「鋼流少年、一応聞いておくがあれが君が見たヴィランで間違いないかい」
「ええ、間違いないですね……」
視線の先、次々とヴィランが現れて来る黒い霧。ワープのような個性だという事は分かっていたが、此処まで大規模かつ大量に人間を転送出来る個性は個性社会の現代でも極めて希少な部類になるだろう、それがヴィラン側にいるというのは何とも言えなくなる。
「オールマイトさん、俺が先陣を切って乱します。その混乱の隙を狙って飛び込んできてください、初動さえ上手く行かなければ一瞬で制圧できるはずだ」
「了解!!」
「13号、お前は生徒を守れ」
「分かりました、任せてください」
「鋼流、一つ寄こしてくれ」
「それでは―――」
シリンダーを更に一つ開けながらも相澤が巻いている布へと金属を纏わせていく、布の先端にメタリックな光沢が生まれていく。液体金属でコーティングされているそれを手にしながらも相澤はゴーグルを装着する。
「ハルドメルグ、お前も来い。明らかにお前も狙われている、だったら囮として動け」
「ヒィ~厳しいお言葉で」
「オールマイトも来てくれる、下手な所より安全だ」
「ハハッ確かに、俺の安全以外はね」
「せ、先生に鋼流さん!!」
今にも飛び出して行きそうな二人を制止するような声を上げる緑谷。その顔にはこの状況の危険性や此方にとっての都合の悪さというのが確りと見えている顔をしていた。
「イレイザーヘッドの戦術は個性を消して一瞬の隙を付いての捕縛が大前提な筈、正面先頭は……オールマイトがいるからって危険すぎます!!」
「違うね緑谷、だからこそ俺がいる」
「覚えておけ緑谷、ヒーローは一芸じゃ成り立たない」
そして互いに頷き合うと、一気に階段を飛び降りてヴィランたちの元へと突撃していく。一息に階段を下りていく姿を見たヴィランらは射撃系の個性と思われる集団が構えを取った。向かって来るならば狙い撃ちにしてやると言わんばかりに指や髪、そして身体を向けて来る。
「情報じゃ13号とオールマイトだけじゃなかったかぁ!!」
「知るかぶちかませぇ!!」
「オオオオリャ死ねぇ!!!」
「こう見るとマジで爆豪ってあっちよりの言動だなァ……」
「んだとテメェ!!!?」
遠くから爆豪の声が聞こえて来るが、そういう所だよ、と思いながら刀を構える。そして一斉発射される射撃個性の弾幕、駆け抜けながらも相澤が自分の後ろに付きながらも鋼流は刀を振り回し始める。傍からみたら矢鱈と刀を振り回しているように見えているが―――それらは正確に放たれる攻撃を的確に弾き、切り裂いて無力化していく。
「嘘だろ!!?」
「なんであんな曲芸染みた事が出来んだよ!!?」
「撃たれたんだぞテメェ!!?」
弾を弾けるなんて映画の中だけにしとけ!!と言わんばかりに罵詈雑言をぶつけて来るヴィラン達だが、その直後に身体に布が巻きつけられると一気に互いの頭部同士が激突して意識を手放した。
「ねぇ相澤先生、やっぱりあの訓練って頭可笑しかったんじゃ……」
「以前のお前もやってた事だ」
「うわ、レゼの言ってたことマジだったんだ……」
「不満か?」
「今活用できてるんで、何も、言えねえっす!!!」
再度、飛んできた弾丸を切り弾く。訓練ではレゼの放つ爆破弾を弾く事を強要されて続けていた。爆破による閃光もある上に威力も半端なものではなかったのでただの弾丸ならば対処は容易い。
「なんだこいつ遠距離個性が利かねぇぞ!!?」
「だったら、俺達みたいな異形系の!!!」
「出番って訳だぁ!!!」
腕が4本あるヴィランと脚が4本あるヴィランが同時に攻めて来る、確かに単純な遠距離攻撃系よりも容易くはないかもしれないが―――そっちで別に不得意なんて事はない。身体を捻りながらも、全力で腕を振り回すと刀の形状変化してしなる鞭へと変貌してヴィランへと一気に巻き付く。
