『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第二章 青春勉強会 第11話「五つ子、勉強会に集合!」

放課後。

 

旭高校のチャイムが鳴った。

 

「終わったー!」

 

教室中から、部活動へ向かう生徒たちの声が上がる。

 

そんな中。

 

一人だけ、帰り支度をしているようで、まったく帰る気配のない少女がいた。

 

「……」

 

中野一花。

 

机の上には教科書。

 

ノート。

 

筆箱。

 

そして、昨日の勉強会で使った問題集。

 

「一花」

 

声をかけてきたのは四葉だった。

 

「今日も勉強会ですよね!」

 

「うん」

 

一花は笑う。

 

「今日は全員集合でしょ?」

 

「もちろんです!」

 

四葉は元気よく頷いた。

 

「二乃も三玖も五月も、もう向かってると思います!」

 

「六華も?」

 

「はい!」

 

「そっか」

 

一花は鞄を肩にかける。

 

「じゃあ、私たちも行こうか」

 

「はい!」

 

二人が教室を出る。

 

その後ろから。

 

「待って」

 

三玖が追いついてきた。

 

「三玖」

 

「……今日は数学」

 

「そうだね」

 

「昨日、悠飛が教えてくれたところ、もう一回やりたい」

 

「真面目だね」

 

「……一花もやる?」

 

「もちろん」

 

三人で廊下を歩く。

 

すると。

 

「お待たせしました」

 

五月がやってきた。

 

「五月!」

 

四葉が手を振る。

 

「今日も頑張りましょう!」

 

「はい」

 

五月は眼鏡を直すような仕草をして、真面目な顔で頷いた。

 

「ところで、二乃は?」

 

「まだ」

 

一花が答える。

 

「どうせギリギリまで来ないんじゃない?」

 

「二乃らしい」

 

三玖が呟いた。

 

その時。

 

「誰がギリギリまで来ないって?」

 

後ろから声がした。

 

「二乃!」

 

四葉が振り返る。

 

二乃は鞄を肩にかけ、少し不機嫌そうな顔をしていた。

 

「ちゃんと来たじゃない」

 

「遅いですよ」

 

五月が言う。

 

「五分程度でしょ」

 

「その五分が大切なんだ」

 

風太郎の声。

 

「……」

 

全員が振り返る。

 

「風太郎」

 

「勉強会の時間は決まってる。遅刻するな」

 

「はいはい」

 

二乃が適当に返す。

 

「それより」

 

二乃は辺りを見回す。

 

「悠飛は?」

 

「もう先に行ってるよ」

 

一花が答える。

 

「六華も一緒」

 

「……」

 

二乃は一瞬だけ黙った。

 

「そう」

 

そして。

 

何気ない顔をして歩き出した。

 

「行きましょ」

 

 

勉強会の場所は、旭高校の空き教室だった。

 

机を並べれば、全員で勉強できる程度の広さがある。

 

教室に入ると。

 

「お、来たか」

 

悠飛が顔を上げた。

 

その隣には六華。

 

「全員集合だな」

 

「遅れてごめんね」

 

一花が言う。

 

「大丈夫」

 

悠飛は笑う。

 

「まだ始めたばかりだから」

 

「今日は何から?」

 

五月が尋ねる。

 

風太郎が黒板に予定を書く。

 

「数学、英語、国語。それから昨日の復習」

 

「結構ありますね……」

 

四葉が固まる。

 

「安心しろ」

 

悠飛が言う。

 

「ちゃんと休憩も入れる」

 

「本当ですか!」

 

「本当」

 

「よかった!」

 

「ただし、休憩までちゃんと勉強したらな」

 

「はい!」

 

四葉が元気よく返事をする。

 

二乃が呆れた顔をする。

 

「子供じゃないんだから」

 

「二乃だって昨日休憩になった瞬間、一番最初にお菓子取ってたじゃん」

 

「うっ……」

 

「図星ですね」

 

五月が微笑む。

 

「五月まで!」

 

教室に笑い声が広がった。

 

 

「まずは数学」

 

風太郎が問題を配る。

 

「今日は全員同じ問題を解いてもらう」

 

「同じ?」

 

三玖が尋ねる。

 

「ああ」

 

風太郎は頷く。

 

「それぞれどこでつまずくか確認したい」

 

悠飛も黒板の前に立つ。

 

「分からないところがあれば遠慮なく聞いてくれ」

 

「先生みたい」

 

一花が笑う。

 

