薬売りは、その後、トレセン学園理事長室へと通されていた。
部屋には、先ほどプールにいた者たちが集まっている。トレーナー。ナリタトップロード。ヤエノムテキ。バンブーメモリー。ハートリーレター。ビロンギングス。
そして、ミラ子のルームメイトであり、後輩でもあるダンツフレームも来ていた。
全員が、不安と困惑の入り混じった表情で、部屋の中央に座る薬売りを見つめていた。
薬売りはというと、いつものように気楽にソファーに座り、大きな箱を隣に置いたまま、どこか気の抜けた様子で茶を啜っている。
その向かいには、トレセン学園理事長、秋川やよいが座っている。
秋川理事長「驚愕っ!? まさかその様な事が起きていたとは!」
秋川理事長は机を叩きながら立ち上がった。
秋川理事長「学園のプールに怪異が潜み、生徒を水中へ引きずり込んでいる!? しかも、その怪異は生徒たちの夢を利用しているだと!?」
薬売り「まあ、そういうこと」
秋川理事長「由々しき事態っ!」
薬売り「うん。かなり由々しいね」
秋川理事長「ならば即刻プールを封鎖し、生徒を全員避難させるべきではないのか!?」
薬売り「それも手ではあるけどねぇ」
薬売りは湯呑みを置いた。
薬売り「それだけじゃ、モノノ怪は斬れない」
秋川理事長「むむっ……!」
薬売り「前にも説明したけど、モノノ怪を斬るには『形・真・理』が必要なのよ」
薬売りは指を一本立てる。
薬売り「形はもう分かった。『マーメイド』」
次に、二本。
薬売り「でも、真と理がまだ分からない」
三本目の指が立つ。
薬売り「だから今、こうして皆に集まってもらったわけ」
トレーナー「……つまり」
トレーナーは拳を握った。
トレーナー「ミラ子を助けるには、あの怪物についてもっと知らなければならない、と?」
薬売り「そういうこと」
ダンツ「……じゃあ」
それまで黙っていたダンツフレームが、震える声で口を開いた。
ダンツ「ミラ子先輩を助けるために……私たちが、先輩のことを話す必要があるんですか?」
薬売り「それも必要だね」
ダンツ「……」
ダンツは俯いた。
ダンツ「だったら……私、何でも話します」
薬売り「ほう?」
ダンツ「ミラ子先輩が、何を考えてたのか。何を嫌がってたのか。何をしたかったのか……私、ルームメイトだから」
ダンツは顔を上げた。
ダンツ「……私、ミラ子先輩のこと、ちゃんと分かってるつもりでした」
その言葉に、薬売りの目が細くなる。
薬売り「つもり?」
ダンツ「……はい」
薬売り「そいつは結構」
ダンツ「え?」
薬売り「じゃあ、聞かせてもらおうか」
薬売りは湯呑みを置き、全員を見回した。
薬売り「ヒシミラクルって、どんな子?」
トレーナー「……それは」
薬売り「速い子?」
ヤエノ「ええ。間違いなく実力のあるウマ娘です」
薬売り「強い子?」
バンブー「そりゃあ、GⅠ三勝っスから!」
薬売り「普通の子?」
ハートリーレター「……本人は、そう言ってます」
薬売り「夢のない子?」
全員が黙った。
薬売り「――さて」
薬売りは、笑みを浮かべた。
薬売り「ここからが『真』だ」
ダンツ「……!」
薬売り「皆が知ってるヒシミラクルと、ヒシミラクル自身が知ってる自分。果たして同じなのかねぇ?」
静寂。
薬売り「モノノ怪ってのはね」
薬売りは、窓の外へ目を向ける。
薬売り「見えているものだけじゃ、分からないんだよ」
その瞬間。
薬売りの隣にある箱から……
カタ。
小さな音がした。
全員の視線が箱へ集まる。
薬売り「……おや」
薬売りは箱を見下ろした。
薬売り「どうやら、あちらさんも聞いてるみたいだ」
ダンツ「……え?」
薬売り「さあて」
薬売りは再び笑った。
薬売り「ヒシミラクルというウマ娘の『真』。存分にお聞かせ願おうか」
薬売りは笑い、温和な雰囲気を見せる。
