『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第45話「偽五月を探せ!」

冬休みが終わり、三学期が始まった。

 

旭高校の校門には、冷たい風が吹き抜けている。

 

「寒いですねぇ……」

 

五月がマフラーを押さえながら呟く。

 

「冬だからね」

 

一花が笑う。

 

「一花は寒くないの?」

 

「寒いよ。でも、もうすぐ三年生だと思うと、なんだか変な感じ」

 

「そうですね」

 

三玖が頷く。

 

「あと一年もない」

 

四葉は空を見上げた。

 

「高校生活も、あっという間ですね!」

 

「まだ一年あるでしょう」

 

六華が笑う。

 

「その一年が短いんだよ」

 

一花が答えた。

 

その横を、悠飛と風太郎が歩いてくる。

 

「おはよう」

 

悠飛が声をかける。

 

「おはようございます、悠飛さん!」

 

四葉が元気に返す。

 

「おはよう、悠飛くん」

 

一花も笑う。

 

六華は少しだけ手を上げた。

 

「おはよう」

 

「みんな元気そうだな」

 

「冬休みで充電しました!」

 

四葉が胸を張る。

 

風太郎は呆れたように言った。

 

「その充電、勉強にも使えよ」

 

「もちろんです!」

 

「本当か?」

 

「……たぶん!」

 

「信用できないな」

 

そんなやり取りに、一花たちは笑った。

 

平和な朝。

 

いつも通りの学校生活。

 

――そのはずだった。

 

 

昼休み。

 

悠飛は廊下を歩いていた。

 

目的は、中野姉妹に頼まれていたプリントを渡すこと。

 

「これで全部だな」

 

手元の封筒を確認する。

 

その時だった。

 

「悠飛さん!」

 

後ろから声がした。

 

振り返る。

 

そこには――五月がいた。

 

「五月」

 

「探していました」

 

「俺も今、みんなを探してたんだ」

 

「そうですか」

 

五月は少し嬉しそうに微笑む。

 

「では、一緒に行きましょう」

 

「ああ」

 

二人で歩き出す。

 

だが。

 

数分後。

 

「あれ?」

 

悠飛が足を止めた。

 

「どうしました?」

 

「さっきまでここにいたよな?」

 

「はい」

 

「でも、誰もいない」

 

「……」

 

五月も周囲を見る。

 

「確かに」

 

「みんな、どこ行ったんだ?」

 

「教室ではないでしょうか」

 

二人が教室へ戻ろうとした、その時。

 

「悠飛さん!」

 

また声がした。

 

振り返る。

 

そこには――五月。

 

「……」

 

悠飛は固まった。

 

「五月?」

 

「はい」

 

「……」

 

隣を見る。

 

さっきまで一緒にいた五月もいる。

 

「……え?」

 

二人。

 

同じ顔。

 

同じ髪型。

 

同じ制服。

 

同じ声。

 

「……」

 

「……」

 

二人の五月が顔を見合わせる。

 

「あなたは誰ですか?」

 

「それはこちらの台詞です!」

 

「……」

 

悠飛は頭を抱えた。

 

「何だこれ」

 

そこへ。

 

「悠飛くん!」

 

さらに声。

 

一花が走ってくる。

 

「どうしたの?」

 

悠飛は指差す。

 

「……説明してくれ」

 

一花は二人の五月を見た。

 

そして。

 

「……あー」

 

「知ってるのか!?」

 

「まあね」

 

一花は笑った。

 

「今日、みんなで遊んでたの」

 

「遊んでた?」

 

「うん」

 

すると。

 

一人目の五月が眼鏡を直す。

 

「一花」

 

二人目の五月が腕を組む。

 

「一花」

 

一花は楽しそうに笑う。

 

「さて、悠飛くん」

 

「何?」

 

「問題です」

 

「問題?」

 

「この中に、本物の五月がいます」

 

「……」

 

「偽物は誰でしょう?」

 

「いや、待て」

 

悠飛は額を押さえた。

 

「何でそんなことになってるんだ?」

 

「面白そうだったから」

 

「面白そうって……」

 

その瞬間。

 

「悠飛!」

 

別の声。

 

今度は四葉。

 

「四葉?」

 

「はい!」

 

四葉が走ってくる。

 

ところが。

 

その後ろから――

 

「悠飛さん」

 

また四葉。

 

「……」

 

悠飛の顔が引きつる。

 

「おい」

 

一花が笑う。

 

「増えたね」

 

「笑ってる場合か!」

 

さらに。

 

「悠飛」

 

三玖。

 

「悠飛くん」

 

二乃。

 

そして。

 

「悠飛さん」

 

六華。

 

気づけば廊下には。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

そして。

 

それぞれと同じ姿をした少女たちが並んでいた。

 

「……」

 

