『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第38話「悠飛と風太郎の友情」

秋晴れの朝。

 

旭高校の校門前には、いつものように多くの生徒が集まっていた。

 

その中を、二人の男子生徒が並んで歩いている。

 

一人は、整った顔立ちと金髪を持つ少年――如月悠飛。

 

そしてもう一人は、どこか不機嫌そうな顔で参考書を抱えている少年――上杉風太郎。

 

二人は性格こそ正反対だった。

 

悠飛は人当たりがよく、誰とでも自然に会話できる。

 

一方の風太郎は、必要以上に他人と関わろうとしない。

 

しかし。

 

二人の間には、確かな友情があった。

 

「風太郎」

 

「何だ」

 

「今日の小テスト、数学だったな」

 

「そうだ」

 

「勉強したか?」

 

「当然だ」

 

「さすが」

 

「お前こそ」

 

「俺はいつも通り」

 

「……その『いつも通り』が腹立つんだよ」

 

悠飛が笑う。

 

「褒め言葉として受け取っておく」

 

「褒めてない」

 

そんな会話をしながら。

 

二人は校舎へ向かった。

 

だが。

 

この日。

 

二人の友情を試す出来事が起こることになる。

 

 

一時間目。

 

数学の小テスト。

 

「始め」

 

教師の合図とともに、教室中で鉛筆が走り始める。

 

悠飛は淡々と問題を解いていく。

 

風太郎も負けじと答案を書き進める。

 

そして。

 

終了。

 

「そこまで」

 

生徒たちが答案を提出する。

 

「疲れたぁ……」

 

四葉が机に突っ伏す。

 

「今回、難しかった」

 

三玖が呟く。

 

一花は伸びをする。

 

「私はまあまあかな」

 

六華は答案を見直している。

 

五月は真剣な表情。

 

そして。

 

「悠飛」

 

風太郎が声をかける。

 

「何だ?」

 

「最後の問題」

 

「ああ」

 

「答え、何だった?」

 

「……」

 

悠飛が答える。

 

風太郎が頷く。

 

「同じだ」

 

「よし」

 

「だが」

 

「ん?」

 

「俺のほうが早く解いた」

 

悠飛は笑った。

 

「それは悔しいな」

 

「当然だ」

 

二人は小さく笑う。

 

そんな二人を。

 

一花は少し離れたところから見ていた。

 

「……仲良いね」

 

「そうですね」

 

四葉も頷く。

 

「悠飛さんと風太郎くん、昔からの友達なんですよね」

 

「うん」

 

六華が答える。

 

「お互いに遠慮がないところが、逆にいいのかも」

 

 

昼休み。

 

屋上。

 

悠飛と風太郎は二人で昼食を取っていた。

 

「……」

 

風太郎が弁当を食べる。

 

「なあ」

 

悠飛が口を開く。

 

「何だ?」

 

「最近、疲れてないか?」

 

「……」

 

風太郎の手が止まる。

 

「別に」

 

「嘘」

 

「……」

 

「五つ子のことだろ?」

 

風太郎はため息をついた。

 

「分かるか」

 

「顔に出てる」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

風太郎は空を見る。

 

「五人の成績は少しずつ上がってきた」

 

「うん」

 

「だが」

 

「……」

 

「まだまだ不安定だ」

 

「焦る必要はない」

 

悠飛が言う。

 

「少しずつでいい」

 

「分かってる」

 

風太郎は答える。

 

「だが、俺にはあいつらを支える責任がある」

 

「責任?」

 

「ああ」

 

風太郎は真剣だった。

 

「俺は家庭教師じゃない」

 

「……」

 

「今は友人として関わってる」

 

「そうだな」

 

「だからこそ」

 

風太郎は拳を握る。

 

「途中で投げ出したくない」

 

悠飛は黙って聞いていた。

 

そして。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「お前は一人じゃない」

 

「……」

 

「俺もいる」

 

風太郎は目を見開く。

 

「悠飛」

 

「五人を支えるなら、一緒にやろう」

 

「……」

 

「勉強も」

 

「……」

 

「生活も」

 

「……」

 

「必要なら、俺たちで考えればいい」

 

風太郎はしばらく黙っていた。

 

やがて。

 

「……ありがとな」

 

小さな声。

 

悠飛は笑った。

 

「友達だろ」

 

「……ああ」

 

風太郎も笑った。

 

 

しかし。

 

午後。

 

問題が起きた。

 

「上杉」

 

教師から呼び出された風太郎。

 

「はい」

 

「お前の最近の成績についてだ」

 

「……」

 

「以前より少し落ちている」

 

「分かっています」

 

