私の歌を聴けぇーッ!! 作:俺の小説を読めーッ!!
少しずつここでの生活も慣れてきた。
普通に生活するなんていつぶりだろう?
私は大体が病室で過ごしてたし激しい運動も禁止されてた。
こっそり病室を抜け出して、ダンスや歌の練習をしたり、自分で振り付けを考えたりもしていた。けれど、そのたびに何度も怒られた。
それでも体が勝手に動いたから。
私にはアイドルしかなかったから。
だから何度も何度も抜け出して何度も怒られて、何度も繰り返した。
生きてるうちに。
それが前世の私。
音楽に包まれてる時だけが幸せだった。音楽を聴いている時だけ、私の感情は強く動いていた。
ただ私の居た世界とはやはり異なる。
この世界は人間とは違う姿をした人たちもいれば、巨人のような人たちもいる。
そのことから分かるけど、どうやらゼントラーディ人やメルトランディ人もいるみたいだ。他にも耳の尖った、ゾラ人みたいな人や魚人のような、ラグナ人、獣人のようなヴォルドール人などなど。ウィンダミア人は見たことないけど、その他にも見たこと無かったり知らない種族も多いようだった。
恐らくプロトカルチャーの遺伝子操作による影響が強い世界なのだと思う。個性というものが何なのかは気になるけど、それも遺伝子操作によって生み出された力だと思ってる。
地球人だって、プロトカルチャーが太古の地球に立ち寄った際、原住生物の遺伝子を改造したことで生まれた種族とされている。
作品が更新される度に色んな設定が追加されていってたし、きっとこれも似たようなものなのだと思う。
一般の人から見たら私の歌の力も特殊な力だ。
だから人間とは違う姿をした人や巨人を見かけても、受け入れることに抵抗はなかった。
それはそうと、ランカちゃんの趣味には料理があったはず。
これも資料によって違うけれど、もっぱら食べる方が好きだとか。
それでも料理はできるみたいだし、私もお兄ちゃんのために食事を作っていくことにした。
何よりアルトくんは料理が上手らしいもの。そんな彼より料理が美味しく作れて胃袋を掴めたならアピールにもなるんじゃないかなと思ったんだよね。
それに料理できるアイドルって料理番組でも呼ばれるかもしれないし!
もちろん、急に料理を作ると言い出したものだから、最初はお兄ちゃんにも心配された。別の人生を歩んだ記憶があるとはいえ、前世で料理をしていたのだって入院する前まで。最初から上手くできるはずもなく、当然失敗もした。
それでもトライアンドエラーを繰り返すうちに、少しずつ料理ができるようになっていった。
私の手料理に対するお兄ちゃんの反応は、少し大袈裟な気もするけど……。
それだけではなく、アイドルとしてのレッスンもやっている。
だけどアイドルになりたいってことを伝えたら、変わった反応をされた。
お兄ちゃんを知っている私としては、反対されると思っていた。けれど、実際には驚くほどすんなり受け入れてくれた。それどころか、どこか安心したようにも見えた。
どうしてだろう? そこはちょっと意外だった。やっぱり普通のマクロスFとは違うのかも。
ランカちゃんの歌やダンスの基礎については問題ない。
前世で母がトップアイドルだったため、私は必要なものは全部頭に叩き込まれてる。
いずれ戦場に出ることを考えたら体力も身体能力もある程度必要になる。ワルキューレみたいに動きまくれるようになっておいた方がいいかな。あっちは装備が潤沢なのもあるけど。
私が自信あるのは体幹くらいだ。
私に戦うことは出来ないけど、歌を届けることは出来る。
だからそのために必要なことをやるんだ。
私の目指すアイドルは歌声を銀河に轟かせる存在なのだから。
そのためにも体幹維持に必要な基礎運動や柔軟性を高める練習、歌いながら動くための呼吸や体力づくり。やるべきレッスンはたくさんある。
シェリルさんと一気に歌う時、凄い子が居るんだって彼女を驚かせたいよね。
あの人に憧れるだけじゃなくて、肩を並べられる歌姫にならなくちゃ。
◇
そんなある日のこと。
「病院? お兄ちゃん。わたし、どこも悪いところなんてないよ? 風邪もないし特に病気もないと思う」
かつては病人だった私も、今ではすっかり健康体だ。風邪を引くこともなく、身体のどこにも不調はない。むしろ、ランカちゃんの明るさまで受け継いでいるからなのか、前世の私よりも元気が有り余っている。
これが若さ……!
