『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第五章 冬、そして三年生へ 第41話「期末試験、最後の追い込み」

十二月。

 

旭高校の校舎を、冷たい風が包んでいた。

 

二学期も終わりが近づき、教室では冬休みを待ち望む声が増えている。

 

しかし。

 

悠飛たちにとっては、のんびりしている場合ではなかった。

 

「……」

 

教室の黒板には、大きく予定が書かれている。

 

『期末試験まで、あと七日』

 

その文字を見た瞬間。

 

四葉が机に突っ伏した。

 

「あと一週間しかないんですかぁ……」

 

「一週間もある」

 

風太郎が即答する。

 

「一週間しかありません!」

 

「だから勉強するんだ」

 

「うぅ……」

 

四葉が唸る。

 

その隣で。

 

五月は真剣な顔で教科書を開いていた。

 

「今回こそ、全員で赤点を回避しましょう」

 

「そうね」

 

一花が頷く。

 

二乃も腕を組む。

 

「当然でしょ」

 

三玖は問題集をめくる。

 

「今回は……前よりできる」

 

悠飛は五人を見る。

 

「みんな、ちゃんと成長してるよ」

 

「悠飛くん」

 

一花が嬉しそうに笑う。

 

「でも」

 

風太郎が続ける。

 

「油断はするな」

 

「分かってます」

 

五月が答える。

 

「今回の試験は範囲も広い」

 

「だからこそ」

 

悠飛が言った。

 

「最後の一週間を大切にしよう」

 

 

放課後。

 

いつもの勉強会。

 

今日は悠飛の家に集まっていた。

 

広いリビングには、大きなテーブル。

 

その周囲に。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

風太郎。

 

そして悠飛。

 

八人が座っている。

 

「まずは苦手分野を確認する」

 

風太郎が言う。

 

「四葉は数学」

 

「はい……」

 

「五月は英語」

 

「……はい」

 

「二乃は古文」

 

「そこは分かってるわよ」

 

「三玖は現代文」

 

「……努力する」

 

「一花は歴史」

 

「女優に歴史は必要?」

 

「必要だ」

 

「厳しいなぁ」

 

一花が苦笑する。

 

六華は全体的に安定している。

 

悠飛は全科目において余裕がある。

 

「じゃあ」

 

悠飛が問題集を開く。

 

「今日は四葉からやろう」

 

「私ですか?」

 

「一番時間が必要だから」

 

「容赦ないです!」

 

風太郎が頷く。

 

「その通りだ」

 

「二人とも酷い!」

 

全員が笑った。

 

 

数学。

 

「この問題」

 

悠飛が黒板に式を書く。

 

「まず何を求める?」

 

四葉が考える。

 

「えっと……」

 

「焦らなくていい」

 

「……」

 

四葉は問題文を読み直す。

 

「これ?」

 

「正解」

 

「やった!」

 

四葉が小さくガッツポーズをする。

 

「次」

 

「はい!」

 

最初は苦戦していた。

 

だが。

 

一問。

 

また一問。

 

少しずつ解けるようになっていく。

 

「……できた」

 

四葉が呟く。

 

風太郎が答案を見る。

 

「正解」

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

悠飛も頷く。

 

「前よりずっと早くなった」

 

「……」

 

四葉は嬉しそうに笑った。

 

「頑張ってよかったです!」

 

その笑顔を見て。

 

悠飛も自然と笑う。

 

一花はそんな二人を見ていた。

 

「……」

 

胸の奥が。

 

少しだけざわつく。

 

「一花?」

 

六華が気づく。

 

「何でもないよ」

 

一花は笑った。

 

 

夜。

 

勉強会が終わる。

 

「今日はここまで」

 

悠飛が言う。

 

「ありがとうございました!」

 

四葉が伸びをする。

 

「疲れた……」

 

二乃も。

 

「でも」

 

三玖が言う。

 

「前より分かるようになった」

 