「原因は何だ?」

 

風太郎は黙った。

 

五つ子のこと。

 

だが。

 

それを理由にはしたくなかった。

 

「……自分の努力不足です」

 

教師は首を傾げる。

 

「そうか」

 

「はい」

 

その話を。

 

廊下で悠飛が聞いていた。

 

「……」

 

風太郎は教室へ戻ってくる。

 

「風太郎」

 

「聞いてたのか」

 

「少しだけ」

 

「……」

 

「本当に自分の努力不足か?」

 

「そうだ」

 

「違う」

 

「……」

 

悠飛は言った。

 

「お前は五人のために時間を使ってる」

 

「それでも」

 

「それは悪いことじゃない」

 

風太郎は黙る。

 

「俺は」

 

悠飛が続ける。

 

「お前が五人を支えてることを知ってる」

 

「……」

 

「だから、自分を責めるな」

 

風太郎は俯く。

 

「……悠飛」

 

「ん?」

 

「俺は」

 

「……」

 

「お前が羨ましい」

 

「え?」

 

「何でもできる」

 

「……」

 

「勉強も」

 

「……」

 

「運動も」

 

「……」

 

「人付き合いも」

 

風太郎は苦笑する。

 

「しかも金持ちだ」

 

「そこは関係ないだろ」

 

悠飛が苦笑する。

 

「それに」

 

風太郎は続ける。

 

「お前は五人に好かれている」

 

「……」

 

「一花も」

 

「……」

 

「四葉も」

 

「……」

 

「六華も」

 

悠飛が固まる。

 

「……風太郎」

 

「何だ?」

 

「それ、本人たちに言うなよ」

 

「なぜ?」

 

「恥ずかしい」

 

「お前でも恥ずかしいことがあるのか」

 

「ある」

 

風太郎は少し笑った。

 

「そうか」

 

そして。

 

風太郎は悠飛の肩を軽く叩いた。

 

「なら、お互い様だ」

 

「何が?」

 

「俺にも、お前にはないものがある」

 

「……」

 

「五人を支えることで得たものだ」

 

「そうだな」

 

「だから」

 

風太郎は前を見る。

 

「競争しよう」

 

「……」

 

「勉強でも」

 

「……」

 

「人生でも」

 

「いいな」

 

悠飛は笑った。

 

「負けないぞ」

 

「俺もだ」

 

 

放課後。

 

二人は武道場にいた。

 

「今日は勉強じゃないのか?」

 

風太郎が聞く。

 

「たまには身体を動かそう」

 

「俺は武道経験ないぞ」

 

「大丈夫」

 

悠飛は笑う。

 

「基礎だけ」

 

風太郎は構える。

 

「……」

 

「力を入れすぎ」

 

「こうか?」

 

「そう」

 

「……」

 

風太郎が踏み込む。

 

悠飛が軽く受け流す。

 

「うわっ!」

 

風太郎が転びそうになる。

 

悠飛が腕を掴む。

 

「危ない」

 

「……」

 

「大丈夫か?」

 

「……」

 

風太郎は苦笑した。

 

「お前、本当に何でもできるな」

 

「そんなことない」

 

「なら料理をしろ」

 

「それは無理」

 

「……」

 

「本当に無理」

 

二人は笑った。

 

そのとき。

 

「お兄ちゃん!」

 

入口から声がする。

 

「莉々華?」

 

莉々華が入ってきた。

 

「もう帰る時間ですよ」

 

「分かった」

 

莉々華は風太郎を見る。

 

「こんにちは」

 

「ああ」

 

「上杉さんですよね?」

 

「そうだ」

 

「お兄ちゃんの友達」

 

「……」

 

風太郎は少し驚いた。

 

「友達……か」

 

「違うの?」

 

莉々華が首を傾げる。

 

「いや」

 

風太郎は悠飛を見る。

 

「友達だ」

 

悠飛は笑った。

 

 

帰り道。

 

三人で歩く。

 

「風太郎さん」

 

莉々華が言う。

 

「何だ?」

 

「お兄ちゃんと仲良くしてあげてください」

 

「……」

 

悠飛が苦笑する。

 

「莉々華」

 

「だって」

 

莉々華は頬を膨らませる。

 

「お兄ちゃん、最近五つ子さんたちのことで忙しいんですから」

 

「それは……」

 

「私、ちょっと寂しいです」

 

悠飛は莉々華の頭を撫でる。

 

「ごめんな」

 

「……」

 

莉々華は嬉しそうに笑った。

 

「でも」

 

悠飛は言う。

 

「風太郎がいてくれるから大丈夫だ」

 

「……」

 

