『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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前書き

はじめまして。

この作品を見つけてくださり、ありがとうございます。

本作は『五等分の花嫁』の世界観・登場人物をお借りした二次創作小説です。

ただし、原作の物語をそのまま再現する作品ではありません。

原作とは異なる設定、人物関係、出来事、恋愛模様を取り入れた「もしも」の世界としてお楽しみください。

本作の主人公は、上杉風太郎ではありません。

もう一人の少年――如月悠飛。

彼を中心として、五つ子たち、従姉妹の六華、親友の風太郎、そして如月家や上杉家など、原作とは異なる人間関係を描いていきます。

物語の始まりは、まだ幼かった頃。

悠飛と中野五つ子、そして五つ子の従姉妹である六華は、幼い頃に出会った幼馴染でした。

当時は、ただ一緒に遊んで、笑って、時には喧嘩をして。

それが当たり前の日常でした。

けれど、子供の頃の記憶というものは、年月とともに少しずつ薄れていきます。

いつしか悠飛も、五つ子たちも、六華も、幼い頃に交わした約束を忘れていきました。

それでも――。

人の心に残った感情まで、完全に消えるわけではありません。

「なんだか、初めて会った気がしない」

そんな小さな違和感から、物語は動き始めます。

そして高校二年生の春。

黒薔薇女学院から旭高校へ、五つ子たちが転校してきます。

一花。

二乃。

三玖。

四葉。

五月。

そして五つ子の従姉妹であり、同い年のクラスメイトでもある六華。

彼女たちと再会した悠飛は、まだその少女たちが幼い頃の大切な友達だったことを知りません。

五つ子たちも同じです。

しかし、なぜか悠飛のことが気になる。

何気ない仕草。

困っている人を放っておけない優しさ。

誰かを守る時に見せる真っ直ぐな眼差し。

その一つ一つが、遠い昔の記憶を刺激していきます。

特に一花、四葉、六華。

三人の悠飛への想いは、それぞれ違った形で育っていきます。

一花は、大人びた余裕と悪戯っぽさを武器に悠飛へ近づいていく。

四葉は、昔から変わらない真っ直ぐな笑顔で悠飛の隣に立つ。

そして六華は、五つ子たちとは少し違う場所から悠飛を見つめ続ける。

「私は五つ子じゃない」

だからこそ、彼女には彼女だけの想いがある。

五つ子の喧騒から一歩引いた場所で、誰よりも長く悠飛の背中を見てきた少女。

それが中野六華です。

一方、悠飛には最高の親友がいます。

上杉風太郎。

原作では五つ子たちの家庭教師として彼女たちと深く関わることになる少年ですが、本作では少し立場が違います。

悠飛と風太郎は、対等な友人です。

悠飛は神様から授かった「学問」と「武術」の才能によって、同年代とは比較にならないほどの能力を持っています。

しかし、悠飛一人ですべてを完璧にこなすわけではありません。

彼の隣には風太郎がいる。

風太郎は悠飛の頭脳と能力を理解し、時には冷静に指摘し、時には無茶を止め、時には誰よりも彼の背中を押す。

やがて二人は、学生時代の親友という関係を越え、人生を共に戦う最高のパートナーになっていきます。

五つ子たちとの関係も、原作とは異なります。

本作では、風太郎が五つ子の家庭教師になるという形を基本的に採用しません。

その代わり、悠飛と風太郎、そして五つ子たちは定期的に勉強会を開きます。

最初は勉強が苦手だった五つ子たちも、二人の友人としての支えを受けながら、少しずつ成績を伸ばしていきます。

そこには競争もあります。

喧嘩もあります。

笑いもあります。

そして――恋もあります。

悠飛は如月家の一人息子。

父・如月明馬はIT企業を経営する社長。

母・如月明美は美容院を経営しています。

そして一学年下の妹、如月莉々華。

兄である悠飛を慕うあまり、少々ブラザーコンプレックス気味。

五つ子たちや六華が悠飛に近づくたびに、妹として複雑な心境になることも。

ただし、悠飛自身は御曹司でありながら、決して傲慢な人間ではありません。

金を持っているから偉い。

才能があるから偉い。

そんな考えとは無縁です。

むしろ、困っている人を見れば手を差し伸べる。