五月も頷く。

 

「皆さんの教え方が上手だからです」

 

風太郎が立ち上がる。

 

「教え方というより、お前らの努力だ」

 

「……」

 

一花が笑う。

 

「風太郎くんも素直になったね」

 

「うるさい」

 

六華は荷物をまとめながら悠飛を見る。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「少し残ってもいい?」

 

「もちろん」

 

四葉が振り返る。

 

「六華?」

 

「ちょっと聞きたいことがあるだけ」

 

「そうですか!」

 

四葉は笑う。

 

「じゃあ、また明日!」

 

「また明日」

 

 

六華と二人きり。

 

「どうした?」

 

悠飛が聞く。

 

「数学」

 

「ここ?」

 

「うん」

 

六華は問題集を開く。

 

「ここだけ、少し分からない」

 

悠飛は隣に座る。

 

「これはね」

 

「……」

 

悠飛が丁寧に説明する。

 

六華は真剣に聞く。

 

「分かった」

 

「よかった」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

少し沈黙。

 

六華は悠飛を見る。

 

「……悠飛」

 

「ん?」

 

「最近」

 

「うん」

 

「楽しい?」

 

「何が?」

 

「学校」

 

悠飛は少し考える。

 

「楽しいよ」

 

「そう」

 

六華は笑った。

 

「よかった」

 

「六華は?」

 

「私も」

 

そして。

 

小さな声で。

 

「悠飛がいるから」

 

「……」

 

悠飛は聞き返そうとした。

 

「何?」

 

「ううん」

 

六華は笑う。

 

「何でもない」

 

 

翌日。

 

学校。

 

「悠飛くん!」

 

一花が呼び止める。

 

「何?」

 

「今日、放課後空いてる?」

 

「勉強会」

 

「それ以外」

 

「……」

 

一花は少し照れた。

 

「少しだけ、相談したいことがあって」

 

「分かった」

 

「ありがとう」

 

その会話を。

 

四葉が聞いていた。

 

「一花……?」

 

「どうしたの?」

 

「悠飛さんと何かするんですか?」

 

「ちょっと相談」

 

「……」

 

四葉は笑う。

 

「そうですか!」

 

だが。

 

胸の奥には。

 

小さな嫉妬。

 

それでも。

 

「私も頑張らないと!」

 

四葉は自分に言い聞かせた。

 

 

放課後。

 

一花と悠飛。

 

二人で歩く。

 

「相談って?」

 

「……」

 

一花は少し迷う。

 

「私」

 

「うん」

 

「女優の仕事が増えてきたの」

 

「知ってる」

 

「学校との両立が、少し大変」

 

「……」

 

「でも」

 

一花は笑う。

 

「やめたくない」

 

悠飛は頷く。

 

「やめなくていい」

 

「え?」

 

「一花がやりたいなら」

 

「……」

 

「俺は応援する」

 

一花は立ち止まる。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「そういうところ」

 

「?」

 

「ずるいよ」

 

「何が?」

 

「……何でもない」

 

一花は笑った。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 

その夜。

 

風太郎が悠飛に電話をかけてきた。

 

「悠飛」

 

「どうした?」

 

「今回の試験」

 

「ああ」

 

「俺たち、本気でやろう」

 

「もちろん」

 

「五人全員」

 

「うん」

 

「赤点なし」

 

「当然」

 

二人は約束した。

 

 

試験前日。

 

勉強会は過去最大規模になった。

 

「英語!」

 

五月。

 

「数学!」

 

四葉。

 

「歴史!」

 

一花。

 

「古文!」

 

二乃。

 

「現代文!」

 

三玖。

 

それぞれが問題を解いていく。

 

悠飛と風太郎は交互に答案を確認する。

 

「正解」

 

「正解」

 

「惜しい」

 

「ここを直せばいい」

 

「分かった!」

 

時間は過ぎていく。

 

午後八時。

 

