『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第39話「家族の絆」

秋も終わりに近づいていた。

 

朝晩の冷え込みが少しずつ強くなり、旭高校の校庭を吹き抜ける風にも冬の気配が混じり始めている。

 

「寒い……」

 

四葉が両手に息を吹きかける。

 

「もう冬ですね!」

 

「四葉、まだ秋」

 

三玖が淡々と指摘する。

 

「細かいことは気にしない!」

 

「細かくないと思うけど」

 

一花が笑う。

 

そんな五つ子の少し後ろを、悠飛と六華が歩いていた。

 

「六華、寒くないか?」

 

「大丈夫」

 

六華は笑った。

 

「悠飛こそ」

 

「俺は平気」

 

「そう言うと思った」

 

「何で?」

 

「昔からそうだから」

 

「……昔?」

 

悠飛が首を傾げる。

 

六華は一瞬だけ表情を曇らせた。

 

「ううん。何でもない」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

六華は笑った。

 

しかし。

 

彼女の胸の奥には、幼い頃の記憶が残っていた。

 

七人で過ごした時間。

 

悠飛。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

そして自分。

 

今では少しずつ思い出せる。

 

けれど。

 

まだ全てではない。

 

「……」

 

六華は悠飛の横顔を見る。

 

――いつか全部、思い出したい。

 

そう思った。

 

 

放課後。

 

悠飛が帰宅すると、玄関には珍しく父・明馬の革靴があった。

 

「ただいま」

 

「お帰り、悠飛」

 

リビングから声が返ってくる。

 

「父さん、今日は早いな」

 

「たまにはな」

 

明馬はソファに座っていた。

 

隣には母・明美。

 

そして。

 

「お兄ちゃん!」

 

莉々華。

 

「三人とも揃ってるのか」

 

「家族会議です!」

 

莉々華が宣言する。

 

「家族会議?」

 

悠飛が苦笑した。

 

「何かあった?」

 

明馬が口を開く。

 

「最近、中野さんたちのところに頻繁に行っているそうだな」

 

「うん」

 

「学校でも面倒を見ている?」

 

「まあ」

 

明美が微笑む。

 

「友達なんでしょう?」

 

「ああ」

 

「ならいいじゃない」

 

明馬も頷く。

 

「ただな」

 

「うん」

 

「人を助けるというのは、思っている以上に責任が伴う」

 

「分かってる」

 

悠飛は真剣に答えた。

 

「だから、家族にも相談しながらやってる」

 

「それなら問題ない」

 

明馬は笑う。

 

「それに」

 

「?」

 

「お前が誰かのために動くようになったのは、父親として嬉しい」

 

悠飛は少し驚いた。

 

「……父さん」

 

明馬は昔を思い出すように目を細めた。

 

「子供の頃のお前は、一人で何でもやろうとしていたからな」

 

「そうだった?」

 

「そうだ」

 

明美も笑う。

 

「転んでも泣かなかったものね」

 

「……覚えてない」

 

「私は覚えてます」

 

莉々華が手を挙げる。

 

「お兄ちゃん、昔から格好つけでした」

 

「莉々華まで」

 

「事実です」

 

家族全員が笑った。

 

 

夕食。

 

明美が料理を並べる。

 

「いただきます」

 

四人の声が重なる。

 

悠飛は箸を取る。

 

「やっぱり家の飯はいいな」

 

「最近外食が多いものね」

 

明美が言う。

 

「中野さんたちのところでは?」

 

「勉強会だから、軽く食べるくらい」

 

「ちゃんと食べてる?」

 

「大丈夫」

 

莉々華がじっと悠飛を見る。

 

「本当に?」

 

「本当」

 

「ならいいです」

 

そう言いながらも。

 

莉々華はどこか不満そうだった。

 

「どうした?」

 

悠飛が聞く。

 

「……」

 

「莉々華?」

 