弱い立場の人間が傷つけられていれば、迷わず前に出る。

それが如月悠飛という少年です。

だからこそ、彼は周囲から愛されていきます。

そして物語が進むにつれて、悠飛は自分の能力だけではなく、人との繋がりこそが人生において最も大切なものだと知っていきます。

高校生活は、永遠ではありません。

楽しい時間にも終わりがあります。

そして高校三年生の秋。

旭高校最大のイベント――日の出祭。

そこで、悠飛たちは一人の男と出会います。

無堂仁之介。

五つ子の実父。

彼は五つ子たちの母・零奈と深い因縁を持つ人物です。

特に五月に対して、自分の考える「正しい道」へ進ませようとします。

教師を目指す五月に対して、その夢を否定するのではなく、教師という仕事の厳しさや現実を理由にして、別の道へ進ませようとする。

それは一見すれば、五月の将来を案じているようにも見えるでしょう。

しかし――。

五月自身が選んだ夢を、本人の意思とは関係なく変えようとすることに、悠飛は納得できません。

そして。

五月と無堂の間に、悠飛が割って入ります。

「その先は、本人が決めることだ」

悠飛は五月の前に立つ。

「五月が何を目指すのか。それを決めるのは、五月自身だ」

しかし、無堂は一人ではありませんでした。

仲間たちが悠飛へ襲いかかります。

悠飛は五月を守ります。

最後まで、彼女を後ろに庇いながら。

そして――。

凶刃が振り抜かれる。

五月を狙った刃を防ぐため、悠飛は身を投げ出します。

ナイフが右眼を切り裂く。

激痛。

視界が白く染まる。

悠飛はその場に膝をつきます。

右眼から流れ落ちる血。

五月の悲鳴。

そして。

その日を境に、悠飛の右眼から光が失われます。

彼は「独眼竜」と呼ばれるようになります。

しかし、右眼を失ったからといって、悠飛の人生が終わるわけではありません。

むしろ。

それは新たな人生の始まりでした。

痛みを抱えながらも、悠飛は前を向く。

勇往邁進。

一度決めた道を、恐れず進む。

それが如月悠飛という男です。

そして高校を卒業した後。

悠飛と風太郎、五つ子たちは、それぞれの人生を歩み始めます。

一花は芸能界へ。

四葉もまた、自分の未来へ。

六華も、自分自身の道を歩いていく。

そして悠飛は、投資の世界へ進みます。

神様から授かった「学問無双」の能力。

それを金融・経済・統計・数学など、あらゆる分野に応用。

デイトレードから始まった投資人生は、やがて世界規模へと成長していきます。

風太郎はその隣で、悠飛の頭脳を支える参謀となります。

二人は莫大な資産を築き上げ、やがて悠飛は世界大富豪ランキング第2位にまで登り詰めます。

都内のタワーマンションを複数所有するほどの資産家。

しかし、悠飛自身が暮らしているのは、広大な敷地を持つ自宅。

右眼には眼帯。

金髪のウルフヘア。

高身長で鍛え上げられた身体。

少年時代の面影を残しながらも、40代となった悠飛には、大人の男としての渋みが加わっていました。

そして――20年。

かつての同級生たちのもとに、一通の知らせが届きます。

同窓会。

20年ぶりに集まる、かつての仲間たち。

そこで再会するのは――。

大女優となった中野一花。

大人の包容力を身につけた中野四葉。

そして。

20年間、悠飛への想いを胸の奥にしまい続けていた中野六華。

三人の恋が、再び動き始めます。

「ふふ、相変わらず格好いいね、悠飛くん」

「悠飛さん! 20年経っても、やっぱり私のヒーローです!」

「悠飛……私は、ずっとあなたを見てた」

悠飛は困惑します。

自分が20年もの間、彼女たちの心に残っていたことなど知らなかったからです。

そして、同窓会の夜。

幼い頃の記憶が少しずつ蘇っていきます。

夕焼けの公園。

七人の子供。

笑い声。

そして、遠い昔に交わした約束。

「また、みんなで会おう」

忘れていたはずの言葉。

忘れていたはずの笑顔。

忘れていたはずの恋。

それらが、20年という長い時を越えて、もう一度悠飛のもとへ帰ってきます。

これは、完璧な男の物語ではありません。

神様からチート能力を授かり、世界有数の大富豪となった男の成功譚だけでもありません。

右眼の光を失っても、前へ進み続けた一人の男。

その男を20年間忘れられなかった少女たち。