九時。

 

十時。

 

「もう今日は終わりだ」

 

悠飛が言う。

 

「えー!」

 

四葉が抗議する。

 

「まだできます!」

 

「明日のために寝るのも勉強」

 

風太郎が言う。

 

「睡眠不足じゃ集中できない」

 

「……分かりました」

 

四葉が渋々頷く。

 

五月も立ち上がる。

 

「皆さん」

 

「?」

 

「ありがとうございました」

 

「何が?」

 

一花が聞く。

 

「去年の私たちなら」

 

五月は笑う。

 

「こんなに勉強できなかったと思います」

 

「……」

 

三玖が頷く。

 

「私も」

 

二乃も。

 

「確かにね」

 

「だから」

 

五月は悠飛と風太郎を見る。

 

「二人がいてくれて、本当によかったです」

 

風太郎は照れたように顔を背ける。

 

「……大げさだ」

 

悠飛は笑う。

 

「明日、頑張ろう」

 

「はい!」

 

 

その帰り道。

 

悠飛と風太郎は二人で歩いていた。

 

「……いよいよだな」

 

風太郎が言う。

 

「ああ」

 

「俺は」

 

風太郎は空を見上げる。

 

「五人が成長したことを、結果でも証明したい」

 

「できるさ」

 

「お前は自信があるな」

 

「ある」

 

「即答か」

 

「だって」

 

悠飛は笑う。

 

「みんな、前よりずっと頑張ってる」

 

「……」

 

「結果は後からついてくる」

 

風太郎は頷く。

 

「そうだな」

 

二人は歩き続ける。

 

 

試験当日。

 

「始め」

 

教室に教師の声が響いた。

 

五つ子は一斉に答案を見る。

 

一花。

 

「……」

 

二乃。

 

「……」

 

三玖。

 

「……」

 

四葉。

 

「……!」

 

五月。

 

「……」

 

以前なら。

 

問題を見ただけで頭を抱えていたかもしれない。

 

けれど。

 

今は違う。

 

一花は歴史問題を解いていく。

 

二乃も古文に食らいつく。

 

三玖は現代文を一問ずつ丁寧に。

 

四葉は数学の問題を慎重に。

 

五月は英語を落ち着いて。

 

そして。

 

全員が。

 

自分の力で答案を書いていた。

 

 

試験最終日。

 

「終わり」

 

全ての試験が終わった。

 

「終わったぁぁぁ!」

 

四葉が机に突っ伏す。

 

「長かった……」

 

二乃も疲れた顔。

 

「でも」

 

三玖が言う。

 

「今回は手応えがある」

 

五月も頷く。

 

「私もです」

 

一花は笑う。

 

「じゃあ」

 

「?」

 

「結果発表まで、少しだけ休もう」

 

「賛成!」

 

四葉が手を挙げる。

 

 

数日後。

 

試験結果が返却された。

 

教室。

 

教師が答案を配っていく。

 

「中野一花」

 

「はい」

 

「中野二乃」

 

「はい」

 

「中野三玖」

 

「はい」

 

「中野四葉」

 

「はい……」

 

「中野五月」

 

「はい」

 

五人は恐る恐る答案を見る。

 

「……」

 

一花。

 

「……」

 

二乃。

 

「……!」

 

三玖。

 

「……!」

 

四葉。

 

「……」

 

五月。

 

全員。

 

赤点を回避していた。

 

「……!」

 

四葉が目を輝かせる。

 

「やったぁぁぁ!」

 

教室に響く大声。

 

「四葉!」

 

五月が慌てる。

 

「でも!」

 

四葉は嬉し涙を浮かべる。

 

「みんな赤点じゃないです!」

 

一花も笑う。

 

「本当だね」

 

二乃は答案を見ながら。

 

「……まあ、当然ね」

 

だが。

 

その目は嬉しそうだった。

 

三玖は小さく拳を握る。

 

「努力した」

 

