『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第49話「修学旅行、京都」

春の旭高校。

 

三年生になってから、数週間が過ぎた。

 

新しいクラスにも少しずつ慣れ、授業も本格的に始まっている。

 

そんなある日の朝。

 

三年一組の教室には、いつもとは違う熱気が満ちていた。

 

「修学旅行!」

 

四葉が黒板の前で両手を広げる。

 

「京都です!」

 

「朝からうるさい」

 

二乃が呆れる。

 

「だって楽しみじゃないですか!」

 

「まあ……楽しみではあるけど」

 

一花も笑う。

 

三玖は配られた資料をじっと見つめていた。

 

「京都……」

 

「三玖、行ったことある?」

 

六華が聞く。

 

「小さい頃に一度だけ」

 

「私も」

 

六華は頷く。

 

「でも、みんなで行くのは初めて」

 

五月がしおりを開く。

 

「三年生の修学旅行……最後の学校行事の一つですね」

 

「そう考えると、ちょっと寂しいな」

 

一花が呟いた。

 

その時。

 

教室の扉が開く。

 

「おはよう」

 

悠飛だった。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が駆け寄る。

 

「修学旅行ですよ!」

 

「聞こえた」

 

「京都です!」

 

「それも聞こえた」

 

「楽しみですね!」

 

「ああ」

 

悠飛は笑った。

 

「俺も楽しみだよ」

 

「やった!」

 

四葉が喜ぶ。

 

風太郎が席に着きながら言った。

 

「浮かれるなよ。修学旅行とはいえ、学校行事だ」

 

「風太郎くん、真面目だね」

 

一花が笑う。

 

「お前らが浮かれすぎなんだ」

 

「そういう風太郎君だって、ちょっと楽しみにしてるんじゃない?」

 

「……」

 

「図星?」

 

「違う」

 

「ふふ」

 

一花は楽しそうだった。

 

 

数日後。

 

修学旅行当日。

 

早朝の駅。

 

大勢の生徒たちが集合していた。

 

「眠い……」

 

三玖が小さく呟く。

 

「朝が早すぎます」

 

五月も眠そうに目をこする。

 

「でも楽しみですね!」

 

四葉だけは元気いっぱいだった。

 

「四葉、寝てないの?」

 

二乃が聞く。

 

「ちゃんと寝ました!」

 

「じゃあ何でそんなに元気なのよ」

 

「楽しみだからです!」

 

「……本当に元気ね」

 

一花が笑う。

 

六華は大きな荷物を持ちながら悠飛を見た。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「荷物、大丈夫?」

 

「ああ」

 

「重くない?」

 

「大丈夫だよ」

 

「ならよかった」

 

その横で一花が悠飛を見る。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「写真、いっぱい撮ろうね」

 

「もちろん」

 

「約束」

 

「ああ」

 

一花は嬉しそうに笑った。

 

 

新幹線。

 

座席は男女混合で指定されていた。

 

「誰と隣になるんでしょうね!」

 

四葉が座席表を見る。

 

「私は――」

 

「私、悠飛くんの隣だ」

 

一花が先に言った。

 

「えっ?」

 

四葉が驚く。

 

「そうなの?」

 

「うん」

 

一花が座席表を見せる。

 

悠飛も確認する。

 

「本当だ」

 

「じゃあ、お願いします」

 

一花が笑う。

 

その様子を見ていた六華は。

 

「私は三玖と一緒」

 

「うん」

 

三玖が頷く。

 

二乃は五月と。

 

「私たちは向かいね」

 

「はい」

 

四葉は風太郎の隣だった。

 

「風太郎君!」

 

「何だ」

 

「修学旅行ですよ!」

 

「知ってる」

 

「楽しみですね!」

 

「……まあな」

 

「素直じゃないです!」

 

そんな声を聞きながら。

 

新幹線が動き始めた。

 

 

東京を離れ。

 

車窓の景色が流れていく。

 

一花は窓の外を見ていた。

 

「……」

 

「どうした?」

 

悠飛が尋ねる。

 

「ううん」

 