そして、かつて幼馴染だった七人が、もう一度「家族」のような絆を取り戻していく物語です。

原作とは違う歴史。

原作とは違う人間関係。

原作とは違う恋の結末。

それでも根底にあるのは――。

「大切な人を守りたい」という想い。

「自分の人生を、自分自身で選びたい」という願い。

そして。

「一度失ったものを、もう一度取り戻したい」という、人間の強さです。

一花。

四葉。

六華。

三人の恋は、どこへ向かうのか。

風太郎と三玖の関係は、どのような未来を迎えるのか。

二乃、五月、そしてらいはや莉々華たちは、そんな恋模様をどう見守るのか。

そして、悠飛自身が最後に選ぶ未来とは。

幼い日の約束から、高校時代の青春。

日の出祭での悲劇。

独眼竜となった少年。

そして20年後の再会。

長い時を越えて。

止まっていた恋の時計が、再び動き始める。

――さあ。

もう一度、始めよう。

あの日、言えなかった言葉を。

あの日、果たせなかった約束を。

そして。

20年間胸に秘めていた「好き」を。

『神のチートで勇往邁進!』

――これは、如月悠飛と彼を取り巻く人々の、青春と成長、絆と恋を描く物語です。

原作を知っている方にも。

『五等分の花嫁』が好きな方にも。

そして、少し違った「もしも」の物語を楽しみたい方にも。

この物語を、最後まで楽しんでいただければ幸いです。

※本作は『五等分の花嫁』を原作とする二次創作です。原作とは異なる設定・展開・人物関係が多数含まれます。原作とは違う世界線の物語としてお楽しみください。

それでは――。

如月悠飛の物語を、始めます。



「20年の時を越えて、独眼竜は再び恋をする――一花、四葉、六華。それぞれの想いが、あの日の約束とともに動き出す」

プロローグ 七人の幼馴染と、忘れられた約束

 

――これは、二十年後の物語。

 

世界大富豪ランキング第二位。

 

右眼に黒い眼帯を着け、金色の髪を風になびかせる、四十代の男。

 

投資家として世界を相手に戦い、莫大な財産を築き上げた男。

 

武術の達人にして、知略にも長けた男。

 

人々から畏敬の念を込めて、こう呼ばれる男。

 

――独眼竜。

 

その名は、如月悠飛。

 

しかし。

 

そんな彼にも、まだ何者でもなかった頃がある。

 

世界を動かす財産もなければ、眼帯もない。

 

ただ、笑って。

 

ただ、走って。

 

ただ、大切な友達と遊んでいた。

 

そんな幼い少年だった頃が――。

 

 

「ゆうひー!」

 

「待ってよー!」

 

「こっち、こっち!」

 

春の暖かな風が吹く、小さな公園。

 

まだ背の低い少年少女たちが、芝生の上を駆け回っていた。

 

その中心にいたのは、一人の少年。

 

まだ幼いながらも、どこか人を惹きつける雰囲気を持った少年だった。

 

如月悠飛。

 

金色の髪を揺らしながら、楽しそうに笑っている。

 

「こっちだよ!」

 

「待って、悠飛!」

 

後ろから追いかけてくる少女たち。

 

同じ顔。

 

同じ髪色。

 

それでも、それぞれ違う表情を浮かべている。

 

中野一花。

 

中野二乃。

 

中野三玖。

 

中野四葉。

 

中野五月。

 

そして、その少し後ろ。

 

五人とは違う雰囲気を持つ少女がいた。

 

「ちょっと、みんな速すぎるよ……」

 

中野六華。

 

五つ子の従姉妹である彼女も、幼い頃からこの輪の中にいた。

 

悠飛を含めた七人。

 

それが、この頃の彼らだった。

 

「悠飛、鬼ごっこしよう!」

 

四葉が元気よく手を挙げる。

 

「いいよ!」

 

「じゃあ、鬼は悠飛ね!」

 

「えっ?」

 

「決定!」

 

「ちょっと待ってよ!」

 

笑い声が公園いっぱいに響く。

 

悠飛は逃げる五人を追いかける。

 

しかし、すぐに足を止めた。

 

「六華は?」

 

「え?」

 

振り返る。

 

少し離れた場所で、六華が立っていた。

 

「私は……見てるだけでいいよ」

 

「なんで?」

 

「だって、みんな速いんだもん」

 

「じゃあ、俺も六華と一緒にいる」

 