「だから俺は先生じゃないって」

 

「でも教え方上手だよ?」

 

「悠飛は昔からそうだった」

 

風太郎が言う。

 

「分からない奴に教えるのが上手い」

 

「へえ」

 

二乃が悠飛を見る。

 

「意外」

 

「どういう意味だ?」

 

「もっと自分だけで突っ走るタイプかと思ってた」

 

「それは風太郎だろ」

 

「おい」

 

風太郎が睨む。

 

悠飛は笑った。

 

「俺は一緒に進む方が好きなんだ」

 

「……」

 

その言葉に。

 

六華が少しだけ目を細めた。

 

――昔も。

 

同じことを言っていた。

 

『一緒にやろう』

 

幼い頃の悠飛の声が。

 

また頭の中に浮かぶ。

 

「……」

 

六華は小さく笑った。

 

 

問題を解き始めて二十分。

 

「……」

 

四葉の手が止まった。

 

「……」

 

三玖も。

 

五月は順調。

 

一花はまずまず。

 

二乃は苦戦。

 

「……」

 

悠飛が様子を見る。

 

「四葉」

 

「はい!」

 

「そこ、計算間違ってる」

 

「え?」

 

四葉が答案を見る。

 

「本当だ!」

 

「途中式は合ってる」

 

「じゃあ、どうして……」

 

「符号」

 

「……」

 

四葉が固まる。

 

「またやっちゃいました!」

 

「落ち着いてやれば大丈夫」

 

「はい!」

 

四葉が解き直す。

 

「……」

 

今度は正解。

 

「できた!」

 

「正解」

 

「やった!」

 

四葉が拳を握る。

 

その姿を見て。

 

一花は微笑む。

 

「四葉、本当に嬉しそう」

 

「はい!」

 

「悠飛に褒めてもらうの、そんなに嬉しい?」

 

「……!」

 

四葉の顔が赤くなる。

 

「そ、それは……」

 

「ふふ」

 

一花は笑った。

 

「分かりやすいね」

 

「一花!」

 

 

一方。

 

二乃は問題集を睨んでいた。

 

「……」

 

「二乃」

 

悠飛が声をかける。

 

「何?」

 

「そこ、難しく考えすぎてる」

 

「え?」

 

悠飛は隣の空欄を指す。

 

「この問題、最初から全部解こうとしなくていい」

 

「……」

 

「条件を一つずつ整理する」

 

悠飛はノートに簡単な図を書く。

 

「こうすると分かりやすい」

 

「……なるほど」

 

二乃の目が少し見開かれる。

 

「これなら……」

 

「やってみて」

 

「……」

 

二乃が計算する。

 

「……できた」

 

「正解」

 

「……」

 

二乃は少し嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「……」

 

二乃は少しだけ悠飛を見る。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「悠飛って、どうしてそんなに勉強できるの?」

 

「昔から好きだったから」

 

「それだけ?」

 

「それだけ」

 

「……変なの」

 

二乃は小さく笑った。

 

 

三玖は歴史の参考書を開いていた。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「ここ」

 

三玖が指差す。

 

「この人物、どうしてこういう行動をしたの?」

 

「いい質問だな」

 

悠飛は三玖の隣に座る。

 

「単純に覚えるより、時代背景を考えると分かりやすい」

 

「時代背景?」

 

「ああ」

 

悠飛は関連する出来事を順番に説明していく。

 

三玖は真剣に聞いている。

 

「……なるほど」

 

「歴史は暗記だけじゃない」

 

「うん」

 

三玖はノートに書き込む。

 

「悠飛の説明、分かりやすい」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

三玖が少しだけ笑った。

 

「また教えて」

 

「もちろん」

 

「……ありがとう」

 

 

五月は黙々と問題を解いていた。

 

「五月は順調だな」

 

悠飛が言う。

 

「はい」

 

「分からないところは?」

 

「ありません」

 

「さすが」

 

「いえ」

 

五月は首を振る。

 

「私は勉強することが好きですから」

 

「そうだったな」

 

「ですが……」

 

五月は少しだけ視線を落とす。

 

「皆さんと一緒に勉強するのも楽しいです」

 

「それは良かった」

 

悠飛が笑う。

 

五月も微笑む。

 

「はい」

 

その光景を。

 

六華が見ていた。

 

――悠飛は。

 

誰に対しても優しい。

 

だからこそ。

 

自分だけ特別なのか。

 

そうではないのか。

 

分からない。

 

「……」

 

胸の奥に。

 

