『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第20話「七人の幼馴染」

土曜日の朝。

 

旭高校は休校日だった。

 

普段なら部活動に向かう生徒たちで賑わう校舎も、今日はどこか静かだ。

 

そんな中。

 

如月家では――。

 

「お兄ちゃん!」

 

莉々華の声が響いた。

 

「起きてる!?」

 

「起きてる」

 

悠飛は階段を下りながら答える。

 

「朝からどうした?」

 

「今日は出かけるんでしょ?」

 

「ああ」

 

悠飛は玄関に置かれた鞄を見る。

 

「みんなと約束してる」

 

「五つ子さんたち?」

 

「それと六華」

 

「……」

 

莉々華は少し頬を膨らませた。

 

「私も行く」

 

「いいけど」

 

悠飛は笑った。

 

「何するか分かってるのか?」

 

「分からない」

 

「……」

 

「でも行きたい」

 

「なら一緒に来ればいい」

 

「やった!」

 

莉々華は嬉しそうに笑った。

 

今日は。

 

幼い頃の記憶を取り戻すため。

 

みんなで昔遊んだ場所を巡ることになっていた。

 

そして。

 

その中には。

 

莉々華も加わることになった。

 

七人。

 

幼い頃の記憶を持つ。

 

七人の少年少女たち。

 

 

待ち合わせ場所。

 

駅前の広場。

 

「おはようございます!」

 

四葉が大きく手を振っている。

 

その隣に一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

五月。

 

そして六華。

 

「おはよう」

 

悠飛が手を振る。

 

「莉々華ちゃんも一緒なんだ」

 

一花が笑う。

 

「はい」

 

莉々華は頷く。

 

「お兄ちゃんについてきました」

 

「ふふ」

 

一花が笑う。

 

「仲良しだね」

 

「普通です」

 

「そう?」

 

四葉が笑う。

 

「昨日も一緒に帰ってましたよね?」

 

「……」

 

莉々華が四葉を見る。

 

「どうして知ってるの?」

 

「見ました!」

 

「……」

 

「四葉」

 

一花が苦笑する。

 

「そういうところ、隠さないよね」

 

「え?」

 

四葉はきょとんとしていた。

 

 

「まず、どこに行く?」

 

風太郎も集合していた。

 

今日は勉強会ではない。

 

風太郎も幼い頃の記憶を整理するため、一緒に来ている。

 

悠飛が答える。

 

「昔住んでいた辺り」

 

「分かるのか?」

 

「何となく」

 

「随分曖昧だな」

 

「俺たちの記憶も曖昧だからな」

 

六華が頷く。

 

「でも」

 

「ん?」

 

「昨日、公園に行った時」

 

六華は目を細める。

 

「いろいろ思い出せた」

 

「俺も」

 

悠飛が答える。

 

「じゃあ、そこから行こう」

 

風太郎が言った。

 

 

昔の公園。

 

昨日訪れた場所。

 

大きな木。

 

古いベンチ。

 

そして。

 

木の幹に残された小さな傷。

 

「……」

 

莉々華がそれを見る。

 

「本当に名前がある」

 

「でしょう?」

 

四葉が嬉しそうに言う。

 

「昔の私たちが書いたんですよ」

 

「でも」

 

莉々華は少し不思議そうにする。

 

「私の名前はない」

 

「……」

 

その一言に。

 

全員が黙った。

 

「莉々華は当時、まだ一緒じゃなかったのかもしれない」

 

悠飛が言う。

 

「私だけ後からだったのかな」

 

「多分な」

 

莉々華は少し寂しそうに笑った。

 

「そっか」

 

すると。

 

六華が莉々華の手を取った。

 

「でも」

 

「?」

 

「今は一緒」

 

「六華さん……」

 

「だから大丈夫」

 

莉々華は笑った。

 

「うん」

 

 

「ところで」

 

一花が言う。

 

「私たちって、本当に七人だったの?」

 

悠飛が頷く。

 

「記憶ではそうだ」

 

「五つ子と悠飛と六華」

 

「そういうことだ」

 

「なんか不思議」

 

四葉が笑う。

 

「私たち、ずっと一緒だったんですね」

 

「でも」

 

三玖が呟く。

 

「どうして忘れてたんだろう」

 

五月も考える。

 

「何か理由があるのでしょうか」

 