風太郎は驚いた。

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

「……」

 

「お前は頼りになる」

 

風太郎は少しだけ顔を背ける。

 

「……そういうこと、普通に言うな」

 

「何で?」

 

「恥ずかしい」

 

莉々華が笑う。

 

「お兄ちゃんと風太郎さん、似てますね」

 

「「どこが?」」

 

二人の声が重なる。

 

莉々華は大笑いした。

 

 

翌日。

 

昼休み。

 

五つ子と六華が悠飛たちのところへやってきた。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が声をかける。

 

「ん?」

 

「昨日、風太郎くんと武道してたんですか?」

 

「ああ」

 

「私も見たかったです!」

 

「今度な」

 

「約束ですよ!」

 

一花が笑う。

 

「風太郎くんも結構楽しそうだったよね」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

六華も頷く。

 

「二人とも自然だった」

 

五月が言う。

 

「悠飛さんと上杉さんは、本当に仲が良いんですね」

 

二乃が腕を組む。

 

「まあ、悪くないんじゃない?」

 

三玖は小さく笑う。

 

「友達……」

 

その言葉を。

 

六華は静かに聞いていた。

 

――友達。

 

悠飛と風太郎。

 

二人の友情は強い。

 

それは。

 

五つ子たちにも。

 

六華にも。

 

少し羨ましいほどだった。

 

 

その日の放課後。

 

風太郎が悠飛を呼び止めた。

 

「悠飛」

 

「どうした?」

 

「一つ頼みがある」

 

「何だ?」

 

「五つ子の次の試験」

 

「うん」

 

「俺一人じゃなく、お前にも協力してほしい」

 

「もちろん」

 

「……助かる」

 

悠飛は笑った。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「俺たちは友達だ」

 

「分かってる」

 

「なら」

 

「……」

 

「困ったときはお互い様だ」

 

風太郎は頷いた。

 

「ああ」

 

二人は拳を軽く合わせた。

 

「絶対に五人を赤点にさせない」

 

「おう」

 

 

数日後。

 

五つ子たちの勉強会。

 

「ここ!」

 

四葉が手を挙げる。

 

「分かりました!」

 

「よし」

 

悠飛が頷く。

 

「次は?」

 

一花が問題を解く。

 

「できた」

 

「正解」

 

「やった」

 

三玖も。

 

「……できた」

 

「正解」

 

五月も。

 

「これは?」

 

「合ってる」

 

二乃も。

 

「ふん」

 

「正解だ」

 

五人全員。

 

少しずつ。

 

成長している。

 

風太郎が答案を見る。

 

「前より確実に良くなってる」

 

「本当?」

 

一花が聞く。

 

「ああ」

 

風太郎は頷いた。

 

「お前らが努力した結果だ」

 

「……」

 

五人が嬉しそうに笑う。

 

その姿を見ながら。

 

悠飛も嬉しくなった。

 

 

帰り道。

 

悠飛と風太郎。

 

二人きり。

 

「なあ」

 

風太郎が言う。

 

「何だ?」

 

「このままいけば」

 

「うん」

 

「五人はちゃんと卒業できると思うか?」

 

「できる」

 

悠飛は即答した。

 

「お前がいる」

 

「……」

 

「俺もいる」

 

「……」

 

「五人自身も頑張ってる」

 

風太郎は笑った。

 

「そうだな」

 

「だから大丈夫だ」

 

「ああ」

 

二人は並んで歩く。

 

夕焼けの中。

 

悠飛が言う。

 

「風太郎」

 

「ん?」

 

「高校を卒業しても」

 

「……」

 

「友達でいような」

 

風太郎は少し驚いた。

 

そして。

 

「当たり前だ」

 

そう答えた。

 

「大学に行っても」

 

「うん」

 

「社会人になっても」

 

「もちろん」

 

「爺さんになっても」

 

「それは長いな」

 

二人は笑った。

 

「でも」

 

風太郎が言う。

 

「悪くない」

 

「だろ?」

 

「……ああ」

 

その約束は。

 

二人がまだ高校生だった頃。

 

何気なく交わしたものだった。

 

けれど。

 

二人は知らない。

 

この友情が。

 

これから先。

 

人生の中で何度も。

 

互いを支える大切な絆になることを。

 

そして。

 

五つ子たちと六華を巡る恋が激しくなっても。

 

悠飛と風太郎の友情だけは。

 

決して揺らぐことがない。

 

「帰るか」

 

「ああ」

 

二人は肩を並べ。

 

夕暮れの道を歩いていった。

 

その背中は。

 

まるで。

 

ずっと昔からの親友のようだった。

 

 

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