悠飛は絶句した。

 

「どういう状況なんだ……」

 

 

発端は。

 

少し前。

 

中野家。

 

「ねえ、みんな」

 

一花が言った。

 

「ちょっと面白いことしない?」

 

「面白いこと?」

 

四葉が食いつく。

 

「何ですか?」

 

一花がスマートフォンを見せる。

 

そこには、ある衣装の写真。

 

「変装?」

 

三玖が首を傾げる。

 

「そう」

 

「誰に?」

 

二乃が聞く。

 

一花は笑う。

 

「五月」

 

「え?」

 

五月が固まった。

 

「私ですか?」

 

「そう」

 

「なぜです?」

 

「だって、五月って一番見分けやすいじゃない?」

 

「……」

 

二乃が笑う。

 

「確かに」

 

三玖も頷く。

 

「五月は髪型とリボンで分かる」

 

四葉が手を上げる。

 

「じゃあ、全員五月になりましょう!」

 

「決まりね」

 

「ちょっと待ってください!」

 

五月の制止も虚しく。

 

こうして。

 

五人+六華による。

 

『偽五月を探せゲーム』

 

が始まったのだった。

 

 

「なるほど……」

 

事情を聞いた悠飛は深いため息をついた。

 

「つまり」

 

「はい」

 

五月が頷く。

 

「みんなが私に変装して、私を見つけられるか試すということです」

 

「……」

 

「正解です」

 

一花が拍手する。

 

「でも、悠飛くんなら分かると思うんだ」

 

「俺が?」

 

「うん」

 

一花は意味ありげに笑う。

 

「だって、いつも私たちのことをよく見てるから」

 

「……」

 

六華が小さく笑う。

 

「確かに」

 

四葉も。

 

「悠飛さんなら分かります!」

 

「そう言われるとプレッシャーがすごいんだが」

 

風太郎が通りかかる。

 

「何だ、この騒ぎ」

 

「風太郎!」

 

悠飛が助けを求める。

 

「この中に本物の五月がいるらしい」

 

「……」

 

風太郎は六人を見る。

 

「くだらないことをやってるな」

 

「風太郎くん!」

 

一花が抗議する。

 

「でも」

 

風太郎は一人ずつ見る。

 

「……まあ、面白そうだな」

 

「お前もかよ」

 

「誰が本物かくらい、俺なら分かる」

 

五月が少し驚く。

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

「では、風太郎君も参加してください」

 

「いいだろう」

 

悠飛が笑う。

 

「じゃあ勝負だな」

 

「望むところだ」

 

 

まずは。

 

六人が一斉に別方向へ散った。

 

そして。

 

数分後。

 

廊下に、一人の五月が現れた。

 

「こんにちは、悠飛さん」

 

「……」

 

悠飛はその少女を見つめる。

 

「本物?」

 

「はい」

 

「五月だな?」

 

「もちろんです」

 

「……」

 

悠飛は少し考える。

 

「偽物」

 

「なぜですか!?」

 

五月が驚く。

 

「五月なら、今の時間にそんなに余裕のある顔をしない」

 

「……」

 

「昼食のことを考えてる顔をする」

 

「失礼ですね!」

 

「ほら」

 

悠飛が笑う。

 

「本物の五月なら、もっと怒る」

 

「……」

 

少女は笑った。

 

「正解」

 

変装を解く。

 

「二乃か」

 

「よく分かったわね」

 

「声」

 

「声だけ?」

 

「それと」

 

悠飛は笑う。

 

「五月なら、もっと姿勢が固い」

 

「……」

 

二乃が目を丸くする。

 

「そんなところまで見てるの?」

 

「いつも一緒にいるからな」

 

「……」

 

二乃は少しだけ感心した。

 

 

次。

 

「悠飛」

 

今度は三玖の姿。

 

「三玖?」

 

「うん」

 

「本物?」

 

「そう」

 

悠飛はじっと見る。

 

「……偽物」

 

「……」

 

三玖の姿をした少女が少しだけ笑う。

 

「理由は?」

 

「三玖なら、俺を見る時にそんなに真っ直ぐ見ない」

 

「……」

 

「少し視線を逸らす」

 

「なるほど」

 

「あと」

 

「あと?」

 

「三玖なら、もっと静かに近づいてくる」

 

「……」

 

少女が変装を解く。

 

「一花」

 

「正解」

 

一花は笑った。

 

「さすが悠飛くん」

 

「でも」

 

悠飛が言う。

 

「一花も三玖に似せるの上手かった」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、もう一回やろうかな」

 

「やめてくれ」

 

「ふふっ」

 

一花は楽しそうだった。

 

 

次に現れたのは。

 

「悠飛さん!」

 

四葉。

 

「四葉?」

 

「はい!」

 

