『うちはマダラは異界の理すらも踊らせる』   作:狂ってる団

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不毛の試練、砂塵に蠢く鋼

深夜の頭領室でシドと互いの魂の底を見定め合った夜が明け、サヌビア砂漠には再び、地表のすべてを焼き尽くさんばかりの凶悪な陽光が降り注いでいた。

 

外界の熱気を遮断していたホームの頑丈な鉄扉が、重々しい金属音と油圧の駆動音を立てて左右へと開いていく。その刹那、一気に押し寄せてきた灼熱の熱風が通路の冷気を激しく掻き消した。

マダラは腕を組んだまま、赤漆の具足(ヨロイ)をカツン、カツンと乾いた音で響かせ、終わりのない砂の海へと往くために悠然と歩み出た。長い漆黒の髪が、地表から舞い上がる熱い砂風に激しくなびく。そのすぐ斜め前を、朝から自分の体躯ほどもある大きな工具袋を細い肩に担いだ小娘――リュックが、引き締まった横顔で、一歩一歩砂を力強く蹴って歩いていた。

 

「……今日は随分と、その小さな口が静かだな、小娘」

マダラが上から冷淡に、しかしどこか試すように声をかけると、リュックは立ち止まることなく、前方の強烈な陽炎を見つめたまま、ハキハキとした共通語で、しかしどこか切実な熱を帯びた声音で答えた。

 

「だって、今回は、アタシたちにとってただの『仕事』じゃないんだもん。昨日さ、親父とマダラの話、アタシも少し聞いてたんだよね……。今回の遺跡に眠ってる古代のマキナのコアは、親父が言ってた『シンを倒すための巨大な機械』の心臓部になるかもしれない、すっごく大事な部品なんだよ。ビサイドにいるユウナんを、エボンの生贄になんて絶対にさせない。そのために、アタシは今日、何が何でもあの遺跡から宝物を引き揚げてみせるよ!」

 

リュックは歩みを止めず、前を向いたまま胸元で拳をきゅっと握りしめた。その瑞々しい瞳には、13歳としての等身大の恐怖や迷いをねじ伏せるような、血の繋がった家族(ユウナん)を何があっても守り抜くという、不屈の反骨精神がぎらぎらと輝いていた。

 

マダラはその少女の真っ直ぐな背中を、静かに、解せぬ世界を見つめるような穏やかな眼差しで見つめていた。

エボンの欺瞞を憎み、大切な身内のために命を懸けて檻(宿命)を噛み破ろうとするその意志。かつて乱世の泥泥の中で、最愛の弟イズナを死なせないために、誰もが笑って暮らせる理想の里(木ノ葉)を作ろうとしていた、若き日の自分と柱間の姿が、この黄金の髪の小娘にこれ以上ないほどに鮮明に重なる。現代人の記憶の残渣がもたらす甘さも相まって、マダラの声音は自然と柔らかくなっていた。

 

「ふん……。身内を守るための悲願、その第一歩というわけか。いいだろう、お前がただの騒がしい砂利か、それともその不屈の意志に見合う器か、次の戦場(遺跡)でじっくりと確かめさせてもらうぞ」

 

「うん! 今に見てなよ、マダラに『ただの砂利じゃない』ってことを、アタシの技術で絶対に証明してみせるんだから!」

リュックは歩調を緩めることなく、全面的に明るい笑顔を爆発させると、サヌビア砂漠の最深部へとマダラを案内して砂を踏みしめていった。

 

ぎらぎらと照りつける太陽が地表のすべてを焼き尽くさんとするなか、数時間の徒歩の旅路が続いていた。水分を拒絶するような灼熱の砂漠を往くのは、並の流浪の武人であればそれだけで命を削る苦行だ。しかし、赤漆の鎧を纏ったマダラは呼吸一つ乱さず、陽炎を切り裂いて悠然と進む。背中の「うちはの団扇」は、乾いた風を浴びてなお、その不気味な威厳を湛え続けていた。

 

やがて砂平線の向こうから、赤茶けた砂に半分埋もれるようにして、不気味な黒い金属で造られた巨大な建造物の天井が姿を現した。寺院の優美な石造りとは根本的に異なる、数千年前の超科学が遺した禁忌の古代遺跡だ。

 

「ここだよ! このハッチの下に、古代のコアが眠ってるの!」

リュックが肩から重い工具袋を砂地へと降ろし、ハッチの表面に埋め込まれた精密な計器の前に立った。ロックの電子配列を解除しようとした――そのまさに一瞬だった。

 

ズズズ……ズズズズッ! ドゴォォォォンッッ!!!

