『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第47話「三年一組」

春。

 

桜の花が咲き始めた旭高校では、新年度の始まりを告げる生徒たちの声が響いていた。

 

「三年生……」

 

一花は新しい教室の前で、掲示されたクラス表を見上げていた。

 

「本当に三年生になったんだね」

 

「はい!」

 

四葉が元気よく頷く。

 

「私たち、ついに最高学年ですよ!」

 

「四葉、声が大きい」

 

三玖が苦笑する。

 

「でも、三年生って感じがします」

 

五月もクラス表を見ながら微笑んだ。

 

二乃は腕を組みながら言う。

 

「高校生活最後の一年ね」

 

「そう考えると、ちょっと寂しい」

 

六華が呟く。

 

その時。

 

「おはよう」

 

背後から聞き慣れた声がした。

 

「悠飛!」

 

四葉が振り返る。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう」

 

悠飛は笑いながらクラス表を見る。

 

「三年一組か」

 

「はい!」

 

四葉が嬉しそうに言う。

 

「みんな一緒ですよ!」

 

一花、二乃、三玖、四葉、五月。

 

そして六華。

 

悠飛。

 

風太郎。

 

全員が同じクラスだった。

 

「ここまで揃うと、逆にすごいな」

 

悠飛が笑う。

 

風太郎はクラス表を確認してから、ため息をついた。

 

「……また騒がしくなりそうだ」

 

「何よ」

 

二乃が睨む。

 

「悪い意味じゃない」

 

「どうだか」

 

一花が笑う。

 

「風太郎くんも嬉しいくせに」

 

「そんなわけない」

 

「素直じゃないなぁ」

 

「一花」

 

「はいはい」

 

一花は楽しそうに笑った。

 

 

三年一組。

 

新しい教室に入ると、すでに多くの生徒が席についていた。

 

「おはよう」

 

「おう」

 

「今年もよろしく」

 

「三年生かぁ」

 

そんな声が飛び交う。

 

悠飛は教室を見回した。

 

「新しいクラスって、やっぱり少し緊張するな」

 

「悠飛さんでも緊張するんですか?」

 

四葉が驚く。

 

「するよ」

 

「意外です!」

 

「俺を何だと思ってるんだ?」

 

「何でもできる人です!」

 

「……」

 

悠飛は苦笑する。

 

「それは買いかぶりすぎだ」

 

その会話を聞いていた男子生徒が声をかけてきた。

 

「如月」

 

「ん?」

 

振り返る。

 

「今年も同じクラスだな」

 

「前田か」

 

「お前、去年からずっと中野姉妹と一緒にいるよな」

 

前田が五つ子を見る。

 

「すげえよな」

 

「何が?」

 

「いや、普通ならあの五人に囲まれたら緊張するだろ」

 

「慣れたよ」

 

「慣れるのかよ……」

 

前田は呆れたように笑った。

 

そこへ。

 

「上杉!」

 

武田が声を上げる。

 

風太郎が振り返る。

 

「何だ」

 

「今年こそ決着をつけるぞ」

 

「またそれか」

 

「三年生になったんだ。全国統一模試、今度こそ――」

 

「はいはい」

 

風太郎が手を上げる。

 

「好きにしろ」

 

「その余裕が気に入らない!」

 

「俺は忙しいんだ」

 

「五姉妹か?」

 

「……そうだ」

 

武田は五つ子を見る。

 

「なるほど」

 

そして悠飛を見る。

 

「それに如月もいる」

 

「俺?」

 

「君もかなりの成績だろう」

 

「まあ、勉強は嫌いじゃない」

 

「ならば今年は三人で競うのも面白い」

 

悠飛は笑った。

 

「俺は争う気ないよ」

 

「またか!」

 

武田が頭を抱えた。

 

「君たちはどうしてそうなんだ!」

 

周囲から笑いが起きた。

 

 

始業式を終え。

 

新しい担任が教室へ入ってきた。

 

「静かにしろ」

 

教壇に立ったのは、三十代ほどの男性教師だった。

 

「今日から一年間、三年一組の担任をする」

 

自己紹介を済ませる。

 

そして。

 

「三年生になったからといって、急に大人になるわけではない」

 

教室を見渡す。

 

「だが、君たちはこれから進路を決めなければならない。大学へ行く者、就職する者、それぞれ道は違う」

 

一花たちは真剣に話を聞いていた。

 

「だからこそ、最後の一年を大切にしてほしい」

 

悠飛はその言葉を聞きながら、窓の外を見る。

 

桜。

 

春。

 

高校生活最後の一年。

 

