キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
関東大会決勝は前半19分、新田の放ったシュートのこぼれ球に即座に反応した日向小次郎が執念でゴールへ押し込み、東邦学園が1−1の同点に追いついた。
ゴールが決まり、東邦イレブンがそれぞれのポジションへ戻る際、日向は岬太郎を静かに呼び止めた。
「岬、次のリスタート、翼はお前と俺に挑んでくるぞ。さっきと同じ技で俺たちを抜きに来るはずだ」
岬もまた、確信に満ちた眼差しで頷く。
「小次郎、それは僕も考えていたよ。翼君なら味方の士気を高めるために、絶対に同じ技を仕掛けてくる。しかも、すぐにね」
日向の唇に、ニヤリと不敵な笑みが浮かぶ。
「分かっているなら、翼の裏をかくぞ。ここで俺たちが勝てば、大きなチャンスが俺たちに回ってくる!」
「……小次郎、分かった。……翼君を僕が引きつけるから、フォローを頼むよ!」
「任せておけ。トップから連動してプレスをかける!」
武蔵ボールからのリスタート。
ボールが火野から一ノ瀬へ渡った瞬間、日向が怒涛の勢いで間合いを詰め、一ノ瀬に猛烈なプレッシャーをかけた。
「反町、続け!」
日向の叫びに呼応し、反町も一ノ瀬のコースを消しにかかる。パスコースを奪われた一ノ瀬を救うべく、翼が素早くヘルプに入った。一ノ瀬から翼へショートパスが渡る。
翼は鋭いステップで寄せてきた反町をかわした。日向の位置ならば翼へチェックに行けるタイミングであったが、日向はあえて追わず、距離を保った。
ベンチの兵藤監督が思わず立ち上がり、その真意に気づいて目を見開く。
(いけないぞ、翼!敵はお前を誘っているぞ!)
しかし、勢いに乗る翼はそのままドリブルで前進を続けた。
その前に、待機していた岬が立ち塞がる。盟友同士の1対1。翼は細かなタッチで揺さぶりをかけるが、岬は崩れない。
そこへナトゥレーザがフォローへと走り込んできた。翼は目線だけでナトゥレーザへパスを出す素振りを見せ、岬の意識が一瞬逸れた隙を見逃さず、一気に横を抜き去ろうとする。
だが、抜けたと思ったその瞬間——翼の視界の切り替わりを完璧に狙い澄ましていた日向が、鋭いタックルで飛び込んできた!
スパイクの裏を一切見せず、完璧な技術でボールだけをクリーンに刈り取る正当なタックル。強烈な衝撃に翼の身体が浮き上がるが、判定は文句なしのノーファウルであった。
ナトゥレーザのフォローがありながら、翼が岬と日向の連携によってボールを奪取された事実に、武蔵陣営に一瞬の動揺が走る。
日向は奪ったボールを、即座にフリーの岬へ短く預けた。
ボールを受けた岬は間髪入れずに左サイドへ展開。そこへ猛烈なスピードで駆け込んできたのはスピードスター・新田瞬である。新田はペナルティエリア中央へ向けて斜めに鋭く切り込んだ。
武蔵のDF真田信次がカバーに向かうが、真田が間合いを詰める直前、新田は右足のバックヒールでボールを後方へ流した。
そこへ走り込んでいたのは反町であった。
新田の斜めのランニングにつられる形で真田のみならず右SBの広瀬まで中央へ絞っていたため、武蔵の右サイドの外側には広大なスペースが生まれていたのだ。
フリーで抜け出した反町との距離を詰めるべく、広瀬が必死で間合いを詰める。だが反町はクロスを上げると見せかけ、軽い浮き球のパスを広瀬の頭上へと通した。
ふわりと放たれたボールが落ちるその先に、猛然と走り込んできた男がいた。
日向小次郎!
角度のないペナルティエリア内深くに侵入した日向は、ボールの落ち際を逃さず、迷いなく右足を振り抜いた!
ズドン!!と重厚な破壊音が響く。
放たれたタイガーショットは、キーパー相川の脇元を寸分の狂いもなくすり抜け、武蔵ゴールの左サイドネットへ激しく突き刺さった!
前半24分——東邦学園、電光石火の連続ゴールで2−1の逆転に成功!
「やったぞぉぉぉっ!!」
歓喜の声を上げて日向の元へと駆け寄る東邦イレブン。
だが、その歓喜の輪の中心へ、主将・松山光の厳格な一喝が飛んだ!