一花は笑う。

 

「なんだか旅行って感じがするなって」

 

「そうだな」

 

「悠飛くんと隣っていうのも、ちょっと嬉しい」

 

「そう?」

 

「うん」

 

一花は小さく笑った。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「京都に着いたら、どこ行きたい?」

 

「寺とか神社かな」

 

「悠飛くんらしい」

 

「一花は?」

 

「私は……」

 

少し考える。

 

「みんなと一緒なら、どこでもいいかな」

 

「それも一花らしい」

 

「ふふ」

 

二人は笑った。

 

その後ろの席では。

 

「……」

 

六華が二人を見ていた。

 

三玖が気づく。

 

「六華」

 

「何?」

 

「気になる?」

 

「……少し」

 

「私も」

 

三玖は窓の外を見る。

 

「悠飛と一花、仲良い」

 

「うん」

 

六華は少しだけ目を伏せた。

 

「でも……」

 

「?」

 

「私も負けたくない」

 

三玖は少し驚く。

 

そして。

 

「頑張って」

 

「ありがとう」

 

 

京都駅。

 

新幹線を降りた瞬間。

 

「京都です!」

 

四葉が叫ぶ。

 

「声、大きい!」

 

二乃が笑う。

 

「でも、来ましたね」

 

五月も周囲を見渡す。

 

「修学旅行……」

 

悠飛は駅の天井を見上げる。

 

「久しぶりに来た気がするな」

 

「来たことあるの?」

 

一花が聞く。

 

「ああ。子供の頃に一度」

 

「誰と?」

 

「家族と」

 

「そっか」

 

一花はそれ以上聞かなかった。

 

 

最初の目的地。

 

清水寺。

 

「すごい!」

 

四葉が舞台を見て目を輝かせる。

 

「京都って感じですね!」

 

「本当に綺麗」

 

一花も笑う。

 

三玖は静かに景色を眺める。

 

「……」

 

「三玖?」

 

悠飛が声をかける。

 

「何?」

 

「どうした?」

 

「綺麗だなって」

 

「そうだな」

 

「悠飛もそう思う?」

 

「ああ」

 

三玖は少しだけ笑った。

 

「よかった」

 

一方。

 

二乃と五月はお土産屋を見ている。

 

「これ可愛い!」

 

二乃が髪飾りを見る。

 

「五月、どう?」

 

「いいと思います」

 

「じゃあ買おうかな」

 

六華も店内を見ていた。

 

その時。

 

「六華」

 

悠飛が呼ぶ。

 

「これ」

 

小さな桜の形をした髪飾りだった。

 

「似合うと思う」

 

「……」

 

六華は固まる。

 

「私に?」

 

「ああ」

 

「……」

 

「嫌だった?」

 

「ううん」

 

六華は首を振る。

 

「嬉しい」

 

「じゃあ、お土産にどう?」

 

「うん」

 

六華は大切そうに受け取った。

 

「ありがとう、悠飛」

 

「どういたしまして」

 

その様子を。

 

一花が少し離れたところから見ていた。

 

「……」

 

胸が。

 

少しだけざわついた。

 

 

昼食。

 

京都らしい和食の店。

 

大きな座敷に生徒たちが並ぶ。

 

「いただきます!」

 

四葉が勢いよく箸を持つ。

 

「四葉、食べるの早い」

 

三玖が言う。

 

「旅行ですから!」

 

「関係ないだろ」

 

風太郎が突っ込む。

 

「まあまあ」

 

悠飛が笑う。

 

「今日は楽しもう」

 

「はい!」

 

食事の途中。

 

一花が悠飛に小声で話しかける。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「午後、少し一緒に回らない?」

 

「いいよ」

 

「本当?」

 

「ああ」

 

一花は嬉しそうに笑った。

 

しかし。

 

その会話を四葉が聞いていた。

 

「一花さん!」

 

「ん?」

 

「午後、私も一緒に行っていいですか?」

 

「もちろん」

 

一花は笑う。

 

「みんなで行こうよ」

 

「はい!」

 

六華も。

 