薬売り「さて……誰から聞こうかねぇ」
薬売りは湯呑みを置く。
薬売り「まずは――」
薬売りの視線がトレーナーへ向いた。
薬売り「君から聞こっか♪」
トレーナー「私ですか?」
薬売り「うん。ヒシミラクルのトレーナーっしょ?」
トレーナー「……はい」
薬売り「じゃあ聞くよ。君から見たヒシミラクルって、どんな子?」
トレーナーは少し考えた。
トレーナー「……才能のあるウマ娘です」
薬売り「ふむふむ」
トレーナー「本人はあまり自覚していませんが、凄いですよ。練習も、何だかんだ言いながら最後までやりますし」
バンブー「確かにそうっスね!」
ヤエノ「ええ。ミラ子さんは、やるべき時にはきちんとやる方です」
薬売り「でも、本人は『普通』だと言う」
トレーナー「……はい」
薬売り「どうしてだろうね?」
トレーナー「それは……」
トレーナーは言葉に詰まった。
薬売り「分かんない?」
トレーナー「……正直に言えば」
トレーナーは俯いた。
トレーナー「俺も、分かっていないのかもしれません」
薬売り「へぇ」
その答えに、薬売りは笑った。
薬売り「正直で結構」
そして今度はヤエノを見る。
薬売り「じゃあ、お嬢さん」
ヤエノ「私ですか?」
薬売り「うん。君から見たヒシミラクルは?」
ヤエノ「……強い方です」
即答だった。
ヤエノ「普段は飄々としているように見えますが、勝負となれば非常に強い。自分では普通と言っていますが……少なくとも、私はそうは思いません」
薬売り「なるほどねぇ」
バンブー「私も同じっス!」
薬売り「じゃあ、君は?」
バンブー「ヒシミラクルは、凄いウマ娘っス!」
バンブーは胸を張る。
バンブー「GⅠ三勝っスよ!? 菊花賞、天皇賞・春、宝塚記念!しかも宝塚じゃ、あのメンバーを相手に勝ってるんスから!」
薬売り「うんうん」
薬売りは頷く。
そして、静かに問い掛けた。
薬売り「でも、それって『ヒシミラクル』の話かな?」
バンブー「……え?」
薬売り「それとも、『ヒシミラクルが残した記録』の話かな?」
バンブー「…………」
バンブーは口を閉じた。
薬売り「記録は嘘をつかない。でもねぇ」
薬売りは湯呑みを指先で回す。
薬売り「記録だけじゃ、人のことは分からない」
次に、ハートリーレターとビロンギングスへ。薬売りの問いに、二人は答える。
ハートリーレター「ミラ子は……普通の子ですよ」
ビロンギングス「うん。授業中眠そうにしてるし、休み時間になったらお菓子食べてるし」
ハートリーレター「あと、すぐ面倒くさがる」
ビロンギングス「プールも大嫌い」
ミラ子の友人二人が顔を見合わせる。
ハートリーレター「でも……一緒にいると楽しい子です」
ビロンギングス「うん」
薬売り「普通で、楽しい」
二人「はい」
薬売り「じゃあ、彼女は幸せそうだった?」
ハートリーレター「……」
ビロンギングス「……たぶん」
薬売り「たぶん?」
ビロンギングス「だって、ミラ子はいつも笑ってたから」
薬売り「笑っていたから、幸せだった?」
ビロンギングス「……それは」
薬売り「ふーん」
また一つ、薬売りは何かを確かめるように頷いた。
そして薬売りは、最後にダンツを見る。
薬売り「さて」
ダンツ「……」
薬売り「君はどうだい?」
ダンツ「……私は」
ダンツは膝の上で手を握った。
ダンツ「ミラ子先輩は……普通の生活が好きなんだと思います」
薬売り「どうして?」
ダンツ「だって、いつも言ってましたから。『レースが終わったら、普通に暮らしたい』『卒業したら、ゆっくりしたい』『もう十分走ったし』と。だから……私も、そうなんだと思ってました」
薬売り「思っていた?」
ダンツ「……はい」
薬売り「今は?」
ダンツは答えられなかった。
その時だった。
―――――――――――――――――――――――
