「…お、起きた。」
…どこだろうか、ここは。
「保健室。あの後搬送された。もうすぐ表彰式だけど…どう、1人で動けそう?」
…あぁ、耳郎さんか。まぁ動け…は…す…
「…無理…かな…」
「…なんでそうアンタは…肩貸すから一緒に行くよ。」
ようやく意識がはっきりしてきた。
「…そういえば耳郎さん、決勝の勝敗は?」
「…まぁアンタが勝った…かな…一応…」
「…一応?」
勝敗に一応なんて有るのか?
「アンタ等2人共壁に叩き付けられてて場外判定。今協議してる最中だけど、クラス内や他の所で意見が真っ二つに割れてる。ちなみにウチはアンタが勝ったと思ってる。後轟とか尾白とか、障子とか。」
「…おぉ。」
「おぉじゃないでしょ。」
『レディース!アンド!ジェントルメン!!大変長らく待たせてすまなかった!!さっきようやく審判団の協議結果が出たところだ!良く聞けリスナー!!』
プレゼントマイク先生の声。病み上がり前の頭には少し響くが我慢。
『さて、全員疑問だっただろ!あの激闘の後にどうやって決着を付けるのか!そしてそれはいつになるのか!皆聞きたくてウズウズしてると思うが…一先ず待って欲しい。1つ言わなきゃならねぇ事がある。』
…決着?まだ勝敗がついていないのか?
『不知火と爆豪の容体についてなんだが…知っての通り雄英には世界最高のドクターがいるから怪我に関しては問題無い。2人共後に残るタイプのアレにはならねぇって見込みだ。』
…良かった。体育祭であんな無茶して後遺症なんて洒落にすらならない。
『…だが!非常に残念な事に、2人共『今日中』の再戦は難しいらしい。今日1日で体力をほぼ使い切って治療用の体力以外残っていない…つまるところ、2人揃ってドクターストップって訳だ。』
…まぁそれはそうだろう。この状態で動けと言われたら本当に死にかねない。
だが観客はその結末にご不満のようだ。
…本当に動けないが?
『…だが、』
…だが?
『お前等に1つ聞きたい事がある。
決める必要、有るか?』
…?
『確かにこれは体育祭だ。競い合って優劣を付ける。そして最高の成績を獲った奴を皆で讃える。実際それが正しい在り方ってモンだと思うし、現に今まではそうしてきた。』
…まさか…
『けどなお前等…さっきの試合を見て思わなかったか?
1つ1つの動きがベストバウトだったあの試合を火種に、心の中に火が付かなかったか?リスナー諸君の心の中が燃え上がらなかったか!?』
『テッペン決めんのも確かに大事だ!だがな!お前等思っただろ!『どっちが勝ってもおかしくねぇ』って!!ならよ!!
『どっちも勝ってもおかしくねぇ』って書き換えたって良いだろ!?』
『あんな良い試合を魅せてくれた奴等に優劣付けるなんて無粋だよな!?んな事あって良い訳無いよな!?たまには良いじゃねーか1位が2人いたって!!暴挙もクソも知ったこっちゃ無ぇ!!だからここに宣言する!!今年度、雄英体育祭1年の部、優勝者は!!
爆豪 勝己 及び 不知火 炎星!両名に決定だ!!
さぁリスナー諸君!この雄英の歴史を塗り替えた両雄を全力で讃え!盛大な拍手を!!』
…嘘だろ?
「ほら、行ってら。1位おめでとう。」
「…耳郎さんは知ってたのか?」
「いや全く知らなかった。今初めて知った。…けど、なんとなくこうなりそうだなーとは思ってた。」
「…成程。爆豪君は納得しているのだろうか?」
「さぁ?渋々受け入れる気はするけど。」
「…それもそうか。」
「■■■■!!■■■■!!!」
…全く納得していないな爆豪君?