「え?」

 

悠飛は迷わず六華のところへ戻った。

 

六華は目を丸くする。

 

「悠飛、遊ばないの?」

 

「六華が一人になるから」

 

「……別に、一人でも平気だよ」

 

「俺が嫌なんだ」

 

その言葉に、六華はしばらく黙った。

 

やがて、小さく笑う。

 

「……変なの」

 

「そうかな?」

 

「うん。でも……ありがとう」

 

二人の姿を見ていた四葉が叫ぶ。

 

「悠飛ー! 六華ー! 早くー!」

 

「今行く!」

 

悠飛が六華の手を取った。

 

「ほら、行こう!」

 

「……うん」

 

小さな手と手が重なる。

 

その光景を、一花が少し離れた場所から見ていた。

 

「……ふふ」

 

「一花、どうしたの?」

 

三玖が尋ねる。

 

「ううん。なんでもない」

 

まだ幼い少女には、その感情の名前は分からなかった。

 

ただ。

 

悠飛と六華が一緒にいるのを見ると、胸の奥が少しだけざわついた。

 

それが何なのか。

 

誰も知らなかった。

 

 

夕方。

 

公園のベンチに、七人が並んで座っていた。

 

悠飛の父、明馬。

 

IT企業を経営する社長でありながら、子供たちには気さくに接する人物だった。

 

「お前ら、そろそろ帰るぞー」

 

「えー、まだ遊びたい!」

 

四葉が抗議する。

 

「明日も遊べるだろ」

 

「明日も?」

 

「もちろん」

 

悠飛が笑った。

 

「じゃあ、明日も七人で遊ぼう!」

 

「うん!」

 

「いいよ」

 

「……楽しみ」

 

「はい!」

 

「私も」

 

六華も笑った。

 

七人。

 

それが当たり前だった。

 

明日も。

 

明後日も。

 

ずっと。

 

このまま一緒にいられる。

 

幼い彼らは、そう信じていた。

 

 

その夜。

 

悠飛は自分の部屋の窓から夜空を見上げていた。

 

隣には六華がいる。

 

「ねえ、悠飛」

 

「なに?」

 

「私たち、大きくなっても仲良しなのかな?」

 

「当たり前じゃん」

 

悠飛は即答した。

 

「ずっと一緒だよ」

 

「……ずっと?」

 

「うん」

 

「高校生になっても?」

 

「うん」

 

「大人になっても?」

 

「もちろん」

 

六華は嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、約束ね」

 

「約束?」

 

「うん」

 

六華が小指を差し出す。

 

悠飛も自分の小指を絡めた。

 

「大人になっても、みんなで会おう」

 

「うん!」

 

「絶対だよ?」

 

「絶対!」

 

小さな指と指が絡む。

 

その後ろでは、一花、二乃、三玖、四葉、五月もそれぞれ小指を差し出していた。

 

「私も約束!」

 

「私も!」

 

「……忘れない」

 

「絶対忘れません」

 

「みんな一緒だね!」

 

七人の小指が重なった。

 

幼い日の、何気ない約束。

 

それが、二十年後の彼らの人生を大きく変えることになるとは。

 

この時の誰も知らなかった。

 

 

それから、時は流れた。

 

子供たちは成長していく。

 

環境が変わる。

 

学校が変わる。

 

生活が変わる。

 

そして、いつしか――。

 

「あの時、一緒に遊んだ男の子……」

 

「誰だったっけ?」

 

「……思い出せない」

 

「でも、なんだか懐かしい」

 

「夢の中に出てくる気がします」

 

記憶は少しずつ薄れていった。

 

七人で遊んだ公園。

 

夕焼けの空。

 

小さな手。

 

交わした約束。

 

それらは、心の奥底へ沈んでいった。

 

けれど。

 

完全に消えたわけではなかった。

 

心の奥には、確かに残っていた。

 

名前も。

 

顔も。

 

声も。

 

まだ幼かった少年の笑顔も。

 

 

そして――高校二年生。

 

旭高校。

 

春。

 

桜が舞う校門前に、一人の少年が立っていた。

 

「……今日から二年生か」

 

金色の髪。

 

整った顔立ち。

 

高い身長。

 

制服の着こなしも自然で、同年代の少年とはどこか違う雰囲気を持っている。

 

如月悠飛。

 

彼は一見すると、普通の高校生だった。

 

ただし。

 

