『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第24話「四葉の笑顔」

夏休みも一週間が過ぎた。

 

連日続く猛暑。

 

蝉の声。

 

青い空。

 

そして、如月家に集まるいつもの顔ぶれ。

 

「おはようございます!」

 

玄関を開けた四葉が、いつものように元気いっぱいの声を響かせた。

 

「おはよう、四葉」

 

悠飛が迎える。

 

「今日も暑いな」

 

「はい!」

 

四葉は笑顔で答える。

 

「でも、夏ですから!」

 

「その前向きさは見習いたいな」

 

「悠飛さんも元気じゃないですか!」

 

「俺は普通だ」

 

「普通の人は朝からそんなに涼しい顔してません!」

 

「そうか?」

 

「そうです!」

 

四葉が笑う。

 

その笑顔を見て。

 

悠飛も自然と笑った。

 

「じゃあ、今日も頑張るか」

 

「はい!」

 

 

リビング。

 

すでに一花、二乃、三玖、五月、六華が揃っていた。

 

「おはよう」

 

一花が手を振る。

 

「おはようございます!」

 

四葉が返す。

 

二乃は冷たい飲み物を飲みながら。

 

「朝からうるさいわね」

 

「二乃もおはようございます!」

 

「はいはい、おはよう」

 

三玖は参考書から顔を上げる。

 

「今日の予定は?」

 

悠飛がホワイトボードを見る。

 

「午前は勉強会」

 

「また?」

 

四葉が苦笑する。

 

「夏休みですよ?」

 

「だからこそだ」

 

風太郎が答える。

 

「夏休み中に苦手分野を潰しておけば、二学期が楽になる」

 

「なるほど!」

 

四葉が納得する。

 

「それなら頑張ります!」

 

「……」

 

二乃が四葉を見る。

 

「本当に素直よね、あんた」

 

「えへへ」

 

「褒めてない」

 

「でも嬉しいです!」

 

一花が笑った。

 

「四葉らしいね」

 

 

午前九時。

 

勉強会開始。

 

今日は数学からだった。

 

「四葉」

 

悠飛が問題を渡す。

 

「はい!」

 

「これを解いてみろ」

 

「分かりました!」

 

四葉は問題を見る。

 

「……」

 

しばらくして。

 

「できました!」

 

「早いな」

 

風太郎が答案を見る。

 

「正解だ」

 

「やった!」

 

四葉が拳を握る。

 

「昨日より早く解けました!」

 

「昨日の復習をしたからだ」

 

悠飛が言う。

 

「ちゃんと努力してる」

 

「……」

 

四葉が嬉しそうに笑う。

 

「もっと頑張ります!」

 

「その調子だ」

 

 

しかし。

 

一時間ほど経った頃。

 

「……」

 

四葉の手が止まった。

 

「四葉?」

 

悠飛が気づく。

 

「どうした?」

 

「……」

 

四葉は問題集を見つめたまま。

 

「分からなくなりました」

 

「どこから?」

 

「全部です」

 

「全部?」

 

「はい……」

 

珍しく。

 

四葉の声に元気がない。

 

風太郎も四葉を見る。

 

「疲れたか?」

 

「……たぶん」

 

四葉は笑おうとした。

 

「大丈夫です!」

 

だが。

 

その笑顔は。

 

いつものものとは違った。

 

 

休憩時間。

 

四葉は一人で庭に出た。

 

木陰のベンチ。

 

「……」

 

空を見上げる。

 

「私」

 

小さく呟く。

 

「ちゃんとできてるのかな」

 

成績は。

 

以前より確実に上がっている。

 

勉強会にも毎回参加している。

 

みんなと一緒に努力している。

 

それでも。

 

四葉には。

 

心の奥に引っかかっているものがあった。

 

五つ子の中で。

 

自分だけが取り柄を失ってしまうような気がする。

 

一花には演技。

 

二乃には料理。

 

三玖には歴史。

 

五月には勉強への真面目さ。

 

そして。

 

自分には。

 

「……何があるんだろう」

 

運動。

 

それだけだった。

 

けれど。

 

勉強もできるようになりたい。

 

みんなと同じように。

 

「……」

 

四葉は拳を握った。

 

「頑張らなきゃ」

 

 

「四葉」

 

背後から声がした。

 

「!」

 

振り返る。

 

悠飛だった。

 

「悠飛さん……」

 

「ここにいたのか」

 

「はい」

 

「元気ないな」

 