悠飛はじっと見る。

 

「……本物だな」

 

「正解です!」

 

四葉が両手を上げる。

 

「どうして分かったんですか?」

 

「元気すぎる」

 

「……」

 

「四葉なら、変装してても絶対に四葉らしくなる」

 

「そんな!」

 

四葉は笑う。

 

「でも、嬉しいです!」

 

「何が?」

 

「ちゃんと私を見てくれてるってことです!」

 

悠飛は少し照れた。

 

「まあ……長い付き合いだから」

 

「えへへ」

 

四葉は嬉しそうに笑った。

 

その笑顔を。

 

廊下の角から見ていた一花と六華。

 

「……」

 

六華が小さく呟く。

 

「四葉、嬉しそう」

 

「うん」

 

一花も微笑む。

 

「私も負けられないな」

 

 

そして。

 

「悠飛さん」

 

今度は六華。

 

「……」

 

悠飛は少し驚いた。

 

「六華?」

 

「うん」

 

「本物だな」

 

「どうして?」

 

「目」

 

「目?」

 

「六華は、笑う時に目が少しだけ細くなる」

 

「……」

 

六華は目を細める。

 

「こう?」

 

「ああ」

 

「……」

 

「やっぱり」

 

六華は笑った。

 

「覚えてたんだ」

 

「もちろん」

 

「……」

 

その言葉だけで。

 

六華の胸は温かくなった。

 

「ありがとう」

 

「何が?」

 

「何でもない」

 

 

残る二人。

 

一花。

 

五月。

 

まず。

 

「悠飛くん」

 

一花の姿をした少女が現れた。

 

悠飛は一瞬で分かった。

 

「偽物」

 

「えっ!?」

 

「一花じゃない」

 

「どうして?」

 

「一花なら」

 

悠飛は少し考える。

 

「こんなに緊張してる顔をしない」

 

「……」

 

少女が変装を解く。

 

「五月」

 

「正解です」

 

五月は少し悔しそうだった。

 

「私ももっと一花さんらしくできたと思ったのですが」

 

「いや、十分似てた」

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

五月が少し嬉しそうにする。

 

「では最後ですね」

 

「ああ」

 

 

最後。

 

五月の姿をした少女が現れた。

 

「悠飛さん」

 

「……」

 

悠飛は黙って見る。

 

「どうしました?」

 

「……」

 

「私は五月です」

 

「……」

 

悠飛は一歩近づく。

 

「本当に?」

 

「はい」

 

「五月なら」

 

悠飛は少しだけ笑った。

 

「俺に敬語で話す時、語尾がほんの少しだけ柔らかくなる」

 

「……」

 

「でも今は違う」

 

少女は黙る。

 

「それに」

 

悠飛が続ける。

 

「五月なら、こんな時に俺の目を見るより、少しだけ横を見る」

 

「……」

 

「だから」

 

悠飛は言った。

 

「君は偽物」

 

「……」

 

少女が変装を解く。

 

長い髪。

 

優しい笑顔。

 

「正解」

 

「一花」

 

「うん」

 

一花は笑った。

 

「さすがだね」

 

「難しかった」

 

「本当に?」

 

「本当」

 

「じゃあ」

 

一花は少し近づく。

 

「私のことも、ちゃんと分かってくれてたんだ」

 

「当たり前だろ」

 

「……」

 

一花の頬が赤くなる。

 

「そっか」

 

その一言。

 

それだけなのに。

 

一花の胸は大きく高鳴っていた。

 

 

全員が集合する。

 

「ということで!」

 

四葉が宣言する。

 

「優勝は悠飛さんです!」

 

「おめでとうございます」

 

五月が拍手する。

 

「よく分かったわね」

 

二乃も感心している。

 

三玖も頷く。

 

「すごい」

 

六華は少し嬉しそうにしている。

 

風太郎が腕を組む。

 

「俺ならもっと早く分かった」

 

「じゃあ風太郎もやってみる?」

 

一花が笑う。

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「いや」

 

風太郎は六人を見る。

 

「全員、紛らわしすぎる」

 

「逃げた」

 

四葉が笑う。

 

「逃げてない」

 

「じゃあ挑戦します?」

 

「……」

 

「風太郎くん、頑張って」

 

一花が煽る。

 

「分かった」

 

風太郎は渋々頷いた。

 

 

数分後。

 

風太郎の前に、六人が並んだ。

 

全員五月。

 

「……」

 

風太郎は一人ずつ見る。

 

「本物は――」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

風太郎は悩む。

 

「……分からん」

 

「ええ!?」

 

四葉が驚く。

 

「風太郎くんでも分からないんですか?」

 

「お前ら全員、顔が同じなんだから分かるわけないだろ」

 

悠飛が笑う。

 

「風太郎」

 

「何だ」

 