普通ではないものを、いくつも持っている。

 

神様から授かった、二つの力。

 

「学問無双」

 

「武術チート」

 

幼い頃から異常なほどの学習能力と身体能力を持っていた。

 

それでも悠飛は、それを自慢することはなかった。

 

「おーい、悠飛!」

 

背後から声がする。

 

振り返る。

 

「風太郎」

 

上杉風太郎。

 

悠飛の親友。

 

「また朝から早いな」

 

「お前こそ」

 

「俺は遅刻するのが嫌いなんだ」

 

「嘘つけ。昨日、夜中までゲームしてただろ」

 

「……なぜ知っている」

 

「らいはから聞いた」

 

「妹め……」

 

二人は笑った。

 

悠飛と風太郎。

 

性格も家庭環境も違う。

 

それでも、二人には確かな友情があった。

 

「今日、転校生が来るらしいぞ」

 

風太郎が言った。

 

「へえ」

 

「五人らしい」

 

「五人?」

 

「しかも――」

 

風太郎が言葉を続ける前に。

 

校門の向こうから、五人の少女が歩いてくるのが見えた。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

四人。

 

五人。

 

五人とも、どこか見覚えのある顔。

 

悠飛は足を止めた。

 

「……」

 

胸の奥が、妙にざわつく。

 

初めて見るはずなのに。

 

なぜか。

 

知っている気がする。

 

「悠飛?」

 

風太郎が声をかける。

 

「……いや」

 

悠飛は首を振った。

 

「なんでもない」

 

その五人の後ろから、もう一人の少女が歩いてくる。

 

五つ子とは違う髪型。

 

落ち着いた雰囲気。

 

けれど、その横顔を見た瞬間。

 

悠飛の胸が、さらに強く締め付けられた。

 

「……あの子」

 

六華だった。

 

もちろん。

 

この時の悠飛は、その名前すら知らない。

 

六華もまた、悠飛を見て足を止める。

 

「……え?」

 

心臓が、一度だけ大きく跳ねた。

 

知らない少年。

 

見たことのないはずの人。

 

なのに。

 

なぜか、懐かしい。

 

「……なんで?」

 

六華は胸元を押さえた。

 

そして。

 

悠飛もまた、同じように自分の胸に手を当てていた。

 

「……変な感じだな」

 

風太郎が不思議そうに見る。

 

「何が?」

 

「いや……」

 

悠飛は五人の少女へ視線を戻した。

 

その中で、四葉がふとこちらを見る。

 

目が合う。

 

「……!」

 

四葉の表情が固まった。

 

「どうしたの?」

 

一花が尋ねる。

 

「ううん……」

 

四葉は首を傾げる。

 

なぜだろう。

 

この人を知っている気がする。

 

ずっと昔。

 

とても大切な場所で。

 

一緒に笑っていたような――。

 

「……気のせいかな」

 

そして、一花も。

 

三玖も。

 

二乃も。

 

五月も。

 

それぞれ悠飛を見た。

 

誰も、まだ思い出せない。

 

けれど。

 

心の奥底では、確かに何かが動き始めていた。

 

二十年前。

 

七人の幼い子供たちが交わした約束。

 

「大人になっても、みんなで会おう」

 

その約束は、忘れられていた。

 

しかし――。

 

忘れられた約束は、消えたわけではない。

 

時を越えて。

 

運命の糸は、再び結ばれようとしていた。

 

そして、この日。

 

如月悠飛の高校生活。

 

五つ子と六華の新たな青春。

 

上杉風太郎との友情。

 

そして――三人の少女との恋。

 

すべての始まりとなる一日が、幕を開ける。

 

悠飛はまだ知らない。

 

この出会いが、二十年後の自分を待つ三人の女性へと繋がっていることを。

 

そして。

 

この頃の自分が、まだ両目で世界を見ていることを。

 

右眼に光を失い、「独眼竜」と呼ばれる未来が待っていることを。

 

ただ一つだけ。

 

幼い日の約束だけが、確かに未来へと続いていた。

 

――七人は、再び出会う。

 

そして。

 

物語は始まる。

 

**「忘れていた幼馴染」として。**

 




後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

『神のチートで勇往邁進!~20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す~』のプロローグをお届けしました。

