キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

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平和になったので、戦車でパンを買いに行く

 

朝。

 

キヴォトス。

 

今日も。

 

平和だった。

 

シャーレの窓から差し込む朝日。

 

鳥の鳴き声。

 

遠くから聞こえる、生徒たちの話し声。

 

そして。

 

ゴォォォォォォォォォ……

 

大地を震わせる。

 

巨大なエンジン音。

 

先生。

 

「…………」

 

コーヒーを一口。

 

「…………」

 

もう一口。

 

そして。

 

窓の外を見る。

 

そこには。

 

巨大な戦車がいた。

 

レマン・ラス。

 

帝国軍の主力戦車。

 

その砲塔の上。

 

ネルが立っている。

 

「先生ー!!」

 

先生。

 

「…………」

 

「何してるの?」

 

ネル。

 

「パン買いに行く!」

 

先生。

 

「歩いて行きなさい」

 

ネル。

 

「嫌だ!」

 

先生。

 

「どうして?」

 

ネル。

 

「戦車があるから!」

 

先生。

 

「その理屈はおかしい」

 

レマン・ラスの横。

 

キメラ装甲兵員輸送車。

 

その上には。

 

ミカ。

 

「先生ー!」

 

先生。

 

「ミカまで……」

 

ミカ。

 

「私もパン買いに行く!」

 

先生。

 

「普通に行けばいいでしょ?」

 

ミカ。

 

「でも!」

 

ミカが。

 

キメラを指差す。

 

「これならみんな乗れるよ!」

 

先生。

 

「…………」

 

「何人乗るつもり?」

 

ミカ。

 

「えーっと」

 

周囲を見る。

 

ネル。

 

シロコ。

 

ヒナ。

 

アカネ。

 

カリン。

 

ウタハ。

 

そして。

 

いつの間にか来ていたユウカ。

 

ミカ。

 

「全員!」

 

ユウカ。

 

「私は乗りません!」

 

先生。

 

「僕も乗らないよ」

 

ネル。

 

「なんで!?」

 

先生。

 

「パンを買うだけだからだよ!」

 

その横。

 

シロコ。

 

「先生」

 

先生。

 

「何?」

 

シロコ。

 

「自転車なら」

 

「うん」

 

「普通に乗っていける」

 

先生。

 

「そうだね」

 

「でも」

 

シロコ。

 

「戦車なら」

 

先生。

 

「……」

 

「速い」

 

先生。

 

「戦車のほうが遅いよ」

 

シロコ。

 

「……」

 

「そうなの?」

 

先生。

 

「道路を走るならね」

 

シロコ。

 

「…………」

 

少し考える。

 

「じゃあ」

 

先生。

 

「うん?」

 

「キメラ」

 

先生。

 

「それもダメ」

 

ユウカ。

 

「そもそも!」

 

全員。

 

「?」

 

ユウカ。

 

「なぜ朝から戦車がシャーレ前にあるんですか!」

 

先生。

 

「僕も知らない」

 

ネル。

 

「俺が持ってきた」

 

ユウカ。

 

「どうやって!?」

 

ネル。

 

「普通に運転して」

 

ユウカ。

 

「普通じゃありません!」

 

先生。

 

頭を抱える。

 

帝国兵器編が終わって。

 

もうしばらく経つ。

 

当初。

 

先生は。

 

「危険な兵器を管理しなければ」

 

と思っていた。

 

しかし。

 

問題は。

 

兵器そのものではなかった。

 

キヴォトスの生徒たちが。

 

あまりにも早く。

 

それを日常へ取り込んでしまったことだった。

 

最初。

 

ボルトガン。

 

「すごい!」

 

次。

 

チェーンソード。

 

「かっこいい!」

 

その次。

 

ラスキャノン。

 

「これ何に使う?」

 

そして。

 

戦車。

 

「乗りたい!」

 

航空機。

 

「乗りたい!」

 

インペリアル・ナイト。

 

「乗りたい!」

 

先生。

 

「…………」

 

今では。

 

こうなった。

 

シャーレの敷地内。

 

帝国軍車両用駐車場。

 

レマン・ラス。

 

