『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第三章 夏、深まる絆 第21話「夏休み前の期末試験」

六月下旬。

 

旭高校では、夏休みを目前に控えた生徒たちが、期末試験に追われていた。

 

廊下には「試験一週間前」の張り紙。

 

教室では問題集を開く生徒たち。

 

そして――。

 

「……」

 

空き教室の一角。

 

五つ子たちは、揃って机に向かっていた。

 

「数学……」

 

一花が問題集を見つめる。

 

「英語……」

 

三玖が単語帳をめくる。

 

「理科……」

 

五月がノートを確認する。

 

「社会……」

 

二乃がため息をつく。

 

「体育!」

 

四葉が元気よく手を挙げた。

 

「それは勉強しなくていい」

 

風太郎が即座に突っ込んだ。

 

「ええっ!?」

 

「期末試験だぞ」

 

「知ってます!」

 

「なら勉強しろ」

 

「はい!」

 

その光景を。

 

悠飛は笑いながら見ていた。

 

「だいぶ慣れてきたな」

 

「何に?」

 

一花が聞く。

 

「勉強会」

 

「そうだね」

 

一花は微笑んだ。

 

「最初の頃とは全然違う」

 

「最初は教科書を開くところから苦労してたからな」

 

風太郎が言う。

 

「誰のせいだと思ってるのよ」

 

二乃が睨む。

 

「俺のせいじゃない」

 

「……」

 

「二乃」

 

悠飛が口を挟む。

 

「今のは風太郎が正しい」

 

「悠飛まで!」

 

二乃が頬を膨らませる。

 

「ほら」

 

一花が笑う。

 

「仲良くして」

 

「私は普通に仲良くしてるわよ」

 

「そうか?」

 

風太郎が言う。

 

「なら、俺のノートを破るな」

 

「それは……」

 

二乃が目を逸らした。

 

「昔の話よ」

 

「一週間前だ」

 

「細かいわね!」

 

教室に笑い声が響く。

 

以前なら考えられなかった光景だった。

 

五つ子たちは勉強を嫌がりながらも、逃げなくなった。

 

風太郎は教師ではない。

 

悠飛も教師ではない。

 

それでも。

 

友人として。

 

互いに支え合いながら。

 

少しずつ前へ進んでいる。

 

 

「さて」

 

悠飛が立ち上がる。

 

「今日は作戦を決めよう」

 

「作戦?」

 

四葉が目を輝かせる。

 

「期末試験対策だ」

 

悠飛は黒板に五人の名前を書く。

 

「一花」

 

「はい」

 

「国語は問題ない。英語を重点的に」

 

「了解」

 

「二乃」

 

「何?」

 

「数学」

 

「……」

 

「三玖」

 

「社会」

 

「任せて」

 

「四葉」

 

「はい!」

 

「全教科、平均的に。ただしケアレスミスを減らす」

 

「頑張ります!」

 

「五月」

 

「はい」

 

「理科と数学」

 

「分かりました」

 

そして。

 

悠飛は六華を見る。

 

「六華」

 

「私?」

 

「苦手科目は?」

 

「……数学」

 

「じゃあ俺とやろう」

 

「!」

 

六華の表情が明るくなる。

 

「うん」

 

「俺が説明する」

 

「ありがとう」

 

それを見て。

 

一花が少し笑った。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「六華には随分優しいね」

 

「幼馴染だからな」

 

「……」

 

六華の頬が赤くなる。

 

「幼馴染……」

 

その言葉が。

 

胸に響いた。

 

 

「悠飛」

 

風太郎が黒板を指差す。

 

「お前の計画だと、五人全員の苦手科目を潰すことになっているが」

 

「ああ」

 

「自分の勉強は?」

 

「してる」

 

「いつ?」

 

「帰宅後」

 

「睡眠時間は?」

 

「確保してる」

 

風太郎はため息をついた。

 

「相変わらず化け物だな」

 

「神様から能力をもらったからな」

 

「それを平然と言うな」

 

「冗談だ」

 

「冗談に聞こえない」

 

一花たちが笑う。

 

「本当に二人って仲いいね」

 

「腐れ縁だ」

 

風太郎が答える。

 

「高校からの友人だからな」

 

悠飛も笑う。

 

「風太郎は俺の右腕だ」

 

「勝手に右腕にするな」

 

「嫌か?」

 

「……」

 

風太郎は少しだけ黙った。

 

「まあ」

 

「?」

 

「悪くはない」

 

「素直じゃないな」

 

「うるさい」

 

二人のやり取りに。

 

四葉が笑う。

 

「いいコンビです!」

 

 

試験前日。

 

放課後。

 

最後の勉強会。

 

教室には緊張感が漂っていた。

 

「明日からだね」

 

一花が言う。

 

「はい」

 

五月が頷く。

 

「今までよりは、自信があります」

 

「私も」

 

三玖が答える。

 

二乃も。

 

「……まあ」

 

「何?」

 

悠飛が聞く。

 

「ちょっとだけ」

 

「それでいい」

 

悠飛は笑った。

 

「最初から満点を狙う必要はない」

 

「でも」

 

五月が言う。

 

「できるなら上を目指したいです」

 

「その意気だ」

 

風太郎が頷く。

 

「努力した分だけ、結果は変わる」

 

「うん」

 

五人が頷く。

 

 

そして。

 