「お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「最近、私より五つ子さんたちと一緒にいる時間のほうが長くないですか?」

 

「……」

 

悠飛は固まった。

 

明馬が笑いを堪える。

 

明美も微笑む。

 

「莉々華」

 

「何ですか、お母さん」

 

「お兄ちゃんを取られたような気がするのね」

 

「……」

 

莉々華は頬を膨らませる。

 

「そういうことじゃありません」

 

「じゃあ、どういうこと?」

 

「……」

 

「……」

 

「ちょっと寂しいだけです」

 

小さな声。

 

悠飛は箸を置いた。

 

「莉々華」

 

「はい」

 

「ごめんな」

 

「……」

 

「俺が悪かった」

 

「お兄ちゃん……」

 

「明日、一緒に買い物でも行くか?」

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

莉々華の顔が明るくなる。

 

「絶対ですよ!」

 

「約束」

 

「約束です!」

 

悠飛は笑った。

 

家族。

 

それは。

 

どんなに忙しくても。

 

忘れてはいけない存在だった。

 

 

翌日。

 

放課後。

 

悠飛は莉々華と街へ出ていた。

 

「どこ行きたい?」

 

「まず本屋です」

 

「本屋?」

 

「はい!」

 

莉々華は楽しそうに歩く。

 

「それから洋服を見たいです」

 

「分かった」

 

「あと――」

 

「まだあるのか?」

 

「あります!」

 

二人で笑う。

 

そんな二人を。

 

偶然見かけた人物がいた。

 

「……悠飛?」

 

一花だった。

 

その隣には四葉と六華。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が手を振る。

 

悠飛が振り返る。

 

「あれ?」

 

「こんにちは!」

 

「こんにちは」

 

六華も挨拶する。

 

莉々華が三人を見る。

 

「こんにちは」

 

「こんにちは」

 

一花が笑う。

 

「妹さん?」

 

「うん」

 

「初めまして。中野一花です」

 

「知ってます」

 

「え?」

 

莉々華が少しだけ胸を張る。

 

「お兄ちゃんから聞いてます」

 

一花が悠飛を見る。

 

「何て?」

 

「秘密です」

 

「ふふっ」

 

一花が笑う。

 

四葉も莉々華を見る。

 

「莉々華ちゃん、今日はお兄ちゃんとデートですか?」

 

「デートじゃありません!」

 

莉々華が即答する。

 

「家族のお出かけです!」

 

「なるほど!」

 

四葉が頷く。

 

六華は微笑んだ。

 

「仲良しだね」

 

「はい!」

 

莉々華は嬉しそうだった。

 

その姿を見て。

 

一花は少し考える。

 

――家族。

 

自分たちにも。

 

母・零奈がいた。

 

そして。

 

今はマルオがいる。

 

けれど。

 

自分たちは。

 

本当に家族なのだろうか。

 

 

その夜。

 

五つ子たちはアパートに集まっていた。

 

「今日、悠飛と妹さんを見た」

 

一花が言う。

 

「莉々華ちゃん?」

 

四葉が尋ねる。

 

「うん」

 

「仲良さそうでしたね」

 

五月が微笑む。

 

二乃は腕を組む。

 

「そりゃ兄妹なんだから当然でしょ」

 

三玖が呟く。

 

「……羨ましい」

 

「三玖?」

 

「家族」

 

三玖は窓の外を見る。

 

「私たちも五人家族だけど」

 

「……」

 

「昔はお母さんがいた」

 

一花も静かになる。

 

「お母さん……」

 

五月が呟く。

 

五人にとって。

 

母・零奈は。

 

今も心の中にいる。

 

厳しくて。

 

優しくて。

 

決して弱音を吐かない女性だった。

 

「お母さんなら」

 

四葉が言う。

 

「今の私たちを見たら、何て言うでしょう」

 

「……」

 

誰も答えられない。

 

すると。

 

一花が笑った。

 