「「んな、アアアアッ!!!?」」
「相澤先生!!」
「ナイストス」
相澤の方へと投げるとそれへと布を巻きつけながらも、勢いを殺さぬようにコースを変更して別のヴィランへとぶつけて撃破する。その最中にも個性を発動させようとしていたヴィランへと瞳を向けると、それによって個性が発動しなくなってヴィランが困惑するところへ布が鞭のように顎へ炸裂して意識を刈り取る。
「油断すんな、こいつ、見ただけで個性を消しちまうイレイザーヘッドだ!!」
「じゃあこいつがハルドメルグか!!?」
「だったらこいつが最優先ターゲットの―――「SMAAAAAAAASH!!!」ギャアアアアアッ!!!?」
一人のヴィランが鋼流へと向かおうとした瞬間、そこへドロップキックをしながら飛び込んで来たオールマイト。それによってヴィランは遥か彼方のUSJの外壁へとぶっ飛ばされてめり込んだ。ぴくぴくと痙攣している事からまだ生きている事が分かる。
「HAHAHA!!やるなぁ鋼流少年!!」
「もう来ちゃったんすか!?もうちょっとかき乱してから来ると思ってたんですけど」
「同感だ。なんでこのタイミングなんですか」
「あれトチった!?」
「「もういいからそのまま暴れてください」」
「結構息ピッタリだな君達!!?うおっ!!?」
そんな所へ飛び込んで来たの黒い闇、と誤認する程に黒い肌で脳が剥き出しになっている巨漢。それは目にもとまらぬスピードでオールマイトへと殴り掛かった、それは近くにいた鋼流と相澤が風圧で身構えてしまう程だった。
「中々、のパワーだな……だがっ!!!SMAAAAAAASH!!!」
「ッ―――……!!!!!」
飛び込んで来たヴィランの身体へと突き刺さっているように添えられていた手。実体験済みの鋼流は思わずうめき声にも似た声を出してしまった、相手の異様なスピード、それにあわせて受け止めながらも手を相手に置いてスマッシュを放っていた。当人も驚いていたというのに……これが№1ヒーローかと思わせる物がそこにあった、が
「ぬっ!!?」
その一撃を受けても尚、動きを止めるのはほんの一瞬だった。即座に活動を再開して再び殴り掛かって来た、そのまままるでドラゴンボールのような激しい殴り合いへと移行するオールマイトだが、幾ら拳を顔面に叩きつけても平然としている姿に個性かっ!!と叫ぶ。
「オールマイッ鋼流上だ!!!」
「何ぃ!!?」
頭上から降って来たのは脳剥き出しの巨漢と同じように待機していた全身が岩の肌のようになっている上に棘だらけのヴィラン。それがまるで隕石のように降って襲い掛かって来た。
「こいつっなんてパワーなんだ……!!」
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
そのまま背中に折りたたんでいたのか翼を広げると一気に加速して押し込んで来る、思わずうめいてしまう程のパワーに抑えれながらも刀の形を変化させ、自らの腕と融合、更に狂人で太い物を生み出してそれに対抗するが、それでも押し切れる。
「こいつッ……!!!」
「鋼流少年!!行かせないつもりか……!!」
「鋼流!!くそ……!!」
援護に入ろうとした二人をヴィランが止める、まるで鋼流の力を持ってみたがっているかのような動きに舌打ちが聞こえる、その先で死柄木弔は黒霧に他の生徒が逃げないように指示を出しつつも組み合っているハルドメルグと自分に与えられた切り札の一枚の戦いを見ながらも、ある話を思い出していた。
『いいかい弔、あれはオールマイトの先輩のような物でもあるんだ』
『オールマイトの……どういう事だよ』
『この国には明確な僕という脅威があった、それを止めようとしたのはヒーローだけではない。国は如何したと思う?あれはね弔……残骸なのさ、Children for Peaceという計画のね』