キヴォトスにウォーハンマー40kの世界の武器がやってきた!   作:eriza7170

26 / 26
平和になったので、戦車でパンを買いに行く

 

朝。

 

キヴォトス。

 

今日も。

 

平和だった。

 

シャーレの窓から差し込む朝日。

 

鳥の鳴き声。

 

遠くから聞こえる、生徒たちの話し声。

 

そして。

 

ゴォォォォォォォォォ……

 

大地を震わせる。

 

巨大なエンジン音。

 

先生。

 

「…………」

 

コーヒーを一口。

 

「…………」

 

もう一口。

 

そして。

 

窓の外を見る。

 

そこには。

 

巨大な戦車がいた。

 

レマン・ラス。

 

帝国軍の主力戦車。

 

その砲塔の上。

 

ネルが立っている。

 

「先生ー!!」

 

先生。

 

「…………」

 

「何してるの?」

 

ネル。

 

「パン買いに行く!」

 

先生。

 

「歩いて行きなさい」

 

ネル。

 

「嫌だ!」

 

先生。

 

「どうして?」

 

ネル。

 

「戦車があるから!」

 

先生。

 

「その理屈はおかしい」

 

レマン・ラスの横。

 

キメラ装甲兵員輸送車。

 

その上には。

 

ミカ。

 

「先生ー!」

 

先生。

 

「ミカまで……」

 

ミカ。

 

「私もパン買いに行く!」

 

先生。

 

「普通に行けばいいでしょ?」

 

ミカ。

 

「でも!」

 

ミカが。

 

キメラを指差す。

 

「これならみんな乗れるよ!」

 

先生。

 

「…………」

 

「何人乗るつもり?」

 

ミカ。

 

「えーっと」

 

周囲を見る。

 

ネル。

 

シロコ。

 

ヒナ。

 

アカネ。

 

カリン。

 

ウタハ。

 

そして。

 

いつの間にか来ていたユウカ。

 

ミカ。

 

「全員!」

 

ユウカ。

 

「私は乗りません!」

 

先生。

 

「僕も乗らないよ」

 

ネル。

 

「なんで!?」

 

先生。

 

「パンを買うだけだからだよ!」

 

その横。

 

シロコ。

 

「先生」

 

先生。

 

「何?」

 

シロコ。

 

「自転車なら」

 

「うん」

 

「普通に乗っていける」

 

先生。

 

「そうだね」

 

「でも」

 

シロコ。

 

「戦車なら」

 

先生。

 

「……」

 

「速い」

 

先生。

 

「戦車のほうが遅いよ」

 

シロコ。

 

「……」

 

「そうなの?」

 

先生。

 

「道路を走るならね」

 

シロコ。

 

「…………」

 

少し考える。

 

「じゃあ」

 

先生。

 

「うん?」

 

「キメラ」

 

先生。

 

「それもダメ」

 

ユウカ。

 

「そもそも!」

 

全員。

 

「?」

 

ユウカ。

 

「なぜ朝から戦車がシャーレ前にあるんですか!」

 

先生。

 

「僕も知らない」

 

ネル。

 

「俺が持ってきた」

 

ユウカ。

 

「どうやって!?」

 

ネル。

 

「普通に運転して」

 

ユウカ。

 

「普通じゃありません!」

 

先生。

 

頭を抱える。

 

帝国兵器編が終わって。

 

もうしばらく経つ。

 

当初。

 

先生は。

 

「危険な兵器を管理しなければ」

 

と思っていた。

 

しかし。

 

問題は。

 

兵器そのものではなかった。

 

キヴォトスの生徒たちが。

 

あまりにも早く。

 

それを日常へ取り込んでしまったことだった。

 

最初。

 

ボルトガン。

 

「すごい!」

 

次。

 

チェーンソード。

 

「かっこいい!」

 

その次。

 

ラスキャノン。

 

「これ何に使う?」

 

そして。

 

戦車。

 

「乗りたい!」

 

航空機。

 

「乗りたい!」

 

インペリアル・ナイト。

 

「乗りたい!」

 

先生。

 

「…………」

 

今では。

 

こうなった。

 

シャーレの敷地内。

 

帝国軍車両用駐車場。

 

レマン・ラス。

 

キメラ。

 

バジリスク。

 

ハンター。

 

ハイドラ。

 

そして。

 

なぜか。

 

「来客用」

 

と書かれた場所。

 

そこに。

 

小型の装甲車が一台。

 

先生。

 

「…………」

 

「誰が作ったの?」

 

ウタハ。

 

「私です」

 

先生。

 

「どうして?」

 

「日常利用を想定して」

 

先生。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「日常利用!?」

 

ウタハ。

 

「先生」

 

「うん?」

 

「実際、便利ですよ」

 

「そう?」

 

「悪天候でも移動できます」

 

「うん」

 

「装甲があります」

 

「うん」

 

「積載量も十分」

 

「うん」

 

「燃費以外は優秀です」

 

ユウカ。

 

「その『燃費以外』が問題なんです!」

 

ネル。

 

「じゃあ行こうぜ!」

 

