『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』 作:夜幻
主人公の名は、如月悠飛。
彼は、ごく普通の少年でした。
特別な家柄があるわけでもありません。
世界的な才能を持って生まれたわけでもありません。
ましてや、自分が将来、世界を舞台に活躍する人物になるなど、夢にも思っていませんでした。
しかし。
ある日。
悠飛の人生は、一瞬にして終わりを迎えます。
そして。
そこで出会ったのが――神様でした。
神様との出会い。
それは、悠飛にとって「死」を意味するだけではありません。
もう一度、生きるための始まりでもありました。
新しい人生。
新しい世界。
そして。
前の人生では手に入れられなかった力。
神様から与えられたチート能力を携え。
悠飛は、二度目の人生を歩み始めます。
しかし。
どれほど強大な力を持っていたとしても。
どれほど頭が良かったとしても。
人生のすべてが思い通りになるわけではありません。
人と出会い。
人を好きになり。
人と喧嘩し。
時には傷つき。
時には誰かを傷つけてしまう。
そんな経験を積み重ねて。
人は少しずつ大人になっていきます。
そして悠飛が二度目の人生で出会うことになるのが。
中野一花。
中野二乃。
中野三玖。
中野四葉。
中野五月。
そして。
六華と莉々華。
七人の少女たちです。
彼女たちとの出会いが。
悠飛の人生を大きく変えていくことになります。
友情。
家族。
青春。
そして。
恋。
最初は、ただの仲間だったかもしれません。
一緒に勉強する。
一緒に遊ぶ。
一緒に笑う。
時には喧嘩する。
そんな何気ない日常の中で。
少しずつ。
彼女たちの中にある感情が変化していきます。
そして。
悠飛自身も。
自分がどれほど彼女たちを大切に思っているのか。
少しずつ気づいていくことになります。
しかし。
この物語には。
避けて通れない大きな出来事があります。
それが。
日の出祭です。
大切な人の夢を守るため。
悠飛は。
自ら危険へ飛び込みます。
そして。
その代償として。
右眼の光を失うことになります。
それは。
悠飛の人生に刻まれる。
決して消えない傷です。
けれど。
その傷があったからこそ。
彼は守ることの意味を知りました。
誰かを大切にすること。
誰かの夢を守ること。
そして。
自分自身の人生を悔いなく生きること。
この物語は。
単なるチート主人公の無双物語ではありません。
強大な力を持った少年が。
人との出会いを通して。
一人の人間として成長していく物語です。
そして。
高校を卒業した後。
彼らはそれぞれの未来へ進みます。
離れ離れになっても。
心の中に残る思い出は消えません。
やがて二十年の時が流れ。
悠飛は。
世界大富豪ランキング第二位。
人々から「独眼竜」と呼ばれる男になります。
そして。
二十年ぶりに。
彼らは再会します。
そこで。
かつての恋心が。
もう一度。
火を灯します。
三度目の恋。
それは。
高校生だった頃の恋とは違います。
人生を歩んできた大人だからこそ。
分かることがあります。
失って初めて気づくことがあります。
離れて初めて分かる大切さがあります。
そして。
もう一度会えたからこそ。
伝えられる想いがあります。
そんな未来へ繋がる物語の。
すべての始まり。
それが。
第1話です。
一人の少年が。
神様と出会い。
新しい人生を与えられ。
そして。
まだ見ぬ未来へ向かって歩き始める。
ここから。
如月悠飛の二度目の人生が始まります。
それでは。
彼の最初の一歩を。
どうぞ。
春。
桜の花びらが、旭高校の校門前を舞っていた。
新学期特有の浮ついた空気。
新しいクラス。
新しい教科書。
そして、新しい出会い。
そんな中、一人の少年が校門をくぐっていた。
「……今年も始まるな」
金色の髪を軽く風になびかせながら、少年――如月悠飛は小さく呟いた。
高校二年生。
整った顔立ちに、すらりとした長身。
実家が裕福なこともあり、周囲からは「御曹司」と呼ばれることもある。
だが、本人はそんな肩書きを気にしたことがない。
「おはよう、悠飛」
後ろから声がした。