 

「ひゃああっ!?」

遺跡の周囲の砂地が地鳴りとともに同時に大きく爆発し、激しい砂塵を巻き上げて姿を現したのは、強固な茶褐色の皮膚に覆われ、頭部から鋭い角を突き出した四足歩行の獰猛な魔物――『ラルド』と『ヴィーヴル』の巨大な群れだった。数十匹の獣どもが、縄張りを侵された怒りに狂い、鋭い牙を剥き出しにしてこちらを睨みつけている。

 

さらに最悪なことに、侵入者を感知した遺跡の自動防衛システムが完全に連動した。ハッチの周囲の鉄板が一斉にスライドして開き、中から鋭い鉄のブレードを両腕に備えた古代の防衛機械『オートマター(格闘型)』、あるいは黒い銃口をこちらに向ける『オートマター(射撃型)』が合計五機、不気味な金属音を立てて地上へとせり上がってきた。赤い光学アイが不気味に明滅する。

 

「うそ、魔物だけじゃなくて、遺跡の防衛マキナまで一気に群れで襲ってくるなんて最悪じゃん!」

リュックが腰のポーチから手製の爆弾を慌てて引っ張り出し、その圧倒的な数の暴力と、冷徹な機械兵器の威圧感に、思わず息を呑んで一歩後退する。

 

「下がっていろ、小娘。群れをなしたところで、砂利は所詮、砂利に過ぎん」

 

マダラは腕を組んだまま、静かに、ゆっくりと歩み出た。

黒い髪が砂風に激しくなびく。その切れ長の瞳が、一瞬にして妖しく、鮮烈な血の紅へと染まる。三つの巴の文様がクッキリと浮かび上がる「写輪眼」が、灼熱の陽光の中で冷酷に開眼した。

 

シュッッ!!!

 

次の瞬間、全方位から同時に暴力の奔流が襲いかかった。射撃型のオートマターから放たれた無数の光弾、格闘型が振り下ろす鋭い鉄のブレード、あるいはラルドどもの強烈な突進。常人であれば肉体を一瞬でバラバラに切り刻まれるであろう同時奇襲。

 

だが、写輪眼を開眼したマダラの網膜の前では、そのすべての軌道、速度、大気の震え、そして敵の呼吸までもが、まるで止まっているも同然だった。マダラは腕を組んだまま、最小限の体術の動きだけでそれらを完璧に見切り、攻撃の隙間を悠然とすりぬける。

 

「一網打尽にしてくれる。……少し、この不毛の地に命を与えてやる。」

 

マダラはすべての攻撃を躱し終えた刹那、両手を胸の前で高速で交差させ、一瞬の狂いもない結印を終えた。体内の莫大なチャクラが、ビーカネルの乾いた砂の大地へと、己の足の裏を通じて直接浸透していく。

 

「木遁・樹界降誕(もくとん・じゅかいこうたん)――!!」

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォッッッ!!!!!

 

次の瞬間、灼熱のサヌビア遺跡の常識が、根底から粉々に噛み砕かれた。

水分など一滴もないはずの不毛な赤茶けた砂地を激しく突き破り、直径数メートルに及ぶ「巨大な大木の根や幹」が、まるで生き物のようにうねりを上げて、何十本、何百本と一斉に地上へと爆発的に湧き出してきたのだ。

 

「えええええっっ!? な、なになにこれぇぇぇっっ!? 砂漠から木が生えてくるなんて、絶対にありえないじゃん!!」

リュックが爆弾を抱えたまま頭を抱え、驚愕のあまり声を枯らして叫んだ。

 

突進してきていたラルドやヴィーヴルの群れ、あるいは射撃型を含めた五機のオートマターは、下から突き上げてきた強大な巨木の根によって、その巨体を一斉に、無残に絡め取られた。

マダラが指先を僅かに動かす。それだけで、生き物のようにのたうつ巨木の幹が、万力のような圧倒的な圧力で群れ全体を締め上げた。

 

バキバキバキッ! ドカァァァンッ!!