それぞれの円柱が独立したコンクリ製の特殊な形の表彰台。
その内高い2本の片方の上に彼は固定されていた。
全身を対凶悪敵用の拘束具で覆い、口には猿轡。挙句の果てに後ろに備えられたコンクリの柱に鎖で括り付けられていた。…うるさい。
「…緑谷君。どうにかして爆豪君を黙らせる事は出来るだろうか?というか何を言っているんだ彼は。」
「…ごめん、不知火君。何を言っているかは分かるけどそのまま伝える事は出来ないかな。後止める事も出来ない。」
…さて、表彰式と行こうか。
「現実逃避しても何も変わらないと思うよ!?」
『さぁ、それじゃあいよいよ表彰式を始めるわよ!』
ようやく始まってくれた。流石に彼もこうなると騒がない。
『今回メダルを授与してくれるのは…勿論、この人!
「私が!!メダルを持ってき『我等がヒーロー!オールマイト!!』…来た…のに…」
…可哀想だ。
「…さて!次は不知火少年だな!」
…不味い。表彰式なのに少し気絶していた。轟君と常闇君の授与の瞬間を見逃した。
「HAHAHA、まだ病み上がりだろう。楽にすると良い。
…今日1日、見させてもらったよ。正直言うと驚いた!まだ1年生なのにこんなに動けるのかとね!相澤君が何度か言ってたように、君は戦闘力だけなら十分プロでも通用する。だがあんまり無茶し過ぎるのは駄目だぞ!ヒーローは最後に立っていてこそだからね!
…だが優勝は優勝だ、おめでとう!不知火少年!」
「…ありがとうございます!」
…危ない、もう少しで感極まって泣く所だった。
「…さて、次は爆豪少年だが…これはあんまりだな。」
そう言って猿轡を外すオールマイト。正直言って外さないで欲しい。
「…さて、爆豪少年!優勝おめでとう「要らねぇ!」」
突如叫ぶ爆豪君。かなり頭に響くから辞めて欲しい。
「意味無ぇんだよ!オールマイト!こんな…なぁなぁの形での!決着すら無ぇ1位なんて!!誰にも文句言わせねぇような、俺が満足するような1位じゃねぇと…!」
…
「大したものだ。常に他者からの相対的評価に晒されるこの世界で、絶対的評価を心に持ち続けられる者はそう多くない。…だが、1つ訂正しなければならない事がある。あの試合を見て『なぁなぁ』で済ませる人などいないという事を!」
「君と不知火少年のぶつかり合いは、誰も否定出来ない程に全力だった。それは実際戦った君が誰よりも知っているはずだ。君にとっては中途半端以外の何物でもないかもしれないが、その『中途半端』な試合が皆の心を燃やしたんだ。」
「トップを目指すなら覚えておくと良い。常に自分の納得する結果にはならないかもしれないが、常に皆が納得する結果にはする。それが大事だ。結果に納得出来ないと言うならば、
…流石の爆豪君もそこまで言われたら拒否出来ないのだろう、素直に首に掛けられていた。
「さぁ皆さん、今回は彼等だった!しかし!この場に居る誰しもが、ここに立つ可能性を秘めていた!ご覧頂いた通り!競い!高め合い!更に先へと昇って行くその姿!!次代のヒーロー達は確実にその芽を伸ばしている!!」
…次代のヒーロー、か。確かに、ヒーローは最後に立っていてこそだ。もう少し、頑張らないといけないな。
「てな感じで最後に一言! それではみなさん、ご唱和ください……」
『Plus Ul「お疲れ様でした!!」tra!!』
「…オールマイト先生?」
「…いや何、疲れたかなぁってね?ほら特に君達はさ」
…締まらないな。
ようやく体育祭を終わらせる事が出来ました。とても難産でしたね。あの結末は体育祭を始めた頃からなんとなく決めていました。なんとか形にする事が出来て良かったです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ちなみに不知火君の立ち絵が描き上がりました。
【挿絵表示】
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