振り返ると、上杉風太郎が立っている。
「おはよう、風太郎」
「今年も同じクラスだな」
「みたいだな」
二人は幼馴染――ではない。
高校で出会い、友人になった親友だ。
悠飛にとって、風太郎は数少ない気を遣わずに話せる相手だった。
「そういえば、今日から転校生が来るらしいぞ」
風太郎が言った。
「転校生?」
「しかも五人」
「五人?」
悠飛が目を丸くする。
「同じ日に五人って、珍しいな」
「それだけじゃない」
風太郎は校門の向こうへ視線を向けた。
「黒薔薇女学院から転校してくるらしい」
「黒薔薇女学院……」
地元でも有名な女子校だ。
名門校として知られ、礼儀作法や教育にも力を入れている。
「なんでまた、そんなところから旭高校へ?」
「さあな」
風太郎は肩をすくめた。
「俺も詳しい事情までは知らん」
その時だった。
校門の外から、女子生徒たちの集団が見えた。
「……あれじゃないか?」
悠飛が指差す。
五人。
同じ顔。
同じ身長。
同じ髪色。
しかし、服装や表情にはそれぞれ個性があった。
先頭を歩いている少女は、長い髪を揺らしながら周囲を眺めている。
その隣では、髪飾りをつけた少女が少し不機嫌そうな顔をしていた。
さらにその横には、控えめな雰囲気の少女。
元気いっぱいに周囲を見回している少女。
そして最後に、星形の髪飾りをつけた少女。
五人は確かにそっくりだった。
「……五つ子か」
風太郎が呟く。
「たぶん、そうだろうな」
悠飛も見つめる。
その瞬間。
胸の奥に、奇妙な感覚が走った。
「……?」
悠飛は眉をひそめた。
初めて見るはずだ。
なのに。
どこか懐かしい。
ずっと昔から知っているような――。
「どうした?」
風太郎が尋ねる。
「いや……」
悠飛は首を振った。
「なんでもない」
しかし、その感覚は消えなかった。
五人の少女たちが近づいてくる。
そして。
五人のうち一人が、悠飛を見た。
その少女――四葉も、同じように足を止めた。
「……え?」
胸が高鳴る。
どうしてだろう。
知らない人なのに。
初めて見る人なのに。
なぜか、懐かしい。
四葉は首を傾げた。
「どうしたの、四葉?」
一花が声をかける。
「ううん……」
四葉は悠飛から目を離せない。
「なんでもないです」
そう答えたものの。
心の中には、言葉にできない感情が残っていた。
――どこかで、会ったことがあるような。
そんな不思議な感覚。
◇
「転校生が来るって本当?」
「五人とも美人らしいぞ」
「しかも黒薔薇女学院だって」
「マジかよ!」
教室に入るなり、男子生徒たちが騒ぎ始める。
悠飛は自分の席に座り、窓の外を眺めていた。
「悠飛」
風太郎が隣の席から声をかける。
「なんだ?」
「さっきから妙だぞ」
「何が?」
「五つ子を見てから、ぼーっとしている」
「そうか?」
「そうだ」
風太郎は断言した。
「何か思い出したのか?」
「……いや」
悠飛は苦笑する。
「何も思い出せない」
「なら、気にするな」
「そうだな」
その時。
教室の扉が開いた。
担任教師が入ってくる。
「はい、席につけ。今日は転校生を紹介する」
教室が一気に静かになった。
「黒薔薇女学院から転校してきた五人だ」
扉が開く。
五人の少女が入ってくる。
教室中がざわめいた。
「……似てる」
「全員同じ顔じゃん」
「五つ子?」
少女たちは教壇の前に並んだ。
「まず自己紹介を」
「はい」
最初に一花が前へ出る。
「中野一花です。今日からよろしくお願いします」
柔らかな笑顔。
続いて二乃。
「中野二乃。よろしく」
少し強気な口調。
三玖。
「……中野三玖」
短い自己紹介。
四葉。
「中野四葉です! よろしくお願いします!」
元気いっぱい。
そして最後。
五月が一歩前へ出る。
「中野五月です。よろしくお願いします」
丁寧なお辞儀。
担任が黒板に名前を書いていく。
「中野一花、中野二乃、中野三玖、中野四葉、中野五月。五人とも同じ名字だが、姉妹だそうだ」
「はい!」
四葉が元気よく返事をする。
教室に笑いが起こる。
「それじゃあ席だが――」
担任が教室を見回す。
「一花は窓側後方」
「はい」
「二乃はその前」
「分かりました」