「……最後の一年か」

 

小さく呟いた。

 

 

放課後。

 

「悠飛」

 

六華が声をかけた。

 

「ん?」

 

「一緒に帰らない?」

 

「ああ」

 

二人で校門へ向かう。

 

少し後ろから一花と四葉が追いついてきた。

 

「待ってください!」

 

四葉が手を振る。

 

「私も一緒に帰ります!」

 

「私も」

 

一花。

 

「もちろん」

 

六華が微笑む。

 

四人で歩く。

 

桜並木。

 

春の風。

 

「ねえ」

 

一花が言う。

 

「三年一組って、なんだかいいね」

 

「どうして?」

 

悠飛が聞く。

 

「みんな一緒だから」

 

「そうですね!」

 

四葉が頷く。

 

「五つ子も六華ちゃんも、悠飛さんも風太郎君も」

 

「全員同じクラスって、かなり珍しいよね」

 

「うん」

 

六華も頷く。

 

「これなら、最後の一年も一緒にいられる」

 

その言葉に。

 

悠飛は少しだけ笑った。

 

「だったら、楽しく過ごそう」

 

「約束!」

 

四葉が手を差し出す。

 

「約束だ」

 

悠飛が手を合わせる。

 

一花も。

 

「私も約束」

 

六華も。

 

「私も」

 

四人の手が重なった。

 

「三年一組!」

 

四葉が叫ぶ。

 

「最高のクラスにしましょう!」

 

「声が大きい」

 

一花が笑う。

 

「でも」

 

悠飛も笑った。

 

「悪くないな」

 

 

翌日。

 

三年一組では、早くも問題が起きていた。

 

「先生!」

 

四葉が手を上げる。

 

「何だ」

 

「席替えをしましょう!」

 

「今したばかりだ」

 

「でも!」

 

「理由は?」

 

「もっと仲良くなれると思います!」

 

「席替えで仲良くなるものなのか?」

 

「なります!」

 

「……」

 

担任は頭を抱えた。

 

一花が笑う。

 

「四葉らしいね」

 

二乃はため息。

 

「本当に元気ね」

 

三玖は窓際の席から教室を見る。

 

「でも……」

 

「ん?」

 

五月が聞く。

 

「みんな楽しそう」

 

「そうですね」

 

その時。

 

武田が黒板に問題を書いた。

 

「せっかくだ。三年生になった初日に、一つ勝負しよう」

 

「またか」

 

風太郎が呆れる。

 

「数学の問題だ。五分以内に解けた者が勝ち」

 

「俺はやらないぞ」

 

「上杉!」

 

「五分で解けるような問題じゃない」

 

悠飛が黒板を見る。

 

「……」

 

「どうした?」

 

武田が聞く。

 

「これ、条件が一つ抜けてる」

 

「え?」

 

悠飛が黒板を指差す。

 

「この条件だと答えが複数になる」

 

「……」

 

武田が問題を見直す。

 

「本当だ」

 

「おい」

 

風太郎が呆れる。

 

「初日から何やってるんだ」

 

武田は悔しそうに笑った。

 

「さすがだな、如月」

 

「問題を出すなら、ちゃんと確認しないと」

 

「その通りだ」

 

武田は素直に認めた。

 

その様子を見ていた風太郎が少し笑う。

 

「武田」

 

「何だ」

 

「お前、去年より変わったな」

 

「……」

 

武田は一瞬驚いた。

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

「それは……」

 

武田は笑った。

 

「お前に負け続けたおかげかもしれないな」

 

風太郎も少しだけ笑う。

 

「そうか」

 

 

昼休み。

 

中庭。

 

桜の木の下。

 

悠飛たちは集まっていた。

 

「春ですねぇ」

 

五月が弁当を開く。

 

「食べる?」

 

「いただきます」

 

四葉がすぐに反応する。

 

「早い」

 

二乃が呆れる。

 

「お腹が空いてたんです!」

 

「朝食べただろ」

 

「成長期です!」

 

「高校三年生だろ」

 

「まだまだ成長します!」

 

「……」

 

悠飛は笑った。

 

「四葉らしいな」

 

「悠飛さんも食べますか?」

 

「じゃあ一つ」

 

「どうぞ!」

 

四葉が差し出した弁当を受け取る。

 

「ありがとう」

 

「はい!」

 

その様子を見て。

 

一花が少しだけ笑った。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「これもどうぞ」

 

「ありがとう」

 

「私も」

 

六華も弁当を差し出す。

 

「ありがとう」

 

三つの弁当を受け取る悠飛。

 

二乃がそれを見て。

 