「1点リードしたくらいで安心するな!相手はすぐにひっくり返しにやってくるぞ!」
日向もすぐに表情を引き締め、仲間に向かって叫んだ。
「松山の言う通りだ!俺たち攻撃陣は、これくらいで満足するな!」
「はい!」
沢田と新田が力強く頷く。岬も微笑みながら日向に言葉をかけた。
「チャンスは何度でも作るよ、小次郎」
一方、2点目を奪われた武蔵イレブンは、失点直後にもかかわらず冷静さを保ち、主将の翼を中心にすばやく集まって作戦を整理していた。
翼が真剣な表情でナトゥレーザやDF陣に語りかける。
「向こうは完全にうちのディフェンスを崩してからシュートを打ちに来ている」
「だけど、最後は日向君だ!日向君に来る前の動きにつられないように潰していこう」
「こちらもボールを動かしながら、ゴールに迫るぞ!」
武蔵ボールでのリスタート。
今度は一ノ瀬からFWの火野へとボールが渡る。
火野は翼へボールを預けるような素振りと体勢を見せた。東邦の反町がたまらず翼のマークへと向かう。しかし火野はその瞬間、素早く反転して自ら力強いドリブルで前進!そのまま中央のナトゥレーザへ鋭いパスを送り込んだ!
ナトゥレーザの前に沢田タケシが立ちはだかるが、ナトゥレーザは一瞬の足技で何なくこれをかわしてみせる。
「翼!」
ナトゥレーザが叫ぶ。翼が即座に近寄るが、ここには岬がぴったりと張り付いていた。ナトゥレーザが選択したのは、前線の火野!
ナトゥレーザと火野による高速のワンツーパスで、東邦の強固なディフェンスブロックを次々と破っていく!
スタンドから興奮の歓声が上がる!
「ナトゥレーザと火野のコンビプレイだ!」
「火野のヤツ、シュートだけじゃなく何でもできるぜ!」
ペナルティエリア手前まで迫った武蔵攻撃陣。その前に立ちはだかったのは、東邦が誇る最後の砦——松山光と若島津健であった!
松山は執念のディフェンスで火野に激しく食らいつき、決定的なシュートコースを完璧に削り取っていく。
火野が歯噛みする。
「やるな……だが、これはどうだ!」
火野は強引に打つと見せかけ、右サイドへボールを叩いた。走り込んできたのは右サイドの川村。川村は精度の高い左足で、間髪入れずに低空のクロスをペナルティエリア内へ放り込んだ!
そこへ飛び込んできたのはナトゥレーザ!
しかし、その弾道を完璧に読み切っていた守護神・若島津が、ジャンプ一番、空中へ鋭く跳び上がった!
「舐めるなっ!」
凄まじい握力でボールを完全にキャッチ!決定的なピンチを凌ぎ切った!
「若島津!」
松山がすかさずパスを要求する。
火野やナトゥレーザが前線に残っており、武蔵陣内は数的不利の状況。東邦の高速カウンターが発動する!
松山の前には大空翼が立ちはだかろうとするが、松山は無理に勝負せず、素早いロングパスを前線へ供給した。ボールはフリーで中盤を駆け上がる岬太郎へ!
ボールを受けた岬は、パスもシュートも自由に選択できる絶好の態勢に入った。しかし、岬は急がずドリブルを継続する。
武蔵のCB井川は日向へボールが渡るのを警戒して日向に張り付き、もう一人のCB真田が岬へ対峙した。だが、パスかシュートか絞り切れない真田は無理に飛び込めず、ジリジリとラインを下げるしかない。
その瞬間、岬が足を振り抜いた!
放たれたのは地を這うようなグラウンダーのミドルシュート!
前方に立ちふさがっていた真田が完全にブラインドとなり、キーパー相川の反応が一瞬遅れる!
コースを突いた球威あるボールは、そのまま相川の差し伸ばした手先をすり抜け、武蔵ゴールの右隅へと鮮やかに吸い込まれた!
3−1!
前半終了間際、東邦学園が鮮やかなカウンターから決定的な追加点を奪い取った!
ベンチでその光景を見つめていた大沢コーチが、感嘆の声を漏らす。
「日向が化けたか……攻めの柱・日向、守りの柱・松山、そしてそれらをつなぐ中盤の柱・岬……。東邦の“三本柱”が完全に揃ったな!」
ここで、前半終了を告げる長いホイッスルがピッチに響き渡った。
関東大会決勝は、あの屈辱的な都大会決勝の展開とは完全に逆の形で、東邦学園が2点をリードして前半を折り返すこととなった。
武蔵中学の後半の反撃はあるのか!?
それとも勢いに乗る東邦学園が、このままさらに追加点を奪い突き放すのか!?
本日も3話投稿です。次は12時頃です。