「三玖は中央」
「……はい」
「四葉は――」
担任が一度名簿を見る。
「如月の隣が空いているな」
「はい!」
四葉が悠飛の隣へ向かう。
「よろしくお願いします!」
「ああ。よろしく」
悠飛が笑う。
四葉はその笑顔を見て――。
「……!」
また胸が高鳴った。
「どうした?」
「い、いえ!」
四葉は慌てて席に座る。
「よろしくお願いします、如月くん!」
「俺は悠飛でいいよ」
「じゃあ、悠飛くん!」
「うん」
四葉は笑った。
その笑顔を見ながら、悠飛もまた思う。
――やっぱり、どこかで会ったことがある気がする。
だが、記憶にはない。
◇
休み時間。
五つ子の周囲には、すぐに人が集まった。
「五人って本当にそっくりだな!」
「誰が誰だか分からない!」
「黒薔薇女学院ってどんなところ?」
質問攻めにされる五人。
その中で、四葉だけが悠飛を見ていた。
「……」
「どうしたの、四葉?」
一花が気づく。
「え?」
「さっきから、あの子を見てない?」
「悠飛くん?」
四葉が振り返る。
悠飛は風太郎と話していた。
「なんか……」
四葉は胸元に手を当てる。
「昔、会ったことがあるような気がするんです」
「昔?」
「はい」
一花も悠飛を見る。
すると。
「……あれ?」
一花も、奇妙な感覚を覚えた。
「私も……なんとなく」
二乃が呆れた顔をする。
「何よ、それ」
「分からない」
三玖が悠飛を見つめる。
「……私も」
「え?」
五月も驚く。
「実は私も、少しだけ……」
五人が顔を見合わせた。
「……」
「……」
「……」
誰も答えを出せない。
ただ。
五人全員が、同じ少年に対して既視感を抱いていた。
◇
一方。
悠飛と風太郎。
「五人とも、かなり成績がいいらしいぞ」
風太郎が言う。
「黒薔薇女学院だからな」
「だが、旭高校の勉強は少し違う」
「そうなのか?」
「進度が違う」
風太郎は真剣な顔をする。
「もし困っているなら、勉強を教えてやるか」
悠飛は笑った。
「風太郎らしいな」
「何がだ」
「人の面倒を見るところ」
「別に面倒を見たいわけじゃない」
「そうか?」
「そうだ」
その会話を聞いていた四葉が近づいてくる。
「お二人は仲良しなんですね!」
「まあな」
悠飛が答える。
「俺と風太郎は友達だから」
「友達……」
四葉は嬉しそうに笑った。
「私たちも、仲良くしてもらえると嬉しいです!」
「もちろん」
悠飛が頷く。
「転校初日なんだから、分からないことがあれば聞いてくれ」
「はい!」
四葉は満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
その笑顔を見て。
悠飛の脳裏に、一瞬だけ映像が浮かんだ。
幼い少女。
赤いランドセル。
そして――。
「悠飛ー!」
誰かが自分を呼んでいる。
「……?」
映像は一瞬で消えた。
「悠飛くん?」
「……いや」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫」
悠飛は笑った。
けれど。
胸の奥に残った感覚は消えない。
◇
昼休み。
悠飛は屋上へ向かっていた。
一人で昼食を食べるつもりだった。
だが。
「悠飛くん!」
「……四葉?」
振り返ると四葉が立っていた。
「一緒に食べてもいいですか?」
「もちろん」
二人はベンチに座った。
「旭高校って、思っていたより広いですね」
「慣れるまで大変かもな」
「でも、楽しそうです!」
四葉は笑う。
「私、こういう新しい環境って好きなんですよ!」
「そうか」
「悠飛くんは?」
「俺?」
悠飛は空を見上げる。
「俺は……」
少し考えてから答える。
「大切な人が笑っているなら、それでいいかな」
「……!」
四葉の顔が赤くなる。
「ど、どうした?」
「い、いえ!」
四葉は慌てて弁当を開けた。
「いただきます!」
「いただきます」
二人で食事を始める。
穏やかな時間。
だが。
四葉は、悠飛の横顔を見ながら思っていた。
――やっぱり。
この人。
知ってる。
もっと昔。
ずっと小さかった頃。
一緒に遊んでいたような――。
「……悠飛くん」
「ん?」
「昔、どこかで会ったことありませんか?」