また小さな違和感が生まれる。

 

 

一時間後。

 

「休憩!」

 

風太郎が宣言した。

 

「やったー!」

 

四葉が両手を上げる。

 

「お菓子!」

 

「さっきも食べただろ」

 

「別腹です!」

 

「何の別腹だ」

 

「勉強腹です!」

 

「意味が分からん」

 

笑い声が起きる。

 

悠飛は飲み物を配る。

 

「はい」

 

「ありがとう!」

 

四葉が受け取る。

 

「一花」

 

「ありがとう」

 

「二乃」

 

「ありがと」

 

「三玖」

 

「ありがとう」

 

「五月」

 

「ありがとうございます」

 

「六華」

 

「……ありがとう」

 

六華は飲み物を受け取った。

 

「どういたしまして」

 

悠飛が笑う。

 

「……」

 

その笑顔に。

 

六華の胸がまた高鳴った。

 

「……」

 

――やっぱり。

 

私は。

 

悠飛が好きなんだ。

 

そう思う。

 

しかし。

 

今はまだ。

 

誰にも言わない。

 

 

休憩時間。

 

一花が悠飛の隣に座った。

 

「ねえ、悠飛くん」

 

「ん?」

 

「私、昨日より数学できるようになったと思わない?」

 

「思う」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、ご褒美ほしい」

 

「ご褒美?」

 

「うん」

 

一花が笑う。

 

「何がいい?」

 

「それは考え中」

 

「難しいな」

 

「ふふ」

 

少し離れたところ。

 

四葉が二人を見ていた。

 

「……」

 

六華も。

 

「……」

 

二人の視線が一瞬重なる。

 

「……」

 

どちらも何も言わない。

 

ただ。

 

心の中に。

 

同じような感情を抱いていた。

 

 

「じゃあ、後半始めるぞ」

 

風太郎が言う。

 

「はい!」

 

全員が席に戻る。

 

悠飛も。

 

そして。

 

六華も。

 

ノートを開く。

 

「六華」

 

悠飛が声をかけた。

 

「何?」

 

「さっきから少し考え込んでるけど、大丈夫か?」

 

「……」

 

六華は少し驚いた。

 

「分かる?」

 

「何となく」

 

「……」

 

六華は笑う。

 

「大丈夫」

 

「無理するなよ」

 

「うん」

 

「何かあったら言ってくれ」

 

「……ありがとう」

 

悠飛は自分の席へ戻る。

 

六華はその背中を見つめた。

 

――やっぱり。

 

この人は。

 

昔から変わらない。

 

 

夕方。

 

勉強会が終わった。

 

「今日はよく頑張ったな」

 

悠飛が言う。

 

「はい!」

 

四葉が笑う。

 

「明日もやります!」

 

「おう」

 

「私も」

 

三玖が言う。

 

五月も頷く。

 

「私も参加します」

 

二乃も鞄を持つ。

 

「……仕方ないから付き合ってあげる」

 

「二乃、素直じゃないね」

 

一花が笑う。

 

「うるさい」

 

六華も立ち上がる。

 

「じゃあ、帰ろう」

 

「そうだな」

 

悠飛が頷く。

 

「明日も同じ時間で」

 

「了解!」

 

 

校門を出る。

 

夕暮れの空。

 

六人の少女と二人の少年が歩いていく。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

そして。

 

悠飛と風太郎。

 

まだ始まったばかりの高校生活。

 

まだ誰も。

 

未来がどうなるのか知らない。

 

ただ。

 

一つだけ確かなことがある。

 

この放課後の勉強会は。

 

成績を上げるためだけのものではなかった。

 

一緒に笑い。

 

一緒に悩み。

 

時にはぶつかり。

 

少しずつ互いを知っていく。

 

それは。

 

幼い頃に忘れてしまった絆を。

 

もう一度、結び直していく時間でもあった。

 

そして。

 

悠飛を中心に。

 

一花。

 

四葉。

 

六華。

 

三人の恋心もまた。

 

静かに。

 

しかし確実に。

 

動き始めていた。

 

「明日も楽しみですね!」

 

四葉の明るい声が。

 

夕暮れの街に響いた。

 

悠飛は笑う。

 

「そうだな」

 

その言葉に。

 

一花も。

 

四葉も。

 

六華も。

 

それぞれ違う意味で胸を高鳴らせながら。

 

「うん」

 

と答えた。

 

青春の日々は。

 

まだ始まったばかりだった。

 

 

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