キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜   作:ロンゲスト・ロード

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関東大会決勝は、火野のドラゴンシュートが決まり、武蔵中学が先制する。血のにじむような特訓を経て身につけたタイガーショットよりも上のシュートをライバル火野が身につけていたことを見せつけられ、絶望の淵に沈む日向、しかし自ら現状を深く受け入れ、今はただゴールをあげることに全力をつくすことを誓うのであった。そして前半19分に新田のシュートのこぼれ球を押し込み同点に追いつく!


第91 話 三本柱

関東大会決勝は前半19分、新田の放ったシュートのこぼれ球に即座に反応した日向小次郎が執念でゴールへ押し込み、東邦学園が1−1の同点に追いついた。

ゴールが決まり、東邦イレブンがそれぞれのポジションへ戻る際、日向は岬太郎を静かに呼び止めた。

「岬、次のリスタート、翼はお前と俺に挑んでくるぞ。さっきと同じ技で俺たちを抜きに来るはずだ」

岬もまた、確信に満ちた眼差しで頷く。

「小次郎、それは僕も考えていたよ。翼君なら味方の士気を高めるために、絶対に同じ技を仕掛けてくる。しかも、すぐにね」

日向の唇に、ニヤリと不敵な笑みが浮かぶ。

「分かっているなら、翼の裏をかくぞ。ここで俺たちが勝てば、大きなチャンスが俺たちに回ってくる!」

「……小次郎、分かった。……翼君を僕が引きつけるから、フォローを頼むよ!」

「任せておけ。トップから連動してプレスをかける!」

武蔵ボールからのリスタート。

ボールが火野から一ノ瀬へ渡った瞬間、日向が怒涛の勢いで間合いを詰め、一ノ瀬に猛烈なプレッシャーをかけた。

「反町、続け!」

日向の叫びに呼応し、反町も一ノ瀬のコースを消しにかかる。パスコースを奪われた一ノ瀬を救うべく、翼が素早くヘルプに入った。一ノ瀬から翼へショートパスが渡る。

翼は鋭いステップで寄せてきた反町をかわした。日向の位置ならば翼へチェックに行けるタイミングであったが、日向はあえて追わず、距離を保った。

ベンチの兵藤監督が思わず立ち上がり、その真意に気づいて目を見開く。

(いけないぞ、翼!敵はお前を誘っているぞ!)

しかし、勢いに乗る翼はそのままドリブルで前進を続けた。

その前に、待機していた岬が立ち塞がる。盟友同士の1対1。翼は細かなタッチで揺さぶりをかけるが、岬は崩れない。

そこへナトゥレーザがフォローへと走り込んできた。翼は目線だけでナトゥレーザへパスを出す素振りを見せ、岬の意識が一瞬逸れた隙を見逃さず、一気に横を抜き去ろうとする。

だが、抜けたと思ったその瞬間——翼の視界の切り替わりを完璧に狙い澄ましていた日向が、鋭いタックルで飛び込んできた!

スパイクの裏を一切見せず、完璧な技術でボールだけをクリーンに刈り取る正当なタックル。強烈な衝撃に翼の身体が浮き上がるが、判定は文句なしのノーファウルであった。

ナトゥレーザのフォローがありながら、翼が岬と日向の連携によってボールを奪取された事実に、武蔵陣営に一瞬の動揺が走る。

日向は奪ったボールを、即座にフリーの岬へ短く預けた。

ボールを受けた岬は間髪入れずに左サイドへ展開。そこへ猛烈なスピードで駆け込んできたのはスピードスター・新田瞬である。新田はペナルティエリア中央へ向けて斜めに鋭く切り込んだ。

武蔵のDF真田信次がカバーに向かうが、真田が間合いを詰める直前、新田は右足のバックヒールでボールを後方へ流した。

そこへ走り込んでいたのは反町であった。

新田の斜めのランニングにつられる形で真田のみならず右SBの広瀬まで中央へ絞っていたため、武蔵の右サイドの外側には広大なスペースが生まれていたのだ。

フリーで抜け出した反町との距離を詰めるべく、広瀬が必死で間合いを詰める。だが反町はクロスを上げると見せかけ、軽い浮き球のパスを広瀬の頭上へと通した。

ふわりと放たれたボールが落ちるその先に、猛然と走り込んできた男がいた。

日向小次郎!

角度のないペナルティエリア内深くに侵入した日向は、ボールの落ち際を逃さず、迷いなく右足を振り抜いた!

ズドン!!と重厚な破壊音が響く。

放たれたタイガーショットは、キーパー相川の脇元を寸分の狂いもなくすり抜け、武蔵ゴールの左サイドネットへ激しく突き刺さった!

前半24分——東邦学園、電光石火の連続ゴールで2−1の逆転に成功!

「やったぞぉぉぉっ!!」

歓喜の声を上げて日向の元へと駆け寄る東邦イレブン。

だが、その歓喜の輪の中心へ、主将・松山光の厳格な一喝が飛んだ!