「ちょっとした検査があるんだ。これはランカの年代ならみんな受けてるものでな」
この世界特有の設定だろうか?
前世の私がランカちゃんになってる時点で可笑しいといえば可笑しいんだけど、まず間違いなく私より詳しいお兄ちゃんがそう言うなら間違ってないんだと思う。
この世界でもお兄ちゃんは私のことを大切にしてくれてるから。
ということで大きな総合病院に連れていかれた私は、レントゲンを撮ったあとに歌うように言われた。
年齢に合わない歌を歌っても仕方ないので、5歳の子供なら絶対に歌える、私もお世話になった『アンパンマンマーチ』を歌った。
それにこの歌の歌詞も、結構深いと思うんだ。
私としてはもっとアイドルらしい歌も歌いたかったんだけど、年齢を考えたら仕方ないよね。
ただ他にも歌うように言われたので、勇気繋がりの歌にすることにした。
『勇気100%』。定番中の定番だけど、名曲。
もっと違った感じと要求されたから、その後は『心の瞳』だったり『夢見る少女じゃいられない』とか、『銀河鉄道999(英語版)』など、途中から自重しなくなっていっちゃった。
むしろ自由に歌うようにって言われてマクロスを歌わなかった私は偉いと思うの。
そんなこと言われたらファンとしては私の彼はパイロットとか、愛・覚えてますかとか歌いたくなると思うんだ。
とまあ、歌い終わってやらかしたことに気づいたんだけど。
えへへ。
「まず間違いなく“個性”ですね。歌に関連するものでしょう」
「歌……ですか」
「他者の感情に影響を及ぼす……いえ士気を高めるとでも言えばいいのでしょうか。歌そのものの完成度も、五歳児のものとは、とても思えません。歌唱だけでなく、作詞や作曲にも同様の補正が掛かっている可能性があります」
歌った中で英語はやりすぎたかなと思ってると、妙なことを言っていた。
またしても出てきた個性ということがどうでもよくなるくらい。
それはもう、私にとってひっじょーに大事なことだ。
まるで今の言葉、初めてこの歌を聴いたような反応。
咄嗟に“聴いたことないの?”と尋ねてしまう。
が、どうやらこの世界には私が歌った名曲たちはなかったらしい。
私が作詞作曲したと思われてしまったみたい。流石にアンパンマンマーチはあった。
でもこの名曲たちが世間に知られてないのは勿体ない。将来は私の知る名曲たちを『歌ってみた』で世間に放り込まなくちゃ。
歌は人に希望を与えられる。元気を貰える。色んな感情を届けることができる。
現実に絶望して、独りの時は感情を大半失っていた私でも歌を聴いてる時だけは感情を取り戻せた。ランカちゃんが居たから私は自ら死のうとは決して思わなかった。
だからこそ、1アイドルとしてはもちろんのこと、音楽を愛する者として私のやるべきことが定まった。
でも私、アニソンはよく聴いてたけど観てないアニメの方が多くて、話を聞いてると個性だとかヴィランだとかヒーローだとか何だか似たような設定の作品があったような……アレ、僕のヒーローアカデミアだっけ?
ワン・フォー・オールとかホール・イン・ワンだとか何だか忘れたけど、個性を引き継ぐヒーローと奪うヴィランが居たような。
あれ……ホール・イン・ワンだと入れる方だよね? ん? なのに奪う? 間違えたかな?