風太郎が口を挟む。

 

「幼少期の記憶なんて、普通は曖昧になる」

 

「それだけ?」

 

「分からない」

 

風太郎は木を見る。

 

「ただ」

 

「?」

 

「ここまで一致しているなら、偶然とは思えない」

 

悠飛も頷いた。

 

「そうだな」

 

 

その時。

 

四葉が何かを見つけた。

 

「これ!」

 

地面に埋まっていた。

 

小さな金属製の箱。

 

「何これ?」

 

二乃が近づく。

 

「昔の宝箱?」

 

「開けてみよう」

 

悠飛が拾い上げる。

 

蓋を開ける。

 

中には。

 

古い写真。

 

小さなビー玉。

 

折り紙。

 

そして。

 

一枚の紙。

 

「……」

 

悠飛が紙を開く。

 

幼い字で書かれていた。

 

『いつまでもなかよし』

 

「……」

 

全員が黙る。

 

その下には。

 

七人分の名前が並んでいた。

 

「一花」

 

「二乃」

 

「三玖」

 

「四葉」

 

「五月」

 

「六華」

 

そして。

 

「悠飛」

 

七人。

 

「……」

 

一花の目に涙が浮かぶ。

 

「本当に」

 

「うん」

 

「私たち」

 

四葉が笑う。

 

「幼馴染だったんですね!」

 

 

その瞬間。

 

悠飛の記憶が一気に蘇った。

 

幼い頃。

 

七人で公園に集まっていた。

 

五つ子。

 

六華。

 

そして自分。

 

「みんなで秘密基地を作ろう!」

 

幼い四葉が叫ぶ。

 

「賛成!」

 

一花が手を挙げる。

 

「面白そう」

 

二乃。

 

「……何をする?」

 

三玖。

 

「楽しみですね」

 

五月。

 

六華も笑っている。

 

そして。

 

幼い悠飛が言った。

 

「じゃあ、ここを秘密の場所にしよう」

 

「うん!」

 

「約束!」

 

七人が手を重ねる。

 

『大人になっても、ずっと友達』

 

「……」

 

悠飛は目を開ける。

 

「思い出した」

 

「悠飛?」

 

「俺たちはここで約束した」

 

六華が目を見開く。

 

「何を?」

 

「大人になっても」

 

悠飛は笑う。

 

「ずっと友達でいるって」

 

 

「……」

 

六華の目に涙が浮かぶ。

 

「私……覚えてる」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

六華は頷く。

 

「悠飛が言った」

 

『絶対忘れない』

 

「……」

 

「でも」

 

六華は苦笑する。

 

「私たち、忘れちゃったね」

 

悠飛は少し黙った。

 

「だから」

 

「?」

 

「今から取り戻せばいい」

 

「……」

 

六華は笑った。

 

「うん」

 

 

その横で。

 

一花も目を閉じていた。

 

「私も思い出した」

 

「一花?」

 

「小さい頃の悠飛くん」

 

一花は笑う。

 

「今と変わらなかった」

 

「俺が?」

 

「うん」

 

「どんなところが?」

 

「優しいところ」

 

一花は少し照れる。

 

「あと」

 

「あと?」

 

「私たちを守ってくれたところ」

 

四葉も頷く。

 

「そうです!」

 

「四葉も?」

 

「はい!」

 

四葉は胸を張る。

 

「悠飛さんは昔からヒーローでした!」

 

「大げさだ」

 

「大げさじゃありません!」

 

 

三玖が古い写真を見ていた。

 

「……」

 

写真の中央。

 

幼い七人。

 

その中で。

 

悠飛の隣に。

 

六華が立っている。

 

反対側には四葉。

 

そして一花も近い。

 

「……」

 

三玖が小さく笑う。

 

「本当に仲良しだったんだ」

 

「うん」

 

六華が答える。

 

「みんなで遊んでた」

 

「羨ましい」

 

三玖が呟く。

 

「今も同じ」

 

悠飛が言う。

 

「今も七人でいる」

 

「……」

 

三玖は嬉しそうに笑った。

 

 

「ところで」

 

二乃が写真を見る。

 

「これ、私たち全員同じ服じゃない?」

 

「そうですね」

 

五月が頷く。

 

「五つ子ですから」

 

「六華まで同じ服なのが面白い」

 

一花が笑う。

 

「従姉妹だから合わせたのかも」

 