「きっと」

 

「?」

 

「五人でちゃんと仲良くしなさいって言うんじゃないかな」

 

二乃が頷く。

 

「そうね」

 

三玖も。

 

「うん」

 

四葉も。

 

「はい!」

 

五月は胸元に手を置く。

 

「……私たちは五人一緒です」

 

 

翌日。

 

中野家の前。

 

五つ子は久しぶりに父・マルオと向き合っていた。

 

「話がある」

 

マルオが言う。

 

「はい」

 

五月が答える。

 

「君たちは最近、友人たちに支えられているようだな」

 

「……」

 

一花が頷く。

 

「悠飛くんと風太郎くんに」

 

「そうです」

 

五月が続ける。

 

「それから六華にも」

 

マルオは五人を見る。

 

「君たちは」

 

「……」

 

「彼らを家族のように感じているのか?」

 

五人は驚いた。

 

「家族……」

 

四葉が呟く。

 

マルオは続ける。

 

「家族というものは、血の繋がりだけではない」

 

「……」

 

「共に過ごし」

 

「……」

 

「互いを支え」

 

「……」

 

「必要なときに助け合う」

 

マルオは淡々と言う。

 

「それも家族だ」

 

五人は顔を見合わせた。

 

 

その日の夕方。

 

悠飛の家。

 

「家族って何だろうな」

 

悠飛が呟く。

 

隣にいる風太郎が答える。

 

「難しい質問だな」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

風太郎は少し考える。

 

「俺の家は父さんとらいはと俺」

 

「うん」

 

「血の繋がった家族だ」

 

「……」

 

「でも」

 

風太郎は続ける。

 

「それだけじゃないと思う」

 

「……」

 

「五つ子も」

 

「……」

 

「俺にとっては、もう放っておけない存在だ」

 

悠飛は笑う。

 

「お前らしい」

 

「何がだ」

 

「不器用なところ」

 

「うるさい」

 

二人は笑った。

 

そこへ。

 

「お兄ちゃん!」

 

莉々華が入ってくる。

 

「何してるんですか?」

 

「風太郎と話してた」

 

「またですか?」

 

「またって……」

 

莉々華は風太郎を見る。

 

「風太郎さん」

 

「何だ?」

 

「お兄ちゃんをよろしくお願いします」

 

「……」

 

風太郎は少し驚いた。

 

「こちらこそ」

 

「え?」

 

「悠飛にはいつも助けてもらってる」

 

「……」

 

「俺も、こいつを支える」

 

莉々華が笑う。

 

「ありがとうございます」

 

悠飛は二人を見る。

 

「……なんか恥ずかしいな」

 

「何で?」

 

莉々華が首を傾げる。

 

 

数日後。

 

学校では。

 

「ねえ、悠飛」

 

一花が声をかけた。

 

「何?」

 

「家族って」

 

「うん」

 

「何だと思う?」

 

突然の質問だった。

 

悠飛は少し考える。

 

「一緒にいる人」

 

「……」

 

「自分が困ったときに助けてくれる人」

 

「……」

 

「そして」

 

悠飛は一花を見る。

 

「自分も、その人を助けたいと思えること」

 

一花の目が少し見開かれる。

 

「……そっか」

 

「どうした?」

 

「ううん」

 

一花は微笑んだ。

 

「悠飛くんらしいなって」

 

「そう?」

 

「うん」

 

そこへ。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が駆けてくる。

 

「何?」

 

「一花、お話終わりました?」

 

「うん」

 

「じゃあ、行きましょう!」

 

四葉が悠飛の腕を取る。

 

「ちょっと、四葉」

 

「早く!」

 

「はいはい」

 

その様子を。

 

少し離れたところから六華が見ていた。

 

「……」

 

胸の奥が。

 

ほんの少しだけ痛い。

 

けれど。

 

六華は笑った。

 

「私も」

 

「……」

 