キメラ。

 

バジリスク。

 

ハンター。

 

ハイドラ。

 

そして。

 

なぜか。

 

「来客用」

 

と書かれた場所。

 

そこに。

 

小型の装甲車が一台。

 

先生。

 

「…………」

 

「誰が作ったの?」

 

ウタハ。

 

「私です」

 

先生。

 

「どうして?」

 

「日常利用を想定して」

 

先生。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「日常利用!?」

 

ウタハ。

 

「先生」

 

「うん?」

 

「実際、便利ですよ」

 

「そう?」

 

「悪天候でも移動できます」

 

「うん」

 

「装甲があります」

 

「うん」

 

「積載量も十分」

 

「うん」

 

「燃費以外は優秀です」

 

ユウカ。

 

「その『燃費以外』が問題なんです!」

 

ネル。

 

「じゃあ行こうぜ!」

 

先生。

 

「どこへ?」

 

「パン屋」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「…………」

 

先生。

 

「ネル」

 

「何?」

 

「戦車でパン屋に行く理由を一つ挙げて」

 

ネル。

 

「楽しい」

 

先生。

 

「却下」

 

ネル。

 

「かっこいい」

 

「却下」

 

「強い」

 

「パンを買うのに強さはいらない」

 

「…………」

 

ネル。

 

「じゃあ」

 

先生。

 

「?」

 

「敵が来たら?」

 

先生。

 

「来ないよ」

 

ネル。

 

「…………」

 

先生。

 

「平和なんだから」

 

ネル。

 

「…………」

 

少し。

 

考える。

 

そして。

 

ネル。

 

「じゃあ」

 

「うん?」

 

「パンだけ買って帰る」

 

先生。

 

「最初からそうして」

 

その時。

 

シャーレの通信機が鳴る。

 

ピッ。

 

『先生』

 

ヒナ。

 

先生。

 

「ヒナ?」

 

『はい』

 

「どうしたの?」

 

『少し問題が』

 

先生。

 

「また?」

 

『はい』

 

先生。

 

「何?」

 

『基地のほうで』

 

「うん」

 

『インペリアル・ナイトが起動しました』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうして?」

 

『分かりません』

 

先生。

 

「誰か乗ってる?」

 

『いえ』

 

「じゃあ」

 

『無人です』

 

先生。

 

「…………」

 

嫌な予感。

 

先生。

 

「動いてる?」

 

『はい』

 

先生。

 

「どこへ?」

 

ヒナ。

 

『…………』

 

「ヒナ?」

 

『シャーレへ向かっています』

 

先生。

 

「…………」

 

全員。

 

「…………」

 

先生。

 

「なんで?」

 

『分かりません』

 

ネル。

 

「先生」

 

先生。

 

「うん」

 

ネル。

 

「パン」

 

「後にして」

 

「でも」

 

「後!」

 

ネル。

 

「分かった」

 

シャーレ基地。

 

遠く。

 

巨大な影。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

大地が揺れる。

 

一歩。

 

また一歩。

 

インペリアル・ナイトが。

 

こちらへ歩いてくる。

 

巨大な装甲。

 

巨大な脚。

 

巨大な武器。

 

そして。

 

頭部。

 

二つの光。

 

キヴォトスの街が。

 

ざわめき始める。

 

「……あれ何?」

 

「シャーレの兵器?」

 

「また動いてる」

 

「大きい……」

 

「インペリアル・ナイトだ!」

 

「名前知ってるの!?」

 

「この前、シャーレの展示会で見た!」

 

先生。

 

「…………」

 

「展示会?」

 

ユウカ。

 

「先生」

 

「うん?」

 

「まさか」

 

「……」

 

「一般公開したんですか?」

 

先生。

 

「…………」

 

「してない」

 

ユウカ。

 

「じゃあどうしてみんな名前を知ってるんですか!?」

 

先生。

 

「…………」

 

「僕も知りたい」

 

インペリアル・ナイト。

 

歩く。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

そして。

 

シャーレ正門前。

 

停止。

 

全員。

 

見上げる。

 

沈黙。

 

先生。

 

「…………」

 