先生。

 

「どこへ?」

 

「パン屋」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「歩いて」

 

「戦車で」

 

「…………」

 

先生。

 

「ネル」

 

「何?」

 

「戦車でパン屋に行く理由を一つ挙げて」

 

ネル。

 

「楽しい」

 

先生。

 

「却下」

 

ネル。

 

「かっこいい」

 

「却下」

 

「強い」

 

「パンを買うのに強さはいらない」

 

「…………」

 

ネル。

 

「じゃあ」

 

先生。

 

「?」

 

「敵が来たら?」

 

先生。

 

「来ないよ」

 

ネル。

 

「…………」

 

先生。

 

「平和なんだから」

 

ネル。

 

「…………」

 

少し。

 

考える。

 

そして。

 

ネル。

 

「じゃあ」

 

「うん?」

 

「パンだけ買って帰る」

 

先生。

 

「最初からそうして」

 

その時。

 

シャーレの通信機が鳴る。

 

ピッ。

 

『先生』

 

ヒナ。

 

先生。

 

「ヒナ?」

 

『はい』

 

「どうしたの?」

 

『少し問題が』

 

先生。

 

「また?」

 

『はい』

 

先生。

 

「何?」

 

『基地のほうで』

 

「うん」

 

『インペリアル・ナイトが起動しました』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうして?」

 

『分かりません』

 

先生。

 

「誰か乗ってる?」

 

『いえ』

 

「じゃあ」

 

『無人です』

 

先生。

 

「…………」

 

嫌な予感。

 

先生。

 

「動いてる?」

 

『はい』

 

先生。

 

「どこへ?」

 

ヒナ。

 

『…………』

 

「ヒナ?」

 

『シャーレへ向かっています』

 

先生。

 

「…………」

 

全員。

 

「…………」

 

先生。

 

「なんで?」

 

『分かりません』

 

ネル。

 

「先生」

 

先生。

 

「うん」

 

ネル。

 

「パン」

 

「後にして」

 

「でも」

 

「後!」

 

ネル。

 

「分かった」

 

シャーレ基地。

 

遠く。

 

巨大な影。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

大地が揺れる。

 

一歩。

 

また一歩。

 

インペリアル・ナイトが。

 

こちらへ歩いてくる。

 

巨大な装甲。

 

巨大な脚。

 

巨大な武器。

 

そして。

 

頭部。

 

二つの光。

 

キヴォトスの街が。

 

ざわめき始める。

 

「……あれ何?」

 

「シャーレの兵器?」

 

「また動いてる」

 

「大きい……」

 

「インペリアル・ナイトだ!」

 

「名前知ってるの!?」

 

「この前、シャーレの展示会で見た!」

 

先生。

 

「…………」

 

「展示会?」

 

ユウカ。

 

「先生」

 

「うん?」

 

「まさか」

 

「……」

 

「一般公開したんですか?」

 

先生。

 

「…………」

 

「してない」

 

ユウカ。

 

「じゃあどうしてみんな名前を知ってるんですか!?」

 

先生。

 

「…………」

 

「僕も知りたい」

 

インペリアル・ナイト。

 

歩く。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

そして。

 

シャーレ正門前。

 

停止。

 

全員。

 

見上げる。

 

沈黙。

 

先生。

 

「…………」

 

インペリアル・ナイト。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうする?」

 

ネル。

 

「乗る?」

 

先生。

 

「乗らない」

 

ミカ。

 

「乗ろうよ」

 

「乗らない」

 

シロコ。

 

「……」

 

「ちょっとだけ」

 

「乗らない」

 

その時。

 

インペリアル・ナイトの胸部。

 

カチッ。

 

装甲が開く。

 

内部から。

 

小さな紙が。

 

ひらり。

 

落ちてくる。

 

先生。

 

「…………」

 

拾う。

 

紙。

 

そこには。

 

手書きで。

 

こう書かれていた。

 

『先生へ。

 

朝食のパンがありません。

 

買ってきてください。

 

ヒナ』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「…………」

 

ミカ。

 

「…………」

 

シロコ。

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

ゆっくり。

 

空を見る。

 

「…………」

 

「ヒナ」

 

通信機。

 

ピッ。

 

『はい』

 

先生。

 

「これ」

 

『はい』

 

「インペリアル・ナイトでパン買いに行けってこと?」

 

『…………』

 

沈黙。

 

『その』

 

先生。

 

「うん」

 

『一番早いかと』

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「よっしゃあああああ!!」

 

ミカ。

 

「やったー!!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「合理的」

 

ユウカ。

 

「合理的じゃありません!!」

 

数分後。

 

キヴォトス。

 

商店街。

 

巨大なインペリアル・ナイトが。

 

ゆっくり。

 

歩いていた。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

その後ろ。

 

先生。

 

「…………」

 

キメラ。

 

ネル。

 

レマン・ラス。

 

ミカ。

 

そして。

 

シロコ。

 

先生。

 

「…………」

 

「これ」

 

ヒナ。

 

『はい』

 

「本当に必要だった?」

 

『パンが必要です』

 

先生。

 