「私も行きたい」

 

「もちろん」

 

結果。

 

午後は。

 

悠飛。

 

一花。

 

四葉。

 

六華。

 

そして風太郎の五人で行動することになった。

 

「……」

 

風太郎がため息をつく。

 

「何で俺まで」

 

「いいじゃないですか!」

 

四葉が笑う。

 

「五人で京都!」

 

「五人じゃない」

 

「?」

 

「お前ら四人+俺だ」

 

「同じです!」

 

「違う」

 

悠飛が笑った。

 

 

午後。

 

伏見稲荷大社。

 

無数の鳥居が続く。

 

「すごい……」

 

一花が見上げる。

 

「ずっと続いてる」

 

「本当に綺麗ですね」

 

四葉も感動している。

 

六華は悠飛の隣を歩いていた。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「さっきの髪飾り」

 

六華は髪につけた桜の飾りを触る。

 

「どう?」

 

「似合ってる」

 

「……」

 

六華は嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう」

 

一花がそれを見て。

 

「六華、可愛い」

 

「ありがとう」

 

「悠飛くんが選んだんだよね?」

 

「ああ」

 

「センスいいね」

 

「そう?」

 

「うん」

 

一花は笑った。

 

だが。

 

その笑顔の奥には。

 

ほんの少しだけ複雑な感情があった。

 

 

夜。

 

旅館。

 

男子部屋。

 

「修学旅行って感じだな」

 

悠飛が布団を敷きながら言う。

 

風太郎は本を読んでいる。

 

「明日の予定を確認しておけ」

 

「風太郎は真面目だな」

 

「お前が適当すぎる」

 

「俺はもう確認したよ」

 

「本当か?」

 

「ああ」

 

「……」

 

風太郎は少し驚いた。

 

「意外だな」

 

「俺だって修学旅行くらい楽しむさ」

 

「そうか」

 

その時。

 

廊下から声が聞こえた。

 

「悠飛さん!」

 

「四葉?」

 

「ちょっと来てください!」

 

「どうした?」

 

悠飛が廊下へ出る。

 

そこには。

 

四葉。

 

一花。

 

六華。

 

三人が並んでいた。

 

「何かあった?」

 

「実は」

 

四葉が小声で言う。

 

「女子部屋で、誰が一番京都を楽しんでるか話してたんです」

 

「それで?」

 

「一花さんが悠飛さんと一緒に行動したかったって」

 

「四葉!」

 

一花が慌てる。

 

「余計なこと言わないで!」

 

「だって本当じゃないですか!」

 

「……」

 

一花の顔が赤くなる。

 

六華も少し困ったように笑った。

 

「四葉」

 

「はい?」

 

「私も悠飛と一緒に回りたかったよ」

 

「六華まで……」

 

一花が頭を抱える。

 

「でも」

 

六華は悠飛を見る。

 

「今日、楽しかった」

 

「俺も」

 

悠飛は笑う。

 

「みんなと京都に来られてよかった」

 

「……」

 

一花。

 

「……」

 

六華。

 

「……」

 

四葉。

 

三人の胸が。

 

同時に温かくなる。

 

 

その夜。

 

京都の旅館。

 

窓の外には、静かな夜の街が広がっていた。

 

悠飛は一人で廊下を歩いていた。

 

少し眠れなかった。

 

すると。

 

「悠飛くん?」

 

「一花?」

 

そこには浴衣姿の一花がいた。

 

「眠れないの?」

 

「うん」

 

「私も」

 

二人は窓際に並んだ。

 

「今日、楽しかったね」

 

「ああ」

 

「清水寺も、伏見稲荷も」

 

「うん」

 

「でも」

 

一花が少しだけ黙る。

 

「修学旅行が終わったら、また普通の学校生活に戻るんだよね」

 

「そうだな」

 

「……なんか寂しい」

 

「まだ二日あるだろ」

 

「そうだけど」

 

一花は笑った。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「卒業しても」

 

「うん」

 

「私たち、今みたいに会えるかな」

 

悠飛は少し考えた。

 