 

魔物の肉体が骨ごと圧殺され、古代機械の強固な装甲も、まとめて木端微塵に粉砕されていく。魔物どもはすべて淡い青白い幻光虫の粒子へと還り、緑の葉の中に吸い込まれて消滅した。オートマターの残骸も、鉄屑となって砂の中に深く深く沈んでいった。

 

ものの数十秒。灼熱の遺跡の前に、突如として広大な『緑の密林』が完成していた。

マダラはゆっくりと腕を組み、紅い眼を静かに漆黒へと戻し、言葉を完全に失って砂地へへたり込む小娘を振り返った。

 

「フン……。砂漠の砂利など、群れたところでこの程度か。やはり手応えがないな」

 

「ちょっとマダラぁぁぁっっ!! 今のなにっ!? 火を吹くだけじゃなくて、今度は砂漠から森を作っちゃうなんて、絶対に魔法のルールを無視してるじゃん!! 術って、術って一体なんなのさ〜っ!!」

リュックがようやく正気を取り戻したように頭を抱え、足を何度も踏み鳴らしてマダラに詰め寄ってきた。

「その紅い眼で魔物の動きも見切ってたよね!? 魔石も使わないで、ただ眼を赤くして、手をごちゃごちゃって動かしただけでこんなにたくさんの魔物とマキナを一瞬で全滅させちゃうなんて本当におかしくない!? 一体どういう仕組みなわけ〜っ!?」

 

「ただの忍術だ」

マダラはフッと大人の余裕を湛えた笑みを浮かべ、詰め寄るリュックの頭を大きな手で無作法に、ぽんぽんと叩いた。その眼差しは、驚くほどに柔らかい。

「お前たちの言う魔法のように、世界の理(ルール)に縋っているわけではない。己の体内にある生命エネルギーとチャクラで、その場に新たな理を生み出す……。それが『忍』だ。……ほら、安心しろ。邪魔者はすべて間引いた。お前の目的を果たすぞ、小娘」

 

マダラが顎で指した先では、リュックが触れる前に、木遁の圧倒的な地殻変動によってハッチの強固なロックが綺麗に破壊され、中への道が開かれていた。

「もーっ、ロックまで木の根っこで壊しちゃうなんて無茶苦茶じゃん!」

リュックは呆れたように笑いながらも、弾むような足取りで工具袋を担ぎ直し、ユウナんを救うための古代遺跡の暗闇へと飛び込んでいった。マダラもその後を追って、ハッチの奥へと足を踏み入れた。

 

ハッチの奥に広がっていたのは、地上の猛暑を完全に遮断した、ひんやりとした静寂の闇だった。

壁面に埋め込まれた古代の蛍光マキナが、二人の足音に反応して、淡い青緑色の光をポツポツと灯していく。

 

マダラは腕を組んだまま、赤漆の具足を暗闇に軋ませて悠然と歩いていた。その少し前を、大きなスパナを両手でしっかりと握りしめたリュックが、周囲の錆びついた鉄の構造物を警戒しながら進んでいる。

 

「……マダラ」

 

不意に、リュックが歩みを緩め、暗闇のなかで前を向いたまま声を低くした。

 

「ねえ、マダラ。あんたのその力……やっぱりスピラの魔法とも、召喚士の祈りとも全然違うよね。魔力も使わないで海を沸かせて、お祈りもなしに砂漠に森を作って……。アタシさ、マダラが前に言ってた『異世界』って言葉、今なら冗談じゃないって分かるよ。本当に……アタシたちの知らない、別の場所から来たの?」

 

暗い通路に、リュックの真っ直ぐな声が響き渡る。

マダラは長い黒髪の隙間から覗く漆黒の瞳で小娘の背中を見つめた。その声音は驚くほどに穏やかな達観(温厚さ)を孕んでいた。

 

「ふん……。ようやくその小さな頭で、理の不自然さに気づしたか」

マダラは歩みを止めることなく、微かに口角を上げて淡々と告げた。

「その通りだ、小娘。俺はお前たちの言う『スピラ』の人間ではない。俺のいた故郷(せかい)はな、エボンのような浅いまやかしの神など存在せず、教えという名の檻に閉じこもり、誰かの犠牲を拝む愚民もいなかった。ただ己の肉体と、命を練り上げた力のみが理を紡ぐ、果てなき戦場だったのだ」