「観察力が足りないな」

 

「お前にだけは言われたくない」

 

一同が笑った。

 

 

その日の帰り。

 

悠飛は一花と並んで歩いていた。

 

「楽しかったね」

 

一花が言う。

 

「ああ」

 

「ねえ、悠飛くん」

 

「ん?」

 

「どうして、私が偽物だって分かったの?」

 

「……」

 

悠飛は考える。

 

「一花だから」

 

「答えになってないよ」

 

「じゃあ」

 

悠飛は笑った。

 

「ずっと見てきたから」

 

「……」

 

一花は黙った。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「それって」

 

「?」

 

「ちょっと反則だよ」

 

「何が?」

 

「……何でもない」

 

一花は前を向く。

 

その頬は。

 

ほんのり赤かった。

 

 

一方。

 

少し離れた場所では。

 

四葉と六華が歩いていた。

 

「六華ちゃん」

 

「ん?」

 

「今日、楽しかったですね!」

 

「うん」

 

「悠飛さん、すごかったです」

 

「そうだね」

 

「私のことは一発で分かりました!」

 

「四葉らしいからね」

 

「六華ちゃんもすぐ分かってましたよ!」

 

「……うん」

 

「嬉しかった?」

 

「……すごく」

 

六華は微笑む。

 

「悠飛は昔から、私たちのことをよく見てるから」

 

「はい!」

 

四葉は笑う。

 

「だから私、もっと頑張ります!」

 

「何を?」

 

「悠飛さんに、もっと私のことを知ってもらうんです!」

 

「……」

 

六華は少し驚いた。

 

そして。

 

「私も」

 

二人は顔を見合わせる。

 

「負けません!」

 

「私も負けない」

 

「勝負です!」

 

「うん」

 

二人は笑った。

 

 

夕暮れ。

 

悠飛は駅へ向かって歩いていた。

 

風太郎が隣にいる。

 

「今日の騒ぎ、結局何だったんだ?」

 

「偽五月探し」

 

「くだらない」

 

「でも面白かったぞ」

 

「……」

 

風太郎は少し考える。

 

「お前は誰が一番分かりやすかった?」

 

「誰って?」

 

「一花、四葉、六華」

 

「……」

 

悠飛は黙る。

 

「どうしてその三人なんだ?」

 

「お前が一番気にしてる三人だからだ」

 

「……」

 

「図星か?」

 

「いや」

 

「そうか」

 

風太郎はそれ以上追及しなかった。

 

だが。

 

悠飛自身は。

 

三人の名前を聞いた瞬間。

 

胸の奥が少しだけ熱くなったことに気づいていた。

 

一花。

 

四葉。

 

六華。

 

大切な友達。

 

幼馴染。

 

仲間。

 

――そして。

 

それ以上の何か。

 

その答えは。

 

まだ、悠飛自身にも分からない。

 

 

その夜。

 

中野家。

 

「今日は面白かったね」

 

一花が言う。

 

「はい!」

 

四葉。

 

「悠飛さん、すごかったです」

 

五月。

 

「私の変装も見抜いた」

 

三玖。

 

「悔しいけどね」

 

二乃。

 

六華は静かに笑っていた。

 

「……」

 

一花が六華を見る。

 

「六華」

 

「何?」

 

「悠飛くんに、一番最初に見抜いてほしかった?」

 

「……」

 

六華は少し考える。

 

「うん」

 

「そっか」

 

一花も笑う。

 

「私も」

 

「……」

 

二人の視線が重なる。

 

四葉が二人を見る。

 

「私もです!」

 

「四葉は本当に素直ね」

 

二乃が笑った。

 

「でも」

 

一花が言う。

 

「今日は楽しかった」

 

「はい」

 

四葉が頷く。

 

「みんな一緒でしたから」

 

「うん」

 

六華も。

 

五つ子。

 

六華。

 

そして。

 

悠飛。

 

彼らの距離は。

 

少しずつ。

 

確実に近づいていた。

 

そして――

 

冬の終わりが近づくにつれて。

 

それぞれの恋心もまた。

 

少しずつ、隠せなくなっていく。

 

「……」

 

一花は眠る前。

 

スマートフォンを手に取った。

 

悠飛との写真。

 

家族旅行で撮った一枚。

 

そこには。

 

雪の中で笑う悠飛が写っていた。

 

「……悠飛くん」

 

一花は小さく呟く。

 

「私、本当に好きなのかも」

 

その声は。

 

誰にも届かなかった。

 

同じ頃。

 

四葉も。

 

六華も。

 

それぞれの場所で。

 

同じ少年のことを考えていた。

 

そして。

 

悠飛だけが知らない。

 

三人の少女の恋が。

 

静かに。

 

けれど確実に。

 

動き始めていることを。

 

 

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