主人公が無個性と呼ばれてて憧れの人から受け継ぐくらいしか覚えてないかも。曲は知ってるんだけどな。“古い”アニメを観てる友達が簡単に説明してくれたのがそれだったし。
内容はあんまり。だって私の記憶の大半は音楽とマクロスだし。
主にランカちゃんだし。
でも私やお兄ちゃんが居る時点でマクロス確定だし、もしあったとしたらスパロボとかそういう系譜のクロスオーバーだよね。
こんなことならもっと、僕のヒーローアカデミアについて聞いておくべきだったなぁ……対策出来たかも。バジュラと僕のヒーローアカデミアの敵って……大丈夫かな。
スパロボシリーズが全部来るよりはマシかな? ランカちゃんが出る作品だけはこれでもプレイ済みだ。もちろんマクロス30も監修済み。
もしこの世界がスパロボ系統ならそれはそれで大変なんだけど……会いたい人たちにも会えるメリットもある。ただデメリットとしてはバジュラ以外にもたくさん敵が出てきちゃうんだよねぇ……その分、味方もたくさんいるけどね。
だとしても私がやるべきことは歌うことだ。
この世界が、私の知る世界じゃなくとも。
それに悪いことだけではないみたい。
『個性』のお陰で私がこの歳では歌えない歌を歌っても普通だと思われるみたいなので、ひっそり歌うしか無かった曲たちでもこれからは気にせずに歌える。
と言っても、歌やダンスの技術とか、その個性? というのじゃないけどね。多分、歌姫としての力が個性として扱われてるんだと思う。
クロスオーバーの整合性を取るために、かな?
それでも、まだまだ私はアイドルとして未熟だ。後半のランカちゃんレベルには達さないと。精神だけ成長しちゃってる状態でパフォーマンスだって昔の私より劣ってる。
これはどっちかというと私の責任かな。転んだり恐れたり、既にない病気だと分かっていても身構えてしまう。だから動きが上手くいかないんだ。
ランカちゃんのポテンシャルはこの程度じゃない。トップアイドルに登り詰め、あのシェリルさんと並んで歌っても評価されるほどなのだ。それどころか彼女に脅威だと思われるほど。
それに、前世ではトップアイドルだった母をずっと見てきた。病魔に侵されても、あの人のファンであることをやめなかった私だからこそ、今の自分を簡単に認めるわけにはいかない。
これからも一緒に頑張ろうね、ランカちゃん。
◇
小学校に上がると、お兄ちゃんは何がなんでもお嬢様校に私を入学させた。
そんな、別に普通の学校でもいいのにね。
何でも私に危険が及ぶ可能性があるから無理だとか。認められないだとか、最後の方は余計な虫がつくとか何とか言っていたけど、よく分からなかった。相変わらず過保護だ。
ただ確かにランカちゃんは銀河一可愛い。そう考えたらお兄ちゃんの心配する気持ちも私は分かるかも。
あ、ヤバい。アルトくんに怒りそう。こんな可愛い子に好意持たれるとか羨ましくない? しかもシェリルさんという美人にも。私としてはランカちゃんの方が大好きだけどシェリルさんも好きなので正直両方幸せになれる道でいってほしいとは思った。
むしろ私がランカちゃんと付き合いたい。一生掛けて幸せにするよ。
……まぁ健康体じゃなかった時点でね。
それはそうと、入学して少し経つけど周りはやっぱりお嬢様って感じの子ばかり。
私も前世の母がトップアイドルだったから、どっちかと言うと一般人ではなくセレブ寄りなんだけど、やっぱり本物は違う。
気品があるというか。オーラが違うというか。
ううん、負けちゃダメだ。ランカちゃんもお嬢様校出身だもん。私だって!