今回のプロローグでは、本編が始まるよりもさらに昔――悠飛と五つ子、そして六華がまだ幼かった頃から物語を始めました。

本作では、原作とは少し違った世界線を描いていきます。

原作では風太郎と五つ子たちの関係が物語の中心になりますが、本作の主人公は如月悠飛。

風太郎は悠飛にとって大切な親友であり、後には最高の参謀として人生を共に歩んでいく存在です。

そして、悠飛を中心に、一花、四葉、六華の三人がメインヒロインとして物語を彩っていきます。

特に中野六華は、本作オリジナルのヒロインです。

五つ子の従姉妹であり、五つ子たちと同い年。

五つ子と同じクラスメイトとして高校生活を送りながら、幼い頃から悠飛のことを見つめてきた少女です。

五つ子のような華やかな輪の中心ではなく、一歩引いた場所。

だからこそ、六華には六華にしか見えなかった悠飛の姿があります。

「私は五つ子じゃない」

この言葉が、六華というヒロインを象徴する言葉になっていく予定です。

一花には一花の恋。

四葉には四葉の恋。

六華には六華の恋。

三人がそれぞれ違う形で悠飛を想い、時には競い合い、時には支え合いながら物語が進んでいきます。

また、悠飛には神様から授かったチート能力があります。

「学問無双」と「武術チート」。

普通なら、これだけでも十分に主人公らしい能力だと思います。

しかし、本作では単純に「何でもできる最強主人公」というだけにはしないつもりです。

悠飛が本当に強い理由は、能力そのものではありません。

困っている人を見捨てない。

弱い立場の人間を守る。

間違っていることには立ち向かう。

そして、自分が決めたことから逃げない。

そんな「心の強さ」を持った人物として、如月悠飛を描いていきたいと思っています。

だからこそ、本作のタイトルには「勇往邁進」という言葉を入れています。

前に進む。

たとえ困難があっても。

たとえ失うものがあっても。

それでも、自分の信じた道を歩いていく。

それが悠飛という主人公です。

そして、本作で非常に大きな意味を持つのが「右眼」です。

高校時代の最大の事件となる日の出祭。

そこで悠飛は、五月を守るために無堂たちの前に立ちます。

そして、五月を襲う危険から彼女を庇った結果、右眼を負傷し、その光を失うことになります。

その出来事は、悠飛の人生を大きく変えます。

それまで両目で見ていた世界が、一瞬で変わる。

それでも悠飛は、そこで立ち止まりません。

右眼を失ったからこそ、彼はさらに強くなる。

やがて人々から「独眼竜」と呼ばれるほどの存在へと成長していきます。

ただし、その傷は単なる主人公のカッコいい特徴として描くつもりではありません。

悠飛が何を失い、何を守ったのか。

五月がその出来事をどう受け止めるのか。

一花、四葉、六華が悠飛の傷を見て何を思うのか。

風太郎が親友としてどう支えるのか。

そういった人間関係にも大きく関わってくる出来事になります。

そして、プロローグで描いた「幼い日の約束」。

これも今後の重要な伏線になります。

幼い頃の悠飛と五つ子、そして六華。

七人は確かに仲良しでした。

けれど、成長するにつれて、その記憶は少しずつ薄れていきます。

高校生になった時点では、互いに「昔の友達だった」という明確な認識を持っていません。

それでも、初めて会ったはずなのに懐かしい。

なぜか目が離せない。

なぜか胸が高鳴る。

そんな感覚だけが残っています。

この「忘れてしまった記憶」が、物語を通して少しずつ蘇っていきます。

そして20年後。

同窓会で再会した悠飛たちは、ようやく幼い日の記憶と向き合うことになります。

高校時代の恋。

卒業後の人生。

20年間の空白。

そして、再会。

本作では、この「時間」を大切に描いていきたいと思っています。

高校生だった悠飛たちが、40代になったとき、どんな人間になっているのか。

一花は大女優としてどんな人生を歩んでいるのか。

四葉はどんな大人になっているのか。

六華は20年間、どんな想いを抱えていたのか。

そして悠飛は、なぜ世界大富豪ランキング第2位にまで上り詰めたのか。

風太郎はなぜ、悠飛の最高顧問になったのか。

そういった部分も、物語の後半で描いていく予定です。

特に20年後の悠飛は、高校時代とはまったく違う魅力を持つ男性として登場します。

金髪のウルフヘア。

高身長。

鍛え上げられた身体。

右眼には黒い眼帯。

そして世界第2位の資産家。