試験初日。

 

国語。

 

一花は問題用紙を見た。

 

「……」

 

思ったより。

 

解ける。

 

以前なら。

 

文章を読むだけで嫌になっていた。

 

けれど。

 

「悠飛くんに教えてもらったところ」

 

思い出す。

 

「文章の中に答えがある」

 

ペンを走らせる。

 

 

二時間目。

 

数学。

 

四葉は問題を見つめる。

 

「……」

 

分からない。

 

一瞬。

 

焦りそうになる。

 

だが。

 

「落ち着いて」

 

悠飛の声が蘇る。

 

『分からない問題が出たら、一度飛ばせ』

 

『解ける問題から確実に取る』

 

「……」

 

四葉は頷く。

 

そして。

 

解ける問題を探す。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

「できる」

 

 

三玖は社会。

 

問題を読んだ瞬間。

 

「あ」

 

知っている。

 

「勉強会でやった」

 

答えを書く。

 

その手は。

 

以前よりずっと速かった。

 

 

五月。

 

理科。

 

難しい問題。

 

しかし。

 

「これは……」

 

公式を思い出す。

 

「分かります」

 

ペンが動く。

 

 

二乃。

 

英語。

 

「……」

 

長文問題。

 

以前なら。

 

「無理」

 

と投げていた。

 

だが。

 

『単語を全部訳す必要はない』

 

風太郎の言葉。

 

『前後関係から意味を推測しろ』

 

そして。

 

悠飛の言葉。

 

『分からないものを恐れるな』

 

二乃は笑った。

 

「……なるほどね」

 

答えを書いた。

 

 

そして。

 

六華。

 

数学。

 

一番苦手な科目。

 

問題を見て。

 

一瞬。

 

手が止まった。

 

「……」

 

昨日。

 

悠飛と一緒に勉強した。

 

『この問題は、まずここ』

 

『焦らなくていい』

 

『六華ならできる』

 

「……」

 

六華は深呼吸する。

 

「やる」

 

ペンを握る。

 

一問。

 

二問。

 

三問。

 

「……」

 

解ける。

 

 

試験終了。

 

放課後。

 

教室。

 

「終わった……」

 

四葉が机に突っ伏した。

 

「お疲れ」

 

悠飛が笑う。

 

「どうだった?」

 

「結構できました!」

 

「私は普通」

 

一花。

 

「まあまあ」

 

二乃。

 

「手応えはある」

 

三玖。

 

「難しい問題もありましたが、以前よりは……」

 

五月。

 

六華は。

 

「数学」

 

「うん」

 

「思ったよりできた」

 

「それは良かった」

 

悠飛が笑う。

 

「みんな頑張ったな」

 

「悠飛くん」

 

一花が言う。

 

「これ」

 

「?」

 

一花は小さく拳を握る。

 

「みんなで頑張れたの、悠飛くんと風太郎のおかげだよ」

 

四葉も頷く。

 

「はい!」

 

「私も」

 

三玖。

 

「ありがとうございます」

 

五月。

 

二乃も。

 

「……まあ」

 

「何だ?」

 

「ありがと」

 

小さな声だった。

 

「聞こえない」

 

「うるさい!」

 

 

数日後。

 

試験結果が返ってきた。

 

教室。

 

「……」

 

五つ子たちが点数表を見る。

 

「……」

 

一花。

 

「上がった」

 

二乃。

 

「私も」

 

三玖。

 

「……」

 

四葉。

 

「やった!」

 

五月。

 

「全員、前より上がっています!」

 

そして。

 

六華も。

 

「私も」

 

悠飛が笑う。

 

「よくやった」

 

風太郎も点数表を見る。

 

「まだ課題はあるが」

 

「うん」

 

「確実に前進してる」

 

五人は顔を見合わせた。

 

「……」

 

嬉しい。

 

その気持ちは。

 

以前よりずっと大きかった。

 

 

昼休み。

 

中庭。

 

五つ子と六華。

 

そして悠飛。

 

「ねえ」

 

一花が言う。

 

「夏休み」

 

「ん?」

 

「みんなでどこか行かない?」

 

「いいですね!」

 

四葉が賛成する。

 

「海とか!」

 

「海……」

 

三玖が呟く。

 

二乃も。

 

「悪くない」

 

五月は考える。

 

「大勢なら楽しそうですね」

 

六華も頷く。

 

「私も行きたい」

 

悠飛は笑った。

 

「じゃあ」

 

「?」

 

「夏休みの計画を立てるか」

 

「やった!」

 

四葉が喜ぶ。

 

その瞬間。

 

悠飛はふと空を見上げた。

 

青い空。

 

白い雲。

 

そして。

 

遠くから聞こえる蝉の声。

 

「夏か」

 

「そうだね」

 

一花が隣に立つ。

 

「高校生活の夏休み」

 

四葉が笑う。

 

「思いっきり楽しみましょう!」

 

悠飛も笑った。

 

「ああ」

 

まだ。

 

誰も知らない。

 

この夏が。

 

七人の絆をさらに深める季節になることを。

 

そして。

 

その先に待つ。

 

学園祭――日の出祭で。

 

大きな事件が起きることを。

 

今はまだ。

 

誰も知らない。

 

ただ。

 

夏の始まりを告げる風が。

 

七人の間を静かに吹き抜けていた。

 

 

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