと!?再来年のキャプテンは俺だ!てめえばっかにいいカッコさせてたまるかよ!俺も着替えてくる!」
ダッシュで着替えに走っていく加藤。その様子を、藤原と石川が呆れつつも温かい目で見守っていた。
「ったく、あいつら何しにここに来てるんだろうな。なあ彰」
「いいんじゃないか?ねえ赤城さん」
赤城は腕を組み、憮然とした表情で言い捨てた。
「フン!未熟者たちが!」
江ノ島中学の陣営は、完全なリラックスモードで決戦の時を待っていた。
ピッチ上に目を戻すと、ウォーミングアップを終えた両チームがそれぞれのベンチ前で最後のミーティングを行っていた。
武蔵中学ベンチ。監督の兵藤から的確な指示が飛ぶ。
「翼、コイントスでは先に東邦にボールを渡すんだ。おそらく開始早々、センターサークルから日向がシュートを打ってくる!」
「しかも、このシュートはわざと外す!」
一ノ瀬が驚きを隠せずに尋ねる。
「監督、どうしてそこまでわかるんですか?」
「おそらく日向がここにいるということは、左右の筋力バランスの調整に成功したんだと思う。だが、その過程は極めて過酷だったはずだ。だからこそ、人はその成果を他人に見せつけたいものさ。特に、その原因を作った俺たちに対してな!」
本間が深く頷く。
「なるほど……最初の挨拶代わりに一発お見舞いしてくるということか……」
「ふっ、どこまでもめでたいやつだな!切り札は最後まで取っておくからこそ切り札なのにな!」
火野が不敵に鼻で笑うと、兵藤も頷いた。
「竜馬の言う通りだ。だが、うちからしたら頼みもせずに手の内を見せてくれるんだから、ありがたい話さ」
兵藤はゴールキーパーの相川に向き直った。
「大和、センターサークルから打ってくるから距離はある。落ち着いて対応しろ。そして竜馬の“あのシュート”と比較して、スピードと威力を測定するんだ。そうすれば、不意を突かれない限り日向のシュートは止めることができる!」
「はい!」
「よし、行ってこい!」
一方の東邦学園ベンチ。
監督の北詰が、厳しい表情でイレブンを締め直していた。
「昨日のミーティング通りだ。中盤を制するんだ。それと日向、敵を侮るな。ピッチに立つ者は全て対等だ。そこに“格”など存在しない!」
「はい!」
日向が力強く返事をすると、最終ラインの松山が全員を見回して叫んだ。
「俺たちは王者東邦!同じ相手に連敗するなどあり得ないぞ!行くぞ!」
「「「おう!!」」」
主審の合図とともに、両チームの選手たちがピッチ中央へと整列する。
すれ違いざま、火野が日向をニヤリと見下ろして挑発した。
「よう!また芝生に寝転がりに来たか?」
「ふっ、今日はお前がその番だ!」
「おもしろい、やれるもんならやってみろ!」
火花を散らす二人のかたわらで、松山が翼と視線を交わした。
「翼、全国行きは決まっているが、王者の誇りにかけてお前たちを倒す!」
「松山君、悪いけどこの試合も俺たちが勝つ!」
武蔵中学対東邦学園。
宿命の二度目の対決が、今まさに始まろうとしていた。
武蔵VS東邦、2度目の対決が間もなく始まります。
※全国に向けて“九州王者”比良戸が偵察に現れました。原作にないオランダ人留学生が加わっています。この物語の世界線では、武蔵、東邦共に戦力強化しすぎて原作の次藤&佐野のコンビだけでは強キャラ感が出ないので魔改造しています。
次回投稿は18時です。