「1点リードしたくらいで安心するな!相手はすぐにひっくり返しにやってくるぞ!」

日向もすぐに表情を引き締め、仲間に向かって叫んだ。

「松山の言う通りだ!俺たち攻撃陣は、これくらいで満足するな!」

「はい!」

沢田と新田が力強く頷く。岬も微笑みながら日向に言葉をかけた。

「チャンスは何度でも作るよ、小次郎」

一方、2点目を奪われた武蔵イレブンは、失点直後にもかかわらず冷静さを保ち、主将の翼を中心にすばやく集まって作戦を整理していた。

翼が真剣な表情でナトゥレーザやDF陣に語りかける。

「向こうは完全にうちのディフェンスを崩してからシュートを打ちに来ている」

「だけど、最後は日向君だ!日向君に来る前の動きにつられないように潰していこう」

「こちらもボールを動かしながら、ゴールに迫るぞ!」

武蔵ボールでのリスタート。

今度は一ノ瀬からFWの火野へとボールが渡る。

火野は翼へボールを預けるような素振りと体勢を見せた。東邦の反町がたまらず翼のマークへと向かう。しかし火野はその瞬間、素早く反転して自ら力強いドリブルで前進!そのまま中央のナトゥレーザへ鋭いパスを送り込んだ!

ナトゥレーザの前に沢田タケシが立ちはだかるが、ナトゥレーザは一瞬の足技で何なくこれをかわしてみせる。

「翼!」

ナトゥレーザが叫ぶ。翼が即座に近寄るが、ここには岬がぴったりと張り付いていた。ナトゥレーザが選択したのは、前線の火野!

ナトゥレーザと火野による高速のワンツーパスで、東邦の強固なディフェンスブロックを次々と破っていく!

スタンドから興奮の歓声が上がる!

「ナトゥレーザと火野のコンビプレイだ!」

「火野のヤツ、シュートだけじゃなく何でもできるぜ!」

ペナルティエリア手前まで迫った武蔵攻撃陣。その前に立ちはだかったのは、東邦が誇る最後の砦——松山光と若島津健であった!

松山は執念のディフェンスで火野に激しく食らいつき、決定的なシュートコースを完璧に削り取っていく。

火野が歯噛みする。

「やるな……だが、これはどうだ!」

火野は強引に打つと見せかけ、右サイドへボールを叩いた。走り込んできたのは右サイドの川村。川村は精度の高い左足で、間髪入れずに低空のクロスをペナルティエリア内へ放り込んだ!

そこへ飛び込んできたのはナトゥレーザ!

しかし、その弾道を完璧に読み切っていた守護神・若島津が、ジャンプ一番、空中へ鋭く跳び上がった!

「舐めるなっ!」

凄まじい握力でボールを完全にキャッチ!決定的なピンチを凌ぎ切った!

「若島津!」

松山がすかさずパスを要求する。

火野やナトゥレーザが前線に残っており、武蔵陣内は数的不利の状況。東邦の高速カウンターが発動する!

松山の前には大空翼が立ちはだかろうとするが、松山は無理に勝負せず、素早いロングパスを前線へ供給した。ボールはフリーで中盤を駆け上がる岬太郎へ!

ボールを受けた岬は、パスもシュートも自由に選択できる絶好の態勢に入った。しかし、岬は急がずドリブルを継続する。

武蔵のCB井川は日向へボールが渡るのを警戒して日向に張り付き、もう一人のCB真田が岬へ対峙した。だが、パスかシュートか絞り切れない真田は無理に飛び込めず、ジリジリとラインを下げるしかない。

その瞬間、岬が足を振り抜いた!

放たれたのは地を這うようなグラウンダーのミドルシュート!

前方に立ちふさがっていた真田が完全にブラインドとなり、キーパー相川の反応が一瞬遅れる!

コースを突いた球威あるボールは、そのまま相川の差し伸ばした手先をすり抜け、武蔵ゴールの右隅へと鮮やかに吸い込まれた!

3−1!

前半終了間際、東邦学園が鮮やかなカウンターから決定的な追加点を奪い取った!

ベンチでその光景を見つめていた大沢コーチが、感嘆の声を漏らす。

「日向が化けたか……攻めの柱・日向、守りの柱・松山、そしてそれらをつなぐ中盤の柱・岬……。東邦の“三本柱”が完全に揃ったな!」

ここで、前半終了を告げる長いホイッスルがピッチに響き渡った。

関東大会決勝は、あの屈辱的な都大会決勝の展開とは完全に逆の形で、東邦学園が2点をリードして前半を折り返すこととなった。

武蔵中学の後半の反撃はあるのか!?

それとも勢いに乗る東邦学園が、このままさらに追加点を奪い突き放すのか!?

 




本日も3話投稿です。次は12時頃です。
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