『『キャアアアアアアアッ!!』』
廊下から、悲鳴が響いた。
全員「!?」
続いて、ドタドタドタッ! と複数の足音。
扉が勢いよく開かれる。
モブウマ娘「た、大変です!」
秋川理事長「何事っ!?」
モブウマ娘「洗面所で……!蛇口を捻ったら、水の中から歌が……!」
薬売り「歌?」
モブウマ娘「はい! それで、水に触った子たちが……!」
モブウマ娘は顔を青ざめさせる。
モブウマ娘「水の中に……吸い込まれたんです!」
ダンツ「……!」
薬売りは立ち上がった。さっきまでの温和な笑みは消えていた。
薬売り「……案内して」
モブウマ娘「え?」
薬売り「現場へ」
―――――――――――――――――――――――
洗面所。蛇口からは、水が静かに流れ続けていた。
しかし――
マーメイド『~~♪』
歌が聞こえる。
ハートリーレター「……これ」
ビロンギングス「歌……」
薬売りは蛇口へ近付く。
そして水へ指を近付けるが、触れる寸前で止めた。
薬売り「なるほどねぇ」
バンブー「何が分かったんスか!?」
薬売り「水だよ」
ヤエノ「水?」
薬売り「プールだけじゃない。このモノノ怪……水そのものを道にしてる」
薬売りは箱を開く。
中から、いくつもの小さなベルを取り出した。
カラン……。
ベル同士が触れ合い、音が鳴る。
たづな「それは……?」
薬売り「ベル」
秋川理事長「ベル……?」
薬売り「天秤じゃなくてね。今回の相手には、こっちの方が都合がいい」
薬売りは蛇口の横へベルを一つ置いた。
チリン。
マーメイド『~~♪』
歌が止まった。
全員「……!」
そして――
チリン。
もう一度。今度は明らかに、ベルが勝手に鳴った。
薬売り「……いるね」
薬売りは笑った。
それから薬売りは、学園中の水回りを回り始めた。
洗面所。シャワー室。厨房。給水場。
一つ。また一つ。ベルが置かれていく。
たづな「こんなに置く必要があるんですか?」
薬売り「あるよ」
たづな「何故?」
薬売り「この学園、随分と水が多いからねぇ」
薬売りは歩きながら答える。
薬売り「水がある場所なら、どこからでも向こう側へ繋がる可能性がある」
そして最後にプールへ来た。
薬売りはプールサイドへ立つ。
水面は静かだった。
薬売りはベルを一つ取り出すと、それをプールサイドに置いた。
――――
チリン。
誰も触れていない。
風もない。
それなのにベルが鳴った。
薬売り「……なるほど」
ダンツ「どうしたんですか?」
薬売り「分かったことが一つある」
ダンツ「?」
薬売りは水面を見る。
薬売り「このモノノ怪は、もうヒシミラクルだけを狙ってない」
水面の奥。一瞬だけ、何かが動いた。魚のヒレのような何か。
薬売り「学園そのものを、夢の中に沈めようとしてる」
全員が息を呑んだ。
そして、どこか遠くで。
カラン……カラン……
ベルが鳴った。
薬売りはそちらへ振り返る。
薬売り「……まだ、誰かいるねぇ」
夜のプール。
水面には、月が浮かんでいる。だが、その水面から少し下。そこに、ヒシミラクルは沈んでいた。
目を閉じ、眠るように、髪が水の中でゆっくりと揺れている。
ダンツ「……ミラ子先輩」
ダンツフレームがプールサイドから水面を見つめる。
手を伸ばしたくても、伸ばせない。薬売りが張った結界が、プールと現実を隔てている。
ダンツ「助けられないんですか?」
薬売り「今はね」
薬売りは淡々と答える。
薬売り「この娘を引っ張り出すだけなら、そう難しい話じゃない」
ダンツ「え?」
薬売り「問題は――」
薬売りは水面を見た。
薬売り「引っ張り出したところで、また沈められるということだよ」
ダンツ「……!」
薬売り「モノノ怪を斬らない限り、この娘は戻れない」
しばらく、二人とも黙っていた。
水の底。