「そんなことないですよ!」

 

四葉は笑う。

 

「ほら!」

 

「……」

 

「いつもの笑顔です!」

 

「そうだな」

 

悠飛はベンチに座る。

 

「でも」

 

「?」

 

「無理して笑ってる時の顔も知ってる」

 

四葉が黙った。

 

「……」

 

「昔からな」

 

「昔から?」

 

「幼い頃」

 

悠飛は少し遠くを見る。

 

「四葉はよく笑ってた」

 

「……」

 

「でも」

 

「?」

 

「本当に困った時だけ」

 

悠飛は四葉を見る。

 

「その笑顔が少しだけ小さくなってた」

 

四葉は目を見開いた。

 

「……覚えてるんですか?」

 

「少しずつな」

 

「そっか……」

 

四葉は俯く。

 

「じゃあ」

 

「うん」

 

「私が今、無理してるのも分かります?」

 

「ああ」

 

「……」

 

四葉は小さく笑った。

 

「敵いませんね」

 

「何が?」

 

「悠飛さんには」

 

 

四葉は少しずつ話し始めた。

 

「私」

 

「うん」

 

「みんなに追いつきたいんです」

 

「成績?」

 

「はい」

 

「でも」

 

四葉は膝を抱える。

 

「一花は女優を目指してて」

 

「うん」

 

「二乃は料理が上手で」

 

「そうだな」

 

「三玖は歴史に詳しくて」

 

「うん」

 

「五月は勉強が大好きで」

 

「……」

 

「私は……」

 

四葉は苦笑した。

 

「運動しかできない」

 

「四葉」

 

「だから」

 

「……」

 

「勉強も頑張りたいんです」

 

悠飛は黙って聞いていた。

 

そして。

 

「それでいい」

 

「え?」

 

「四葉が頑張りたいなら、頑張ればいい」

 

「……」

 

「でも」

 

悠飛は続ける。

 

「誰かと比べる必要はない」

 

「……」

 

「四葉には四葉の良さがある」

 

「私の?」

 

「ああ」

 

「何ですか?」

 

悠飛は少し考える。

 

「人を笑わせる力」

 

「……」

 

「誰かが困っていたら、真っ先に動くところ」

 

「……」

 

「そして」

 

悠飛は笑った。

 

「その笑顔」

 

「……笑顔?」

 

「ああ」

 

「でも」

 

四葉は少し困ったように笑う。

 

「笑顔なんて誰でもできますよ」

 

「違う」

 

悠飛は真剣だった。

 

「四葉の笑顔だから、周りが笑顔になる」

 

「……」

 

四葉の目が潤んだ。

 

「そんなの……」

 

「本当だ」

 

「……」

 

「俺は四葉の笑顔に何度も助けられた」

 

「悠飛さん……」

 

「だから」

 

悠飛は立ち上がる。

 

「無理して笑わなくていい」

 

「……」

 

「笑いたい時に笑えばいい」

 

四葉は顔を伏せた。

 

肩が少し震える。

 

「……」

 

涙が一滴。

 

頬を伝った。

 

「四葉?」

 

「ごめんなさい」

 

「謝る必要ない」

 

「……」

 

四葉は涙を拭う。

 

そして。

 

顔を上げた。

 

「……ありがとうございます」

 

その笑顔は。

 

今まで以上に。

 

自然だった。

 

 

「よし!」

 

四葉が立ち上がる。

 

「もう一回勉強します!」

 

「無理するな」

 

「無理じゃありません!」

 

四葉は拳を握る。

 

「今度は、自分のために頑張ります!」

 

「それならいい」

 

「はい!」

 

二人がリビングへ戻る。

 

その様子を。

 

一花たちは見ていた。

 

「四葉」

 

一花が微笑む。

 

「少し元気になったね」

 

「うん」

 

三玖も頷く。

 

五月は嬉しそうに笑う。

 

「よかったです」

 

二乃も。

 

「……まあ」

 

「何?」

 

「四葉はあれくらい元気じゃないと」

 

六華は黙っていた。

 

そして。

 

悠飛を見る。

 

「……」

 

やっぱり。

 

昔から。

 

悠飛は変わらない。

 

誰かが困っていると。

 

必ず手を差し伸べる。

 

その優しさに。

 

六華は胸を締め付けられるような感覚を覚えた。

 

 

午後。

 

勉強会は再開された。

 

「では」

 

風太郎が問題を出す。

 

「四葉」

 

「はい!」

 