――ぼっちだけど。
小学校は給食のイメージがあるけど、お嬢様校なだけあって家が作る家庭も多いのだと思う。好きに選べたので、私は弁当にしている。
私はアルトくんに必ず料理の腕で勝って胃袋を掴むんだ……!
……うぅ、ごめんね、ランカちゃん……。私こんなコミュ障じゃなかったのに……世界が、世界が違いすぎて……!
屋上が解放されてないため、屋上へ続く階段の踊り場で、ひっそりとぼっち飯を摂る私――いやお嬢様しかいないから本当に会話がね……。私、アイドルにしか興味ないもん。なんか周りはヒーローばかり言ってるし。
私の知る世界と違う!
普通はアイドルとか俳優とか声優とかじゃないの!? お嬢様校だったとしてももっとこう、お家についたり企業についてとかだと思うのにヒーローばかり……!
ヤダ、こういう時は歌おう。
唐突でも私にとっては歌は特別だもの。落ち着かせるのも寂しさを紛らわせるのも歌うのが一番!
明日の自分が頑張れるように。
自分を好きになれるように――
『明日 今日よりも好きになれる
溢れる想いが 止まらない』
『今もこんなに好きでいるのに 言葉にできない』
青春や友情にも聴こえるけれど、その曲はラブソングであり、当たり前のようなことが当たり前では無いことを意味するような曲。
アニソン以外なら何が好きかと言われたら、まず間違いなく候補に挙がる曲の一つ。
一番はランカちゃんの歌だからね。浮気はしないよ。
ただ思うのが旋律も流れるから歌いやすい。歌姫の力ってすごい。アイドルでいられた、前世の
『君のくれた日々が積み重なり 過ぎ去った日々 2人歩いた『軌跡』』
『僕らの出逢いがもし偶然ならば? 運命ならば?
君に巡り会えた それって『奇跡』』
軌跡と奇跡。
偶然と運命。
似たような言葉と異なる意味を持つ言葉。
その二つが入ってるのが個人的にこの曲の見どころというかいいところだと思う。
『2人寄り添って歩いて
いつまでも君の横で 笑っていたくて
アリガトウや Ah 愛してるじゃ まだ 足りないけど
せめて言わせて 『幸せです』と』
隣にいることが当たり前じゃなくて、出逢えた奇跡に感謝と幸せだと告げる曲。
それは恋人でも友人でも家族でも大切な人でも変わらない。
当たり前のような幸せや毎日は、偶然でもあって運命でもある。そのこと全てをまとめて、奇跡と人は言うんじゃないか、って。
曲に込められた意味を私なりに解釈して、その感情を強く歌に乗せる。
そう、教わってきたから。
『いつも君の右の手の平を ただ僕の左の手の平が
そっと包んでくそれだけで ただ愛を感じていた』
1番を歌い終わった私は次に2番に入る。
人の温もりという愛情を感じる。ただ触れ合うだけでそれを感じている。
『日々の中で 小さな幸せ 見つけ重ね ゆっくり歩いた『軌跡』
僕らの出会いは大きな世界で 小さな出来事
巡り合えた それって『奇跡』』
惑星という大きな世界からすれば、それはとっても些細で小さなこと。
でも私たち人からすればそうじゃなくって。
『うまく行かない日だって 2人で居れば晴れだって!
強がりや寂しさも 忘れられるから
僕は君でなら 僕で居れるから!
だからいつも そばにいてよ 『愛しい君へ』』
例え失敗したとしても大切な誰かと居れば心は曇らず、明るくなれる。
分かち合えることが出来る。
傍に居てくれたら、自分らしく居られる。
だからずっと傍に居て欲しいと告げる告白。
『2人フザけあった帰り道 それも大切な僕らの日々
『想いよ届け!!!』と伝えた時に 初めて見せた表情の君
少し
ぼくらまだ旅の途中で またこれから先も
何十年続いていけるような未来へ』
当たり前のような帰り道であっても自分たちにとってそれは大切な日常で。
想いを告白した際に、当たり前が奇跡の瞬間に変わり、人生という旅の途中で愛が溢れ、その未来が長く長く続きますように。
『例えばほら 明日を見失いそうに 僕らなったとしても』
『2人寄り添って歩いて
いつまでも君の横で 笑っていたくて
アリガトウや Ah 愛してるじゃまだ足りないけど
せめて言わせて 『幸せです』と』
『うまく行かない日だって 2人で居れば晴れだって!