ミラ子の口元が、ほんの少し動いた。
――♪……
歌。
かすかな歌声が、水面を震わせる。
ダンツが息を呑む。
ダンツ「……また」
薬売りは耳を澄ませた。
薬売り「聞こえる?」
ダンツ「はい……」
薬売り「何を歌っている?」
ダンツ「……分かりません。でも……」
ダンツは胸を押さえた。
ダンツ「なんだか、懐かしい感じがします」
薬売りは目を細めた。
薬売り「懐かしい、か」
水面を見る。
薬売り「この娘に見せているのは、何だろうね」
ダンツ「ミラ子先輩が、一番見たい夢……?」
薬売り「かもしれない」
薬売りはプールから離れる。
薬売り「だが、それだけじゃない」
ダンツ「え?」
薬売り「この歌は、ヒシミラクル一人のための歌じゃない」
薬売りは歩き出した。
薬売り「学園全体から聞こえてくる」
―――――――――――――――――――――――
最初に向かったのは、古い資料室だった。
トレセン学園の卒業生、在校生、レース記録、過去の新聞、古い写真、引退したウマ娘たちの記録。
薬売りは一枚一枚、目を通していく。
薬売り「……随分いるね」
ダンツ「何がですか?」
薬売り「ここを去った人間が」
写真の中では、無数のウマ娘たちが笑っている。
優勝レイを掲げている者。
仲間と肩を組んでいる者。
涙を流している者。
敗北したレースの写真。
怪我をした日の記録。
引退式。
卒業式。
そして――
最後の写真。
学園を去る後ろ姿。
薬売りは写真を置いた。
薬売り「皆は、卒業したら終わりだと思う?」
ダンツは少し考える。
ダンツ「……普通は、そうじゃないですか?」
薬売り「そだね」
薬売りは笑う。
薬売り「学園を出れば、次の人生が始まる」
ダンツ「……はい」
薬売り「でもね」
薬売りは、一枚の古い記録を指でなぞった。
薬売り「『終わった』と『終わらせた』は、違うんだよ」
ダンツが黙る。
薬売りは資料を読み進める。
「この子は怪我……この子は引退……この子は成績不振……この子は進路変更……この子は……」
一枚。また一枚。
理由は違う。だが、その記録には何度も同じような言葉が残されていた。
――もう一度走りたかった。
――まだ終わっていない。
――あのレースをやり直したい。
――あの子と、もう一度走りたい。
――あの頃に戻れたら。
薬売りの手が止まった。
薬売り「……これだ」
ダンツ「え?」
薬売り「見つけた」
薬売りは資料を閉じる。
薬売り「けれど、まだ足りない」
――――――――――――――――――――――
次に向かったのは、学園の古い倉庫だった。
そこには、卒業生たちが残していった品が保管されていた。
古い蹄鉄。レースシューズ。トロフィー。写真。寄せ書き。使い古されたリボン。誰かの名前が書かれたゼッケン。
薬売りは一つ一つに触れていく。
薬売り「……物は嘘をつかない」
ダンツ「物が……?」
薬売り「持ち主がいなくなっても、使われていた時間までは消えない」
古いシューズ。底が擦り切れている。何度も何度も走った跡。
その隣には、途中で使われなくなった新しいシューズ。
薬売りは、それを見比べる。
薬売り「この子は……走れなくなった」
次。表彰台の写真。笑っている。その裏側には、鉛筆で小さく書かれていた。
『最後のレースにしたくなかった』
次。寄せ書き。
『またいつか一緒に走ろう』
しかし、その「いつか」は来なかった。
次。卒業アルバム。笑顔の集合写真。その端に、一人だけ。水泳帽を被ってプールへ向かう姿が写っている。
薬売りの指が止まる。
薬売り「……プール」
ダンツが写真を見る。
薬売り「ここ……今のプールですよね」
ダンツ「そうだね」
薬売りは古い資料をめくる。
すると、古い新聞記事が一枚出てきた。
そこには、小さくこう書かれていた。
『卒業生有志、夜間にプールへ集まり、最後の思い出を語る』