「この問題」

 

「……」

 

四葉は問題を見る。

 

そして。

 

「分かりました!」

 

「解いてみろ」

 

「はい!」

 

ペンを走らせる。

 

一問。

 

二問。

 

三問。

 

「できました!」

 

風太郎が確認する。

 

「全問正解」

 

「やった!」

 

悠飛も頷く。

 

「よくできた」

 

「ありがとうございます!」

 

四葉は満面の笑顔。

 

その笑顔を見て。

 

一花が呟いた。

 

「やっぱり四葉は、その顔が一番似合うね」

 

「一花!」

 

「何?」

 

「ありがとうございます!」

 

四葉は笑った。

 

 

夕方。

 

勉強会終了。

 

四葉は玄関で靴を履いていた。

 

「悠飛さん」

 

「ん?」

 

「今日はありがとうございました」

 

「どういたしまして」

 

「私」

 

四葉は笑う。

 

「もっと頑張ります」

 

「勉強?」

 

「全部です!」

 

「全部?」

 

「勉強も」

 

「うん」

 

「武道も」

 

「うん」

 

「友達との時間も」

 

「……」

 

「そして」

 

四葉は少し照れた。

 

「自分のことも、もっと好きになれるように」

 

悠飛は笑った。

 

「それが一番だな」

 

「はい!」

 

 

帰り道。

 

夕焼けに染まる街。

 

四葉は一人で歩いていた。

 

「……」

 

今日。

 

悠飛に言われた言葉。

 

『四葉の笑顔だから、周りが笑顔になる』

 

何度も頭の中で繰り返す。

 

「……えへへ」

 

自然と笑みがこぼれた。

 

「私の笑顔」

 

四葉は空を見上げる。

 

「大切にしよう」

 

その時。

 

スマートフォンが鳴った。

 

『四葉、今どこ?』

 

一花からのメッセージ。

 

『駅前!』

 

すぐに返信。

 

『じゃあ一緒に帰ろう』

 

『はい!』

 

四葉は走り出す。

 

その顔には。

 

もう迷いはなかった。

 

 

駅前。

 

一花、二乃、三玖、五月、六華が待っている。

 

「四葉!」

 

「お待たせしました!」

 

「遅い」

 

二乃が言う。

 

「ごめんなさい!」

 

「まあいいけど」

 

一花が笑う。

 

「なんか今日は嬉しそうだね」

 

「はい!」

 

「何かあった?」

 

四葉は少し考えた。

 

そして。

 

「秘密です!」

 

「何それ」

 

二乃が笑う。

 

三玖も。

 

「四葉らしい」

 

五月も微笑む。

 

六華は四葉を見る。

 

「いい笑顔」

 

「ありがとうございます!」

 

四葉は笑った。

 

六人の少女たちが。

 

夕暮れの駅前を歩いていく。

 

少し離れた場所。

 

悠飛はその背中を見送っていた。

 

「……」

 

風太郎が隣に立つ。

 

「何を見てる?」

 

「四葉」

 

「……」

 

風太郎も彼女たちを見る。

 

「元気になったな」

 

「ああ」

 

「お前のおかげだな」

 

「俺は何もしてない」

 

「そういうところだ」

 

風太郎が苦笑する。

 

「自分が誰かを救ってることに無自覚」

 

「……」

 

悠飛は笑う。

 

「友達だから助けただけだ」

 

「それでいいんじゃないか」

 

風太郎は歩き出す。

 

「行くぞ」

 

「ああ」

 

悠飛も続く。

 

 

その夜。

 

四葉は自分の部屋で。

 

一枚の写真を見ていた。

 

幼い頃の七人。

 

中央には。

 

幼い悠飛。

 

その隣に。

 

笑顔の自分。

 

「……」

 

四葉は写真を胸に抱く。

 

「悠飛さん」

 

小さく呟く。

 

「私」

 

「これからも」

 

「ずっと笑っていたいです」

 

そして。

 

少しだけ頬を赤くする。

 

「……悠飛さんの隣で」

 

窓の外。

 

夏の夜空に。

 

星が瞬いていた。

 

青春の夏は。

 

まだ始まったばかり。

 

そして。

 

四葉の笑顔は。

 

これから訪れる数々の出来事の中で。

 

何度も仲間たちを照らしていくことになる。

 

その笑顔が。

 

やがて悠飛自身の心を救う日が来ることを。

 

今の四葉は。

 

まだ知らなかった。

 

 

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