喜びや悲しみも 全て分け合える
君がいるから 生きていけるから!
だからいつも そばにいてよ 『愛しい君へ』』
『最後の一秒まで』
死が分かち合う、その時まで。
最期の最期まで、ずっと傍に居て欲しい。
『明日、今日より笑顔になれる 君がいるだけで そう思えるから
何十年 何百年 何千年 時を超えよう 君を愛してる』
――フルで歌い終わり、気持ちがスッキリとした。
やっぱり辛い時は歌だよね。この曲は、“キセキ”。
実は一番好きなのはラストの何十年〜のフレーズ。
何年でも時を超えて大切な人を愛するなんて、とっても素敵。
全体的なテーマとしては当たり前の日常や、大切な人と出会えたことの尊さ、未来への願いとかそういった感じなんだと思う。
作曲した本人じゃないから私は分からないんだけど――
ガタッ!!
「!?」
一息ついた直後、突然の物音に私の肩が大きく跳ねた。
物音の方を見ると私を見上げる、黒髪の女の子が一人。
見られたことへの恥ずかしさと一人悲しく熱唱していた事実に隠れたくなる気持ちが始動しつつある中、その女の子は上品に両手で鼻先まで覆い隠していたけど、急に接近してくる。
「え? え? な、何!?」
落とした弁当すら拾わず階段を昇って来る姿に、思わず後退りした私は屋上の扉に阻まれた。
し、しまった。逃げ場がない!
アイ君もここにはいないのに!
「か……」
「か……?」
「感動いたしましたわッ!!」
バッ、と私の手を包み込むように両手で握りしめた彼女は目を輝かせて勢いよく告げてきた。
こう、漫画的な表現だと思ってたんだけど本当に椎茸みたいな目になるんだ……。
顔が近くて思わず頭を後ろにすると、扉にぶつける。
ちょっと痛い。ゼントラーディ人の血のお陰か意外とこの体は頑丈だけど。
「
ああ、やっぱり……。
この世界にもキセキはないんだね。
その事に悲しくなる。
私の知ってる曲が存在しない世界。
――本当に勿体ない。
歌は人と人を繋げてくれるのに。
でもミンメイさんの歌が広まってるならもっと歌の大切さが分かるはずなんだけど……。
「あ、あの……なにか失礼なことを……?」
私が悲しそうな表情か、もしくは寂しそうな表情をしてたのだと思う。
離れた彼女は申し訳なさそうにおずおずといった、先ほどとは違う子供らしさを見せる女の子。
前世が中学生の私からすれば、同い年でも妹のようなもの。
この子は妙に大人びてるけど、お嬢様といっても我儘な子や大人しい子、大人びた子など様々。多分両親の教育だと思う。
「えっと……ごめんね、私の曲じゃなくてカバー曲なの」
「まあ、そうでしたの? ですが聴いたことありませんね。私が知らないだけなのでしょうか」
「そうかも。えっと、ところで……貴女は?」
自分の歌ではないのに自分の歌と告げるのは私のプライドが許さないため、濁しつつ話題を逸らす。
ランカちゃんの歌なら私の歌でもあるけど、この曲は違う。
「失礼致しました。私、八百万百と申しますわ」
八百万百。
知らない子だ。
マクロスにこんな子居なかったはずだけど……じゃあクロスオーバー先かな?