 

「本当に……別の世界が、あるんだ……」

リュックは歩きながらパチクリと大きな目を瞬かせ、息を呑んでマダラの言葉を噛み締めた。だが、彼女は驚き呆れるどころか、アルベド族特有の旺盛な好奇心をその瞳にぎらぎらと燃え上がらせ、マダラの横に飛び跳ねるように並んで顔を覗き込んできた。

 

「ねえねえ! だったらさ、マダラが生まれた時も、その世界はやっぱりそんな感じだったの? どんな機械……じゃなくて、どんな風にみんな生きてたわけ? ちゃんと教えてよ、気になるじゃん!」

 

マダラは、自分の具足の裾を掴みかねない勢いで問い詰めてくる小娘の熱量に、フッと低く、愉しげな笑みを漏らした。だが、その瞳の奥には、どこか遠い深淵を見つめるような冷徹な寂寥が宿っていた。

 

「俺が生まれる遥か昔から、国という概念すらなく、各一族の間での争いが絶えん世界だ。昨日の友が今日の死体になる血を血で洗う戦争が、毎日、何十年も延々と続く世界。機械などというものは存在せん。その代わりさっきも言った通り、己の生命エネルギーであるチャクラを使い様々な忍術を繰り出す。生きたければ、敵を殺す。ただそれだけの理だ」

 

「一族の間で、ずっと戦争……」

リュックは歩きながら、その戦乱の激しさに思わず息を呑んだ。

「じゃあさ……マダラはいつからその戦いの中にいたの? あんた、すっごく強いけど、最初からそんな風に戦えたわけ?」

 

「俺自身、お前のように鉄の玩具を弄んで笑っていられる歳よりも遥かに幼い頃から、生きるために力を磨き、凄惨な戦場に立たされ続けてきた、お前の歳の頃には同じ一族のそこいらの大人どもよりも強かったがな」

マダラは組んだ腕のまま、自らの赤漆の具足(ヨロイ)に視線を落とした。

「戦場に子供も大人もない。生き残るために、敵の首を刈り、血の海を泳ぐのが日常だった。……そんな地獄のなかで、俺は最愛の弟たちを敵に次々と殺された。まだ幼い、ただ兄を信じて笑っていた弟たちを、理不尽に、無残にな」

 

「弟たちを……殺されたの……?」

リュックの声が、急激に震え始めた。マダラはその震えを無視するように、淡々と続けた。

 

「何故、大切な家族が奪われ続けなきゃならんのだ。……俺は幼い頃、河原で一人の男と出会い、誓い合った。いつかこんな理不尽な戦争をすべて終わらせよう、子供たちが死なずに済む、誰もが笑って暮らせる理想の里をこの手で作る、とな。そして同時に、我が一族を、弟たちの仇をすべて討ち果たす……。俺はただ、その二つの愛と復讐のために全てを懸けて、戦乱の世を駆け抜けてきたのだ」

 

マダラの口から静かに淡々と語られたその凄惨な過去。それは、魔石も祈りもなしに天災を滅ぼす「戦神」の、あまりにも重く孤独で、血の滲むような魂の原点だった。

 

「……っ」

 

その瞬間、リュックの喉の奥から、乾いた小さな吐息が漏れた。

歩みを止めた彼女の身体が、まるで極寒の雪山に放り出されたかのように、小刻みに、激しく震え始める。大きなスパナを握りしめる両手の指先が白く強張り、金属の柄がカタカタと乾いた悲鳴を上げた。

 

マダラが口にした言葉の一つ一つが、目に見える凶暴な刃となって、13歳の少女の柔らかな精神へと容赦なく突き刺さっていた。

生まれる前からの、終わりのない戦争。アタシがホームで機械を弄って、アニキや親父に甘えて笑っていたその年齢よりも、ずっと、ずっと幼い頃。そんな子供が、血の臭いと肉の焦げる硝煙の立ち込める地獄に放り出され、生きるために他人の命を奪い続けてきたという、想像を絶する日常。

 

(なによ、それ……。なんなのさ、それ……っ!)