「……あんた、人気者ね」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

「?」

 

三玖が小さく呟く。

 

「悠飛は鈍い」

 

「三玖まで?」

 

「事実」

 

五月も頷く。

 

「確かに」

 

悠飛は首を傾げる。

 

「何の話だ?」

 

一花、四葉、六華。

 

三人は顔を見合わせる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

そして。

 

「何でもない!」

 

三人の声が重なった。

 

 

放課後。

 

進路希望調査の用紙が配られた。

 

教室が静かになる。

 

「進路……」

 

一花が用紙を見る。

 

女優。

 

大学。

 

専門学校。

 

それぞれが自分の未来について考え始める。

 

四葉は悩んでいた。

 

「どうしよう……」

 

六華も。

 

「まだ決め切れてない」

 

悠飛は二人を見る。

 

「焦らなくてもいいと思う」

 

「悠飛さん……」

 

「自分の人生だからな」

 

「でも」

 

四葉が言う。

 

「みんなが決めていくと、ちょっと不安になります」

 

「四葉」

 

悠飛は優しく言った。

 

「進む道が違っても、友達じゃなくなるわけじゃない」

 

「……」

 

四葉の目が少し潤む。

 

「そうですよね」

 

「ああ」

 

六華も頷く。

 

「私も、そう思う」

 

一花はその二人を見ながら。

 

「……悠飛くんって、そういうところ優しいよね」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

一花は笑った。

 

 

帰り道。

 

一花と六華が並んで歩いていた。

 

「六華」

 

「ん?」

 

「進路、決めた?」

 

「まだ」

 

「私も」

 

「一花は女優?」

 

「うん。でも大学も少し考えてる」

 

「そうなんだ」

 

二人の前を悠飛と四葉が歩いている。

 

四葉が何か話し。

 

悠飛が笑う。

 

「……」

 

六華はその背中を見る。

 

一花も。

 

「ねえ」

 

一花が言った。

 

「今年は、もっと素直になろうと思う」

 

六華が一瞬止まる。

 

「……私も」

 

二人は互いに笑う。

 

敵ではない。

 

けれど。

 

同じ人を好きになれば。

 

いつか競うことになる。

 

そのことを。

 

二人とも理解していた。

 

 

夕暮れ。

 

校門前。

 

風太郎が悠飛を待っていた。

 

「帰るぞ」

 

「ああ」

 

「今日、どうだった?」

 

「楽しかった」

 

「そうか」

 

風太郎は少し黙る。

 

「三年一組」

 

「ん?」

 

「……悪くないな」

 

悠飛は笑う。

 

「同感」

 

二人で歩き出す。

 

「でも」

 

風太郎が言う。

 

「今年は忙しくなるぞ」

 

「受験か」

 

「それだけじゃない」

 

「五つ子?」

 

「ああ」

 

風太郎は五つ子を見る。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

そして六華。

 

「去年より、あいつらは変わった」

 

「そうだな」

 

「だからこそ」

 

風太郎は前を見る。

 

「俺たちも変わらないとな」

 

悠飛は頷いた。

 

「そうだな」

 

 

その夜。

 

三年一組のグループメッセージには。

 

四葉から大量のメッセージが届いていた。

 

『今日は楽しかったです!』

 

『三年生最高です!』

 

『明日も頑張りましょう!』

 

『桜が綺麗でした!』

 

『みんなで花見しましょう!』

 

一花が返信する。

 

『賛成』

 

六華。

 

『私も』

 

三玖。

 

『行きたい』

 

二乃。

 

『いいわね』

 

五月。

 

『楽しみです』

 

風太郎。

 

『うるさい』

 

四葉。

 

『風太郎君も参加です!』

 

風太郎。

 

『……分かった』

 

最後に。

 

悠飛。

 

『じゃあ、みんなで花見しよう』

 

四葉。

 

『やったー!』

 

その画面を見ながら。

 

悠飛は微笑んだ。

 

三年一組。

 

高校生活最後のクラス。

 

この一年。

 

きっと、いろいろなことが起こる。

 

笑って。

 

泣いて。

 

悩んで。

 

誰かを好きになって。

 

そして。

 

卒業の日を迎える。

 

だからこそ。

 

今はまだ。

 

この春を楽しもう。

 

窓の外。

 

夜空の下で。

 

桜の花びらが一枚。

 

風に乗って舞っていた。

 

新しい教室。

 

新しい仲間。

 

新しい一年。

 

そして。

 

それぞれの未来。

 

三年一組。

 

その一年が。

 

静かに幕を開けた。

 

 

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