「会えるよ」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

「約束?」

 

「約束」

 

一花は笑った。

 

「……ありがとう」

 

そして。

 

一花は窓の外を見る。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「もし」

 

一花は少し迷って。

 

「高校を卒業しても、誰か一人を選ばなきゃいけないとしたら」

 

「……」

 

悠飛は黙った。

 

「誰を選ぶ?」

 

「……」

 

一花は自分で言ったことに気づき。

 

「あ、ごめん」

 

「いや」

 

悠飛は苦笑する。

 

「難しい質問だな」

 

「うん」

 

「俺にはまだ分からない」

 

「……そっか」

 

「でも」

 

悠飛は続ける。

 

「大切な人たちは、できるだけ大切にしたい」

 

一花はその言葉を聞いて。

 

「悠飛くんらしいね」

 

笑った。

 

「でも……」

 

小さく。

 

「私は、いつか選ばれたいな」

 

「……」

 

その言葉は。

 

悠飛には聞き取れなかった。

 

一花自身も。

 

それ以上は言わなかった。

 

 

翌朝。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が飛び込んできた。

 

「起きてください!」

 

「起きてる」

 

「朝ご飯です!」

 

「今行く」

 

「早く!」

 

「分かったよ」

 

四葉は嬉しそうに笑う。

 

「今日もいっぱい楽しみましょう!」

 

「ああ」

 

「京都最高です!」

 

「本当に好きだな」

 

「はい!」

 

その後ろから。

 

六華がやって来る。

 

「おはよう」

 

「おはよう、六華」

 

「昨日の髪飾り」

 

「ん?」

 

「大切にするね」

 

「……」

 

悠飛は笑った。

 

「気に入ってくれてよかった」

 

一花も来る。

 

「おはよう」

 

「おはよう、一花」

 

「今日も一緒に回ろうね」

 

「もちろん」

 

三人の少女が。

 

同じ少年の隣に立つ。

 

その光景を。

 

廊下の向こうから二乃と三玖と五月が見ていた。

 

「……」

 

二乃が呟く。

 

「また始まったわね」

 

「何が?」

 

五月が聞く。

 

「恋愛戦争」

 

「二乃……」

 

三玖が苦笑する。

 

「私も、負けない」

 

「三玖まで?」

 

五月が驚く。

 

三玖は小さく頷いた。

 

「悠飛は大切だから」

 

二乃は少しだけ笑う。

 

「……私も」

 

五月は困ったように三人を見る。

 

「皆さん……」

 

「五月は?」

 

二乃が尋ねる。

 

「え?」

 

「悠飛のこと」

 

「……」

 

五月は少し考える。

 

「私は……」

 

そして。

 

「大切な友人です」

 

「それだけ?」

 

三玖が聞く。

 

「……今は」

 

五月は微笑んだ。

 

「今は、です」

 

 

修学旅行。

 

京都。

 

寺社仏閣。

 

食事。

 

買い物。

 

夜の語らい。

 

たくさんの思い出。

 

それは。

 

高校生活最後の一年を彩る。

 

最初の大きな思い出になった。

 

そして。

 

帰りの新幹線。

 

悠飛は窓の外を見る。

 

京都の街が少しずつ遠ざかっていく。

 

一花が隣に座る。

 

「また来たいね」

 

「ああ」

 

六華も向かいに座る。

 

「今度は卒業してから」

 

四葉がその隣。

 

「みんなで来ましょう!」

 

「約束」

 

悠飛が言う。

 

「約束です!」

 

四葉が笑う。

 

その瞬間。

 

悠飛は思った。

 

高校三年生。

 

最後の一年。

 

この仲間たちと過ごせる時間は。

 

永遠ではない。

 

だからこそ。

 

一日一日を大切にしたい。

 

笑顔を。

 

思い出を。

 

そして。

 

この胸にある。

 

まだ名前のついていない感情も。

 

いつか。

 

きっと。

 

答えを見つける日が来る。

 

新幹線は。

 

春の空の下。

 

東京へ向かって走り続けていた。

 

 

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