インペリアル・ナイト。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうする?」

 

ネル。

 

「乗る?」

 

先生。

 

「乗らない」

 

ミカ。

 

「乗ろうよ」

 

「乗らない」

 

シロコ。

 

「……」

 

「ちょっとだけ」

 

「乗らない」

 

その時。

 

インペリアル・ナイトの胸部。

 

カチッ。

 

装甲が開く。

 

内部から。

 

小さな紙が。

 

ひらり。

 

落ちてくる。

 

先生。

 

「…………」

 

拾う。

 

紙。

 

そこには。

 

手書きで。

 

こう書かれていた。

 

『先生へ。

 

朝食のパンがありません。

 

買ってきてください。

 

ヒナ』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

ゆっくり。

 

空を見る。

 

「…………」

 

「ヒナ」

 

通信機。

 

ピッ。

 

『はい』

 

先生。

 

「これ」

 

『はい』

 

「インペリアル・ナイトでパン買いに行けってこと?」

 

『…………』

 

沈黙。

 

『その』

 

先生。

 

「うん」

 

『一番早いかと』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「よっしゃあああああ!!」

 

ミカ。

 

「やったー!!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「合理的」

 

ユウカ。

 

「合理的じゃありません!!」

 

数分後。

 

キヴォトス。

 

商店街。

 

巨大なインペリアル・ナイトが。

 

ゆっくり。

 

歩いていた。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

その後ろ。

 

先生。

 

「…………」

 

キメラ。

 

ネル。

 

レマン・ラス。

 

ミカ。

 

そして。

 

シロコ。

 

先生。

 

「…………」

 

「これ」

 

ヒナ。

 

『はい』

 

「本当に必要だった?」

 

『パンが必要です』

 

先生。

 

「そういう意味じゃない」

 

パン屋。

 

店員。

 

「いらっしゃいませー!」

 

外。

 

巨大なインペリアル・ナイト。

 

店員。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

店員。

 

「…………」

 

先生。

 

「パンを」

 

店員。

 

「…………」

 

「はい」

 

先生。

 

「食パン一斤」

 

店員。

 

「はい」

 

「あと」

 

先生。

 

「クロワッサン」

 

店員。

 

「はい」

 

「あと」

 

先生。

 

「アンパン」

 

店員。

 

「はい」

 

「全部で」

 

先生。

 

「…………」

 

「二十個」

 

店員。

 

「…………」

 

「はい」

 

外。

 

ネル。

 

「先生!」

 

先生。

 

「何?」

 

「買えた?」

 

「買えた」

 

「やった!」

 

ミカ。

 

「帰ろう!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「パン」

 

先生。

 

「あるよ」

 

シロコ。

 

「よかった」

 

先生。

 

「…………」

 

巨大なインペリアル・ナイト。

 

その横で。

 

生徒たちが。

 

パンを抱えている。

 

通行人。

 

「…………」

 

「何あれ?」

 

「シャーレの買い物」

 

「へえ」

 

「普通だね」

 

先生。

 

「普通じゃないよ」

 

夕方。

 

シャーレ。

 

食堂。

 

机の上。

 

パン。

 

ネル。

 

「うまい!」

 

ミカ。

 

「おいしい!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「うん」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「ユウカ?」

 

ユウカ。

 

「はい?」

 

「どうしたの?」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

「今日の燃料費を計算しています」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうだった?」

 

ユウカ。

 

「パン二十個のために」

 

「うん」

 

「インペリアル・ナイトを動かしました」

 

「うん」

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「最悪です」

 

先生。

 

「…………」

 

「ごめん」

 

しかし。

 

ヒナだけは。

 

静かに。

 

パンを食べていた。

 

先生。

 

「ヒナ」

 

「はい」

 

「本当に」

 

「?」

 

「インペリアル・ナイトを呼んだ理由」

 

ヒナ。

 

少し。

 

考える。

 

そして。

 

「…………」

 

「便利だったので」

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「だろ?」

 

ミカ。

 

「ね!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「便利」

 

ユウカ。

 

「便利じゃありません!!」

 

シャーレ。

 

今日も。

 

平和だった。

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