「そういう意味じゃない」

 

パン屋。

 

店員。

 

「いらっしゃいませー!」

 

外。

 

巨大なインペリアル・ナイト。

 

店員。

 

「…………」

 

先生。

 

「…………」

 

店員。

 

「…………」

 

先生。

 

「パンを」

 

店員。

 

「…………」

 

「はい」

 

先生。

 

「食パン一斤」

 

店員。

 

「はい」

 

「あと」

 

先生。

 

「クロワッサン」

 

店員。

 

「はい」

 

「あと」

 

先生。

 

「アンパン」

 

店員。

 

「はい」

 

「全部で」

 

先生。

 

「…………」

 

「二十個」

 

店員。

 

「…………」

 

「はい」

 

外。

 

ネル。

 

「先生!」

 

先生。

 

「何?」

 

「買えた?」

 

「買えた」

 

「やった!」

 

ミカ。

 

「帰ろう!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「パン」

 

先生。

 

「あるよ」

 

シロコ。

 

「よかった」

 

先生。

 

「…………」

 

巨大なインペリアル・ナイト。

 

その横で。

 

生徒たちが。

 

パンを抱えている。

 

通行人。

 

「…………」

 

「何あれ?」

 

「シャーレの買い物」

 

「へえ」

 

「普通だね」

 

先生。

 

「普通じゃないよ」

 

夕方。

 

シャーレ。

 

食堂。

 

机の上。

 

パン。

 

ネル。

 

「うまい!」

 

ミカ。

 

「おいしい!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「うん」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

先生。

 

「ユウカ?」

 

ユウカ。

 

「はい?」

 

「どうしたの?」

 

ユウカ。

 

「…………」

 

「今日の燃料費を計算しています」

 

先生。

 

「…………」

 

「どうだった?」

 

ユウカ。

 

「パン二十個のために」

 

「うん」

 

「インペリアル・ナイトを動かしました」

 

「うん」

 

「…………」

 

ユウカ。

 

「最悪です」

 

先生。

 

「…………」

 

「ごめん」

 

しかし。

 

ヒナだけは。

 

静かに。

 

パンを食べていた。

 

先生。

 

「ヒナ」

 

「はい」

 

「本当に」

 

「?」

 

「インペリアル・ナイトを呼んだ理由」

 

ヒナ。

 

少し。

 

考える。

 

そして。

 

「…………」

 

「便利だったので」

 

先生。

 

「…………」

 

ネル。

 

「だろ?」

 

ミカ。

 

「ね!」

 

シロコ。

 

「…………」

 

「便利」

 

ユウカ。

 

「便利じゃありません!!」

 

シャーレ。

 

今日も。

 

平和だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

パトロールはマグナムと共に(作者:モラーヌソラニエ)(原作:ブルーアーカイブ)

治安最悪の透き通った世界でお巡りさんがマグナム片手に走り回る話


総合評価:12/評価:-.--/連載:2話/更新日時:2026年08月18日(火) 06:06 小説情報

推しの間に挟まりたくない運び屋はシャーレ所属の白猫(作者:もこもこMAX)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスで運び屋をやっている生徒が。ひょんなことからシャーレに所属して。今日も推しがてえてえしつつ荷物を運んでいくお話


総合評価:15/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年08月08日(土) 10:23 小説情報

モブ生徒《転生者》に支援をするゲマトリア《転生者》(作者:七蜘蛛)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルーアーカイブの世界にて名も無き一般生徒(モブ生徒)として転生した複数の転生者達。チートなども持たない彼女達は日々の騒動や政治に疲弊してしまう。そんな彼女達の脳内に1つの声が届き、彼女達の日常も変わり始める。


総合評価:74/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年08月16日(日) 06:30 小説情報

キヴォトスラッグアーカイブ(作者:ハヤモ)(原作:ブルーアーカイブ)

(メタルスラッグ×ブルーアーカイブ)▼listen…mission:1 START!▼その轍は余りにクソ雑魚ナメクジであった。▼試作戦車SV-001:メタルスラッグ▼(SUPER VEHICLE-001:METAL SLUG)▼ゲームタイトルにもなっているビークル▼直訳すると金属ナメクジ▼かつて某正規軍が、反乱軍への切札として開発した新型万能戦車▼豆戦車の図…


総合評価:379/評価:8.36/連載:71話/更新日時:2026年10月31日(土) 12:25 小説情報

サイバーパンク:ジャンク・アルケミー(作者:たこ焼き 龍月)(原作:Cyberpunk2077 )

『Cyberpunk 2077』の世界に転生した元ゲーマーの少女・ニッカ▼ 命がゴミより軽いディストピア都市「ナイトシティ」から逃げるため、彼女はバッドランズの廃車置き場に引きこもり、静かに暮らすことを誓う▼ 生き延びるために始めたのは、前世のゲーム知識(最適化裏技)を使ったガラクタいじり▼ しかし、本人が「ただの部品調整」と思っている技術は、軍用規…


総合評価:1251/評価:7.24/連載:68話/更新日時:2026年11月01日(日) 00:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>