悠飛の手が止まった。
「……」
「ご、ごめんなさい! 変なこと聞きました!」
「いや」
悠飛は笑う。
「俺も、同じことを思ってた」
「え?」
「四葉を見たときから、ずっと」
四葉の心臓が大きく跳ねた。
「……本当ですか?」
「ああ」
「じゃあ……」
四葉が少しだけ身を乗り出す。
「私たち、昔から知り合いだったのかもしれませんね!」
「そうかもな」
二人は笑った。
しかし。
二人ともまだ知らない。
その記憶の中には、五人の少女だけではなく。
もう一人の少女がいることを。
◇
放課後。
五つ子と六華は、学校から少し離れた場所に集まっていた。
「今日の学校、どうだった?」
一花が尋ねる。
「楽しかった!」
四葉が答える。
「私は疲れたわ」
二乃。
「……普通」
三玖。
「私は、少し緊張しました」
五月。
そして。
六華は黙っていた。
「六華?」
一花が声をかける。
「……うん」
「どうしたの?」
「今日……」
六華は学校の校舎を振り返る。
「変な感じがした」
「変?」
「うん」
その視線の先。
校門から悠飛が出てくる。
風太郎と話しながら歩いている。
六華は、悠飛を見つめた。
「……あの人」
「悠飛くん?」
四葉が尋ねる。
「……たぶん」
六華は胸元に手を置いた。
「私、あの人を知ってる気がする」
五つ子が一斉に六華を見る。
「え?」
「どういうこと?」
六華は首を振る。
「分からない」
ただ。
一つだけ。
心の奥に、確かなものがあった。
――昔。
あの少年と一緒に遊んだ。
――あの少年に手を引かれた。
――あの少年と約束をした。
そんな記憶の断片。
「……悠飛」
六華が、初めてその名前を口にした。
その瞬間。
悠飛が振り返る。
二人の視線が重なる。
「……!」
六華の胸が大きく鳴った。
悠飛も、なぜか立ち止まる。
風太郎が怪訝そうに振り返った。
「どうした?」
「……いや」
悠飛は首を振る。
「なんでもない」
そして、再び歩き始める。
六華はその背中を見つめ続けた。
「……やっぱり」
小さな声が漏れる。
「私、あの人を知ってる」
だが。
まだ、その記憶の名前は思い出せない。
◇
その夜。
悠飛は自宅の自室で、机に座っていた。
窓の外には夜空。
今日一日。
何度も同じことを考えていた。
五人の少女。
そして六華。
「……昔、会ったことがあるのか?」
机の引き出しを開ける。
そこには古いアルバムがあった。
幼い頃の写真。
家族。
公園。
友達。
悠飛はページをめくる。
「……」
ある一枚の写真で、手が止まった。
そこには。
幼い自分。
そして――。
六人の少女。
「……この子たち」
悠飛の目が見開かれる。
だが。
写真の裏には名前が書かれていない。
「誰なんだ……?」
記憶が曖昧だ。
顔は分かる。
けれど、名前が思い出せない。
すると。
突然。
頭の奥に激しい痛みが走った。
「っ……!」
悠飛は額を押さえる。
そして。
一瞬だけ。
幼い日の光景が蘇った。
「悠飛!」
少女たちの声。
笑い声。
夕焼け。
公園。
そして――。
「大人になっても、みんなで会おう!」
幼い自分が叫んでいる。
「約束!」
六人の少女が笑う。
小指を絡める。
「……約束」
悠飛は息を呑んだ。
「俺……」
写真を見る。
「この子たちと……」
幼い日の記憶。
確かに存在した。
だが、その直後。
記憶は再び霧の中へ消えていった。
「……思い出せない」
悠飛は写真を閉じる。
しかし。
胸の奥に残った感情だけは、消えなかった。
懐かしい。
大切な。
守りたい。
そんな感情。
そして――。
まだ悠飛は知らない。
この日、旭高校へ転校してきた五つ子と六華が。
自分の人生を大きく変える存在になることを。
まだ誰も知らない。
この再会が。
二十年後の運命へと繋がっていくことを。
そして。
この春の日から始まる青春が。
やがて、悠飛の右眼の光を奪うほどの大事件へと繋がっていくことを。
それでも今は。
ただ、始まったばかりだった。
黒薔薇女学院から旭高校へ転校してきた五つ子。
その従姉妹、六華。
如月悠飛。
上杉風太郎。
そして、まだ誰も知らない幼い日の約束。
――七人の物語が、今ここから始まる。