五月は答案を胸に抱く。

 

「……嬉しい」

 

 

放課後。

 

悠飛と風太郎が結果を確認する。

 

「……」

 

風太郎は五人の答案を見る。

 

「全員」

 

「うん」

 

「赤点なし」

 

悠飛は笑う。

 

「よくやった」

 

四葉が飛び跳ねる。

 

「やりました!」

 

「うるさい」

 

風太郎が言う。

 

「でも」

 

その顔には。

 

笑みが浮かんでいた。

 

「よく頑張った」

 

五人は驚く。

 

「風太郎くんが褒めた……」

 

一花がわざとらしく言う。

 

「何だ」

 

「珍しいなって」

 

「……」

 

「素直じゃん」

 

「うるさい」

 

悠飛は笑う。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「俺たちの勝ちだな」

 

「ああ」

 

二人は拳を合わせる。

 

 

その日の帰り。

 

五つ子と六華。

 

そして悠飛と風太郎。

 

八人で歩く。

 

「ねえ」

 

一花が言う。

 

「今回の試験」

 

「うん?」

 

「私たち、少し変わったよね」

 

三玖が頷く。

 

「うん」

 

二乃も。

 

「前よりはマシ」

 

四葉。

 

「すごくマシです!」

 

五月。

 

「これも、皆さんのおかげです」

 

六華が笑う。

 

「でも、一番頑張ったのは五人自身だよ」

 

悠飛が言う。

 

「そうだな」

 

風太郎も頷く。

 

「俺たちは手伝っただけだ」

 

「……」

 

一花は悠飛を見る。

 

――この人と。

 

――もっと一緒にいたい。

 

四葉も。

 

――もっと頑張って。

 

――いつか悠飛さんの隣に。

 

六華も。

 

――この人のそばにいたい。

 

それぞれの想いは。

 

少しずつ大きくなっていた。

 

 

帰宅後。

 

悠飛は家族と食卓を囲んでいた。

 

「試験、終わったんでしょう?」

 

明美が聞く。

 

「ああ」

 

「どうだった?」

 

「五つ子全員、赤点回避」

 

「まあ!」

 

明美が嬉しそうに笑う。

 

明馬も頷く。

 

「よく頑張ったな」

 

莉々華は胸を張る。

 

「さすがお兄ちゃん!」

 

「俺じゃない」

 

「じゃあ?」

 

「五人が頑張ったんだよ」

 

莉々華は少し考える。

 

「……お兄ちゃんらしいです」

 

「何が?」

 

「人のことばかり褒めるところ」

 

悠飛は笑った。

 

 

夜。

 

自室。

 

悠飛は窓の外を見る。

 

冬の夜空。

 

吐く息が白い。

 

「もうすぐ三年生か」

 

高校生活も。

 

残り一年。

 

風太郎。

 

五つ子。

 

六華。

 

莉々華。

 

そして。

 

これまで出会った多くの人たち。

 

この一年で。

 

どれだけ変わっただろう。

 

悠飛は思う。

 

「……来年は」

 

もっと大変になる。

 

進路。

 

将来。

 

恋。

 

そして。

 

日の出祭。

 

まだ先の話だ。

 

けれど。

 

確実に近づいている。

 

その未来を思いながら。

 

悠飛は静かに笑った。

 

「楽しみだな」

 

一方。

 

五つ子たちも。

 

それぞれの部屋で。

 

同じように。

 

来年のことを考えていた。

 

一花は。

 

「もっと頑張ろう」

 

四葉は。

 

「来年も悠飛さんと一緒に」

 

六華は。

 

「三年生になっても」

 

そして。

 

五人全員が。

 

一つの目標を胸に抱く。

 

――もっと成長する。

 

――もっと大切な人たちと過ごす。

 

――そして。

 

それぞれの未来へ進む。

 

冬は。

 

静かに。

 

彼らの青春を包み込んでいた。

 

 

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