それでも、昔と変わらないところもある。

困っている人がいれば手を差し伸べる。

大切な人を守る。

友人を裏切らない。

そして、好きな人には不器用なほど真っ直ぐ。

そんな「少年の心を残した大人の男」として描けたらと思っています。

一方で、20年後の一花、四葉、六華も高校時代とは違います。

一花は大人の色気を身につけた大女優。

四葉は昔の元気さを残しながら、大人の包容力を身につけた女性。

六華は、20年間秘め続けてきた想いを、もう隠すつもりのない女性。

三人とも、悠飛との距離を縮めようとします。

高校時代とは違う、大人同士の恋。

ここから「三度(みたび)恋の火を灯す」というタイトルが意味を持ってきます。

幼い日の淡い想い。

高校時代の青春の恋。

そして20年後の再会。

三度目の恋。

この三つの時間を一本の物語として繋げていく予定です。

また、風太郎についても、本作では重要な存在です。

悠飛が「才能」と「行動力」の男なら、風太郎は「努力」と「分析」の男。

二人は正反対のようでいて、とても相性の良い親友です。

悠飛が突っ走れば風太郎が止める。

風太郎が考えすぎれば悠飛が背中を押す。

そして二人とも、相手の能力を素直に認めています。

やがて大人になった二人は、悠飛が世界を動かし、風太郎がその隣で戦略を組み立てるという最高のコンビになります。

「世界第2位の大富豪」と「その最高顧問」。

この二人のビジネスパートナーとしての物語も、後半で描いていきたいと思っています。

そして、如月家と上杉家の関係も本作独自の設定です。

悠飛の父・明馬はIT企業の社長。

母・明美は美容院を経営。

一方、風太郎の父・勇也はカメラ関係の仕事をしています。

悠飛の家は裕福ですが、悠飛自身はその環境を鼻にかけません。

むしろ、経済的に苦しい上杉家を家族ぐるみで支援することで、悠飛と風太郎の友情をより深いものにしています。

ただし、悠飛は風太郎を「助けてあげている友人」とは考えていません。

あくまで対等な親友。

この関係は、二人が大人になってからも変わりません。

そして忘れてはいけないのが、悠飛の妹・莉々華です。

兄大好きなブラコン気質。

五つ子や六華が悠飛に近づけば、妹として複雑な反応を見せます。

とはいえ、ただの恋愛の邪魔役にはしません。

莉々華自身も五つ子や六華と交流し、時には彼女たちの恋を応援したり、時には余計なことを言って騒動を起こしたり。

物語に笑いを与える存在として活躍させる予定です。

さて。

ここまで長々と書いてしまいましたが、まだ物語は始まったばかりです。

これから悠飛たちは、高校生活の中でたくさんの出来事を経験します。

勉強。

部活動。

林間学校。

修学旅行。

恋愛。

喧嘩。

友情。

そして日の出祭。

そのすべてが、20年後の同窓会へと繋がっていきます。

原作を知っている方なら、「ここは原作と違うな」と思う場面も多いでしょう。

それも本作の楽しみの一つとして受け取っていただければ嬉しいです。

本作は原作の展開を否定するものではありません。

「もし、あの世界に如月悠飛という少年がいたら?」

「もし、五つ子たちにもう一人、同い年の従姉妹がいたら?」

「もし、風太郎に人生を共に歩む親友がいたら?」

そんな「もしも」から始まった物語です。

そして最後に。

この物語のテーマは――「再会」です。

忘れていた人との再会。

失った夢との再会。

過去の自分との再会。

そして。

20年越しの恋との再会。

幼い頃に交わした約束が、20年という時間を越えて再び動き出す。

その瞬間まで、悠飛たちの物語をゆっくり見届けていただければ幸いです。

次回から、いよいよ高校時代の本編が始まります。

黒薔薇女学院から旭高校へ転校してくる五つ子。

その五つ子と共にやってくる六華。

そして、彼女たちを迎える如月悠飛と上杉風太郎。

まだ誰も、自分たちが幼い頃に出会っていたことを知らない。

まだ誰も、20年後に再び集まることを知らない。

そして、まだ誰も――。

悠飛が「独眼竜」と呼ばれる未来を知らない。

それでは。

次のページから始まる、七人の青春をお楽しみください。

――忘れられた約束は、まだ終わっていない。

『神のチートで勇往邁進!』

ここから、本当の物語が始まります。
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