 

リュックの胸の奥底で、ドロドロとした感情の奔流が狂ったように暴れ狂った。

最初は、そのあまりにも生々しい「死」の気配への、息が止まるほどの戦慄と本能的な恐怖だった。マダラが纏う赤漆の具足に刻まれた無数の傷が、エボンの武器でも魔物の爪でもなく、「本物の地獄」で刻まれたものだという事実が、視界を真っ暗にさせるほどの恐怖となって彼女を打ちのめす。

 

だが、恐怖のすぐ裏側から、心臓を鷲掴みにされるような激しい痛みが、涙となって突き上げてきた。

家族を、身内を理不尽に奪われる苦しみなら、リュックだって痛いほどによく知っている。最愛の母親を『シン』に奪われ、その死を前にして、親父と二人で狂うほどに泣き叫んだあの日の夜の絶望。大切な人を喪失するその地獄のような痛みを、この目の前の大男は、何度も、何度も、最愛の弟たちの死によって脳髄に焼き付けられてきたのだ。その胸を引き裂くような復讐心と、理不尽への怒りの深さが、彼女の魂へとダイレクトに伝わってきて、胸が苦しくて張り裂けそうだった。

 

「ねえ、マダラ……」

リュックは溢れそうになる涙を必死に奥歯で噛み殺し、潤んだ渦巻きの瞳をマダラに向けた。

「あんた、そんな地獄みたいな場所で……大切な人をみんな失くして、それでも一人で、世界を変えようとしてきたんだね。理不尽な戦争を終わらせるために、ずっと、ずっと戦ってきたんだね……」

 

「ふん……。終わらせるために、俺は力を求めた。それだけだ」

マダラは静かに答えた。

 

「アタシ……なんだか、あんたの言いたいことが、何となくだけど伝わってくるよ……っ!」

リュックは顔を真っ赤にしながらも、その瞳にひまわりのような明るい光を、かつてないほど強く、烈火のごとく燃え上がらせた。彼女は大きく手振りを交え、マダラの漆黒の瞳を真っ直ぐに見上げて力強く吼えた。

 

「大切な家族を奪われてさ、それを何が何でも守るために、世界(運命)と必死に戦うのって、アタシたちと同じじゃん! アタシたちだってさ、シンに、そして召喚士とか言う生贄にユウナんを奪われるかもしれない、それでも家族を守るために戦ってるの! だからさ! アタシたちがエボンの教えなんて関係ない、新しい機械の力で『シン』を力ずくで倒して世界をひっくり返す計画だって、マダラから見ればあり得ない話じゃないじゃん! スピラの外にそんな凄い世界があって、そんな風に戦ってきたマダラがいるなら……アタシたちがエボンの檻をブチ壊して、新しい理を作ることだって、絶対にできるんだよっ!」

 

不条理な宿命を跳ね除け、身内(ユウナん)の未来を己の手で掴み取ろうとする小娘の、魂の底からの叫び。

マダラはフッと低く、実に愉快そうに口角を上げた。現代人の記憶の残渣がもたらす愛着が、その眼差しを驚くほどに柔らかく、そして温厚にさせていた。

 

「ククク……。相変わらず威勢だけはいい砂利だ。ならば、口を動かす前に手を動かせ。お前たちのその悲願とやらが、ただの法螺(ほら)ではないことを、これからこの奥で俺に証明してみせろ」

 

「言われなくたって! 今に見てなよ、マダラ! 絶対にアタシの価値を認めさせて、ちゃんと名前で呼ばせてやるんだからね!」

リュックは全面的に明るい笑顔を爆発させると、涙の滲んだ目をゴーグルで隠すようにして、弾むような足取りで通路のさらに奥、暗闇の最深部へと駆け出していった。

 

うちはマダラは、アルベドの少女リュックに自らの凄惨な過去を明かし、彼女のなかに宿る「新たなる理への希望」を大人の余裕で見守りながら、遺跡の最深部へと足を進める。世界の欺瞞を、エボンのシステムを根底から噛み砕くための『新たなる乱舞』が、二人の魂の底で結ばれた唯一無二の共鳴(絆)と共に、古代の鉄塊が眠る闇の奥で、静かに、確実に加速していくのだった。

 

 

 




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