「家族のように支えられる人になりたい」

 

 

その週末。

 

七人が集まった。

 

悠飛。

 

風太郎。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

そして六華。

 

「……七人じゃないぞ」

 

風太郎が言う。

 

「八人だ」

 

「そうだった」

 

悠飛が笑う。

 

「莉々華もいるから九人です!」

 

「……」

 

莉々華が胸を張る。

 

「今日はみんなで料理しましょう!」

 

「料理?」

 

悠飛が聞く。

 

「はい!」

 

「俺、料理苦手なんだけど」

 

「知ってます」

 

「……」

 

莉々華が笑う。

 

「でも大丈夫です」

 

「何が?」

 

「私が教えます」

 

その結果。

 

キッチンは大混乱になった。

 

「四葉、それは切りすぎ!」

 

「ええっ!」

 

「三玖、火が強い!」

 

「……ごめん」

 

「二乃、味見しすぎ!」

 

「いいでしょ!」

 

「五月、食べるな!」

 

「すみません!」

 

「一花、笑ってないで手伝って!」

 

「だって面白いんだもん」

 

六華も笑っている。

 

「悠飛、包丁危ない」

 

「六華まで……」

 

風太郎は呆れていた。

 

「お前ら、料理一つで何でこんなに騒ぐんだ」

 

だが。

 

風太郎自身も。

 

少し笑っていた。

 

 

完成した料理を。

 

全員で囲む。

 

「いただきます!」

 

声が重なる。

 

一口。

 

「……」

 

全員が黙る。

 

「どう?」

 

莉々華が聞く。

 

悠飛が答える。

 

「美味い」

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

一花も。

 

「美味しい」

 

二乃。

 

「まあまあね」

 

三玖。

 

「美味しい」

 

四葉。

 

「最高です!」

 

五月。

 

「美味しいです!」

 

六華。

 

「うん」

 

風太郎も。

 

「……悪くない」

 

莉々華は嬉しそうに笑った。

 

その光景を見ながら。

 

悠飛は思う。

 

家族とは。

 

血の繋がりだけではない。

 

同じ食卓を囲み。

 

笑い合い。

 

時には喧嘩をして。

 

それでも。

 

最後には隣にいる。

 

そんな存在なのかもしれない。

 

 

帰り際。

 

一花が悠飛に言った。

 

「今日は楽しかったね」

 

「ああ」

 

「またやろう」

 

「もちろん」

 

四葉も。

 

「次はもっと大人数で!」

 

「これ以上増えるのか?」

 

「分かりません!」

 

六華が笑う。

 

「でも、いいんじゃない?」

 

悠飛は三人を見る。

 

「そうだな」

 

少し離れた場所で。

 

風太郎と莉々華が話していた。

 

「風太郎さん」

 

「何だ?」

 

「お兄ちゃんのこと」

 

「……」

 

「これからもよろしくお願いします」

 

風太郎は頷く。

 

「ああ」

 

「約束ですよ」

 

「約束だ」

 

その二人を見ながら。

 

悠飛は笑った。

 

――家族。

 

――友達。

 

――仲間。

 

それぞれの形は違っても。

 

大切に思う気持ちは同じだった。

 

そして。

 

この日の記憶は。

 

後になって。

 

彼らにとって忘れられない思い出になる。

 

「また明日」

 

「うん」

 

「またね」

 

「さようなら」

 

一人ずつ別れていく。

 

最後まで残った悠飛と風太郎。

 

「帰るか」

 

「ああ」

 

二人は並んで歩く。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「家族って」

 

「うん」

 

「案外、難しくないのかもしれないな」

 

悠飛は笑う。

 

「そうかもな」

 

二人は歩き続ける。

 

秋の夜空には。

 

たくさんの星が輝いていた。

 

その下で。

 

いくつもの家族の絆が。

 

静かに、確かに。

 

強く結ばれていった。

 

 

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