ダンツ「最後の……?」
ダンツが呟く。
記事には続きがあった。引退する者、怪我で走れなくなった者、卒業を控えた者、レースを終えた者、それぞれがプールに集まり、『もう一度だけ、あの頃に戻りたい』そう語り合った。
そして最後に、一人の卒業生が言った。
『だったら、夢の中だけでも戻れたらいいのにね』
薬売りは記事を閉じた。
薬売り「…………」
しばらく、何も言わなかった。
やがて……一言漏らす。
薬売り「そういうことか」
ダンツ「薬売りさん?」
薬売りは、ゆっくりとプールの方を振り返った。
薬売り「真が見えた」
―――――――――――――――――――――――
プールへ戻る。ミラ子はまだ沈んでいる。
薬売りは水面を見つめた。
薬売り「マーメイドは、最初からここにいたんじゃない」
ダンツが顔を上げる。
ダンツ「……え?」
薬売り「この学園で、何度も何度も生まれた『終わりたくない』という気持ち。引退した者。敗れた者。怪我をした者。別れた者。夢を諦めた者。そして――」
薬売りは、沈んでいるミラ子を見る。
薬売り「もう一度だけ、あの頃に戻りたいと思った者」
水面が揺れる。
薬売り「そういうものが、この場所に残り続けた。一つなら、ただの未練だ。十なら、ただの思い出だ。百なら――」
薬売りの声が低くなる。
薬売り「それはもう、一つの情念になる」
水の中から、歌が聞こえた。
――♪……
薬売り「それが、マーメイドになった」
ダンツは水面を見つめる。
薬売り「じゃあ……ミラ子先輩を狙ったのも……」
薬売り「この娘だけが特別だったわけじゃない」
薬売りは答える。
薬売り「この娘の中にも、同じものがあったからだよ」
ダンツ「……」
ダンツは、水底のミラ子を見つめる。あれだけ沈んでるのに、口や鼻から出る空気の泡が出てくる様子が未だに続く。目を閉じて、安らかに眠っているのだ。
薬売り「走ることが好き。でも、普通の生活も好き。このまま続けるのか。それとも、ここで終わるのか。まだ決めきれない」
薬売りは小さく笑う。
薬売り「だから、この娘は『夢を終わらせたくない』という怪異にとって、随分と居心地のいい相手だったんだろう」
その瞬間。
プールの水面に、大きな波紋が広がった。
――♪……
歌声が、はっきりと聞こえる。
まるで答えるように。
薬売りは静かに告げる。
薬売り「これが、真だ」
退魔の剣を掲げて、鬼の面に示す。
薬売り「この学園で起きたこと。夢を終えた者たちが残したもの。それらが積み重なって――」
薬売りは、退魔の剣を手に、強く言った。
薬売り「マーメイドが生まれた」
ガキィィィーンッ!!
退魔の剣が、口を閉じる。真が、示された瞬間だった。
薬売り「『真』、解明☆」
薬売りが左目でウィンクする。
薬売り「……んじゃ、次は『理』だね!」
薬売りは水底を見る。
薬売り「何故、この怪異は人を眠らせる?何故、夢を見せる?何故――」
水底のミラ子を見る。
薬売り「夢から、帰そうとしない?」
その瞬間。
水の中で、ミラ子がゆっくりと目を開いた。
そして――
水底から、こちらを見つめる何かと目が合った。
薬売りの表情が変わる。
薬売り「……ありゃ?」
水面の向こう。
そこにいるのは、ミラ子だけではなかった。
無数のウマ娘たちが、夢の中で走っている。
笑っている。
泣いている。
そして誰も、ゴールには向かっていない。
ずっと。
ずっと。
走り続けている。
薬売りは静かに呟いた。
薬売り「さて……」
手に持ってたベルを揺らして、カランカランと鳴らしながら、薬売りは笑う。
薬売り「お前は、何を願っている?」
この薬売りは、原作やアニメ、映画に出て来た薬売りとは異なる点が多くあります。まあ64人も居るんだし、こう言う薬売りが居ても……良いよね?