六華が笑う。

 

「昔はみんなでお揃いにしたがったんだと思う」

 

「じゃあ悠飛は?」

 

四葉が聞く。

 

「俺は?」

 

「一人だけ男の子」

 

二乃が笑う。

 

「でも、ちゃんと仲間だったんだね」

 

悠飛も笑った。

 

「ああ」

 

 

その時。

 

莉々華が写真を見ていた。

 

「……」

 

「どうした?」

 

悠飛が尋ねる。

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「私も昔、ここに来たことある?」

 

「……」

 

悠飛は写真を見る。

 

莉々華は写っていない。

 

「分からない」

 

「そっか」

 

「でも」

 

悠飛は莉々華の頭に手を置く。

 

「今は一緒だ」

 

「……」

 

「それでいいだろ?」

 

莉々華は少し照れながら。

 

「うん」

 

と答えた。

 

 

午後。

 

七人は昔よく遊んだという商店街へ向かった。

 

「ここ、覚えてる!」

 

四葉が叫ぶ。

 

「駄菓子屋!」

 

「まだあるんだ」

 

一花が驚く。

 

「入ってみよう!」

 

「高校生なのに?」

 

二乃が言いながらもついていく。

 

店の中。

 

懐かしい駄菓子。

 

昔ながらのおもちゃ。

 

「これ!」

 

三玖が小さな玩具を手に取る。

 

「昔、悠飛と遊んだ」

 

「本当?」

 

「うん」

 

悠飛も思い出す。

 

「勝負してたな」

 

「……」

 

三玖の頬が少し赤くなる。

 

「懐かしい」

 

五月はお菓子を眺めていた。

 

「これも昔食べました」

 

「覚えてるんだ」

 

「少しだけ」

 

六華は。

 

店の奥にある小さな玩具を見る。

 

「……」

 

「どうした?」

 

悠飛が聞く。

 

「これ」

 

六華は手に取る。

 

小さなブレスレット。

 

「昔、悠飛がくれた」

 

「俺が?」

 

「うん」

 

「全然覚えてない」

 

「私は覚えてる」

 

六華は大切そうに握った。

 

「宝物だったから」

 

「……」

 

悠飛は何も言えなかった。

 

 

帰り道。

 

夕方。

 

七人は並んで歩いていた。

 

「今日は楽しかったですね!」

 

四葉が笑う。

 

「うん」

 

一花も頷く。

 

「昔のことを思い出せて良かった」

 

二乃も少し嬉しそうだ。

 

三玖と五月も。

 

「……」

 

六華は悠飛の隣。

 

莉々華は反対側。

 

風太郎は少し後ろ。

 

「なあ」

 

悠飛が言った。

 

「これからも、こうして集まらないか?」

 

「もちろん!」

 

四葉が即答する。

 

「賛成」

 

一花も。

 

「私も」

 

六華。

 

「俺も構わない」

 

風太郎。

 

五つ子たちも頷く。

 

そして。

 

莉々華が言う。

 

「私も」

 

悠飛が笑う。

 

「じゃあ決まりだ」

 

 

七人。

 

幼馴染。

 

それは。

 

ただ昔から知っているというだけの関係ではない。

 

忘れていた時間。

 

離れていた時間。

 

そして。

 

今、再び繋がった時間。

 

すべてを含めて。

 

彼らの関係は。

 

新しく始まろうとしていた。

 

ただし。

 

七人の中には。

 

まだ誰も知らない未来がある。

 

やがて。

 

青春の最後を飾る日の出祭。

 

そこで起きる。

 

無堂仁之介による騒動。

 

そして。

 

五月を守るため。

 

悠飛が身を挺して立ちはだかり。

 

右眼の光を失うことになる運命。

 

それは。

 

まだ少し先の話。

 

今はただ。

 

幼い日の約束を胸に。

 

七人は笑いながら。

 

夕暮れの道を歩いていた。

 

「ずっと友達!」

 

四葉が叫ぶ。

 

「おう!」

 

悠飛が答える。

 

「ずっと」

 

一花も笑う。

 

「忘れない」

 

六華が静かに続ける。

 

その言葉に。

 

悠飛は頷いた。

 

「今度こそな」

 

七人の影が。

 

夕日に照らされて。

 

長く。

 

長く。

 

一つに重なっていった。

 

 

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