「貴女は……?」
「私はランカ・リー。よろしくね」
「は、はい。よろしくお願い致しますわ!」
満面の笑みを見せると、何だか八百万さんは顔を赤くしていた。
うんうん、分かるよ。ランカちゃんスマイルは最強だからね。しかも成長後も天使なのに幼いランカちゃんとか超レアの天使どころか女神。ワルキューレじゃなくって。
私ならこれだけで惚れてる。
いつかちゃんと、『キラッ☆』もしなきゃ。
マクロスを知らない人でもこれだけは知ってる人が大半だしね。
「あの……ランカさんはどうしてここで歌を?」
「うっ……!?」
見えないナイフが突き刺さった。
そうだよね。お嬢様校で、尚且つまさか屋上に続く階段でぼっち飯してる
なんて普通思わないよね。
「ちょ、ちょっとひとりで食べてたら歌いたくなったの。特に深い意味はないはないよ!」
「そうでしたか……」
まだ入学したてだからこそ、何とか受け流せた気がする。
持ち前の明るさも大事!
「あの……」
「?」
この子がここで食べるなら私の歌は邪魔になるかな、と弁当をまとめてると緊張した面持ちで声をかけられた。
「私とお友達になってくださいませんか!?」
「……ふえ?」
まさかの発言に私は呆気に取られた。
初めて話した相手なのになんで私なんだろう。
それにお友達って……自然となってるもんじゃないの?
私はそうだったけど。
どうやら事情を聞くと、彼女も上手く馴染めてなかっただけみたい。
それでたまたま歩いていたら私の歌声が気になって……という感じで私を見つけて、先の会話で友達になれるかもしれないと思ったとのこと。
なんでも、話しやすい空気感があるらしい。
そうなの?
「ところで……ランカさんはどのヒーローが好きですか?」
「特に居ないかなぁ。八百万さんはいるの?」
「ええ、私はやはりオールマイトですわね」
私にとってはランカちゃんがヒーローみたいなものだけど、平和の象徴とか、No.1ヒーローとかでオールマイトという方は大人気みたい。
うーん、私にはよく分からない。
そもそもヒーローに憧れる気持ちもないし、ヒーロー云々よりバジュラの件の方が大切だもの。
仮にバジュラ関係なくても私はアイドルさえやっていければいいかな。
「いつか人のお役に立てるような素晴らしいヒーローになりたいですの!」
「そうなんだ。うん。夢があるって素敵」
夢を力強く語る八百万さん。
なりたい自分。
私にはそれが明確にあるからこそ、夢を持つことの偉大さも大切さも分かる。
もしこの出会いが“キセキ”なら夢の応援くらいは出来たらいいな。
「立派なヒーローになれるといいね」
「はい! 必ずなってみせますから! その時はランカさんが私の一番になってくださいます?」
「八百万さん……」
「な、なんてまだ知り合ったばかりですのに……ですが、やっぱり初めてのお友達ですし……」
「……うん」
どこか照れたような様子だ。
彼女が言いたいことが何なのかはすぐに分かる。
一番というのは恋愛的なものでもなければ友情的なものでも無い。
まだ幼いから言葉が足りてないけど、ファンだという意味なのは伝わってきた。
だからこそ彼女のその想いに私は――
「それは――無理かな」
「えぇっ!?」
にっこりとした笑顔で私は断った。
だって私の中でランカちゃんが1番なのは揺るがないもの! ええ、これだけは絶対!!
例え八百万さんが私の中で大切な存在になったとしても! 絶対ぜっっったいに1番にはならないの。ごめんね!!
――なんか私の中で嬉しさと恥ずかしさの感情が芽生えてるけど、これランカちゃんの感情かなぁ。
だって私は恥ずかしいと思ってないからね。私の愛は揺るがないよっ!
ランカちゃんのことは何十年何百年何千年。例えどれほど経ったとしても、時を、世界を次元すら超えても未だに愛してるものっ!
私の愛は銀河級なんだから!
ランカちゃんと出会えたことが、私にとっての『キセキ』!